風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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日本の滝を訪ねて 第130回  嫗仙ノ滝

日本の滝を訪ねて  第130回  嫗仙ノ滝  〔群馬県〕


特異な様相と繊細な落水模様
相反する魅力が融合する嫗仙ノ滝

  嫗仙ノ滝 おうせんのたき  落差 40m  群馬県・草津町
まるでザゼンソウのような枇杷型の滝で、落水は繊細な絹糸を魅せている。 
滝の岩壁は温泉成分を含んだ落水に染められて褐色を魅せて、繊細な白い絹糸の落水と相俟って神秘的な様相を魅せている。
滝を形成する岩肌には、まるで生物でもあるかのような穴があり、それが更に特異な様相を示している。
なお、流水は岩肌を赤く浸食する程の強烈な酸性の温泉成分を含んでおり、滝や沢の水を飲む事はできない。




嫗仙ノ滝 位置図

        草津温泉街(草津町市街)の東方約3kmに位置する
  アプローチ 車で国道292号線を『道の駅・六合』方向に約5分程で滝入口
        滝入口より急降下の舗装道を2.5km下ると、行き止まり状の駐車場に着く

   行程表  駐車場から、急傾斜の遊歩道を約1km(徒歩約20分下りきると嫗仙ノ滝前に降り着く
        なお、道は整備されているが、帰りは急登のキツい登り返しとなる


特異な色形と繊細な落水模様は
様々な撮り方を誘い出す

《嫗仙ノ滝》は『日本の滝100選』には選出されていないが、その特異な滝壁と繊細な絹糸を幾筋も従える落水の妙は「百選に選ばれても何ら遜色ない滝だ」と言えるだろう。 だが、近くに『百名滝』でも人気の1~2を争う《常布ノ滝》がある事で『割食った』のか、選出は見送られたようである。
この事でも「秀逸なるモノを更に選りすぐって100を選ぶ」という行為は恐れ多い事なのだと思うのである。

『日本の滝100選』は、多くの人の参加による投票=多くの人の意思表示によって決められているので、妻の作品を盗作し、その妻を捨てて別の女に走るなど人間として軽蔑すべき輩がゴリ押しした『百名山』と違って概ね納得できるのだが。

そういう私も【名峰百選】なる「秀逸なるモノを更に選りすぐって100を選ぶ」という恐れ多い事をしているが、これは私の意思として「私以外の者には当てはまらなぬ、私個人の意思によるモノだ」と思っているので、この恐れ多い事も『個人事』として辛うじて赦されると思うのだ。

この話題に入り込むといつも大幅に脱線するので、この話はこれまでにして、この『特異な容姿』と『優雅な姿』という相反する2つの魅力を併せ抱く名瀑を訪ねてみよう。


嫗仙ノ滝 探勝図
草津観光協会のサイトにある地図より

さて、この《嫗仙ノ滝》は、我が国で最も有名な温泉(何でも江戸時代の『温泉番付』なるもので、当時最高位の『東大関』を獲得した・・との事である←江戸時代は横綱は名誉格で設置されてなかったのですね)の草津温泉があるので、これだけの魅惑的な容姿を抱きながら草津温泉街より少し離れるこの滝は観光地・草津ではマイナー中のマイナーのようである。


嫗仙ノ滝までは
観光客レベルではかなりキツめです

温泉街を駐車する場所を求めて彷徨う行楽客の車で渋滞する温泉街を抜け出すと、車の流れは良くなってくる。 車の流れが良くなって程なく『嫗仙ノ滝 2.8km→』とある木の道標型の案内板が現れ(小さいので見逃しやすい)、この案内板の指示する方向に向かって車を差し向ける。 この滝への道は舗装はされているもののかなりの急下降で、運転には注意が必要だ。

標高差にして150m程降りた崖の中腹位に、行き止まり状の転回スペースのような駐車場があり、ここに車を止めて出発だ。 駐車場に立つ案内板には、「距離は1km程と短いが、急で激しい下り坂を下ります」云々の事が記されてあって、探勝口から少し入った所にあるあづま屋には、「この先は急な山道ですので、補助用に御自由にお使いください」との案内札が掛けられたカゴにストックが置かれてあり、地元の観光サポータークラブも認める急坂のようだ。

このあずま屋で直下降ルートとやや山肌を巻く迂回路と分かれていて、帰り(上り)に少し楽な迂回路(迂回路には「帰りにご利用ください、少し楽です」との掛札がぶら下げてあった)を行くのが順路指定となっているようだ。 でも、ここだけの話だが、迂回路の方が長いのでややシンドイと思われるのは気のせい?

さて、道は急下降ではあるものの、転落防止用のロープが弛まぬようにしっかりと張られてあり、それを持って難なく上下する事ができる。 もしかして、今回の滝めぐりも佳境に入り、体力が着いてきたのたのかな?

でも、ほんの十年ほど前の『以前』には、『奇跡の体力』を欲しいままにしてたのよ。
今は「筋肉と信じていたモノがメタボ脂肪に化学変化したダラしない身体」(いや、以前は更にダラしない体型だったけど)を見つめては、涙で枕を濡らす今日この頃だけど。 
書いていると何故か涙が溢れてくるので、もうこの話題は止すとしようか。


崖状の高台から
嫗仙ノ滝をファーストショット

あずま屋からジグザクを切った急下降を10分ばかり降りていくと、崖上の丘状の広場に出る。
この丘の上からは、初めて《嫗仙ノ滝》の姿を眺める事ができる。 最初にこの滝を目にした感想は、「予想以上に大きな落差の滝だな」という事である。

この丘の位置は、この大きな落差の滝の20~30m上である。 という事は、「滝壺に降りるにはあと70~80mの標高差を下らねばならない」という事である。 この丘の上からは、丘の山肌に巻きつくようなルートで下っていき、滝前に展望所があると思いきや、ダイレクトに滝沢の畔に降り着く。


温泉成分で河床は赤茶けている

沢の流水が迫る畔は、足の踏み場が僅か数十cmほど。 そして、この先も『樹齢300年のカツラの巨木』があると言う事で、ルートは続くのだが橋や渡しの桟橋などは一切ない。 この様相は今までの「急坂下降の補助に」とストックの用意までする、致せり尽くせりな観光地仕様から完全に抜け出ていて、その違和感に少し戸惑ったよ。

その川の畔から前を見ると、異様な色の岩肌に三筋の白糸を掛ける不気味さと繊細さの相反する感覚を兼ね備えた《嫗仙ノ滝》が姿を魅せていた。 でも、先程述べた通り「川べりに立ったつま先の数センチ先は沢」という、濡れる事必定な場面であった。


特異な様相と落水の妙に虜となって

その畔の前の樹に巻きつけられた指示版には、「滝水は飲めません」という事と「危険なので滝つぼには行かないようにして下さい」との注意書きが・・。 だが、この足場数十cmの滑りやすい沢縁で、滑らぬようにつま先に力を入れつつ身体を乗り出して滝を望む方が危険と思うのだが。

今日は登山靴を履いていて、多少沢に使っても靴底が厚く防水性もあるので、そのまま沢を渡って沢の中洲へ。 ここで、スローシャッターを重視して、白糸の妙を撮る。 しかし、これだけでは、こんな不可解な形と不気味な色を示しながら優雅で繊細な姿を魅せるこの滝の撮影に満足できる訳がない。

・・と言う事で、看板の注意書きに背いて、自己責任で滝つぼへ。 滝つぼへは、僅か『数十cm』から『十数cm』と更に狭くなった川縁を伝ってゆく。 まぁ、登山靴と、いい天気が続いて沢の流水が少なかったから・・か、思ったより安易に滝つぼの前に辿り着く。

滝つぼに立つと、あの優雅な姿からは予想だにできない位の飛沫が吹き付ける。 滝の奇妙な岩肌がオーバーハング状となって、常時飛沫が空中を舞っているようだ。 この飛沫を体感して、そして白糸と飛沫の妙を目にして更に写欲が湧いて、夢中でシャッターを切りまくったよ。 それでは、その夢中になった数々を拙い写真ではあるが、梳くとごろうじろ。


滝壺前に立ち
滝飛沫を浴びながら見上げると


その不可思議な艶やかさに
とにかくシャッターを切りたくなった


七色の岩と落水の妙が神秘的な
繊細と不気味が相揃う不可思議な滝

滝つぼから戻ったが、案内板の『カツラの大木』は沢をダイレクトに渡る必要があるみたいで、濡れるの避けるべくパスするとしよう。 帰りは、行きの急下降がそのまま登り返しとなるのである。
だが、先に記した通り、ロープを手繰りつつゆくとそれほどキツく感じる事はなかった。
もしかして、『奇跡の体力』一部復活!? ・・な訳ねえよな。


ひと回り小さな
コナラの大木で御勘弁を・・

そして、例の迂回路も通ってみたが、先に『感想』として記した通り、距離が長く暑くなった真昼の日射も相俟って、「直下降ルートよりシンドイ」と思えたのであるが。 でも、ストックがいる程にキツい登り返しでもなかったような・・。 まぁ、1km程の短い距離だしね。 滝見の後は、駐車場代は少し高いが『天下の名湯』の草津温泉で汗を流すとするか。

  ※ 詳しくは、『撮影旅行記』の『関東・甲信越の滝めぐり<1>』より『嫗仙ノ滝』を御覧下さい。













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