風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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日本の滝を訪ねて 第135回  黒部・内蔵助沢の無名滝

日本の滝を訪ねて  第135回  黒部・内蔵助沢の無名滝 〔富山県〕


黒部渓谷に掛かる無名滝
裕に70~80メートルの落差があった

この秋は再びこのコースを歩いたんだよね~。 でも、今年は紅葉は少し早めだったようで、ピークは少し過ぎていたようであった。 そして、ワテが使っているのはデジタルの様な「撮ってつけの偽物」ではなく本物の映像たるフイルムなので、現像→スキャン→記事掲載に大きなタイムラグが生じるのである。
つまり、秋の記事としての掲載に間に合わなくなる訳で。


歩いた者にしか目にする事のできぬ絶景を
後世に伝える事の出来る本物』で撮りにいこう

まぁ、シンドイ思いして山に登り、そしてそこでしか見れない絶景は、やっぱり後世まで伝える事ができる『本物』たる銀塩フイルムで撮りたいと強く思う。 これ以上ワテの本音を書くと、ただでさえ少ない閲覧者の更なる反感を買って閑古鳥となる(既になってるケド・・)ので、この事はこれ位にしとこうか。

・・で、今回は、以前歩いた時の『紅葉のピーク』を魅せようと思う。 でも、滝の画像は数枚だけだったりして。 ちなみに今回取り上げる剱沢からハシゴ谷を乗り越えて黒部ダムに出るルートは、『黒部立山アルペンルート』のロープウェーとケーブルを使えばものの20分程で通過できるので、行き交う者はごく少数となり道もかなり荒れてきているので、敢えてこのルートの探勝はお勧めしない。 それに秋本番は、山小屋が早々と冬季閉鎖に入って全く人がいなくなるし。


前の時の行程図の使い回しだけど
今回は更に難路にバージョンアップしてたよ

前日に『幻の大滝』・剱大滝を擁する剱沢雪渓の下部にある真砂沢で幕営し、そこを起点にして語る事にしようか。 シーズンが終わってやや荒れ始めてきた登山道を《仙人池》の方向に進む。
石コロが転がる道を10分ほど歩くと、ドでかいスノーブリッジが沢を完全に覆い尽くした所に出る。


一見何でもないように見えますが
崩れたら生き埋め確実の
“スノーブリッジ”です

そこには看板が立ててあり、そこにはこのように記されてあった。 『真砂沢の橋は外されています 黒四ダムへはこのスノーブリッジを渡る』と。 まぁ、結構ぶ厚そうなスノーブリッジで恐怖感はなかったが、『秋の残雪のスノーブリッジを渡れ!』とは常識で考えたらかなりおっかないのである。
崩落でもしたら、もちろん生き埋めとなって助からないだろうし。

このスノーブリッジを渡った対岸の土手にはロープが垂れ下がっており、道を示す『道標リボンの花』もチラホラと咲いていた。 これを渡って、この垂れ下がったロープで土手に取り付く。 これが結構な急傾斜で、のっけからふくら脛が爆発しそうになったよ。 この土手をよじ登ると、樹林帯の中を縫うように歩いていく。


秋色は何故に
こうも彩のバランスが
絶妙なのだろうか

やかて《真砂沢》の橋へのアプローチ道分岐へと出るのだが、今現在は橋が外されていて“行き止まり”となるので、橋方向へは進入できぬようにゼブラロープで封じられていた。 この分岐を過ぎたあたりから、《黒部》に向けての道程の『瞼』の如く立ちはばかる黒部別山 2353メートル の山体越えの急登が始まる。


源次郎尾根の頂より
錦の衣が幾重にも重ねられて

この登りは「キツくもなく、さりとて緩くもなく」といった案配で、樹林帯の中なれどつづらを切る事なく斜め一直線に登っていく。 足場は大きな岩が埋まる歩き辛い状況だ。 振り返ると、樹林の合い間から剱の本峰がデンと立ちはばかっているのが見える。


錦に染まる山肌と剱の本峰

この樹林帯の登りをつめていくと大きな岩が転がるゴーロ地帯を跨いで、今までとは明らかに植生の異なる潅木の樹林帯に突入する。 この樹林帯に突入すると頭上に青空や光が見え隠れし、これを目にすると否応なしに「もうちょっとだ!」と気がはやる。 だが、ここからがしつこい。 
樹林帯の上に出てもその先は尾根上を伝うように続いていて、尾根の段差毎に木製のハシゴが立てかけてあった。 その数10ヶ所あまり。

たぶん、このハシゴがこの乗越の名称《ハシゴ谷乗越》の所以だろうが、ヘタレたる登高者(筆者)にとってはあまり有難くない代物であった。 ハシゴを昇る事でかなり高度を稼ぎ、いつのまにか視界から剱本峰が消えて、針葉樹林を針山のように突き出した黒部別山の山体がデンと立ちはばかる情景となる。
そして、なかなか尽きる事のない登りが、この針山の方へ向けて続いている。


広大な山肌の
キャンパスを染め上げて
 
黒部別山がハッキリと横に見え出すと、ようやく長い登りが終わってクマザサが覆う通路となる。
そして、峠と思しき吊り尾根状の所に出る。 ここで90°左に折れて緩やかに下り出す。 たぶんここが《ハシゴ谷乗越》なのだ・・と思うが、それを示す標識が一切見当たらない。 なので、ちょっと日陰になった所で“峠に登りついた”と解釈して休憩を入れる。 
ここまで、1時間40分程だった。 登りに関してはコースタイム通りで、まずまずの結果となった。


涼風が舞う峠で
鹿島槍の双耳峰を見ながらの贅沢な一服

木陰の先に鹿島槍ヶ岳がそびえ、涼風が舞うなかなかの休憩場所だ。 ちょっと呆けていると10分位あっという間に過ぎたので、やや慌て気味に腰を上げる。 この木陰より100mほど歩くと、黒部別山への踏跡と《黒部ダム》への下山路との分岐を示す看板が見えてくる。

この分岐を直進すると、先程の針山のような黒部別山への登路となる。 
ちょっと行った所に剱本峰を望む展望台があるそうなのだが、この先どれ程時間がかかるか読めないので自重する事にした。
ちなみに、この時は「初めて通る道」故に時間を優先して写真を撮らなかったけど、今回は写真を撮りまくって時間を浪費しオチャメ(自爆)ったよ。


秋に色めく樹々を織り交ぜて
秋を演出してみた

下山路は右手に折れ、痩せ尾根から斜めを切って急下降していく。 足元は岩がゴロゴロして歩き辛いが、眼下に広がる《内蔵助平》とこれを囲むようにそびえる立山三山の情景が格別だ。 
山に囲まれたカール地形のような“うつわ”の中が紅葉で色めき立っている。 これを目にすると、早くその“うつわ”の中に立ちたい・・と心がはやる。

だが、その思いとは裏腹に、登山道は左端に刻まれた枯れ沢の筋に潜り込んでいく。 
つまり、この“うつわ”の外周に切られた枯れ沢を伝っていくのである。 なので、立山三山と《内蔵助カール》(立山と真砂岳との間にある本物のカールです)が魅せる、スラッとした山姿と山肌を彩る紅葉を時折目にする事ができるだけである。 でも、この“時折”も、また格別なんだな。


秋色が立山三山と
カールを染め上げて

時折魅せる絶景に浸りながらこの枯れ沢の筋を伝っていくが、それにしても長い。 白い大きな岩コロが転がる沢筋を炎天下に延々と歩かされると、徐々にではあるが干上がってくる。 それに大きな岩コロが転がる河原状の道筋で、ヘタすればつまづいて石を蹴飛ばしたり挫いたりして足が潰れてしまう危険もあるのだ。 気力がドンドン減退していって、注意が散漫となりつまづく・・といった悪循環に陥りそうな状況の道だ。

あまりの長さに「もう、1時間以上河原きをしたか」と思えた頃、河原の真ん中に赤ペンキで『トマレ! NO!』と殴り書きされた大岩が見えてくる。 その横に、赤ペンキで書かれた矢印をわざわざ黄色ペンキで囲んで浮き立たせた道しるべを記した岩があった。 あまりにも目ざといので『いたずら書き』にも見えるが、どうやらいずれも道標のようだ。

ちなみに、『トマレ! NO!』の岩を進むと枯れ沢から本流へ落ち込んでしまうようである。
正規の道は“めざとい矢印”に従って右側の土手に這い上がっていくのだが、土手の上に上がって《内蔵助平》の“うつわ”の中に入ると清らかな水のおりなす楽園が広がっていた。


エメラルドに輝く清水の沢を渡る
今回は中間地点のこの沢まで
5時間かかったよ

湧水思しき澄みきってキラキラと輝く水がエメラルドの淵を魅せ、立山の山なみから続くカールの“うつわ”が色とりどりの秋の色彩で彩られていた。 「夏ならばこの“うつわ”が花盛りとなるのだろうな」などと想像しながら歩いていく。 エメラルドに光る沢を簡易ハシゴで渡りると、《内蔵助平》の分岐に着く。

素晴らしいカールの楽園を魅せる《内蔵助平》だが、この分岐だけは何か荒れ果てたように見えて雰囲気はあまり良くなかった。 ここで時計を見ると、「ギョッ、もう10時過ぎ」。 乗越から河原を伝ってカール地形の底に出るだけで、1時間半もかかってるでやんの。 コースタイム30分オーバーだ。
やはり、いつまでたっても『下りは遅い』という悪癖は直らんな。 ちなみに今回は、ここを通過したのは12時ちょうど(コースタイム2時間オーバー)で、しかも20分休憩してたりして。


今回はコースタイム2時間オーバー
カメラ片手に余裕をかましている
場合ではないと思うのだが

とにかく、カール地形の底に着いた。 「乗越からここまでかなりの高低差を下ったから、後はそんなに厳しい下りはないだろう」とこの先の道程を楽観的に考えていたが、それは『甘い考え』であった。
これからが、《黒部渓谷》の《下ノ廊下》に勝るとも劣らない難路だったのである。


でも・・コレを目にすると
『余裕』かましゃなきゃ
何しにきたのか解らんようになるし

ルートは切り立った崖の中腹につけられ、その左手100m下に乗越から歩いてきたあの枯れ沢が今や大きな沢に出世した《内蔵助沢》が寄り添う『へつり道』となるのだ。 しかもその幅はかなり狭く、岩がゴツゴツして歩き辛い。 また、一枚岩の大岩を下ったり、架ける所に乏しいのか、アサッテの方向を向いたハシゴを伝っての岩崖下りを強いられる場面もあった。


大タテガビンの三兄弟も
淡い山吹色からほのかな紅色まで
思い思いの衣を纏っていた

 地図上でこの区間のコースタイムは『上り2:00、下り1:20』とあったが、到底1:20では行けそうにない。 なぜなら、急いてバタバタと下るとつまづいたり、最悪は細い通路を踏み外して沢へ転げ落ちる危険性があるからだ。 この区間は足場をよく見て慎重に下っていかねばならない所なのだが、沢を挟んだ対岸にはこれまた絢爛豪華に彩られた《大タテガビン》の屏風絵巻が煌びやかに続き、集中力と視線を奪い去ってしまうのだ。


崖上の細い獣道で
身動きが取れない身に
この錦絵巻は酷なのかも

だが、前述のように足場が覚束ない所なのでザックを下ろすスペースはほとんどなく、危険な『へつり道』地帯の通過であるのにカメラを首にぶら下げてザックを背負ったまま、幾度となく立ち止まっては写真を撮る・・という危険を繰り返す。


秋色の内蔵助沢の無名滝
漸くこの滝記事の主役が登場!

さて、この厳しい『へつり道』を2時間ほど行くと、いよいよ出合が近いのか《内蔵助沢》が落差のある瀬滝となり、段をなして瀬を落としていくのが見えてくる。 落差にして、都合50~60mって所だろうか・・。 もちろん、この瀬滝に名前などあるはずもなく、『《内蔵助沢》の無名滝』としか呼びようがないのである。


でも今回は道の崩壊&迫る夕暮れ
で無名滝どころではなかったよ

さて、『《内蔵助沢》の無名滝』を過ぎたら出合は近いハズ・・なのだが、ここからもエグかった。
高度的に沢に近づいて“沢に転げ落ちる”心配はなくなったものの、ロープを手繰っての『土砂崖下り3連発』が待ち受けていたのであった。 手はパンパンに張るわ・・、屈み腰で腰が疼くわ・・と、かなり肉体的に辛い下りであった。


黒部渓谷・下ノ廊下が見えてきたが
ここからが長かった

ちなみに今回は更に土砂崖の崩壊が進行して、垂直ハシゴでの薙の懸垂下降と崖崩れのトラバースに様変わりしてたよ。 もう、地図表記『破線』レベルのデンジャラスなルートになってたよ。


黒部渓谷は整備されて
安全な通路になってたよ

そんな・・、こんな・・で無名滝から出合に出るだけで30分使い、《内蔵助平》から出合で《下ノ廊下》に乗るまで都合2時間20分もかかってしまった。 ちなみに、今回はこの沢を伝うだけで3時間以上かかって、出合に着く頃には夕暮れ直前になってたよ。


前回のここの通過時刻は13:30
今回は15:40と『オチャメ』必至だったよ

だが、ここからの“本家”『へつり道』の《下ノ廊下》は完全な“安全パイ”で、取り立てて危険な所はなかった。 まぁ、『危険なへつり道』の“本家”である《欅平》側の方は、「《黒部別山谷》に残雪があり通行できません」と書かれた看板とゼブラロープで進入が封じられていたが。


滝記事としては余りにも
寂しい(滝画像がない)ので
黒部の無名滝を挿入


前回は「針ノ木の尖峰が見え出す
 とゴールも近い」
今回は「ゴールが先か
        日が暮れるのが先か」

後は色めく紅葉と標高差2000m以上で“天を突くが如く”そびえ立つ針ノ木岳を見ながら歩いていくと、巨大な黒い要塞のような《黒部ダム》の堰堤が見えてくる事だろう。 これが見えたら、長い下山行程も終わりで・・はない。

まだ、“最後のお努め”が残っていた。 それは、このダム堰堤の頂上部までのイッキ登りである。
下山で気力を使い果たし、そして『終点』のダム堰堤を目にした事で“ヤル気”が殺がれた後での100mを越える高低差のイッキ登りは、かなりコタえるのである。


今回の掲載は全て
以前の使い回しでっす
今年撮ったのは来年のネタで使うとしよう

ちなみに復活したのはココだけ。 ダムの堤体高186mの上りを30分でいっちまったよ。 結果、トロリーバスのダム駅に着いたのは17:02。 コースタイム6時間を10時間。 トロリ-バスの最終は17:35。 寸前でダムサイトでの野宿という『オチャメ』は回避されたのであった。 この山行は、「また来年の秋に」という事で。

  ※ 詳細はメインサイトの『撮影旅行記集』より、黒部・内蔵助沢ルートの滝』を御覧下さい。


























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No title * by eigekaii
見事な滝デスーナイス

No title * by 風来梨
ぎいちゃんさん、こんにちは。
見て頂いて有難うございます。

ぎいちゃんさんも、精力的に風景写真を撮られてますね。
私と違って落ち着いた情景を撮られてますね。
私はいつもブリバリ系のネタを含む(大抵ネタは『オチャメ』ネタ)写真でして・・(汗)

またゆっくりと、拝見させて頂きますね。

No title * by gre*n*hub*32
筆舌に尽くし難い迫力のある黒部峡谷の美しさです。
あまりの美しくしさには感動いたしました。
画像ではなくて実際に見れば、なお美しいでしょうね!。

私はカナダ住まいで、日本には2年に一度の里帰りをしていますが、・・・古希を過ぎており山歩きはとても無理ですので、こうして風来梨 さんのブログでアップされる画像を眺めては、行った積りで楽しませて頂きます。
有難う御座いました!。

☆ナイス!〜

No title * by 風来梨
gre*n*hub*32さん、こんばんは。 見て頂いて有難うございます。

最盛期にあったの「奇跡の体力」も過去の遺物となって、時間もかかりますけど、あの素晴らしい紅葉に魅せられると、無理してでも行きたくなっちゃいます。 今年もこのルートを行きましたけど、かなり道が崩壊してて苦労しました。

今後も、四季折々の絶景を掲載していきたいと思いますので、宜しくお願いします。

コメント






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見事な滝デスーナイス
2015-10-27 * eigekaii [ 編集 ]

No title

ぎいちゃんさん、こんにちは。
見て頂いて有難うございます。

ぎいちゃんさんも、精力的に風景写真を撮られてますね。
私と違って落ち着いた情景を撮られてますね。
私はいつもブリバリ系のネタを含む(大抵ネタは『オチャメ』ネタ)写真でして・・(汗)

またゆっくりと、拝見させて頂きますね。
2015-10-27 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

筆舌に尽くし難い迫力のある黒部峡谷の美しさです。
あまりの美しくしさには感動いたしました。
画像ではなくて実際に見れば、なお美しいでしょうね!。

私はカナダ住まいで、日本には2年に一度の里帰りをしていますが、・・・古希を過ぎており山歩きはとても無理ですので、こうして風来梨 さんのブログでアップされる画像を眺めては、行った積りで楽しませて頂きます。
有難う御座いました!。

☆ナイス!〜
2015-10-28 * gre*n*hub*32 [ 編集 ]

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gre*n*hub*32さん、こんばんは。 見て頂いて有難うございます。

最盛期にあったの「奇跡の体力」も過去の遺物となって、時間もかかりますけど、あの素晴らしい紅葉に魅せられると、無理してでも行きたくなっちゃいます。 今年もこのルートを行きましたけど、かなり道が崩壊してて苦労しました。

今後も、四季折々の絶景を掲載していきたいと思いますので、宜しくお願いします。
2015-10-28 * 風来梨 [ 編集 ]