風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第203回  仙人池  

『日本百景』 秋  第203回  仙人池 〔富山県〕


仙人池に投影する剱の艶姿に
しばし時を忘れる

  剱   岳 つるぎたけ (中部山岳国立公園)
立山連峰の中でひときわ嶮しく、氷河地形を顕著に示しているのが剱岳である。 山頂は氷食尖峰で、氷河が永い時をかけて多くの嶮しき谷を創りだしている。 これらの谷は、《長次郎谷》・《平蔵谷》など、これらの谷を世に広めた先駆者達の名前がつけられている。

剱岳の魅力は、何といっても“奥の深い”楽しみ方にある。 初心者ならば、室堂からお花畑を突っ切って剱の頂に立つコースがお勧めである。 山歩きに慣れた中級者ならば、剱沢雪渓を渡って仙人池・黒部渓谷に至るコースがいい。 剱沢の万年雪渓を突っ切って、裏剱の八ッ峰と仙人池を目指すのである。

このコースの全般に渡って眺められる裏剱の景観は、とにかく“素晴らしい”のひとことに尽きる。
八ッ峰を映す仙人池や彩り鮮やかな池ノ平、そして夏の“まだ人知れぬ”池ノ平山のお花畑、秋の燃える紅葉と、魅力が盛りだくさんである。




剱岳・黒部渓谷縦走ルート 行程図

   行程表                駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR富山駅より鉄道利用(1:05)→立山駅よりケーブルとバス(1:00)→室堂
     (0:20)→雷鳥平(1:50)→剱御前小屋(0:50)→剱山荘(1:30)→前剱
     (1:30)→剱岳(2:30)→剱沢キャンプ場
《2日目》 剱沢小屋より一服剱まで往復1時間40分(0:30)→剱沢雪渓取付
     (0:50)→真砂沢ロッジ(1:30)→近藤岩・二股(2:20)→仙人池
      ※ (途中の仙人峠より池ノ平まで片道30分)
《3日目》 仙人池(1:20)→仙人温泉(1:20)→阿曽原温泉(4:30)→欅平より渓谷鉄道利用
      (1:20)→宇奈月温泉駅より鉄道利用(1:30)→富山駅

      ※ 『第202回 剱岳』からの続きです


初秋の八ッ峰・朝景

  《2日目》 剱沢雪渓を通って裏剱・仙人池へ
朝、夜明け前に起きて、もし星が夜空に見渡せたなら、テントを張ったまま一服剱までいってみよう。 
一服剱まで約1時間位だ。 そして、剱岳と鋭角的な“二ッ耳”を魅せる鹿島槍ヶ岳が朝の薄紅色の空に染まる絶景を、是非とも目に焼きつけて欲しい。 これこそ、山の醍醐味である。


一服剱より鹿島槍ヶ岳を望む
この場所から望む鹿島槍ヶ岳は
ワテの“いち押し”だ

この素晴らしき眺めを存分に味わったなら、剱岳へと登っていく登山者達にエールを送って《剱沢》に戻ろう。 《剱沢》に戻ったなら、テントを片付けて出発だ。 


朝の広潤な雰囲気の剱沢へ

剱沢の万年雪渓を伝う

《剱沢小屋》前の涸れ沢を下っていくと、やがて《剱沢雪渓》の白銀の帯が見えてくるだろう。 
この雪渓は比較的平坦でアイゼンなしでも歩いていけるが、“素”だと疲れるのも早いのでアイゼンを着けた方が得だ。

雪渓に入ってから20分程歩いていくと、剱岳の大岩盤に昇り竜の如く一直線に突き上げている雪の筋を見る事ができる。 これが《平蔵谷》の雪渓だ。 何でも平均傾斜35°、《平蔵ノコル》付近の最上部に至っては45°とも50°ともいわれる急傾斜だ。 だが、「これが剱岳の最短ルートだ」と言われても、さすがに登っていく気にはなれないだろう。 また、このルートを行くのであれば、それなりの装備と気構えが必要だろう。 

秋ならば、この辺りからそろそろ錦の帯を山肌に掲げてくるだろう。 雪渓の奥を望むと、後立山連峰の山なみが雄々しくそびえ立っている。 広い雪渓の中央に荷物を下ろして、カメラ片手に駆けまわりたくなる風景が次々と惜しみなく現れる。 絶景の中を進んでいくと、紅葉の両側を飾られた明るい雪渓の谷筋が視界に入ってくる。 これが《長次郎谷》の雪渓である。 


薄く雪を乗せた八ッ峰は“芸術”だ
八ッ峰を語るなら長次郎雪渓でしょう

《長次郎谷》の出合から先の《剱沢》は更に明るく開放的となり、広潤な気分満点に歩いていける。 
やがて雪渓が薄れて退くようになっていくと、程なく《真砂沢ロッジ》前の広場に出る。


紅葉と鹿島槍ヶ岳
真砂沢付近にて

ロッジの建物の脇を下っていくと《剱沢》の河原に出る。 河原に下りてすぐにある《剱沢》に架かる鉄のハシゴを見送って直進する。 ちなみにこの鉄ハシゴは、《ハシゴ谷乗越》へのルートの入口である。
ハシゴを見送って飛び石伝いに歩いていくと、裏剱の末端から延びる雪渓を渡っていく。 


剱沢の流れ
この水がやがて“幻ノ滝”剱大滝となる

この雪渓は《南股の雪渓》と呼ばれていて、例年秋のシーズン時期には《剱沢》に流れ込む支流に大きなスノーブリッジをかけるので通過には注意が必要だ。 《南股の雪渓》を越えると概ね《剱沢》の右岸を伝っていくようになるが、沢に迫り出した岩をへつる鎖場があったり、大岩を高巻きしたりと結構“忙しい”道程である。 


裾に紅葉を纏う八ッ峰の絶景

この沢のそばを1時間半ほど歩いていくと下流方向の視界が開け出し、左側に《三ノ窓谷》の雪渓と紅葉に覆われた八ッ峰の絶景が見渡せるようになるだろう。 そうなれば、《二股》も近い。


三ノ窓雪渓が
昇竜の如く突き上げる

《二股》には巨大な岩小屋・《近藤岩》が《剱沢》の中央にデンと居座り、沢の流れを二つに割っている。 《二股》に着くと立派な吊橋で《北股》を渡り、《近藤岩》のたもとを通って《仙人池》と《池ノ平》の分岐に出る。 

直進して《三ノ窓》の雪渓を絡んで《北股沢》へと続く道が、《池ノ平》へのルートである。 
この道は上級者向けとの事なので、あえて回避しよう。 目指す《仙人池》へのルートは、右手の樹林帯の中へ入っていく。 階段状の急坂を登っていくと、ザレ状の道を経て尾根上に出る。 


仙人新道より望む鹿島槍ヶ岳

尾根上は樹木が薄れて所々視界が利くようになり、左手に《三ノ窓》の大雪渓と剱の《八ッ峰》が現れる。 また右手には、後立山の盟主・鹿島槍ヶ岳が双耳峰をそろえて対峙している。 


八ッ峰核心部
クレオパトラニードルと小窓ノ王

その懐に向かって“幻の大滝”『剱大滝』を抱く《剱沢》が、緑を深く刻んでいる。 これらを見ながら登っていくと、樹木に覆われたピークを2つ程越えて進行方向が右に変わる。 すると、谷を隔てて《仙人池ヒュッテ》の屋根が見えてくる。 こうなると、《仙人峠》は近い。 

後は尾根下を巻くような感じで伝っていくと、《仙人峠》の分岐に出る。 この分岐を左に進むと、情緒豊かな《八ッ峰》の情景を魅せてくれる《池ノ平》へと誘ってくれる。 《仙人池》へは、右に進路を取る。 高山植物の保護の為のロープで仕切られた道を下る事15分で、《仙人池ヒュッテ》に着く。 
たどり着いた《仙人池》では、時の流れを忘れさせる情景を魅せられる事だろう。 


仙人池と相対する位置にある池ノ平も
八ッ峰の絶好の展望台だ

波紋一つない水面に投影される裏剱の《チンネ》・《八ッ峰》・《クレオパトラニードル》などの岩峰、池を取り囲む紅や黄色に色づいた樹木、岩を刻み“窓”をくり貫く長大な雪渓。 
この情景に言葉はいらない。 時の流れを止めて、ただひたすら眺めていたい。 この地域は幕営禁止との事なので、今日は《仙人池ヒュッテ》で宿泊しよう。 明日の朝、《八ッ峰》を眺める期待を胸に休もう。




絶景のショータイム 開幕

 《3日目》 仙人池から阿曽原温泉を経て黒部渓谷・欅平へ
朝、目覚めたなら素早く外に出て、《仙人池》と《八ッ峰》を眺めよう。 もし晴れていたなら、《八ッ峰》が朝日を浴びて輝く様が《仙人池》の水面に投影される事だろう。


薄日が差して
剱の岩峰に縞模様が浮き出して


もう夢中になって
同じアングルで撮りまくったよ

いつまでもいたい、いつまでも眺めていたいが、《欅平》のトロッコ列車の便の事むもあるので6:30頃には出発せねばならない。 後ろ髪をひかれる思いで出発する。 

《阿曽原温泉》へは、ヒュッテ前のクマザサの道を右へ下っていく。 クマザサ帯を過ぎると、岩が敷きつめられた階段状の道となる。 途中、つづら折りに折り返す地点が土砂崩れとなっているので注意しよう。 この土砂崩れを伝っての踏跡もついていて、逆コースからだと短絡ルートと見まがいそうだが、決して入らぬように(シーズン中はロープを張ってあるようである)。 


絶景を思い返しつつ
下っていこう

しばらくこの石畳状の道を下っていくと、《仙人峠》から刻まれた本谷と合流する。 ここから、長い長い《仙人谷》の下りだ。 この谷筋は8月初旬頃まで長大な雪渓となっていて傾斜もそれなりにあるので、早い時期だとアイゼンが必要となろう。 下っていくに従って谷幅も広くなり、雪渓も途絶えて右岸の岩場の一段下った所から登山道が現れてくる。 
この道を伝っていくと、左下に《仙人温泉》の白い湯煙りが見えてくる。 

これが見えると左岸に渡って、石の階段を下ると《仙人温泉小屋》前に出る。 時間があればひと風呂浴びたい所だが、《欅平》までの道程が長く時間に追われているだろうから、今回は“見送り”であろう。
たぶん、この時間(AM8時頃か)に立ち寄っても、風呂には入れないであろうが。 


黒部へ下るほどに“秋”は色づく

《温泉小屋》前を通った先にある温泉風穴でひと息着いたなら、またひたすら下っていこう。 
《温泉小屋》からは、特に変わりばえのしない樹林の道を下っていく。 途中の変化といえば、『黒四発電所』の鉄塔が見える位であろう。 期待する《黒部渓谷》の流れは、俯瞰できそうにないみたいである。 やがて、樹林帯の中にもぐり込み、視界がなくなると《阿曽原峠》だ。 

峠からのつづら折りの坂を下って、《黒部渓谷・下ノ廊下》を貫く道と合わされば、程なく《阿曽原温泉小屋》の前に着く。 ここから先、《欅平》までの行程ガイドは、このシリーズの『第138回 黒部渓谷』で述べているので、この項目では簡単にとどめておこう。 《阿曽原温泉》から《欅平》まで12km・所要時間は約4時間半である。 


後半は黒部渓谷歩き
折尾沢の無名滝

途中に《志茂谷トンネル》という、崩れた瓦礫で埋もれた中を掘られたトンネルがある。 実はこのトンネル、延長300m位の“洞窟”なのである。 もちろん暗闇で、下は水深10cmの水が流れている。
問題といえば、このトンネルの通過くらいであろうか。

後は、決して『水平歩道』上で暴れない!?事だ。 『水平歩道』から転落したなら、200mの“奈落の底”であることを忘れずに。 雨の日さえ避ければ、何も恐れて歩く必要はない。
渓谷を楽しみながら歩いていこう。

   ※ 詳細は、メインサイトより『剱岳』を御覧下さい。
















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No title * by yama
古い記事ですが、TBさせて頂ききました。
よろしくお願いします。
遠征登山の2回目、登山を初めて1年半目でした。
暑く、ヘロヘロの登山だったことが思い出されます

No title * by 風来梨
yamaさん、こんにちは。

TB有難うございます。
この朝日を浴びた裏剱は、同じく20年近く前のモノです。

この頃は「奇跡の体力」を有する最盛期でして、池ノ平でテントを張って、朝6時前から駆け足で仙人池まで出張りました。 朝日は残念ながら雲間に隠れましたけど、剱の八ッ峰が縞模様に輝く様を魅れました。

テント装備一式担いで駆け足が出来た「奇跡」・・。 ホント思い返すだけで涙が出ますね。(笑)

コメント






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No title

古い記事ですが、TBさせて頂ききました。
よろしくお願いします。
遠征登山の2回目、登山を初めて1年半目でした。
暑く、ヘロヘロの登山だったことが思い出されます
2015-10-12 * yama [ 編集 ]

No title

yamaさん、こんにちは。

TB有難うございます。
この朝日を浴びた裏剱は、同じく20年近く前のモノです。

この頃は「奇跡の体力」を有する最盛期でして、池ノ平でテントを張って、朝6時前から駆け足で仙人池まで出張りました。 朝日は残念ながら雲間に隠れましたけど、剱の八ッ峰が縞模様に輝く様を魅れました。

テント装備一式担いで駆け足が出来た「奇跡」・・。 ホント思い返すだけで涙が出ますね。(笑)
2015-10-13 * 風来梨 [ 編集 ]