2015-03-10 (Tue)✎
『日本百景』 春 第169回 八ヶ岳・赤岳 〔長野県・山梨県〕
横岳から望む八ヶ岳の主峰・赤岳と
南アルプスの峰々
八ヶ岳 やつがたけ (八ヶ岳中信高原国定公園)
南北に30km・東西に15kmに渡って30座を越える2000m峰を擁する八ヶ岳は、山容が南北で大いに異なり、それぞれに違った魅力を備えている。 南八ヶ岳は主峰・赤岳 2899メートル をはじめ、阿弥陀岳 2806メートル ・横岳 2829メートル ・権現岳 2715メートル などの岩峰を連ねて、稜線は痩せて嶮しくダイナミックな姿を魅せている。
一方、北八ヶ岳は、北横岳 2480メートル を盟主に樹木に覆われたなだらかな山々が続き、山腹には池沼や草原がひっそりと点在し、静かで瞑想的な雰囲気を漂わせている。
山頂部の積雪期ルート
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 茅野市街より車(1:00)→美濃戸(2:50)→赤岳鉱泉(2:00)→硫黄岳
(1:30)→横岳(1:00)→赤岳石室
《2日目》 赤岳石室(0:50)→赤岳(0:50)→赤岳石室(0:05)→地蔵尾根分岐
《2日目》 赤岳石室(0:50)→赤岳(0:50)→赤岳石室(0:05)→地蔵尾根分岐
(2:30)→行者小屋(1:45)→美濃戸より車(1:00)→茅野市街
※ 《1日目》の行程は前回の『第168回 八ヶ岳・横岳』をどうぞ
《2日目》 主峰・赤岳を踏んで下山
夜明けの前の石室
朝、日の出前に起きて小屋の外に出てみよう。 白銀の峰々が朝日に輝き、また佐久の街並みが夜明けを迎えて少しづつ動き始めるのが見えるだろう。
夜明け前の下界の街を眺めて
そして圧巻は、朝日の光に照らされて蜃気楼の如くにじんで見える秩父連山の盟主・金峰山 2599メートル の幻想的な姿だろう。 朝の素晴らしき眺めを見て朝食を平らげたなら、すぐ横にそびえる白銀の峰・赤岳に登ってみよう。
かぎろい色の空に
おぼろげに姿を現す秩父連山
朝日に染まる赤岳
小屋から更に南へ進むと、広がった稜線が徐々に狭まって山の傾斜に沿っての急登となっていく。
しかも、吹きすさぶ風に磨かれてツルツルに凍りついたアイスバーンの急坂である。
最初に訪れた時は
最初の雪山にしてこの雪だった
2度目は雪が少なく
かなり夏道が露出していた
たぶん、夏ならはジグザグを切って登っていく道なのだろうが、積雪期は稜線のほぼ中央を直線的に登っていかねばならないようだ。 前人のつけたトレースが“登路”となるのだ。
登りの途中で阿弥陀岳が
朝日を浴びて輝くのを魅た
振り向くと
秩父や上州の山なみと
富士山の姿が
アイゼンをアイスバーンの雪面に蹴り込みながら、ピッケルを突いて一歩づつ登るので時間がかかる。
夏ならば30分足らずで登れる所も、積雪期だと倍近く時間がかかる。
横岳も無骨な岩甲冑を
まとってそびえ立つ
雪の乗り具合によっては、両側ともスッパリと切れ落ちた氷の斜面となる危険なナイフリッジの岩突起帯を越えて更に登っていくと、《頂上小屋》の建つ山頂の一角に登り着く。
赤岳頂上標と山梨県側の情景
長野県側を望むと
蓼科山がそびえ立つ
山頂の三角点は、ここから50m程か細い稜線を伝った所にある。 八ヶ岳の最高峰・赤岳 2899メートル からの眺めは、独特の魅力を兼ね備えている。
横岳の岩峰群に雪がまとう
一番空に近い窩
赤岳頂上小屋を望む
《大同心・小同心》の岩峰を従えてダイナミックにそびえる横岳、白い帽子を被った富士山、茫洋とした雰囲気に近くて遠き・・を感じさせる秩父の山々、乳房のようにまろやかな隆起を魅せる蓼科山 2530メートル、白銀の山なみを連ねる南アルプスの山々など、素晴らしき眺めが360°の大パノラマで広がる。
八ヶ岳の稜線越に臨む
南ア・甲斐駒ヶ岳
蓼科山が美しい
コニーデの姿を魅せて
そして、夏とは違う吹き荒れる季節風に、より一層感慨深い思いがめぐるだろう。
積雪期のまた違った魅力を十分味わったなら、帰路に着こう。
前に望む稜線は
まだ歩いた事ないなぁ
アイスバーンの下りは、登り以上に危険であるので慎重を期したい。 特に注意したいのは、頂上直下の幅の狭まった岩の突起地帯だ。 岩にアイゼンを引っ掛けて転倒でもしたならば、佐久側・諏訪側を問わず奈落の底を真っ逆さま・・となるからである。 慌てずに、時間をかけてでもゆっくりと足元を確かめながら下っていこう。 従って、行程所要時間は、おおむね割増して設定してある。
八ヶ岳山域で最も遭難が多い
『魔の山』の阿弥陀岳
《赤岳石室》でデポした荷物を回収して、地蔵尾根を下っていこう。 小屋から見下ろせば、下に向けて一直線に落とす様には思わず足が竦んでしまうが、一番の近道でより安全に下れるコースとしてこのルートを選択した。 小屋から横岳方向へ少し戻った所が、《地蔵尾根》の下降地点だ。 分岐には“首なし地蔵”が鎮座しており、ここから真っすぐに下っていく。
ここから200m程行くと方向を90°右方へ進路を変えるのだが、この間が厄介なのだ。 その理由は、諏訪側より巻き上げる風が雪庇を多く生み出してしまうからだ。 これを踏み抜くと、文字通り諏訪側へ真っ逆さまに滑落する事になろう。
右手に90°折れると大きなハング気味の岩を巻いて、岩壁に削られたか細いトレースを伝っていく。
夏ならば鎖付きのガラ場なのであろうが、今は積雪期で鎖はほとんど雪に埋もれて使い物にならない。
夏ならば鎖付きのガラ場なのであろうが、今は積雪期で鎖はほとんど雪に埋もれて使い物にならない。
それどころか、雪に埋もれた鎖にけつまずいたりはしないか・・と、余計に神経を使う。
また、ハシゴも完全に雪に埋まり使い物にならない。 ハシゴでしか下れぬような急傾斜で、雪に埋もれたハシゴを見ながら、その横を雪を蹴り込み下っていかねばならない。 その後も、雪の乗った急傾斜をラッセル気味に下っていったり、鎖をアテにできずにハイマツの枝根にしがみついての下りが続く。
ホッとひと息着けるのは
八ヶ岳の稜線が
パノラマで観れるまでに下ってからだ
これらの苦難から解放されるには、森林限界より下まて下りて樹林帯に突入しなければならない。
従って、この森林限界までの標高差350mの下りに2時間近くかかるだろう。 そして、森林限界から下の標高差250mを下るのに1時間もかからないのだから、そのギャップに驚く。
そびえ立つ八ヶ岳の岩峰に
しばしの別れを・・
樹林帯の中をひたすら下って、最後にジグザグでこれを乗りきると、《行者小屋》の裏手の土手の上に飛び出す。 《行者小屋》前の広場より見上げる《地蔵尾根》の“岩屏風”の壮大さに、思わず息を飲むことであろう。 後は、残雪が所々残る《柳沢》の《南沢》の河原を歩くこと2時間足らずで、砂防ダムの横手から《美濃戸林道》に合流する。 この合流点から《美濃戸山荘》までは、目と鼻の距離である。
《美濃戸山荘》で軽く腹を満たしてから、麓に湧く温泉に向かってマイカーを走らせよう。
マイカー登山のいい所は、下山後の温泉のハシゴができる事であろう。 麓の高原で、極めた山を眺めながらゆったりとした夕時を過すのもいいだろう。
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No title * by 散位 アナリスト杢兵衛
美しいですね。
No title * by 風来梨
アナリスト杢兵衛さん、こんばんは。
雪の山は素晴らしい情景を魅せてくれますね。
でも、そこまで行くのが厳しいです。
雪の山は素晴らしい情景を魅せてくれますね。
でも、そこまで行くのが厳しいです。