2015-06-22 (Mon)✎
路線の思い出 第105回 三江線 宇都井駅 〔島根県〕
今回も自身で
撮った写真はこれだけ
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度 / 営業係数(’16)
江津~三次 108.1km 46 / 1109
廃止年月日 転換処置
’18/4/1 備北交通・大和観光・邑南町営・石見交通
など区間によって分担
運行本数(’17)
江津~三次 下り2本・上り1本
江津~石見川本 上り1本
江津~浜原 3往復
石見川本~三次 上り1本
浜原~三次 2往復
口羽~三次 1往復
※ 廃止日までの残り2週間は昼間便の浜原~口羽の通し運行を実施した
江津~三次 下り4本・上り3本
江津~石見川本 上り1本
石見川本~三次 上り1本
江津~浜原 1往復
浜原~三次 1往復
宇都井駅(うづいえき)は、島根県邑智郡邑南町宇都井下郷にあったJR西日本・三江線の駅である。
三江線の廃止に伴い、2018年(平成30年)4月1日に廃駅となった。 三次方面に向かって左側に単式1面1線のホームを持つ停留所規格の高架駅で、浜田鉄道部管理の無人駅である。 ホーム及び待合室は地上20mの高さにあり、地上からの高さとしては日本一であった。
しかし、当駅は閑散区間に設置された停留所規格の駅という事で、当然の事ながらエレベーターやエスカレーター等の昇降機設備が設置される事はなく、ホームに上がるには塔のような駅施設の中に設けられた螺旋状の階段を116段上らなければならなかった。 この特異な構造から「天空の駅」と呼ばれ、テレビ番組でも度々取り上げられるなど知名度の高い駅であった。
階段を上りきると駅待合室がある。 待合室は地元住民により定期的に掃除されて綺麗で、ベンチには座布団も置かれている。 自動券売機等の設備はなく、地上部の階段入口脇に男女共用のトイレが設置されている。 2015年の一日平均の乗車人員は1人との事だが、これはほとんど当駅を訪問する鉄道ファンによって稼がれた”1人”との事である。
このような駅構造になった理由は、この場所に駅を建設する事が決定したものの、新線区間が山間をトンネルで直線的に貫くように敷設された事と、当駅周辺の地形が山間に挟まれた狭い谷地形である事から地上に線路を下ろして駅を設置する事が適わず、そのまま高架で線路を渡して駅もその高架上に設置せざるを得なかったからである。
同じ地方の浜田市、下関市王喜地区で『宇津井』という地名が見られるように、当駅の『宇都井』も『宇津井』と同語源と思われる。 なお、『宇津井』とは『内居』の意味で、「山中の懐」の地の事をいう。
2010年から『INAKAイルミ』というイベントが行われ、その際にはLED照明を使ってライトアップされるようになった。 廃止当日もライトアップされ、三次行き最終列車が到着した際には惜別の花火が打ち上げられた。
夏に弱いこのシリースを維持する為、かなり苦戦してるなぁ。 掲載できる手持ち写真がほとんどないよ。 あの頃は駅舎の写真なんか撮らなかったしィ。 今回取り上げる三江線の宇都井駅も、名の知れた特殊な構造の駅であるにも拘わらず、写真の1枚も撮ってなかったりして。
その三江線の宇都井駅であるが、駅ホームにたどり着くのに地上から116段の階段を昇る必要がある特異な構造の橋上駅で、駅降り鉄ならば下車必須の秘境駅である。 何でも、1日に1人いるかいないか・・という地元の利用客の100倍以上という『駅マニア鉄』の為に、わざわざ駅をライトアップしての『イルミネーション・イベント』が行われたりもしているそうだ。
若き日の筆者もこの駅に立ち寄った『駅マニア鉄』系の一人である。 いや・・、筆者の鉄におけるスタイルは「ナンチャッテ」な『○鉄』で、『駅マニア鉄』ではないなぁ。 それは、この駅に降りる時に抱いている思惑の違いから判るのである。 要するに、『秘境駅』に憧れて下車する純粋な『駅鉄』とは全く違うのである。
ぢ・つ・わ・・、この筆者(タワケ)がこのような秘境駅に降りるべくの思惑は、「この駅で泊まる為」なのである。 即ち、純粋に特異な構造の駅や秘境駅に降りる事を目指したのではなく、「今日の宿泊場所探し」という目的上の事なのだ。 そして、「何故に、この駅なのか」というと、『宿泊場所』ならば安眠の邪魔にならぬような人の寄り付かぬ駅→秘境駅というベクトルとなるからである。
要するに、「駅寝目的で降りた駅が、たまたま特異な構造で有名な駅だった」って事である。
全くの無人地帯ではないが
夜に116段を昇ってやってくる
人はまずいないだろう
※ グーグル画像より拝借
でも、この頃は鉄道趣味に『駅降り鉄』というカテゴリーが未だ確立していなかった頃だから、『駅降り鉄』もほとんどいなかったよなぁ。 こんな辺境の駅に降りる事自体が『不可解で怪しげな行動』と黙されていたしィ。 当然、この頃は『秘境駅に降りる』などという事は一般的に認知されておらず、こういう駅で地元利用者以外のエトランゼが降りると、車掌が訝って「降りても何もないよ」などと下車を思い止まらせよう・・とのニュアンスの言葉を発するのである。
更にこの筆者(タワケ)の場合は宿泊目的だから、当然最終列車かそれに近い夜の便となる訳で、尚更に怪しさが増すのである。 だから、駅寝をするべく下車する時は、何か気まずい雰囲気が漂っているのですね。 これは『駅寝』という、周囲から訝られる行為をしている引け目からの被害妄想的な思い込みかもしれないけど。
そして、前述の「周囲から訝られる行為」という認識を心の奥底に抱いているから、人の寄り着く事がない駅=秘境駅となるのである。 だから、「駅寝に適しているか」の調査の為に降りたり立ち寄ったりしたのを含めると、全国の秘境駅と云われる駅の1/3位は降りているね。
右側の長椅子が
カーペット敷きの『神装備』だったよ
しかも座布団の『枕』つき!
※ グーグル画像より拝借
・・で、駅寝の為に降りた宇都井駅であるが、寝床となる待合所環境は『抜群』であった。
広めの長椅子にカーペットが張り付けてあり、真に「駅寝をして下さい」的な状況で、過去の宿泊利用者の宿帳(駅の思い出ノート)もあって退屈しなかったしィ。←駅の思い出ノートは結構面白いよ。
凄く上手い絵師の挿絵が満載してるし。 まぁ、トイレは、地上まで116段駆け下りていかねばならんけど・・。
そして極め付けは、『駅寝した日の運が良かった』事が全てではあるが、山向うで村祭りか何かをやっていたらしく、夜空に花火が打ち上っていたのである。 116段の階段上という高い位置にあるこの駅待合室は、花火見物の『特等席』だった訳で。 シュラフに足を入れて半起きの怠惰な状態で花火を眺める贅沢・・。 たぶん、数ある駅寝の中で最も潤いのある駅寝体験だったであろう。
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No title * by 散位 アナリスト杢兵衛
秘境ですね。
No title * by tom
こんばんは
三江線は昔乗っています。しかし当時はこの駅はあまりメジャーではなかったように思います。そのためこの駅はノーケア・・でした。”うつい”でわなく”うづい”なんですね。勉強になりました。
線路を剥がされないことを祈っています。
三江線は昔乗っています。しかし当時はこの駅はあまりメジャーではなかったように思います。そのためこの駅はノーケア・・でした。”うつい”でわなく”うづい”なんですね。勉強になりました。
線路を剥がされないことを祈っています。
No title * by 風来梨
アナリスト杢兵衛さん、こんばんは。
卑怯というより、純然たる田舎風景ですね。
でも鉄道線は、乗客が訪れるのが稀な秘境となってるようです。
何でも、現在の1日の平均利用者数は「0コンマ」だそうです。
卑怯というより、純然たる田舎風景ですね。
でも鉄道線は、乗客が訪れるのが稀な秘境となってるようです。
何でも、現在の1日の平均利用者数は「0コンマ」だそうです。
No title * by 風来梨
tomさん、こんばんは。
>当時はこの駅はあまりメジャーではなかったように思います。
確か、テレビか何かで取り上げられてから有名になったみたいですね。
地元の方が毎日清掃している・・との事で、待合室は綺麗に保たれてます。 有り難い事ですね。
線路が剥がされるきっかけとして最も危惧されるのが、災害による不通→岩泉線と同じくそのまま廃線って流れですね。
山間部なので、自然災害は起こり得る事ですし。
>当時はこの駅はあまりメジャーではなかったように思います。
確か、テレビか何かで取り上げられてから有名になったみたいですね。
地元の方が毎日清掃している・・との事で、待合室は綺麗に保たれてます。 有り難い事ですね。
線路が剥がされるきっかけとして最も危惧されるのが、災害による不通→岩泉線と同じくそのまま廃線って流れですね。
山間部なので、自然災害は起こり得る事ですし。
No title * by 風来梨
15/6/23 14:00
久々にウンコがきたよ。
この情報、警察に突っ込むとするか。
7/9以降の強制送還が楽しみだな、ウンコパージ中畑。
久々にウンコがきたよ。
この情報、警察に突っ込むとするか。
7/9以降の強制送還が楽しみだな、ウンコパージ中畑。
No title * by 風旅記
おはようございます。
若かりし日を思い出しました。
ステーションビバーク、ステビ、旅の計画段階、最初からそうする予定を立てていました。
記事にされていました鳳凰三山など、山梨県、長野県、埼玉県の山にはよく登ったものです。(この3県ですと甲武信岳の方が適切ですね…)
そして長期の旅に出るときには、行く宛もなく、少しでも長く旅して遠くに行きたい一心で、どこででも一晩を明かしました。
こちらの駅にもいつか行ってみたいと思っていますが、残念ながら私には既にステビで旅を続けるバイタリティーがないといいますか、なけなしの金を使って楽することを身体が覚えてしまったようです。
このベンチで一晩、いけるだろうか…
記事楽しませて頂きました。
今後とも、宜しくお願い致します。
風旅記: http://kazetabiki.blog41.fc2.com/?pc
若かりし日を思い出しました。
ステーションビバーク、ステビ、旅の計画段階、最初からそうする予定を立てていました。
記事にされていました鳳凰三山など、山梨県、長野県、埼玉県の山にはよく登ったものです。(この3県ですと甲武信岳の方が適切ですね…)
そして長期の旅に出るときには、行く宛もなく、少しでも長く旅して遠くに行きたい一心で、どこででも一晩を明かしました。
こちらの駅にもいつか行ってみたいと思っていますが、残念ながら私には既にステビで旅を続けるバイタリティーがないといいますか、なけなしの金を使って楽することを身体が覚えてしまったようです。
このベンチで一晩、いけるだろうか…
記事楽しませて頂きました。
今後とも、宜しくお願い致します。
風旅記: http://kazetabiki.blog41.fc2.com/?pc
No title * by 風来梨
風旅記さん、こんにちは。
>長期の旅に出るときには、行く宛もなく、少しでも長く旅して遠くに行きたい一心で、どこででも一晩を明かしました。
私も放浪の時は、同じ思いを抱いてました。 どの山に登ろう? 地図に滝表記がある・・行ってみよう・・とか。
今は旅にでる時間も制約された事もあり、泊まりはほとんど車の中ですね。
かつて一切使わなかった新幹線を使うようになったのも、歳ですかね(笑)
>長期の旅に出るときには、行く宛もなく、少しでも長く旅して遠くに行きたい一心で、どこででも一晩を明かしました。
私も放浪の時は、同じ思いを抱いてました。 どの山に登ろう? 地図に滝表記がある・・行ってみよう・・とか。
今は旅にでる時間も制約された事もあり、泊まりはほとんど車の中ですね。
かつて一切使わなかった新幹線を使うようになったのも、歳ですかね(笑)