風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

TOP >  『日本百景』  >  『日本百景』 秋 >  第202回  剱岳

第202回  剱岳

『日本百景』 秋  第202回  剱岳 〔富山県〕


冬化粧を始めた剱岳

  剱   岳 つるぎたけ (中部山岳国立公園)
立山連峰の中でひときわ嶮しく、氷河地形を顕著に示しているのが剱岳である。 山頂は氷食尖峰で、氷河が永い時をかけて多くの嶮しき谷を創りだしている。 これらの谷は、《長次郎谷》・《平蔵谷》など、これらの谷を世に広めた先駆者達の名前がつけられている。

剱岳の魅力は、何といっても“奥の深い”楽しみ方にある。 初心者ならば、室堂からお花畑を突っ切って剱の頂に立つコースがお勧めである。 山歩きに慣れた中級者ならば、剱沢雪渓を渡って仙人池・黒部渓谷に至るコースがいい。 剱沢の万年雪渓を突っ切って、裏剱の八ッ峰と仙人池を目指すのである。

このコースの全般に渡って眺められる裏剱の景観は、とにかく“素晴らしい”のひとことに尽きる。
八ッ峰を映す仙人池や彩り鮮やかな池ノ平、そして夏の“まだ人知れぬ”池ノ平山のお花畑、秋の燃える紅葉と、魅力が盛りだくさんである。




剱岳・黒部渓谷縦走ルート 行程図

   行程表                 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR富山駅より鉄道利用(1:05)→立山駅よりケーブルとバス(1:00)→室堂
     (0:20)→雷鳥平(1:50)→剱御前小屋(0:50)→剱山荘(1:30)→前剱
     (1:30)→剱岳(2:30)→剱沢キャンプ場
《2日目》 剱沢小屋より一服剱まで往復1時間40分(0:30)→剱沢雪渓取付
     (0:50)→真砂沢ロッジ(1:30)→近藤岩・二股(2:20)→仙人池
      ※ (途中の仙人峠より池ノ平まで片道30分)
《3日目》 仙人池(1:20)→仙人温泉(1:20)→阿曽原温泉(4:30)→欅平より渓谷鉄道利用
      (1:20)→宇奈月温泉駅より鉄道利用(1:30)→富山駅


剱・八ッ峰
いつかこの鋭い峰を踏破したい
という夢はヘタレた身体になって幻に(嘆)

  《1日目》 室堂より剱岳を踏んで剱沢へ
この日の行程をこなせるかどうかは、全てケーブルの乗車時間次第・・といってもいいだろう。
お盆や紅葉シーズンの連休などは、ケーブルの待ち時間で3~4時間食われる事もある。
それにしても、シーズン中の人だかりはタダ事ではない。 この人だかりと順番待ちで意欲を殺がれないようにしたいものである。 もし、日程に余裕があるのなら、《室堂》の《雷鳥沢キャンプ場》辺りに泊って、翌朝早く出発するのも有効な手段である。 それでは出発しよう。

《室堂》のバスターミナルを3階まで上がると、《室堂平》のゲレンデだ。 眼前にある『銘水百選・立山の湧水』で水筒を満たしてから、剱御前の後にひょっこりと突き出す剱岳に向かって歩いていこう。
ターミナルから剱岳のそびえ立つ左側へ進路を取ると、程なく《ミクリヶ池》に出る。 ここは、水面に立山の山屏風が投影される絶好の撮影ポイントである。


ミクリヶ池
残雪を浮かべ立山を映していた

《ミクリヶ池》を越えると、《ミクリヶ池温泉》の建物の前を通る。 ここから、この温泉の湯元である《地獄谷》に向かって、標高差150m下っていく。 下る程に、硫黄臭が鼻をついてくるだろう。
《雷鳥沢ヒュッテ》を過ぎて更に下った所が、《雷鳥沢》のキャンプ場だ。 この先にある《雷鳥沢》を桟橋で渡ってから、剱御前に向かって登り返していく。

登山道は、剱御前の南斜面に広がる沢地形の縁に沿ってついてあり、これをジグザグに切りながら登っていく。 やがて、沢地形の上部に出て山肌の左側を巻くようになると、この登りの頂点である《剱御前小屋》は近い。 《剱御前小屋》の建つ《別山乗越》からは、待ちに待った剱本峰の勇姿が望めるであろう。


剱御前は剱の絶好の展望台

これから、あの惑うばかりに美しい姿を魅せる剱岳へと登っていくのだ。 《剱御前小屋》からは、剱御前の山腹の岩ガレをトラバース気味に下っていく。 大きさの揃わない岩がゴロゴロと転がっていて歩きにくい中を45分程伝っていくと、《剱山荘》の建物が見えてくる。 山荘に寄らずに直で剱岳に向かう道もあるが、ここはひと息着くべく山荘に下りていこう。 もちろんひと息着いた後は、荷物を山荘前にデポって剱本峰へのアタックだ。 


カニノタテバイを従えた
剱岳頂上部

山荘の左脇についてある急坂を登っていくと、山荘を経由しない尾根上の道と合流する。
合流して少し登ると、一服剱 2618メートル の頂上だ。 この上から望む鹿島槍ヶ岳の双耳峰は鋭角の頂を2つ突き合わせて小気味よく、私の好きな山岳風景の一つである。 特に、空がかぎろい色に染まる朝早くがいい。 もし、明日も朝日が拝めるならば、ここに立ち寄ってから《仙人池》へ向かうといいだろう。 


朝日に染まる鹿島槍ヶ岳
一服剱より


朝日に輝く剱沢

一服剱からは、前剱との鞍部に向かって下っていく。 この下りきった所は《武蔵ノコル》と呼ばれていて、ここから垂直に天を衝くかのようにそびえる前剱へと取り付いていく。 
この前剱、実際に登ってみると見た目ほど急でもなく、割とあっさりと登っていける。 ただ、浮石が多い上に人の行き交いが多いので、常に落石に対する警戒が必要だ。 

この急登を乗りきって前剱 2813メートル の頂上へ出ると、ハイマツの茂った想像以上に広い山頂広場から、剱本峰の『カニノタテバイ・ヨコバイ』と呼ばれる岩峰に挑んでいる登山者の姿が望めるだろう。 この頂上を越えて痩せた山稜を下ると、最初の鎖場・《前剱ノ門》である。

ここは上りと下りの通路が分けられていて、足場もしっかりしているので安心して通過できる。
問題はこの次の鎖場だ。 僅か20m程の岩場のトラバースなのだが、真下に垂直傾斜のような《平蔵谷》の雪渓が口を開いていてかなりおっかない。 

“難所”カニノタテバイに挑む

この鎖場を恐々乗り越えると、岩の間にあるテラス状の高台の上に出る。 この高台の上には落石の為だろうか、屋根のコンクリートブロックが粉々になった《平蔵ノコル避難小屋》の廃墟(現在は屋根は取り払われて囲いだけとなっている)がたたずんでいる。 
この避難小屋の廃墟の下を周り込むと、ボルトや鎖・アングルなどが打ち込んである大きな岩壁にぶつかる。 これが、このコースの名物・『カニノタテバイ』である。

しかし、後込みする程難しい事はない。 最初の第一歩が大股開きになる事を除けば“痒い所に手が届く”が如く、欲しい位置にアングルやボルト・鎖がかましてあり、ジャングルジムを上る要領で簡単に這い上がっていける。 この『カニノタテバイ』は、上り専用ルートで行き違いに気遣う必要がないのもいい点である。 

『カニノタテバイ』を越えると右にトラバースして、下りルートとなる『カニノヨコバイ』への取付と合流する。 ここまでくれば難路も終わり、ゴロゴロした岩屑の小峰を越えて一投足で標高2998m(現在は2999mとの事)の鋭い“剱”の上に立てる。


剱岳山頂にて

小さな祠のある頂上からは、360°の大展望が望めるであろう。 立山の山なみ、そして雲海の合間より突き出す槍ヶ岳。 これが目に入ると、北アルプスの高峰を極めた実感がひしひしと湧いてくる。
また、眺めて美しい富士山も見渡せる事だろう。 思う存分“剱”の先からの絶景を見渡したなら、往路を下山しよう。 

下りは先程も紹介した通り、下山専用のルート『カニノヨコバイ』を下っていく。 この『カニノヨコバイ』の傾斜はそれ程でもないが、1ヶ所足元が見え辛いオーバーハングの一枚岩を下る所がある。
ここは慎重に通過願いたい。 この難所を越えて長い鉄ハシゴを下っていくと、《平蔵ノコル避難小屋》の前に下り着く。 後は、ペンキ印の通りに忠実に下っていこう。

・・《剱山荘》から剱岳までは、往復5時間を見ておけばいいだろう。 もちろん、山頂での滞在時間は含まれないが。 今夜がテント泊ならば、《剱山荘》前にデポった荷物を回収して《剱沢》のキャンプ場へ向かおう。 《剱沢》までは20分程の距離である。


夕暮れ染まる鹿島槍と五竜岳

また、今晩の宿を《剱山荘》と決めて、そのまま“チェックイン”するのもいいだろう。
明日は、剱岳が最も美しく望めるとっておきのコースを御紹介しよう。


剱沢から望む剱本峰・朝景

   続く《2日目》以降は、次回の『第203回 仙人池』にて・・

   ※ 詳細は、メインサイトより『剱岳』を御覧下さい。

















関連記事
スポンサーサイト



コメント






管理者にだけ表示を許可