2015-09-15 (Tue)✎
『日本百景』 晩夏 第199回 紀勢国境の秘めたる名瀑群 〔三重県・和歌山県〕
南紀・・、それも紀勢国境周辺の地域はシンカンセンの通る大阪・名古屋から遠く離れ、空港もなく、大都市圏からは訪れるのに半日以上の時間を要するアプローチの遠さと知名度から、なかなかに訪れる事が適わない地域だ。
その遠き地・南紀地方を訪れる者が移動の足を止めて立ち寄るのは、『本州最南端』という「~№1」の称号を持つ《潮岬》や世界遺産に登録されて注目される《熊野古道》関連、そして我が国随一の名瀑として名高い《那智ノ滝》位であろう。
今回取り上げるのは
潮岬でも
『世界遺産』の
熊野古道でもなく
だが、我が国でトップクラスの降水量を示すこの南紀地方には、秘めたる名瀑がいくつもの白布を掛けているのだ。 それは、リアス式海岸を形成するような急峻な崖か海岸際まで迫り、この地勢に注ぐ大量の降水量が急峻な崖を削りとって秘めたる瀑布を創りだしたのである。
南紀地域を代表する景観の
この滝でもない
今回はガイド紹介などが充実している《熊野古道》や《那智ノ滝》などの『有名処』ではなく、この密かに白布を掛ける秘めたる名瀑群にスポットを当ててみようと思う。
まずは、地方随一の大河・熊野川に隣接する紀宝町の滝から訪ねよう。 ここは三重県ではあるが、熊野川を隔てて隣接する南紀地方最大の街・新宮市があり、この紀宝町は和歌山県であるが新宮市のベットタウンとして町づくりがされている・・との事である。
落水の勢い凄ましく
車を止めた駐車場まで
飛沫が飛んできた
飛雪ノ滝 ひせつのたき 落差 30m 三重県・紀宝町
アプローチ 国道42号を紀勢県境の手前で右折、熊野川を挟んで国道168号線と並走する
三重県道740号線を約10km北上すると浅利キャンプ場があり、その園内に
滝がある。
我が国では、屋久島についで降雨量の多い三重県の熊野・尾鷲地域。 そして、海岸近くまで山地が迫り、平野部の細い熊野郷。 こうなると、自然と急峻な沢や滝が多くなるのも頷けよう。 本来なら名の通った有名な滝となり得るボリュームを示しながらも、アプローチが難く「知られざる滝」として地図にも載らない滝・・。 その一つがこの飛雪ノ滝である。
《浅里キャンプ場》の駐車場に車を止めて車から出ると、「雨か!?」と錯覚する感覚に見舞われるだろう。 それは飛沫の水滴が駐車場にまで飛んでくるボリューム豊かな滝・飛雪ノ滝の仕業である。
この飛沫を“飛ぶ雪”と表現したのだろうか。 とにかく、簡単に滝見のできる水量豊かな名瀑である。
しばし、滝の織り成す飛雪の涼味を楽しもう。
次に熊野市に編入された旧 紀和町の滝を訪ねよう。 紀和町の滝といえば、『日本の滝100選』にも指定された《布引ノ滝》が挙げられる。 もちろんこの滝も素晴らしいが、それより私を虜にしたのはその前衛となる2つの滝である。 この2つの滝を含めて、《布引ノ滝》周辺の滝を御披露しよう。
布引ノ滝 ぬのびきのたき 落差 53m 三重県・紀宝町
着いたと同時に雨が降り出し
満足のいく写真が撮れなかった 残念
松山滝 まつやまたき 落差 20m 布引ノ滝の約3km下方にある滝
周囲の樹々に夏から秋への
移り変わりが感じ取られて
主瀑よりも虜となった
荒滝 あらたき 落差 30m 布引ノ滝の約1km下方にある滝
雨模様の空であったが
この時偶然に雲間から光が滝に差しかかる
:
それを流し撮って
この滝めぐりの『一番星』に
アプローチ 国道42号を紀勢県境の手前で右折、三重県道780号線に入り、『布引ノ滝』の
案内板に従って6キロほど北上すると滝に至る。
布引ノ滝が『日本の滝100選』に指定されているだけあって、滝への案内板は数多く設置されているが、県道780号線は奥地の紀和町方向へ入れば入る程に狭隘道路となるので通行には注意が必要だ。
訪れた時は小雨模様ですぐに引き上げた為に、残念ながら主瀑の布引ノ滝を魅惑的に撮れなかったのである。 それゆえに、到着時に小雨が上っていた荒滝と松山滝は情感の入ったモノが撮れたので、主瀑の布引ノ滝よりこの前衛の滝2瀑の方が印象深いのである。
降り出したスコールに慌てて撮ったから
少し手ブレたよ
桑ノ木滝 くわのきたき 落差 25m 和歌山県・新宮市
アプローチ 国道168号線を熊野川に沿って6kmほど北上し、『桑ノ木滝』の案内板に従って
和歌山県道230号線に入ると、4キロほど奥に滝遊歩道入口がある。
遊歩道入口より先は車の進入は不可能で、車は県道脇に止める。
桑ノ木滝も『日本の滝100選』の選定滝である。 100名滝であるので、遊歩道は整備されている。
だが、この地が名に轟かす豪雨地帯で、毎年のように大雨による被害で遊歩道が破損しているようだ。
従って、コース後半は滑りやすい常時濡れた岩の上を歩いたり、その上に設けられた心許ない仮設の桟橋などの通過があるので、転倒や滑落に注意したい。
滝は、『100名滝』にしては落差が足りないが、水量は名に馳せる豪雨地帯の紀伊半島の水を集めて落とす瀑布で、落水の様は豪勢である。 なお、駐車場からは徒歩15~20分位であろうか。
ただ、いつも雨の心配をせねばならぬ所で、私が訪れた時も到着5分くらい前からスコールのような雨が降り出して、御覧のような今イチなモノしか撮れなかったのが悔やまれる。
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もちろん、今回掲載した滝が全てではない。 まだまだ秘めたる滝はいくつもある。 あまりにも数が多過ぎて、全ての秘めたる滝を訪ね歩くのが困難なだけなのである。 いや・・、困難と言うより無理なのかもしれない。
この他にも様々な滝を掲載しております。 宜しければどうぞ。
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No title * by 風来梨
robaさん、こんばんは。
最も心が和むモノ・・、それが自然が創造し情景ですね。
神など信じちゃいないですけど、神と例えるならこの自然の想像力こそ神だと思いますね。
最も心が和むモノ・・、それが自然が創造し情景ですね。
神など信じちゃいないですけど、神と例えるならこの自然の想像力こそ神だと思いますね。
松山滝以降の写真が特に好きです。
細~い絹糸をなびかせたような繊細さ。
白でも透明でもなく、
(。´-ω・)ン? 白でも透明でもあり、でしょうか、
勢いはあるのに粗暴さはない、
新緑でも紅葉でも雪でも映える風景ですよね(๑→ܫ←)ノ