2015-05-24 (Sun)✎
日本の滝を訪ねて 第122回 庵座大滝 〔三重県〕
庵座大滝
我が国には地図に載らない
名瀑が多々存在する
庵座大滝 あんざおおたき 落差 60m 三重県・菰野町
滝へのアプローチ 菰野町市街より国道306号線を北上し、朝明渓谷へ向かう
『道の駅・菰野』より車利用(0:30)→朝明ヒュッテ前駐車場
行程表 朝明渓谷より庵座谷に入り約2kmの遡行が必要
鈴鹿山系でも指折りの名瀑といわれる《庵座大滝》を訪ねてみよう。 四日市市街より湯ノ山温泉方向に進むと、『道の駅』・菰野に着く。 ここから、国道306号線に乗り換えて北上する。 目指す《庵座谷》は、《朝明 あさげ 渓谷》を形成する朝明川に注ぐ支谷である。 源は鈴鹿山系の支峰・釈迦ヶ岳 1092メートル である。
この《朝明渓谷》は『県民憩いの森』として指定され、休日ともなるとバーベキューや沢遊びなどを楽しむ行楽客が多く訪れる。 国道306号の道際には《朝明渓谷》の入口を示す大看板が掲げてあるので、渓谷へのアプローチ道は簡単に見つける事ができるであろう。 国道から離れ、約10km程細い道を伝うと、2~300台は駐車可能な大きな駐車場のある《朝明ヒュッテ》前に着く。
滝位置図
駐車料金を払い、トイレや水の補給などの準備を済ませたなら出発だ。 ここから滝のある《庵座谷》をつめていくのであるが、この探勝コースは『釈迦ヶ岳登山道』上のルートとなり軽登山以上の難度となるので、足元及び荷物は登山の体勢が取れる装備で望みたい。 ここまで記すと理解できると思うが、最低でも靴は軽登山靴以上で荷物は両手の自由が利くリュックサックを準備頂きたい。
それでは、ルート解説をしていこう。
駐車場脇にある《朝明ヒュッテ前》のバス停横が釈迦ヶ岳への登山口だ。 登山口を示す標柱は倒れて枯れ草に埋もれかけているので、ひと目では登山道とは判別しにくい。 これを伝っていくと、細い犬走りのような道でヒュッテ裏の民家(たぶん、民宿だろう)の上をかすめて、脆い粘土質の崖上に出る。
駐車場脇にある《朝明ヒュッテ前》のバス停横が釈迦ヶ岳への登山口だ。 登山口を示す標柱は倒れて枯れ草に埋もれかけているので、ひと目では登山道とは判別しにくい。 これを伝っていくと、細い犬走りのような道でヒュッテ裏の民家(たぶん、民宿だろう)の上をかすめて、脆い粘土質の崖上に出る。
ここから下の沢へ下っていくのだが、いきなり軽登山のレベルを越える難関に出くわすのである。
従って、スニーカーなどの薄い靴底だと踏ん張りが利かず、下降はかなりに困難となろう。
転落防止用に仕切られたロープを使って、このルンゼ状に掘れた粘土質の崖を慎重に下りていこう。
転落防止用に仕切られたロープを使って、このルンゼ状に掘れた粘土質の崖を慎重に下りていこう。
ロープを使って30m程下降すると、草に埋もれた鉄のハシゴ階段が現れる。 どうやら、台風などの災害で土砂崩れがあったたみたいである。 この鉄ハシゴの階段も濡れた枯れ草がステップ上を埋めていて滑りやすいので、足元には細心の注意が必要だ。 こんな急なハシゴ階段から滑り落ちると、タダでは済まないのである。
小さな瀬の奥に
神秘的な大瀑布が
この予想外の急下降を額に汗しながら下りきると、《庵座谷》の沢床が現れる。 飛び石伝いに沢を渡り、対岸の土手をよじ登ると、廃業したようなキャンプ場の前に出る。 《朝明ヒュッテ》前の駐車場には多くの車が止まっていたが、このキャンプ場は人の気配がまるでなく、ゴーストタウン然として少々薄気味悪い。 キャンプ場の母屋の前を抜けると簡易舗装の道が奥に延びていて、この入口でようやく《庵座谷》の案内道標を目にする事ができた。
この簡易舗装をつめていくと治水事業の展開を示した沢内遡行図の看板があり、大きく示された堰堤図とは対照的に、《庵座滝》は小さな滝マークが右上に示されただけであった。 この看板のある所より『釈迦ヶ岳登山道』が始まる。 だが、御座所岳山頂直下までロープウェイが通じている現在では、“好き者”以外にわさわざ沢をつめて山へ至るルートを通る者はおらず、少しずつではあるがルートは荒れ始めているようだ。
道標はや道を示すリボンは所々にあるものの、沢を交える渡渉点の架けハシゴなど簡易歩道は皆無で、また手が入らず鬱蒼と茂ってきたブッシュはルートを覆い隠し不明瞭となる。 沢を飛び石伝いに2度程徒渉すると、登山口の遡行図にあった大きな堰堤が見えてくる。
だが、ここからは更にルートが判りづらく(筆者のルートファイン力の未熟のせいもあるが)、また鬱蒼とした樹林帯に囲まれた圧迫感も手伝って、少々先行きに不安を感じる事だろう(筆者はここで“ジバチ”というハチに刺された上に、道を外してエライ苦労をした)。
ここではルート上にある道標リボンが返って紛らわしく、沢方に延びる枝にくくってあるリボンを鵜呑みにすると、筆者のようにルートを外して堰堤脇の土手崖をよじ登らねばならぬ羽目となるのでご注意を。
ここではルート上にある道標リボンが返って紛らわしく、沢方に延びる枝にくくってあるリボンを鵜呑みにすると、筆者のようにルートを外して堰堤脇の土手崖をよじ登らねばならぬ羽目となるのでご注意を。
正しいルートは、この堰堤の左岸を大きく高巻いているようである。 正しい道標リボンは常に前方にあり、“前方のリボンの示す道が正しい・・”と捉えていくと道を外す事はないだろう。 さて、道を外した筆者は堰堤の土手の脇から這い上がって正規のルートと合流したのだが、正規のルートは堰堤を大きく高巻いてそのかなり上をヘツるようにつけられている。
道は前述のようにヘツり道となるので、脆いボコボコとした小岩石が転がる沢崖特有の足元のおぼつかない足場となる。 この『庵座谷・釈迦ヶ岳ルート』は、登山道レベルとしては“中級”と言えるだろう。
従って、日帰りの滝見目的とはいえども、それなりの装備と心構えを持って望んで頂きたい。
ルートは一度沢から離れて小ピークの裏側を巻くので枯れ草が覆う山道然となる(この辺りは『登山道』を示す看板が多くあり心強い)が、『登山口から 2/6』道標を越えたあたりから再び沢が下方に現れてくる。 再びヘツりとなった道を伝っていく(1ヶ所土砂崩れした涸れ沢アリ)と、小さなプラカードで『庵座滝↓』と掲げてある涸れ沢に出る。 『釈迦ヶ岳登山道』は、ここより分かれて更に上へつめていくようである。
ルートは一度沢から離れて小ピークの裏側を巻くので枯れ草が覆う山道然となる(この辺りは『登山道』を示す看板が多くあり心強い)が、『登山口から 2/6』道標を越えたあたりから再び沢が下方に現れてくる。 再びヘツりとなった道を伝っていく(1ヶ所土砂崩れした涸れ沢アリ)と、小さなプラカードで『庵座滝↓』と掲げてある涸れ沢に出る。 『釈迦ヶ岳登山道』は、ここより分かれて更に上へつめていくようである。
土砂崩れ然となった涸れ沢をロープ伝いに沢床まで下る。 沢を渡って少しつめると函状を成してきて、函が形成する前座滝の右岸の岩盤をロープ片手にトラバースで登っていく。 かなり足元が細く、しかも滝飛沫で常時濡れているので大変滑りやすい。 帰路はこの岩盤は下りとなるので、くれぐれも足元には注意されたい。 この最後の難関を越えると、眼前には神秘的なストレートの大瀑布が滔々と白布を掛けているのが見えてくるだろう。
白布を掛ける庵座大滝
この白布こそ、鈴鹿山系きっての名瀑《庵座大滝》である。 滝のそばに近寄ると、まるで雨のような滝飛沫が天から降り注いでくる。 でも、この“天からの落水”は、浴びていてとても気持ちがいい。
軽登山という小さな山行であったが、多少なりとも困難を乗り越えてまで目にしたかったものが今眼前にある・・という“達成感”を得た喜びに浸ろう。
そんな神秘的な滝だった
しばし、この喜びをかみしめたなら、カメラを通じて滝と語り合おう。 色々なアングルを試し、沢の清水で喉を潤し、飛沫を浴びて精気を滝より分けてもらおう。 落差60mはあると思われるこの直瀑は、どこを切り取っても絵になる。
迫力を求めて雄大さを示すのも良し、一条の落水をクローズアップして絹のような繊細さを示すも良し、滝上部の飛沫をズームアップするも良し、そして滝下部の調べに自然の創造したアートを見るも良し・・である。
心ゆくまでこの神秘的にて壮大な瀑布と語り合ったなら、そろそろ帰路に着こう。 帰りも、1時間はかかるだろう。 そして、函状の前座滝の右岸の下りは滑る上に足が逆ステップ気味になるので、十分注意して下って頂きたい(筆者は三脚を持っていた為に左手が塞がれていたので、通過はかなり手こずった)。
下りは往路を戻るので、どこに何があるかが判っているので、多少は気が楽だ。 そして、ルートを外したあの堰堤の高巻きも、帰路で確認できたので良し・・としよう。
とにかく、軽登山とはいえ沢遡行に近い行程なので、最後まで気を引き締めていこう。 帰りは、《湯の山温泉》まで戻って、ひと風呂浴びてから帰るのも悪くない。 また、余力があるなら、このまま関ヶ原(国道306号は関ヶ原へ続いている)の方へ抜けて、『日本の滝百選』の《養老ノ滝》などを目指すのもいいだろう。
車に戻った後は、どこへ向かうとしても安全運転を心掛けて頂きたい。 どんな素晴らしい旅もこの最後の務めを疎かにすると、思い出は消し飛んでしまうのだから。
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