風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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日本の滝を訪ねて 第127回  早戸大滝

日本の滝を訪ねて  第127回  早戸大滝  〔神奈川県〕


早戸大滝
オチャメ満開で
「まぼろしの滝」となりかけたよ

  早戸大滝 はやとおおたき  落差 50m  神奈川県・相模原市
丹沢大山国定公園内、神奈川県相模原市緑区、早戸川源流部の大滝沢にある落差約50mの滝である。
日本の滝百選に選ばれている事から名前はよく知られているが、一方で幻の大滝と呼ばれるように滝までの行程が大変な為この滝を訪れる人は稀である。




伝道入口にあった案内板に
今回のあらましを記入してみた

   アプローチ   国道413号線(通称・道志みち)より神奈川県道64号線に入り、
           案内板に従って『早戸川国際マス釣場』に向かう。
           『早戸川国際マス釣場』より更に奥に延びる舗装された早戸川林道であるが、
           ゲートの設置された《魚止橋》まで車の進入が可能。
             県道にある『早戸川国際マス釣場』の案内看板より車で約40分。

    行程表    魚止橋より早戸川林道(0:20)→伝道入口(0:20)→造林小屋
           (0:20)→早戸川河床(0:40)→大滝沢合流点
           (0:15)→早戸大滝のハズ〔滝つぼまで下降可能〕
            ※ 本谷沢と大滝沢の合流点は、左手(右岸)の滝のある大滝沢へ進む事
              間違って本谷沢へ直進すると、筆者のように死にかけます
            早戸大滝
(1:20)→造林小屋(0:15)→伝道入口(0:15)→魚止橋


オチャメの後に着いた大滝は
一番日差しの当たりが良い
15:30だったよ

冒頭の行程表でも匂わせた通り、この早戸大滝ではルートを間違えて『オチャメ』満開の沢遡行となってしまったのである。 まぁ、この滝訪問はアプローチからして宮ケ瀬ダムの方へ車を走らせるなど道に迷い、十二分に『遭難フラグ』を立てていたのであるが。
 
道を間違えて宮ケ瀬ダムから戻ってくると、偶然!?視界に『早戸川フィッシング・国際マス釣場』の見落とすのが困難な位の大看板が現れて、それに従って車を進めていく。 看板の表示通りに約6kmほど林道を入ると、思いっきり釣りのイベント会場と化した『早戸川の国際マス釣場』が現れる。
でも、この滝見の帰りで、このマス釣り場のマスを誘き寄せる夜間光が煌々と照らされているのを目にするとは思わなかったよ。

この『早戸川の国際マス釣場』を過ぎると早戸川林道はやや道幅が狭くなり、道も更にクネクネ道となる。 これを約7km程つめると、砂防ダムの魚止堰のある《魚止橋》である。 
舗装はここまで続いており、橋を渡ると車の転回スペースがあって、その先はゲートで車の進入を阻んでいる。

なお、ただの林道終点の為に駐車場はなく、林道脇のスペースに寄せて駐車する以外にはなさそうだ。
従って、遅く到着すると、車を駐車する場所が《魚止橋》より遠く離れてしまうハメとなるのだ。 
ちなみにワテの車の駐車した場所は、橋から300m離れた地点だった。 でも、戻った時にあれ程駐車していた車が全くなく、我がマイカーがポツネンと置き去られている光景を目にするとは夢にも思わなかったよ。


今回の沢行きの詳細図

《魚止橋》からは、踏跡が砂防ダムの方にあったので釣られてそれを登ってゆき、またもや『遭難フラグ』を一本追加してしまったよ。 この砂防ダムの上は、大きな石の転がる大河原で遡行は困難であった・・っていうか、ネットで仕入れた『伝道』っぽい道は全く見当たらなかったのである。

・・で、そのまま引き返し、ゲートを越えて荒れた林道を歩いていく。 この林道は20分程で道が途切れ、道が途切れた所に早戸大滝と早戸川遡行ルートを絵で示した案内板があった。 案内板には渡り橋の絵が描かれていたが、その上に手書きで〇で囲んで『橋はない』と書添えられていたよ。 どうやら、ここが《伝道》の入口のようである。

《伝道》に入ると、杣道跡の山道を急登で登っていく。 急登で沢を隔てる起伏の上に立つと程なく造林小屋跡の廃屋の前に出る。 確か・・、帰りにこの造林小屋戻り着いた時刻は、通常では「有り得ない」日の入り30分前だったよな。

ここから山肌に沿って下っていき、やがてはロープを使って崖を下って早戸川の川の畔に出る。
もちろん、あの看板の〇囲いの添え書きの如く「橋はない」。 川の畔で、登山靴はザックに仕舞って渡渉靴に履き替る。 さて、ファースト沢渡渉だ。

始めの内は水量も多く、膝位までの渡渉だった。 でも他の滝見者は登山靴でそのまま渡っていたようだ。 「靴がズブ濡れになって不快ではないのだろうか?」と余計なお世話を思ったタワケ(筆者)は、渡渉靴への履き替えで時間を食った為に他の滝見者から離れて、この先で『オチャメ』な目に遭う『遭難フラグ』をまた一本立てていたのである。


このヘツリの通過は
空中を飛び移る必要が
あってちょっと嫌

沢にはいっさいの桟橋はなく、何度も沢の渡渉を強いられる。 そして、函状に沢の両岸が迫ったヘツリに差しかかる。 このヘツリがかなり厄介で、レベル的には『百名滝』で最も困難とされる秋田の《茶釜ノ滝》のヘツリの上を行く難度である。 要は、タルんだロープを持って飛び移らねば足が届かない所があったって事である。 ヘツリ岩の足場の形状からは、復路より往路の方が厳しかったような。
これを越えると、倒木と転石でかなり荒れた沢模様となる。

沢を渡り、倒木を跨ぎ、転石を乗り越えながらゆくと、『運命のX地点』を軽く通り過ぎて直進してしまったよ。 この『運命のX地点』とは、上記の『行程表』で※印で記載した「間違ってはいけない地点」である事はお解りだと思う。


間違え始めは
まだ何とか登れる沢滝レベルだった

直進すると、沢は倒木と転石で更に荒れてきた。 そして、元から少なかったが、目標を示す『道標リボン』も見当たらなくなってきた。 それは当然である。 ルートを外して間違った沢を遡っているのだから、人が通らないから指標もなく、沢も自然そのままなので荒れ果ててくるのは当たり前なのである。


それが徐々に荒れ沢に
でもこれが間違いだと
気づかないワテって

でも、運悪く、前に戻ってくるオッちゃんが現れて、道が正しいモノだと誤解してしまう。
要するに、このオッちゃんとの遭遇も『遭難フラグ』1本!モノだったのである。 遭遇したオッちゃん曰く、「無理と思って引き揚げてきたが、滝まではアト40分位かかるよ」と、『遭難フラグ』10本分の有難い誤情報を頂いたのである。


無名滝15m・ロープ有
今思えばよく上ったよな
超絶たるオチャメに乾杯!

そして、それを信じた大タワケ(筆者)は「アト40分!」と、必死に荒れ果てて人が通るのも困難と思える本沢筋を遡っていく。 この荒れ沢を40分遡って目に入ってきたのは滝だった。 滝の脇にはゼブラローブが垂れており、「この滝をよじ登れば早戸大滝」と暗示の如く信じ込んだタワケは、よじ登るのが困難なこの15mの滝をよじ登ってしまう。 でも、怖かったよ。 滑り落ちたら、完璧に「さようなら」の状況だったし。


脇にあるロープ
上り時は届かなかったりして

でも、この滝をよじ登っても落差50mの『幻の大滝』の姿は見当たらず、相変わらすの転石と倒木の転がる荒れ沢だった。 「まだ40分経たんのかよ~」と『ブツブツ念じ』しながら行くと、今度は先程の滝よりは傾斜は緩いがロープ無しの段瀑・12mが行く手を遮る。 これを目にして、「これは上ってしまったら下るのが無理」と早戸大滝の滝見を諦めて戻る事にする。


無名滝12m・ロープなし
この上れそうにない滝を前にして
ようやく道が間違ってると気付いたよ

この時、午後1時半。 朝9時に出たので、早戸大滝までの所要時間を軽く3時間半オーバーした上に、先程のオッちゃん以外に誰一人として出くわさなかったのである。 この状況では、認めたくはなかった「ルートを外した事実」を認めるしかないのである。


断念の後
しばし沢を見ながら呆然と佇んだよ

となると後に残るは、行き過ぎた2時間と、あの15mの滝の下降である。 両方とも、『遭難フラグ』から『死亡フラグ』に変わりかねない大ミッションだったりするのである。 それを滝見の断念で打ちひしがれた運動神経が金字塔(垂直跳びで33cm、未だかつて走り巾跳びで3mを越えた事がない、高校2年まで逆上がりができなかった etc・・)のタワケに、「命懸けのミッション」として課せられたのである。


下りはロープが心強かったよ
でも遭難フラグ立ってるし

その『最大ミッション』である15mの滝の下降であるが、何故か上り時より怖くなかった。
なぜなら、ロープの位置が下りに通る岩崖に近い所に垂れていて、常時ロープを握る事ができた為だ。
登り時は、最後のよじ登りの時にロープが届かずに死ぬ思いしたしィ。

そうこうして、滝見断念で打ちひしがれた心で課されたミッションを乗り越えつつ下ってきた3時過ぎ、右手にあるモノがチラっと目に入ってきた。 これが目に入って、沢にコダマする程の大声がでたよ。
その言葉は「ウソやろ~!」である。 チラッと見た右手の山肌に、滝の中ほどが大岩に隠された50mの大瀑布が滔々と白布を掛けているのを。


右手にこの滝が見えた時の
筆者(タワケ)の気持ち・・
解りますか?

これを見て、あの時遭遇したオッちゃんの「滝までアト40分」ってのは、「上に40分上るのではなく、下に40分下った位置に滝がある」って事だったのである。 これを見た時、どっと疲れたよ。
でも夕日前の光を浴びたこの滝を目にした時、疲れよりも「この困難の元を取り返さねば元も子もない!」という下衆な心で一杯となって、この滝へ向かう。

滝へは『道標リボン』がチラホラと花を咲かせ、道も何故か格段に歩き易いように均されていたよ。 
でも、滝の前に隔てた壁のような隆起をゼブラロープと木の根をつかんで懸垂気味によじ登らねばならない。 だが、あの15mの滝に比べたなら『お子ちゃま』のレベルであったが・・。


大滝の前に立ちはばかる
土手をよじ登る
でも無名滝に比べたら屁でもない

この滝前の壁の上に這い上がると、夕日前の黄金色の光を浴びた《早戸大滝》が滔々と白布を掛けていた。 この滝前の壁のような隆起の上は足場が悪く写真が撮りつらかったが、最も輝く時間帯だったし時間も遅く誰一人といなかったので、最後にして大満足である。


今回はこの展望台からの
大滝でヨシとしようか

この壁の隆起から滝下へロープ伝いに下る踏跡があったが、「もう、ここで十分」である。 
「上部が望めない滝下に下りても仕方ない」と思い、この最高の光を浴びた滝をカメラに収めて戻る・・っていうか、もう時刻は4時前で「戻らねばヤバイ」時間帯なのである。


オチャメったおかげで
最も日当たりのいい時間帯に着いたよ


(自ら招いた)苦難の末に
たどり着いた大滝は
感慨深い眺めだった

帰りは今までの本谷沢と違って、明らかに均された踏跡がチラホラとあり、歩き易かった。 
そして、あのちょっと厄介なヘツリも、往路よりヘツリの足場がいい位置にあって通過は楽だった。 
だが、ここでまたまた『遭難フラグ』が立ったのである。 それは、ここでもルートに迷い高巻きコースに入り込んで、これを登ってしまったのである。

もう本谷沢の下りでテンパってしまって、帰りのルートがどうだったか忘れてしまったのである。
これで約30分のロスをしてしまって(ルートが判らなくなって、函状の突破も試みた位にテンパっていた)、正規の《伝道》に戻る最後の沢渡渉地点を渡ったのは5:20頃。 もう、完全無欠の夕暮れである。 日の入りよりも早く暗くなる渓谷の中では、そろそろに周囲が陰る時間帯だ。

でも、ここまでくれば・・、いや視認できる明るい内にあの造林小屋まで戻ってしまえば最悪でもあの造林小屋でビバークすればいいし、《伝道》の入口まで戻って林道に出たなら、真っ暗闇でも這って戻る事は可能だな・・と思い、取り敢えずホッとひと息着く。


真剣に泊まるハメになりかけたよ
この廃小屋に・・

・・で、その造林小屋に着いたのが5時40分頃で、《魚止橋》の駐車してある車に戻ったのが午後6時18分と日の入り10分前であった。


午後6時18分・・日没10分前の魚止橋
あれだけあった路上駐車は
ワテの車のみとなっていたよ

後は早急に沢支度を解いて車を走らせて林道を戻るが、行きの時に車が並んでいた林道の道脇には当然の如く我が車がポツネンとあって、林道脇は選り取り見取りで『止め放題』だったよ。 そして、安全地帯である宮ケ瀬ダム湖に戻り着いたのは19時前の暗闇となった時間帯だったしィ。 

お陰て風呂には入れずメシも購入できずに、この沢行きに持ち込んだが食わなかったパンを夕食にするハメとなったよ。 この滝見でやや酷い靴ズレももらって、次の滝はおとなし目の行程にシフトダウンするしかないだろうね。 でも、あの最も輝く時間帯に望んだ《早戸大滝》の美しさは絶対に忘れない。←で、秋にもう一度・・と目論んでる筆者(タワケ)であった。

  ※ 詳しくは、『撮影旅行記』の『関東・甲信越の滝めぐり<2>』より『早戸大滝』を御覧下さい。










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No title * by 越後「写・楽」
何時もありがとうございます

訪問日が書かれていませんが
大変難儀をされたようで・・・
私が訪ねたのは2013年10月12日でしたが
注意したのは早い日没の時間でした
ブログを拝見しながら広い河原をだらだらと溯上していった
忍耐の記憶を思い出しました

No title * by 風来梨
越後「写・楽」さん、こんにちは。
こちらこそ、見て頂いて有難うございます。

この記事は『メインページの過去記事の転載』を中心にする当ブログには珍しく、今年のゴールデンウイークの時の記事で、数少ない最新系の探訪記です。

偏に大滝沢を見落とさねば・・、大滝沢側に目指す滝があると把握していれば、こんな目に遭わなくて済んだんですよね~。 下調べを全くせずに行ってしまう弊害が、いつも『オチャメ』として現れてしまいますね。 困ったもんだ・・。

でも、「『オチャメ』があった方が笑える記事を書けるな・・」と、能天気満開な私です。

No title * by たけし
毎回スリル満点の山行記録、固唾を飲んでしまいました。
私には技術がなく、しかもこの状況に陥ったら間違いなく遭難フラグ、そして死亡フラグになってたでしょう。

ナイス!

No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。

いゃ~、今回のオチャメ・・、楽しんで頂けましたでしょうか? 最近は山や沢に入ると、オチャメを必ずやらかします。

帰って記事を書く分にはいいのですけど、なぜか涙がボロリ・・です(笑)

コメント






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No title

何時もありがとうございます

訪問日が書かれていませんが
大変難儀をされたようで・・・
私が訪ねたのは2013年10月12日でしたが
注意したのは早い日没の時間でした
ブログを拝見しながら広い河原をだらだらと溯上していった
忍耐の記憶を思い出しました
2015-07-16 * 越後「写・楽」 [ 編集 ]

No title

越後「写・楽」さん、こんにちは。
こちらこそ、見て頂いて有難うございます。

この記事は『メインページの過去記事の転載』を中心にする当ブログには珍しく、今年のゴールデンウイークの時の記事で、数少ない最新系の探訪記です。

偏に大滝沢を見落とさねば・・、大滝沢側に目指す滝があると把握していれば、こんな目に遭わなくて済んだんですよね~。 下調べを全くせずに行ってしまう弊害が、いつも『オチャメ』として現れてしまいますね。 困ったもんだ・・。

でも、「『オチャメ』があった方が笑える記事を書けるな・・」と、能天気満開な私です。
2015-07-16 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

毎回スリル満点の山行記録、固唾を飲んでしまいました。
私には技術がなく、しかもこの状況に陥ったら間違いなく遭難フラグ、そして死亡フラグになってたでしょう。

ナイス!
2015-07-19 * たけし [ 編集 ]

No title

たけしさん、こんばんは。

いゃ~、今回のオチャメ・・、楽しんで頂けましたでしょうか? 最近は山や沢に入ると、オチャメを必ずやらかします。

帰って記事を書く分にはいいのですけど、なぜか涙がボロリ・・です(笑)
2015-07-19 * 風来梨 [ 編集 ]