風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第191回  飯豊・大日岳

『日本百景』 夏  第191回  飯豊・大日岳  〔新潟県〕


盛夏のおりなすシャドーに
凛々しき姿を魅せる
飯豊連峰最高峰・大日岳

   飯豊連峰 いいでれんぽう (磐梯朝日国立公園)
福島・山形・新潟の三県にまたがる飯豊連峰は、主峰・飯豊山 2105メートル を中心に、最高峰の大日岳 2128メートル ・花の御西岳 2013メートル ・東斜面に幾筋もの雪量豊富な雪渓を持つ北股岳 2025メートル など、標高2000m前後の個性的な峰が並んでいる。 これらの山々は、豪雪地帯にそびえているので雪食が目立ち、特に主稜線東斜面は多量の積雪によって大いに削られて急峻な地形となっている。 

一方、季節風によって雪が飛ばされて積雪が少ない西斜面は、あまり雪食の影響を受けず穏やかで、主稜線の山々は両面非対称の山容を示している。 この飯豊連峰も、東北の名峰と同じくアプローチが長い熟達者向きであるが、雪渓やお花畑を多く抱き、バリエーションルートも充実して登山心をくすぐられる山域だ。




飯豊山主稜線縦走ルート 行程図

   行程表            駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR小国駅よりバス(0:55)→飯豊山荘(2:20)→石転ビ沢出合
     (3:20)→十文字鞍部(0:35)→北股岳(0:25)→十文字鞍部
《2日目》 十文字鞍部(0:50)→烏帽子岳(2:00)→御西小屋(1:25)→大日岳
     (1:10)→御西小屋(1:10)→飯豊山(1:35)→切合小屋
《3日目》 切合小屋(1:10)→三国岳(1:30)→横峰小屋跡(1:20)→御沢小屋
     (0:30)→川入・飯豊鉱泉よりバス(0:50)→山都駅

   ※ 前回の『第190回 石転ビ沢雪渓』からの続きです。


盟主・飯豊山が凛々しく

  《2日目》 大日岳・飯豊山荘を踏んで切合小屋へ
朝、小屋の前に立つと、朝日に染まって輝く飯豊連峰の山なみが望まれる。 
この素晴らしき光景を眺めながら、飯豊山に向かって歩いていこう。 《梅花皮避難小屋》を出ると、いきなりハイマツ帯の急登となる。 これをジグザグに登ると、梅花皮岳 2000メートル の頂上だ。 小屋からここまで約30分だ。 朝、日の出のちょっと前に出発すると、この頂の上で御来光を眺める事ができるだろう。 


かぎろいの空と
梅花皮岳のシルエット

頂の上から眺める朝の飯豊連峰は、また格別だ。 残雪をまとって美しく輝く北股岳や門内岳 1887メートル と、それに続く雲海に裾を落とす様は特筆すべき素晴らしい情景である。


昨日這い上がってきた
『石転ビ雪渓』を見下ろして

また、《石転ビ沢大雪渓》は朝日に染まり、“錦に輝く帯”となって谷に一直線に落ちている。
昨日、苦労してこの雪渓を登ってきただけに、この情景への感慨はひとしおである。 
いつまでもこの素晴らしき情景を眺めていたいが、今日はやや強行軍の行程なので先を急ごう。 


山背が頂きを乗り越えて

梅花皮岳よりガレ地帯を下り、ハイマツ帯を下った分だけ登り返すと烏帽子岳 2018メートル だ。 
この頂も、梅花皮岳と同様に素晴らしき眺めだ。 特に、大日岳と飯豊山の大パノラマが圧巻であろう。 烏帽子岳の下りは雪食の激しい東斜面を下るので、かなりの急下降となる。 だが、雪の豊富な所は花も多い・・という通説の通り、“七色のお花畑”がこの斜面を飾る。 

飯豊連峰稜線に咲く花 その1

               朝日に映える      イイデウサギギク
                    ヨツバシオガマ

ハクサンチドリ・ハクサンフウロの紅、ミヤマキンバイ・キンポウゲの黄色、ハクサンイチゲ・アオノツガザクラの白、ニッコウキスゲのオレンジ、イワギキョウ・ミヤマオダマキの紫や紺・・などなど、大地を美しく染め上げるのである。 このお花畑の急斜面を下っていくと、向きをやや左に変えて、飯豊山に連なる細い稜線上をたどっていく。 

飯豊連峰稜線に咲く花 その2

                ハクサンイチゲ        キジムシロ


                 ハクサンフウロ      タカネスミレ

稜線上は万年雪の残雪を方々に乗せていて、縦走コースもこの雪田をいくつも乗り越えていく。 
雪田は細い尾根筋にも乗っかかり、やや歩き辛い。 雪田が途切れる毎に小さな湿地帯となり、《亮平ノ池》・《御手洗池》といった小さな池が現れて、その周りを囲むようにお花畑が広がる。


稜線上には池塘が点在する

《御手洗池》を越えると、道が二重になる珍しい二重山稜となり、この二重の道が飯豊山に向かって連なっている。 この辺りは所々お花畑となっていて、ヨツバシオガマ・シラネアオイ・イワイチョウなどの湿性植物が多く咲いている。 

池塘の畔に咲く花たち

               イワイチョウ          イブキトラノオ

この二重の道を歩いていくと、二重の道の溝が広がってきて、砂礫と草原の広場へと変わっていく。 
ここは、《天狗ノ庭》と呼ばれるいい休憩場所だ。 ここまで約3時間歩いてきたのだから、ひと息いれよう。 

《天狗ノ庭》を過ぎると、再び中央に溝を持つ二重の道となり、今度は辺りが笹ヤブが覆う歩き辛い道となる。 笹ヤブに囲まれた天狗岳と呼ばれる小ピークを越えてしばらく歩くと、笹ヤブ漕ぎから解放されて視界が開け、《御西小屋》と“御鏡雪”と呼ばれる大きな雪田が見えてくる。

一度、この雪田へ下って雪田の縁を巻くように稜線上に登り返すと、《御西小屋》前の広場に出る。
《御西小屋》の広場前からは、大日岳が姿も凛々しくそびえ立っているのが望めるだろう。
さぁ、あの凛々しき雄峰に登ってみよう。 


さぁ・・凛々しき姿の雄峰へ

・・大日岳へは一度ハイマツ帯を下って、砂礫地帯に咲くお花畑を見ながら歩いていく。
この途中に、《文平ノ池》と呼ばれる池塘がある。 この辺りが最も花が多いようだ。
イイデリンドウ・イワギキョウ・オヤマノエンドウ・キンバイソウなどが、ハイマツの間からひょっこり顔をのぞかせる。 このお花畑を抜けると大日岳の裾に取り付いて、そのまま急登でつめていく。 


これを目にしてカメラを
出さないのはウソでしょう
イイデリンドウ

斜面は、シナノキンバイやハクサンイチゲのお花畑で、これを見ながら登ると、キツくはあるが割りとあっさりと頂上へ登り着くだろう。 大日岳 2128メートル は飯豊連峰の最高峰で、晴れていればその眺めは雄大だ。 東北の名峰の全てを見渡す事ができるだろう。 
残念ながら、私が登った時はガスに巻かれて眺望がなかったが・・。

晴れていれば・・ きっと

大きな御鏡雪と飯豊山


豊富な残雪を輝かす
稜線の山なみ

大日岳から先は、西大日岳 2092メートル を経て薬師岳まで踏跡が続いている。 時間に余裕があれば、行ってみるのもいいだろう。 飯豊の山の奥深さを味わうことができる事と思う。 大日岳から《御西小屋》までは、往路を戻る。 途中で振り返る大日岳と牛首山の姿は素晴らしく、チャンスがあればカメラに収めたいものである。 


夏を謳歌しながら歩こう

《御西小屋》からは、砂礫帯と草原状のお花畑の中を進んでいく。 道は広々とした丘の上を通り、飯豊連峰の稜線上で最も広潤な気分を味わえる所である。 なかでも、御西岳 2013メートル のピークを過ぎて、その東斜面に広がるお花畑は壮観だ。 《御西小屋》から、1時間とちょっとで飯豊山 2105メートル の頂上に着く。

飯豊山頂上にて

よくぞここまできたなぁ


雲海を従え堂々たる
山容を魅せる大日岳


今まで歩いてきた道程を振り返る

この一等三角点が立つ山頂からハイマツ帯を15分程歩くと、鳥居の立つ《飯豊山山頂神社》の裏手に出る。 表側の神社に周り込むと、登山客でごった返している。 さしずめ、“人だかり”といった感じだ。 どうやら、飯豊山の事実上の山頂はこの神社のようである。

ゆったり泊まるなら、人だかりとなるこの頂上神社より先の《切合小屋》で泊まるのがいいだろう。
だが、『人だかり』という窮屈な思いをしても『頂上での朝』を迎えたいのなら、ここは我慢して頂上で泊まる事にしよう。 なお、頂上神社にもテント場はあるが、トイレが神社宿坊の前まで300mも離れているのが難点である。 

飯豊山の夕景 ごろうじろ

飯豊本山の頂に
落日が落ちようとして


大日岳も暮色に染まって


あれに見えるは
会津磐梯山ではないか


燧ケ岳や至仏山などの名峰も
ほのかに染まり


言葉にできない感動を今




この素晴らしい情景を
魅せてくれたお山に感謝
 
  《3日目》 切合小屋より飯豊鉱泉へ下山
下山口の《飯豊鉱泉》より山都駅までのバスは夏休み期間のみの運行で、しかもたった2便しかない。
この事を念頭に置いて下山しよう。 今日は『山の夕景と朝景を撮る』べく《本山小屋》で留まってしまった(あくまでも、これが理由である)ので、下山の距離が増えた事もあって早発をしなければならないのである。

朝をパンでトップで便所に入れて・・と、出発の支度が済んだのが4:30。 これから日の出までのひとときは、カメラ片手にじっくりと素晴らしい情景に魅せられる事が出来るのである。 
この情景も、やはり言葉で表現する事は叶わない。 これも、掲載写真をごろうじろ。


昨日に引き続き
言葉にできない感動を味わって

さて、朝の情景をじっくりと楽しんだなら、カメラ片手に下山を始めよう。 飯豊・大日岳の巨大な山体を眺めながら、少しづつ飯豊本山より離れていく。 雲海の方に目をやると、月山や蔵王・吾妻連峰などの東北の雄峰がシルエットを魅せていた。


朝の贅沢な風景を見て


振り返ると盟主・大日岳が
ほのかに染まっていた

やがて、飯豊・大日岳がオレンジ色に染まって、いい雰囲気をかもし出す。 こうなると、ザックの上げ下ろしに忙しくなってしまうが、まぁ写真撮りの性なので仕方がないであろう。


朝のテント場
トイレまでの距離
ちょっと酷いと思いません?

《飯豊山山頂神社》から先は、神社神道にまつわる石仏や岩屋が数多くあり、それぞれに様々な伝説が伝えられている。 《御前坂》・《御秘所》・《姥権》などがそうである。 飯豊山頂から約200m下ってマツムシソウが満開の鞍部に下りると、再び《草履塚》と呼ばれる丘に登り返す。 

このピークから望む残雪をまとった飯豊山は、どっしりと重量感があって見応えがある。 
《草履塚》から30分も下ると、飯豊連峰でも最も整っている《切合小屋》に着く。 この小屋は食事の提供が可能という事で、軽装備の登山客でいつも賑わっている。


名花・イイデリンドウ

《切合小屋》からは、種蒔山 1791メートル の山頂をトラバースしていく。 山腹を斜めに登って、種蒔山頂上付近で進路を取る。 ここから《七森》と呼ばれる小ピークを七つ越えていくが、ピークと呼べる程の顕著な突起はほとんどなく、「2~3回緩い登り返しがあったかな」という感覚で通過できる。
しかし最後の下りは、一枚岩の鎖場となっているので気をつけよう。 

《七森》を越えると少し登り返して、《三国小屋》の建つ三国岳 1644メートル に着く。 
晴れていれば、正面に大日岳が整然とそびえ立っているのが望めるであろう。 三国岳からは《剣ヶ峰》と呼ばれる岩峰を下っていくのだが、これがなかなか切りたった尖峰群で、鎖片手に慎重に下っていかねばならない。


こんなにキツかったっけ?
《剣ヶ峰》の鎖場下り

この鎖場を乗りきると、樹林帯に突入する。 ここからは、笹ヤブやイバラ漕ぎはあるわ・・、下はぬかるんでグチャグチャだわ・・と歩き辛い道となる。 しかも、延々と長くこの状況が続くのである。 
この歩きにくい道は、横峰の小屋跡まで続く。 この辺りで、下から登ってくる集団とすれ違う事だろう。 

登ってくる人の大半は、この辺りでヘバッている。 このコースの登りは、ここまでが標高差650mの強烈な“イッキ登り”なのである。 当然、下山でこのコースを使うと、これから“嫌”というほどの急下降が待ち受けているのである。 


この頂より延々13.5km
6:45の長い道のりであった

約1時間半、予告通り“嫌”というほどの下りを経て足がガクガクとなったなら、下山口に建つ《御沢小屋》の前に下り着く。 御沢小屋から砂利道を30分程歩くと、《飯豊鉱泉》の湧く《川入》の民宿集落に着く。 下山し終えたら、是非とも山の疲れを山のいで湯で癒したいものである。 
バスの時間が合わなければ、ここで一泊するのもいいだろう。

   ※ 詳しくは、メインサイトのより『飯豊連峰<1>』をどうぞ。







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No title * by たけし
飯豊連峰は体力のある者のみ許される難易度の高い山域。
山小屋は避難小屋で距離が長いので幕営を与儀される!とのこと、私は未踏峰です。
風梨梨さんの体力と技術に・・・・ナイス!

No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。

飯豊連峰は、どこから登ってもキツいですね。
私は川入・石転ビ雪渓・梶川尾と登りましたが、一番キツいのが梶川尾根でしたね。 天気も風雨だったし。 一番楽なのは、雪渓ですね。 最も雪渓登った時は、「奇跡の体力」の最盛期でしたけど。

自分でいうのも何ですが、真しく「奇跡」な体力でした。 今は登る毎に、クダを巻いてます。

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No title

飯豊連峰は体力のある者のみ許される難易度の高い山域。
山小屋は避難小屋で距離が長いので幕営を与儀される!とのこと、私は未踏峰です。
風梨梨さんの体力と技術に・・・・ナイス!
2015-07-28 * たけし [ 編集 ]

No title

たけしさん、こんばんは。

飯豊連峰は、どこから登ってもキツいですね。
私は川入・石転ビ雪渓・梶川尾と登りましたが、一番キツいのが梶川尾根でしたね。 天気も風雨だったし。 一番楽なのは、雪渓ですね。 最も雪渓登った時は、「奇跡の体力」の最盛期でしたけど。

自分でいうのも何ですが、真しく「奇跡」な体力でした。 今は登る毎に、クダを巻いてます。
2015-07-29 * 風来梨 [ 編集 ]