2015-10-15 (Thu)✎
路線の思い出 第115回 木次線・出雲坂根駅 〔島根県〕
まるで模型のレイアウトのような
赤い単行気動車がウロウロと往来していた
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度 / 営業係数(’15)
宍道~備後落合 81.9km 245 / 828
運行本数(’17)
宍道~備後落合 下り1本・上り2本
宍道~出雲横田 下り4本(内 1本土曜運休)、上り5本(内 1本日曜運休)
宍道~木次 下り5本・上り4本
木次~備後落合 下り3本・上り2本(内 1往復臨時トロッコ列車)
出雲横田~木次 上り2本
出雲坂根駅(いずもさかねえき)は、島根県仁多郡奥出雲町八川にあるJR西日本・木次線の駅である。 駅の愛称は『天真名井(あめのまない)』。 JR西日本では唯一の2段スイッチバックが存在しており、ホームの片隅に延命水と呼ばれる湧き水がある。
駅構造は、相対式2面2線のホームと側線を持つ行き違い可能な駅であるが、2009年4月現在の列車の行き違い運用はトロッコ列車の運転時のみとなっている。 木次鉄道部管理の無人駅で、自動券売機等の設置はない。 2017年のの1日平均乗車人員は1人との事。
下りホーム側に入口があり、反対側の上りホームへは車止めの反対側に位置している構内踏切で連絡している。 長らく使われていた駅舎は2009年に解体され、2010年4月に新しい駅舎が竣工した。
かつては急行も走っていたのだ
出雲坂根駅に停車中の急行【ちどり】
出雲坂根駅に停車中の急行【ちどり】
かつて、急行列車が運行されていた木次線も、今や“路線廃止”の風評もチラホラと聞えてくる程の閑散線となってしまった。 そして、目的地の出雲坂根駅を挟む備後落合~出雲横田 間では、運行本数が1日僅か3往復となってしまった。 これによって、出雲坂根駅での撮影活動は真にキツいものになってしまったのだ。
木次線の三往復区間の存続理由は
収益性のいい観光トロッコ列車だろう
※ グーグル画像より拝借
さて、JR備後落合駅始発の列車利用の考察であるが、芸備線からの乗継となるなら前日に新見か三次まで出張ってないと、1日3往復の一番列車には乗車できない。 なぜなら、備後落合へ向かう列車は三次方面からは5往復、新見方面に至っては木次線と同じく3往復の運行しかないからである。
この時は1日4往復
日に4往復あれば鉄道に
乗っての撮り鉄も可能だが
そして、その『1日3往復しかない木次線の上り一番列車』の発車時刻は、利用者の想定を全く度外視した9:25である。 これを逃したら、定期列車は昼過ぎの14:44までない・・っていうか、列車撮影を想定するなら朝の9時台に備後落合を折り返す1番列車がターゲットとなるのである。 1日僅か3往復で、その内の1往復を逃してしまえば限りなくチャンスは少なくなってしまうのだ。 これらの条件を踏まえると、列車の撮影をするなら車で追っかける以外にはないのである。
スイッチバックを俯瞰する
これらの事を踏まえて、かつて自身では『邪道』扱いしていた車で出雲坂根まで向かう。
鉄道好きならば、《木次線》と聞いて真っ先に思い浮かぶのは『出雲坂根の三段スイッチバック』であろう。 これは“適当、中途半端、いい加減”な鉄道オタである『○鉄』にしても例外!?ではなく、その代名詞たるこのワテも、秋の鮮やかな風景の中で『三段スイッチバック』を行き交う列車を想定していた。
その想定で頭を一杯にして、『三段スイッチバック』のある出雲坂根駅に向かう。
だが、時というものは残酷にも、その思いを木っ端微塵に打ち砕いたのであった。
20年の昔に撮ったあの鉄道風景を撮った場所は、遠の昔に消えてなくなっていたのである。
正確に言えば、依然と様相が全く違うモノになっていたのである。
私の記憶にある出雲坂根は
こういう駅だったのだが
※ グーグル画像より拝借
そう全ては、“おろち”だか何だか知らないが、巨大で無粋なコンクリートループ橋を通過する車だけが恩恵を受ける『観光地』と化していたのである。 それは、この巨大で無粋なコンクリートループ橋は展望エリア以外に立ち止まる所はなく、その展望所は壮大な『ループ橋』を眺めるべく・・の位置に設置されたものであった。
その展望所からの鉄道情景は、山の縁を伝う“隅に追いやられた哀れな姿”であった。 片や便利さ極まる観光国道のR314と、輸送の任から解かれて「これ以上便数を減らすのは無理」という位まで減便されたローカル鉄道との差であろう。 『光と影』というなら、真にこの対比をいうのであろう。
パンフレットの隅にコソっと載せられる
木次線は『影』そのもの
また、《出雲坂根》の駅も「車で訪れる者が全て」といった感じで、駅構内にあった『延命の水』も車での来訪者に都合がいいように外に引かれ、デカイ看板がその位置を示していた。 きっと観光バスもその前に停車して、行楽客に『延命の御利益』を振舞うのであろう。
今の『観光地』化した出雲坂根駅と
御利益も吹っ飛びそうな大看板を掲げた『延命水』
※ グーグル画像より拝借
これらの情景を目にして、かなり大きな“やるせなさ”が頭にこびりついた。 だが、このように過ぎゆく時の残酷さに打ちひしがれている私自身も、「車でやってきている」という矛盾を抱えているのである。
この身勝手な感傷を振り払うべく、「この“おろち”より抜け出たい」と思った。 格好着けて言うと、「一刻も早く抜け出したかった」のである。
このように「大好きだった撮影地がもう存在しない」という現実を思い知らされて、やや気落ちしてこの地より離れる。 この時は確かに、「木次線の撮影は見送りかな」という思いが頭にもたげていた。
このように久方ぶりにこの地を訪れて、その変わり様に少なからずの無常感と退廃感を抱き、この地での撮影は気乗りがせずに見送ったのである。 従って、この記事での掲載写真は、筆者が鉄道を追い回していた頃の憧れていた『出雲坂根の三段スイッチバック』の情景としたい。
こんな情景を撮りたくて
この地を訪れたのだが
※ 詳しくは、メインサイトの旅行記より『3つの滝と3往復の秋』を御覧下さい
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No title * by 風来梨
きゃみさん、こんばんは。 TB有難うございます。 「オチャメ」満載の下車駅体験記ですが、今後とも宜しくお願いします。
島根・広島県境のこのあたりは、比婆山や帝釈峡・道後山など、紅葉の西日本有数の名所ですね。
だから、出雲坂根のスイッチバックも、紅葉で彩られる秋が狙い目ですが、運行本数が少なすぎますね。 願わくばもう一度、キハ58の急行「ちどり」のスイッチバック往来を撮りたいなぁ。
島根・広島県境のこのあたりは、比婆山や帝釈峡・道後山など、紅葉の西日本有数の名所ですね。
だから、出雲坂根のスイッチバックも、紅葉で彩られる秋が狙い目ですが、運行本数が少なすぎますね。 願わくばもう一度、キハ58の急行「ちどり」のスイッチバック往来を撮りたいなぁ。
「私の訪ねた路線」の書庫、見ごたえがありますね。ゆっくり拝見させてもらっています。数少ないですが、私も同じく訪れた時のものをトラバさせていただきます<(_ _)>
木次線は今年のゴールデンウィークに初訪問しました。ずっと行ってみたかったのですがやっと実現できました。ハプニングなどもあってとても楽しく幸せなときでした。