風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第185回  霧多布

『日本百景』 夏  第185回  霧多布  〔北海道〕


海岸段丘の高台から
霧多布湿原の全景を望む

我が国最果ての街・根室を発った1輌の列車は、海岸段丘を少し望むと海辺から離れて原野の方へ入っていく。 そのまま原野の中を進み、牧場がある所に設けられたような小駅毎に停車していく。 


根室本線の末端区間
我が国最後の大平原を望む路線だ

移りゆく原野の中で時が止まったような感覚を覚えたなら、程なく根室市の西の果ての原野・《厚床》に着く。 『オホーツク縦貫鉄道の夢』の跡を追うのなら、ここで北上して別海方面に向かうのだが、今回はちょっと寄り道をしよう。 その寄り道とは、《厚岸》より《霧多布湿原》の散策である。


ミヤマダイコンソウが咲き乱れる大地へ

列車で厚岸までゆき、レンタカーでも利用して霧多布湿原めぐりをしてみよう。
霧多布湿原は海辺に広がる大湿原で、内陸の鉄道路線からかなり離れた所に位置する。
従って、車は必要不可欠だろう。


海霧が幻想的な雰囲気をかもし出す

最初の見どころとしては、最も海に突き出た《チンベノ鼻》にある《アヤメ湿原》の原生花園とそこに放牧された野馬の群れだろう。 海霧で瞑想的となった風景に悠然と草を食む野馬の情景を目にすると、最果てを旅する情感が一層高まる事だろう。


霧が花や実をドレスアップ


高山の花
ハクサンフウロも咲いていた

年中と言っていいほどに海霧に包まれるこの地は、その全ての情景が海霧によって幻想的にドレスアップされる。 その海霧の雫は、植物達の生命の躍動を見る者に伝えてくれる。



名も無き穂草が
精一杯生きる意志を魅せているような

何気ない野の草やネコジャラシが厳しい風土に耐えて精一杯生きている様を目にした時、生きているという事の力強さに感嘆と感動の思いを受ける事だろう。


野馬たちが思い思いにくつろいで

そして、海霧の神秘のベールに包まれた空間では、時間が止まったかのようなのんびりとした情景が広がっている。 自然に遊び、自然に抱かれた野馬達が、この空間に誘われた我々に無言の語りかけをしてくれる。 「何を焦っているのか?」、「何を慌てているのか?」、「何を急いているのか?」と。


野馬達は語りかける
「何を焦っているのか?」
「何を慌てているのか?」
「何を急いているのか?」と・・

海沿いの高台に設けられた道道を伝うと、《火散布沼》から始まる霧多布湿原に出る。 こちらの方は観光地として有名となっているので、途中にコンビニはあるわ、喫茶店はあるわ・・で少し興醒めかもしれない。 だが、ヒオウギアヤメの群落や草原の中を蛇行した川の流れは、この場所でしか見る事のできない貴重な湿原の原風景なのである。


遊歩道沿いに咲くヒオウギアヤメ


名も知らぬ花たちが
短い北の夏を謳歌して

最後に、《霧多布岬》にも立ち寄ってみよう。 海辺の高台とそこに広がる原生花園、そして岬の突端に立つ奇岩群となかなかに魅せてくれる情景が広がっている。


岬の高台を飾るお花畑


ウミネコのツガイかな?
荒波を望みながらしばし羽根休め


岬の奇岩に祈るかのように
シャジンの花が咲いていた

厚岸から海沿いをぐるりと一周めぐってきた疲れは、岬の高台に湧く温泉で癒そう。 この地域に温泉とは不思議に思うかもしれないが、この付近は千島海溝の火山帯に位置するのである。 温泉のクアハウスもあり、疲れたら温泉にかこつけての昼寝休憩も可能である。

霧多布湿原をひと通りめぐったなら、厚岸に戻る。 厚岸より、『オホーツク縦貫鉄道』の起点・厚岸に向かう。 厚岸から糸魚沢にかけての湿原風景も捨て難いものがあるが、駅間距離が長すぎるのでレール使いの“撮り鉄”には不向きだろう。 まぁ、いつか私も狙ってみたい区間ではあるのだが。 

  ※ 今回は、『オホーツク縦貫鉄道の夢』より一部改編の上で掲載しました。
    なお、ブログ版『オホーツク縦貫鉄道の夢』もありますよ。
    是非これは、最初からどうぞ。 書いた筆者が言うのも何ですが結構スペクタクルでっす。







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