風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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路線の思い出   第118回  肥薩線・大畑駅

路線の思い出   第118回  肥薩線・大畑駅  〔熊本県〕


ワクワクするファーストショットの瞬間

《路線データ》
   営業区間と営業キロ               輸送密度 / 営業係数(’15)
  八代~隼人 124.2km                      552  /  379
運行本数
  八代~人吉 特急【かわせみ・やませみ】、【いさぶろう・しんぺい】下り3本・上り4本
        普通 8往復
  人吉~吉松 普通 3往復(内 2往復 八代より特急の【いさぶろう・しんぺい】
  吉松~隼人 特急【はやとの風】2往復、普通 下り11本・上り12本

大畑駅(おこばえき)は、熊本県人吉市大野町にあるJR九州・肥薩線の駅である。 肥薩線の山線と呼ばれる険しい区間にある駅で、日本で唯一のループ線の中にスイッチバックを併せ持つ駅としても知られている。 「こば」とは焼畑を意味した言葉で、その昔大きな焼畑があったことからこの地名が付けられたという説がある。

駅は島式ホーム1面2線を持つ無人駅で、ホームから構内踏切で駅舎に渡している。 木造の駅舎は開業当時のもので周りの駅とよく似ているが、当駅のみ観光列車〔いさぶろう・しんぺい〕のリニューアルにあわせて窓枠を木造に戻すなど、開業当初の雰囲気を再現する改装が行われた。 2000年3月のダイヤ改正で急行【えびの】が廃止となるまで、急行停車駅であった。

通過不可能なスイッチバック構造の駅で、かつて運転されていた優等列車も必ず停車しなければならなかった。 但し、特急【おおよど】は運転停車の為、客扱いは行わなかった。

開業当時に走っていた蒸気機関車の為に設けられた信号所と給水所としての役割が大きかった駅で、現在でも駅の周りには人家がなく、大畑の集落に出るには徒歩1時間近くかかる。

1927年(昭和2年)まではこのルートが鹿児島本線とされ、多くの重量貨物列車が往来していた為、人吉駅から連続した勾配を登ってきた蒸気機関車はこの駅で給水をする必要があった。 また機関士たちのみならず、トンネルの連続で乗客達も煤で顔や手が汚れる為、駅のホームにある湧水の洗顔場で洗っていたという。

当駅で一休みした列車は、さらに険しい矢岳駅への勾配へ挑んでいった。 スイッチバックを併せ持ったのは勾配途中に平坦な場所を設け、そこに停車場を建設する為であったとの事。



   ※ 前回『第117回 肥薩線・矢岳駅、真幸駅』の続き

・・撮影旅行記・『滝と鉄道の旅 九州』より
さぁ、今日がこの旅の最終日だ。 真幸ではあまり手応えがなかったので、ここはちょっとは本腰を入れないと、観光列車に乗ってヨーグルトを立ち食いして、真幸で『幸せの鐘』の乱打に耳を劈かれ、歩き回ってショボい棚田を見て、大畑でテント張っただけに終わっちまうなぁ。 ・・という訳で、ちょっと入れ込む事にしよう。


大畑駅に飾ってあった
観光客向けの展示用時刻表

大畑駅の列車時刻は、人吉行きの7:00と折り返しの7:34で1つの対となる。 
この後は、9:52の人吉行きの一般列車と吉松行きの〔いさぶろう〕があるので計4本が狙える。 だが、九州の夜明けは秋以降ともなるとすごぶる遅く、7:00の列車は光量不足の撮影不可で見送りだ。 なので、7:34の列車時刻までに撮影地を見つける必要がある。 テントを6時に撤収して、6時半には偵察を兼ねて出撃開始。

偵察の目的は、大畑のスイッチバックを俯瞰できる位置を見つける事だ。 
取り敢えず、人吉方向へ歩いていく。 国道221号沿いの大畑集落への道は以前に車で通った事があって、この道が線路とは離れているのは確認済だ。 で、線路沿いの道を行くと、300m程で立派な舗装道路に出る。 ここからウロウロと雑木のブッシュの中に分け入っていく。 つまり、線路が見えなければ『鉄道撮影』もヘッタクレもないからだ。

2度のブッシュ突入で時間を浪費し、ブッシュの中で彷徨っている内に7:00の列車のスイッチバック通過音が山峡に鳴り響く。 これで時間に追われている事が確定した。 セッティングの時間(適当・いい加減がモットーのナッチャッテセッティングだが)を考えると、15分以内に撮影地を見つけねばならない。


これより『矢岳越え』に挑む


朝も7時半だというのに
異様な位の薄暗さだった

・・で、無理やりブッシュを突貫して線路に下りる。 時間的にはもう、撮影地を探し歩く余裕はない。
で、スイッチバックの又の部分に陣取って、7:34の列車はスイッチバックをジグザクに行くシーンで一丁!といこう。 まぁ、駅への進入とスイッチバックの出入りと『一粒で3度美味しい』ので、撮るのが下手でも1ショット位はいけるだろう。 まぁ、失敗したら、華麗なる話術でねじ伏せればいいのだ(何を?)。


『矢岳越え』のキメ写真はコレ
薄暗いトーンで雰囲気出てるし

さて、7:35の列車がループを登っていくと、9:52の列車まで2時間チョイ時間がある。
この時間で、スイッチバック俯瞰場所を発見できればいい。 ・・という訳で、大規模!?大畑索敵・偵察戦が開始される。 方向は朝に通った道で間違いないので、この道から線路の俯瞰が出来そうな土手に這い上がっていく。

踏跡を見つけたらブッシュの中に分け入っていき、ブッシュに詰まれて引き返す・・というのを3~4度繰り返し、その結果をもって「どうやらこの土手は違う」と結論づける。

なぜなら、『○鉄』より体力のない『本撮り鉄』が、当ても確信もなくブッシュを掻き分けて撮影地を探す・・なんて事は有り得ないだろうと思うからである。 失敗したら『戦果ナシ』になるのだから。
失敗を恐れるデジイチ達が、そんなリスクを犯すとは到底思えないし。 でも、リスクがあるから物事は面白いし、克服した後の感動があるというのにねぇ。

線路側の土手は先ほど歩いてボツな事が確認済みなので、今度はちょっと視野を広く取ってみる。
先ほどの立派な舗装道に出て、その周辺を偵察する。 すると、すぐに高台に登る坂があり、この高台の上からは十分に線路の俯瞰が出来そうな予測がつく。


2時間歩き周って
時にはヤブ漕ぎまでしてようやく見つけました

・・で、この坂をつめてみる。 坂をつめると、田畑と民家が見えてくる。 それも数件の・・。
大畑駅は完全な無人地帯ではなく、人家が点在しているよ。 ただ、この民家の人が鉄道を利用する事はないだろうけど。

ここから、50m位の丘の上に『オウムの第7サティアン』のようなアルミの工作場があり、その脇を通り抜けて更に奥の丘の頂上に詰めると『ありました!』、大畑のスイッチバックを俯瞰できる好撮影地が・・。 たぶん、『セ・セ・セ・セ・セイシュン18きっぷ』のポスターの撮影地はここだろうと思う。

でも、その前の『第7サティアン』は怪しい。 『日中共同』何とか・・とあったし。 
この建物は通らずに、裏を周っていった方が無難か。 拉致されたら適わんし。
索敵が効を奏し撮影地を見つけられた事だし、あと1時間以上あるという事で基地の駅に戻る。
駅までは15分程だった。

列車通過時刻の25分前に行けば、十分セッティングできる。 駅に戻って40分ほどくつろぎ、9:52の列車に備える。 〔いさぶろう〕よりも一般の気動車の方が絵になるかな・・と思うので、この列車を狙いの中心に据えていたのである。


普通列車が山から下りてきた


スイッチバックから戻って

さて、結果は如何に? また、〔いさぶろう〕もここで狙う事にしよう。
せっかく、ブッシュ突貫も厭わずに歩き回って見つけた貴重な『戦果』なのだから。


大畑駅に進入する


大畑駅を発車した列車は
例の「デザート・クライマックス」のトンネルへ

まぁ、熱中すると楽しいものですな。 久々に鉄道撮影に根を詰めたよ。 『鉄道編』に関しては、「撮影を愉しんだので、結果はどうでもいいや」って思えてきた。 でも、上手く撮れてたら、撮影地を探して動き回った分もあるし格別に嬉しいかも。 それでは、大畑で愉しんだひとときをごろうじろ。


これより『矢岳越え』に挑む


スイッチバックで折り返した列車は


鈍重な唸り声を上げて
登り坂(難敵)に挑んでいく

〔いさぶろう〕号を撮影すると、『旅の終わり』の時がやってくる。 2時間の列車待ちの後に、〔しんぺい〕号に乗り込んで人吉へ。 後は、安上がりなバスに乗って博多へ。

そして、始めは切符購入の件もあって乗るつもりはなかったけど、やはり「楽しみを与えてくれた鉄道に感謝!」という事で、ブサイクな特急に正規の特急券で乗る。 九州の特急車輌って、見た目は究極のブサイクだけど中は豪華だねぇ。 危うく、小倉までの40分で寝てしまって乗り過ごす所だったよ。


爬虫類をイメージしたのだろうか?
この車両のデザイナーは・・
※ グーグル画像より拝借

小倉に着くと、残るは大阪行の夜行バスを待つだけだ。 小倉の町をぶらぶらしながら、九州を離れるまでのひとときを愉しもう。 もちろん、お土産も買って。 もう記す事もないので、この辺で筆を置こうと思う。

    ※ 詳細は『撮影旅行記集』の『滝と鉄道の旅・九州』の
         『肥薩線・ループ&スイッチバック』を御覧下さい。








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No title * by 鳳山
肥薩線、ローカルでいいですね。のんびり旅したいです。

ナイス

No title * by きゃみ
こんばんは。
スイッチバックの写真とてもいいですね~。相当苦労されたんじゃないかと思います。
九州は未知の路線が沢山あって、ここも近々是非行ってみたい路線のひとつです。

No title * by gre*n*hub*32
スイッチバック!・・・
まるでアンデス山のスイッチバックを連想しますが、アンデス山脈とは違って穏やかな感じですね❢。

九州にこんな素晴らしいローカル線があった❢とは驚きです。

掲載されている写真が雰囲気がよく出ており、臨場感に溢れています。

☆ナイス!〜

No title * by 風来梨
鳳山さん、こんにちは。

この肥薩線は、鳳山さんの地元の熊本県ですね。
車窓風景は霧島連山が見渡せる「日本三大車窓風景」ですので、是非のお薦めですよ。

No title * by 風来梨
きゃみさん、こんにちは。

肥薩線の矢岳越え区間は、乗るだけでも楽しい路線ですね。 矢岳駅の駅名板はそそりました。 撮り鉄も、ループ・スイッチバックの大畑駅、スイッチバックの真幸駅、そしてこの時は撮れなかったけど「日本三大車窓区間」の霧島連山バックの写真など、盛りだくさんですね。

No title * by 風来梨
gre*n*hub*32さん、こんにちは。

九州の山々は火山性の穏やかな山々が多く、鉄道路線も地形に逆らわぬよう敷設された経緯がありますので、穏やかな高原風景をゆく鉄道路線が多いですね。

この肥薩線も元は赤字路線でしたが、観光鉄道として再生が成功した路線ですね。 豊かな自然環境をゆく鉄道の多くが赤字路線として廃止されていった中、こういう成功例は喜ばしい限りです。

コメント






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No title

肥薩線、ローカルでいいですね。のんびり旅したいです。

ナイス
2015-11-07 * 鳳山 [ 編集 ]

No title

こんばんは。
スイッチバックの写真とてもいいですね~。相当苦労されたんじゃないかと思います。
九州は未知の路線が沢山あって、ここも近々是非行ってみたい路線のひとつです。
2015-11-08 * きゃみ [ 編集 ]

No title

スイッチバック!・・・
まるでアンデス山のスイッチバックを連想しますが、アンデス山脈とは違って穏やかな感じですね❢。

九州にこんな素晴らしいローカル線があった❢とは驚きです。

掲載されている写真が雰囲気がよく出ており、臨場感に溢れています。

☆ナイス!〜
2015-11-08 * gre*n*hub*32 [ 編集 ]

No title

鳳山さん、こんにちは。

この肥薩線は、鳳山さんの地元の熊本県ですね。
車窓風景は霧島連山が見渡せる「日本三大車窓風景」ですので、是非のお薦めですよ。
2015-11-08 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

きゃみさん、こんにちは。

肥薩線の矢岳越え区間は、乗るだけでも楽しい路線ですね。 矢岳駅の駅名板はそそりました。 撮り鉄も、ループ・スイッチバックの大畑駅、スイッチバックの真幸駅、そしてこの時は撮れなかったけど「日本三大車窓区間」の霧島連山バックの写真など、盛りだくさんですね。
2015-11-08 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

gre*n*hub*32さん、こんにちは。

九州の山々は火山性の穏やかな山々が多く、鉄道路線も地形に逆らわぬよう敷設された経緯がありますので、穏やかな高原風景をゆく鉄道路線が多いですね。

この肥薩線も元は赤字路線でしたが、観光鉄道として再生が成功した路線ですね。 豊かな自然環境をゆく鉄道の多くが赤字路線として廃止されていった中、こういう成功例は喜ばしい限りです。
2015-11-08 * 風来梨 [ 編集 ]