風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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私の訪ねた路線 第12回  能登線(のと鉄道・珠洲線) その2

『私の訪ねた路線』 第12回  能登線(のと鉄道・珠洲線) 〔石川県〕 その2
 

小さな漁港を前景に
 
  《撮影記と奥能登めぐり・後編》
『私の訪ねた路線』という事で、形上は能登線とのと鉄道線の紹介の項目となっているが、後編は能登半島の景勝地をめぐる旅紀行となってしまって鉄道の話題は全く出てきません。 悪しからず。
 
    行程表            駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR和倉温泉駅より車(2:30)→珠洲市街・見附島〔軍艦島〕など散策(1:10)→禄剛崎
     (0:15)→木ノ浦海岸
《2日目》 木ノ浦海岸(0:35)→曽々木海岸(0:20)→白米の千枚田(0:35)→輪島市街
     (1:10)→JR和倉温泉駅
  ※ 鉄道の記事が中途半端に満載の《撮影記と奥能登めぐり・前編》は、コチラをクリック。
 

引き波さえも
渦巻き砕け散っていった
 
『奥能登』の最突端・禄剛崎は、防波堤で仕切られた小さな漁港だ。 今まで内海の波一つない穏やかな光景を見てきた目には、猛烈な低気圧により荒れ狂う情景はパラレルワールドに引き込まれたような感覚を覚える。 小さな防波堤に高波が被さり、それを洗い流すが如く白い波の泡を抱き砕け散っていく。 そして、防波堤で羽を休めるカモメが、押し寄せる波を羽ばたきでかわしつつ、じっと周囲の様子を伺っている。 羽を休めるという事も、彼等にとっては戦いなのだろう。
 

押し寄せる波濤に
羽ばたくカモメたち
冬は鳥達にひとときの
休息も与えない
 

最果ての情感を抱かせる
海洋図のモニュメント

岬周辺の海岸・《狼煙海岸》の情景を楽しんだなら、お目当ての《禄剛崎》へ向かおう。 《狼煙海岸》沿いの集落は半島最突端の集落らしく、地形に沿っての曲がり角にこじんまりと固まっている。 まるで、日本海より吹きすさぶ猛烈な波風に皆で抗するが如く。
 
岬の灯台は、半島の突き出た断崖の端に建っている。 駐車場に車を止め、急な坂道を7~8分程登っていくといい。
登るにつれキツい風の抵抗を受けながらやってくると、広い園地に整備された最奥に白亜の灯台と通信塔が立ち並んでいる。 そして、真っ先に目を奪われるのは、灯台前のモニュメントの一角にある標識板であろう。

そこには、『←上海 1598km』、『←釜山 783km』、『東京 302km →』とあった。 そしてその下には、“彼の地の国”であるウラジオストクの標示が示してあった。 『← ウラジオストク 772km』・・。 一つだけあさっての方向を示しているこの標識は、近くて遠き国・・の印象を強く抱かせるものがあった。 そして、この遠き国は、北海道の札幌よりも僅かながら近いのである。 
 

彼の地の国・ウラジオストクに
最果ての旅の思いを馳せる

恐らく、このモニュメントが立てられた頃は、現在よりも遙かに“遠き国”であったのだろう。 その見知らぬ凍土の“遠き国”の旅の想像を、このモニュメントは大きく駆り立ててくれる。 
そして、岬を語る案内板も岬を思う感情が記されていて、これを目にすると人が抱く“岬”の情景が大いに刺激される事だろう。 

さて、モニュメントより一段下った奥の広い突端の丘の中央には、白亜の灯台が西洋の古城の如くそびえ立っている。
城壁を思わせる白いレンガの側壁が、他の者を安易に寄せつけぬ雰囲気を漂わせている。 そうなのだ。 ここは、かつて命がけで職務を全うした灯台守の“戦場”なのだ。 灯台守がいる時代ならば、安易に街の者が来るような所ではなかったのだ。 その“思い”が堅牢を意味する城壁なのだ・・と想像するのは、ワテの勇み足なのだろうか。
 

西洋の古城の城壁を思わせる
禄剛崎灯台

白亜の古城のような灯台の丘は海岸段丘の断崖となって途切れ、その先は波濤渦巻く白波が闊達にアートを描く“海”というキャンパスだった。 そろそろに傾き始める雲間の光とまだ冬から醒めぬ枯木の枝を絡めると、奔放だが美しい情景が演出できる。 だが風は強く、ほんの5分もカメラを構えていると手が寒さで痺れてくる。 
たとえ、厚手の手袋を着込んだ・・としても。
この冬の厳しさが、岬の情景を人の心に“憧憬”として植えつけるのだと思う。
 

奥能登の一日が
暮れようとしていた
 
傾いた日が水平線に陣取る前線の鈍重な雲に隠れてしまったなら、そろそろ岬めぐりより引き上げよう。 岬の周遊を終えたなら、ロジックな雰囲気漂う《狼煙》集落でひと息着くとしよう。 《狼煙》の集落には、レトロ調の喫茶店がある。
岬めぐりで冷えきった体を暖かい飲み物で中から暖めると、より岬の風の強さが思い起こされて感慨が深まる事だろう。

さて、今日はどこに泊ろうか。 余裕のある方なら旅館等を想定することと思う。 
『奥能登』は観光地なので、探さずとも旅館や国民宿舎は見つけられるだろう。 だが、旅館などは断崖の上の“安全な”所に建っていて、荒れ狂う冬の日本海を“俯瞰”という形では堪能できるが、“情景を思う”には今一つ役不足のような眺めなのだ。 まぁ、前面に広がる冬の日本海を見ながら豪華な夕食を取る・・っていうのも、いいシチュエーションなのだが。
 

引き波が
波の花を残して
 
だがこれは、このガイドの本質とは異なる“贅沢”という言葉が出てくるのだ。 同じ“贅沢”をするのでも、情景に魅せられる“贅沢”をしたい。 従って、海辺まで来て岩に砕け散る波を間近で眺めつつ、狭いハコ(車内)の中で一夜を過ごそう・・と思う。 夕食も朝食もかなり貧弱だけれども、夕暮れと夜明けの波濤を魅せられる・・という、このガイド集が求める究極の“贅沢”が味わえるのだ。 本日は、《木ノ浦海岸》の海辺にある駐車場でストップする事にしよう。
 

波が渦巻き
白い帯と化す
 
  《2日目》 奥能登・外浦を眺めつつ帰路へ
狭いハコ(車内)の中で吹きすさぶ冬の海風を一夜耐えたなら、必ず朝の荒々しい情景を真っ先に味わう事ができる。
ここは、昨夜の苦行の“褒美”として、心ゆくまでこの冬の海風がおりなす情景を味わおう。 鈍重な前線の雲間より射す朝日が、ほのかに海をオレンジ色に染めてくれる。
 
そして、寄せる波が砕けて霧散し、白い帯の羽衣をまとったかのような姿を魅せる岩礁群。 風に煽られつつも、今日の餌物に向かって何度も飛びかかるカモメたち。 これらは、全て海辺でなければ目にする事のできないシーンだ。 ここは、思いのゆくままこの“贅沢”を味わおう。
 

岩礁を洗う波が
“花”を残し・・
 
朝の海景を心ゆくまで味わったなら、『奥能登』の《外浦》を眺めつつ帰路に着こう。 輪島へ向かう最中の《鰐崎》や《大崎》でも、荒れ狂う冬の日本海の情景が堪能できる。 訪れたこの日の気圧配置であるが、三陸沖に950ヘクトパスカルという猛烈な低気圧があり、そのお陰で猛烈な冬型の気圧配置だったので、冬でもなかなか見られない情景も目にする事ができた。 その一つが、沖合海上に立つ数本の竜巻である。
 

シケる海原の沖には
竜巻が立っていた
 
また、岩礁に砕け散る波が創る“波の花”や引き波の美しい模様などの素晴らしい情景が次々に現れ、それを目にする毎に撮影をするべく車を止めるので、なかなか前には進めない。 また、内側に目を配っても、日本海沿岸の冬を感じ取る事ができるだろう。 海辺に建つ民家の垣根に施されたスノコの風雪避けも、この地方ならではの風物詩だ。
 

厳しい冬を耐え抜く海辺の集落は
エトランゼの旅心を誘って

《外浦》の海岸線を眺めつつ車を進めていくと、やがて珠洲市街で内陸側に迂回した国道249号線と合流する。
これよりは少し街の雰囲気が漂い始める。 国道に合流してからの最初の観光地は《中田浜》の“揚浜塩田”であるが、今の季節は何もなく広い砂浜が広がるだけなので割愛しよう。 季節としては、やはり夏から秋にかけて・・だろう。
更に輪島へ向かって進むと、《外浦》最大の景勝・《曽々木海岸》である。
 

せっかくの憩いのひとときを
波濤に邪魔されて
 
《曽々木海岸》は『奥能登』でも有数の観光地で、内の陸地側は観光旅館が建ち並び少し無粋だが、冬の海の情景は間違いなく“イチ押し”である。 ジオラマのように迫力いっぱいに視界に迫る波濤。 海辺にある岩礁に寄せて砕け散り、“波の花”と散華する潮騒。 寄波をかわしつつ周囲を伺うカネメの群れ。
 

滝飛沫が上に舞い上がる
別名“逆さ滝”の垂水ノ滝

そして、左の海崖の方向に目を配ると、落差40mはあろうか・・という海岸瀑が白布を掛けている。 この滝は“垂水ノ滝”と呼ばれるのだが、別名の“逆さ滝”が示すが如くかなり珍しい滝なのである。 それは、海崖を駆け上る強い季節風によって煽られて、落ち口付近の飛沫が上に巻き上がる現象が見られる滝なのである。 
 
なかなか思い通りにはこの現象を撮影できなかったが、このシーンを取りあえずはゲットできて良かったと思う。
また、この内陸側には《岩倉寺》や《時国家》(上・下と2つある)という能登の国分寺跡があり、時間が許せば歴史旧跡を訪ねるのもいいだろう。 この《曽々木海岸》を過ぎると市街地の端の色が更に濃くなってきて、ひとまず《外浦》の海岸線めぐりのメインは終わった感じがするだろう。 

後に残るは、撮影地としても有名な《白米の千枚田》であるが、ワテが旅したこの日は残念ながら《曽々木海岸》を出た直後に厚い雪雲の中に入ってしまって吹雪となり、一面真っ白な雪原となって千枚田は訪れるどころか見つける事さえ叶わなかったのである。 《白米の千枚田》は、次回の“宿題”となってしまった。

後は、《輪島の朝市》に寄って、土産物を手にして帰路に着くのもいいだろう。 
ワテの訪れた日に関しては、かなりの降雪でそれどころではなかった事もあり、これも割愛したい。 ワテの旅スタイルは風景に的を絞っているので、『朝市』などのグルメに関してはそちらに詳しいガイド本を参照された方がいいだろう。 残るは、起点のJR和倉温泉までの安全運転だけだ。
 
全てを終えて肩の荷が降りたなら、旅の締めくくりに北陸有数の温泉である和倉温泉で旅の汗を落とすのも一興だろう。
 

波濤が岩礁を飲み込んで

   ※ 詳しくはメインサイトより、『魅惑の鉄道写真集』の『能登線』と『57 奥能登』を御覧下さい。





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