2011-03-31 (Thu)✎
名峰百選の山々 第16回 『81 聖岳 ・ 82 上河内岳』
静岡県 赤石山系(南アルプス国立公園) 聖岳 3013m、上河内岳 2803m
コース難度 ★★ 体力度 ★★★★
深く切れ込んだ聖岳北東斜面
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 静岡市街より車(2:30)→畑薙第一ダム(4:40)→椹島
《2日目》 椹島(3:20)→蕨段(2:00)→千枚小屋、千枚岳へは往復1時間20分
《3日目》 千枚小屋(0:45)→千枚岳(1:30)→悪沢岳(1:30)→荒川中岳(0:25)→荒川前岳
(1:10)→荒川小屋
《4日目》 荒川小屋(0:40)→大聖寺平(1:45)→赤石岳(2:00)→百間平
ここから聖岳までは450mの“バカ登り”で、見上げる聖岳の頂の遠さには愕然とすることだろう。
だが、ここまできたなら登りつめるしかない。 東側にそびえる雄大な赤石岳の眺めで気持ちを高めて、イッキに登ってしまおう。
・・見栄えのいい山というのは、たいがい登りがキツいというのはどうやら正論のようである。
朝、大沢岳から眺めた風格漂う聖岳は今、強烈なアップダウンとなって疲れた体に襲い掛かってくる。
取り付いてからは、赤石岳にあったものと同じ性質の赤茶けた大岩をよじ登り、ハイマツ帯の中をくぐり、岩ガレのジャリジャリ道・・の急登“三点セット”で登りつめる。
《1日目》 静岡市街より車(2:30)→畑薙第一ダム(4:40)→椹島
《2日目》 椹島(3:20)→蕨段(2:00)→千枚小屋、千枚岳へは往復1時間20分
《3日目》 千枚小屋(0:45)→千枚岳(1:30)→悪沢岳(1:30)→荒川中岳(0:25)→荒川前岳
(1:10)→荒川小屋
《4日目》 荒川小屋(0:40)→大聖寺平(1:45)→赤石岳(2:00)→百間平
(0:50)→百間洞露営地
《5日目》 百間洞露営地(1:30)→大沢岳(2:00)→兎岳(2:30)→聖岳、奥聖岳へは片道20分
(1:50)→聖平
《6日目》 聖平(2:20)→上河内岳(1:30)→茶臼小屋(1:45)→柿窪沢小屋
《5日目》 百間洞露営地(1:30)→大沢岳(2:00)→兎岳(2:30)→聖岳、奥聖岳へは片道20分
(1:50)→聖平
《6日目》 聖平(2:20)→上河内岳(1:30)→茶臼小屋(1:45)→柿窪沢小屋
(1:00)→ウソッコ沢小屋(1:30)→畑薙大吊橋(0:50)→畑薙第一ダムより車
(2:30)→静岡市街
※ 前回の《5日目》『名峰次選 第15回 大沢岳・中盛丸山・兎岳』からの続き
兎岳の頂上でひと息着いたら縦走路に戻ろう。 ルートは兎岳の西側斜面を下っていくのだが、この西側斜面は先程と打って変わって切り立った岩場の崖下りとなり、疲れの汗と共に“冷や汗”もどっと出る。
下り始めてからすぐに、《兎岳避難小屋》への道を右に分ける。 上から見た避難小屋は、屋根部分の波板に“ウサギ”と書いてあるブロック小屋で、“荒廃”しきり”といった感じだ。 南アルプスの避難小屋は、荒れていて使い物にならないものが多い。
さて、この下りは、聖岳との鞍部までの標高差250mをイッキに下っていく。 下っていく前方には、《聖の大崩壊》がすざましい様相を魅せている。 聖岳との最低鞍部に下り着くと、《聖の大崩壊》を右手に見ながら、キレットの“窓”のように痩せた稜線を伝って聖岳に取り付いていく。
さて、この下りは、聖岳との鞍部までの標高差250mをイッキに下っていく。 下っていく前方には、《聖の大崩壊》がすざましい様相を魅せている。 聖岳との最低鞍部に下り着くと、《聖の大崩壊》を右手に見ながら、キレットの“窓”のように痩せた稜線を伝って聖岳に取り付いていく。
ここから聖岳までは450mの“バカ登り”で、見上げる聖岳の頂の遠さには愕然とすることだろう。
だが、ここまできたなら登りつめるしかない。 東側にそびえる雄大な赤石岳の眺めで気持ちを高めて、イッキに登ってしまおう。
・・見栄えのいい山というのは、たいがい登りがキツいというのはどうやら正論のようである。
朝、大沢岳から眺めた風格漂う聖岳は今、強烈なアップダウンとなって疲れた体に襲い掛かってくる。
取り付いてからは、赤石岳にあったものと同じ性質の赤茶けた大岩をよじ登り、ハイマツ帯の中をくぐり、岩ガレのジャリジャリ道・・の急登“三点セット”で登りつめる。
聖岳の頂上でしばし昼寝でもして多少体力が回復したなら、奥聖岳 2982メートル まで行ってみるといい。 片道20分で、より赤石岳が迫力を増してそびえ立つ姿を目にする事ができる。 また、《百間洞山ノ家》も手に取るように見渡せて、距離的にはあまり離れていない事を実感できるであろう。
『愛の六連発』の“元”を取り返すべく雄大な眺めを満喫したなら、下りにかかろう。 聖岳からは、今日の宿泊地・《聖平》までの標高差780mに及ぶ“バカ下り”が待っている。 この聖岳は、おそらく最も登頂するのに苦労する3000m峰であろう。 赤石岳方面からだと、今日に紹介した『愛の六連発』に乗り越えねばならないし、《畑薙ダム》や《便ヶ島》だと《聖平》に登り着くのにひと苦労し、なおかつ780mの“バカ登り”が待ち受けているのだ。
『愛の六連発』の“元”を取り返すべく雄大な眺めを満喫したなら、下りにかかろう。 聖岳からは、今日の宿泊地・《聖平》までの標高差780mに及ぶ“バカ下り”が待っている。 この聖岳は、おそらく最も登頂するのに苦労する3000m峰であろう。 赤石岳方面からだと、今日に紹介した『愛の六連発』に乗り越えねばならないし、《畑薙ダム》や《便ヶ島》だと《聖平》に登り着くのにひと苦労し、なおかつ780mの“バカ登り”が待ち受けているのだ。
さて、その“バカ下り”であるが、いきなり滑りやすい砂利坂をジグザグに切って下っていく。
やがて樹林帯の中に突入して悔しい程にズンズン下っていくと、小屋の建つ《聖平》に下り着くのだが、これがなかなか着かない。 普通に下っても砂利坂を下りきるのに1時間以上、樹林帯を越えるのに1時間半はかかる。 これを『愛の六連発』で疲れきった体でこなさねばならないのだ。
しかし、キツい行程は今日だけではない。 明日も続くのだ。 ダラダラ下って、ケガでもしたら取り返しがつかない。 もうひとふん張り、気を引き締めていこう。 苦労して下り着いた《聖平》は、清らかな沢が流れる絶好のキャンプ地だ。 今日は、早めに休んで明日に備えよう。
薊畑のコルより望む
富士山の朝景
《6日目》 上河内岳を踏んで畑薙ダムへ
今日の行程は、『お花畑』の地名を持つ名峰・上河内岳を経て、イッキに《畑薙ダム》まで下りきる“体力勝負”の長丁場だ。 歩行時間も約9時間と、かなり長い。 従って、《聖平》は夜明けと同時に出発したいものだ。
今日の行程は、『お花畑』の地名を持つ名峰・上河内岳を経て、イッキに《畑薙ダム》まで下りきる“体力勝負”の長丁場だ。 歩行時間も約9時間と、かなり長い。 従って、《聖平》は夜明けと同時に出発したいものだ。
湧き立つ水蒸気が
朝の光に染まる
《聖平》を出るとすぐに深い樹林帯の中に入り、木の根を踏みしめての急登となる。 この急登でひと汗、ふた汗とかくと、樹林帯を抜け出して聖岳の展望の利く丘の上に出る。 晴れていたなら爽やかな朝の空の下、樹林帯の林を前景に聖岳の勇姿を望む事ができるだろう。
この丘から再び樹林帯の中に分け入り、小さい上下をこなして小さな鞍部に出る。 この鞍部を境にシラベ林からダケカンバ、やがてハイマツ帯へと変わっていく。 上を覆っていた樹木が背丈の低いハイマツに変わると、視界がパッと開けて聖岳を背に仰ぎながらの爽快な稜線歩きとなる。
上河内岳の崩壊地
この稜線を緩やかに登りつめると上河内岳の前衛峰・南岳 2702メートル の頂上に出るが、途中に1ヶ所右手に大きく崩れ落ちたガレの縁を通るので注意が必要だ。 この大きな崩壊地はかなりの高度感があり、それを見ながらトラバース気味に登っていくので多少の恐怖感を味わうはずだ。 登りきった南岳からは、真正面に美しくそびえ立つ聖岳を望めるだろう。
聖岳よさらば
上河内岳・南岳のコルより
南岳は両面非対称の山容のようで、この頂上からは草原の丘を下るかのように緩やかに下っていく。
天然の石畳みが敷きつめられた二重山陵の窪みまでくると緩やかな下りは終わり、上河内岳の肩に向けての登り返しとなる。 徐々に傾斜を増し、最後はお花畑の斜面をジグザグ登りで乗りきると、二重山陵の一方の頂点である上河内岳の肩に出る。
天然の石畳みが敷きつめられた二重山陵の窪みまでくると緩やかな下りは終わり、上河内岳の肩に向けての登り返しとなる。 徐々に傾斜を増し、最後はお花畑の斜面をジグザグ登りで乗りきると、二重山陵の一方の頂点である上河内岳の肩に出る。
上河内岳山頂にて
ここから砂礫帯を登ること10分で、南アルプスの中でも“シブい”魅力を持つ名峰・上河内岳 2803メートル の頂上だ。 頂上からの展望はいうまでもなく雄大で、南アルプス南部の奥深き魅力を余すことなく魅せてくれる。 聖岳・光岳・笊ヶ岳など、美しい山なみを心ゆくまで眺めたなら先に進もう。
上河内岳山頂からの眺め
上河内岳からの下りは、この山の“シブい”魅力をたっぷりと味わう事ができるだろう。 肩に戻ったなら、南に下っていこう。 急過ぎず、なだらか過ぎずの傾斜を下っていくと、辺り一帯が砂礫地のお花畑の中に突入する。
朝露は花落ちたチングルマを
“芸術”に変える
イワブクロ・イワギキョウ・ハクサンイチゲ・キンバイソウなどが咲く中を雷鳥が戯れ、野鳥がさえずる別天地の中を歩いていくと、伏し尖った小岩峰地帯に出る。 岩と岩が重なってできたトンネル『竹内門』をくぐり抜け、岩ガレ帯を二重山陵の窪地まで下っていこう。 花が所狭しと咲き乱れるこの窪地こそ、国土地理院が定めた“地名”『お花畑』である。
“地名”お花畑より望む上河内岳
花期になるとその名の通り、素晴らしい花々の饗宴を魅せてくれる。 また、天然記念物・『亀甲状土』も、お花畑の南側に“土の花”を咲かせている。 振り返ると、お花畑の草原を前景に二重山陵を走らせた上河内岳の凛々しき姿を望めることだろう。 お花畑の中を突っ切ると崩れやすい砂礫帯の稜線に戻って、緩やかにアップダウンを繰り返すと茶臼岳の鞍部に出る。
ここは分岐となっていて、この分岐は下山すべく左の《茶臼小屋》に向かって進路を取る。
なお、直進すると、南アルプス最南の名峰・光岳への縦走路だ。 分岐から10分も下ると、《茶臼小屋》の建つ段状の丘に出る。 ここからは、1500mにも及ぶ“タダ下り”を下っていく。
ここは分岐となっていて、この分岐は下山すべく左の《茶臼小屋》に向かって進路を取る。
なお、直進すると、南アルプス最南の名峰・光岳への縦走路だ。 分岐から10分も下ると、《茶臼小屋》の建つ段状の丘に出る。 ここからは、1500mにも及ぶ“タダ下り”を下っていく。
ダケカンバの林の中をジグザグを切って下っていくと、『水場』の表示のある岩清水の水場に出る。
この水場は日照り続きだと涸れてしまうのであてにはならないが、位置的にはちょうど《柿窪沢小屋》までとの中間にあり、位置の目安としては使える。
チシマギキョウ
この辺りから、樹林帯の植生もダケカンバから針葉樹林に変わり、光の届かない薄暗い中をジグザグに下っていく。 飽きる程にジグザグ下りをこなすと、涼しげな沢音が聞えてくる。 この音が徐々に大きくなって、沢が視界に入ってくると《柿窪沢小屋》も近い。
このまま沢まで下っていくと、沢の畔に建つ《柿窪沢小屋》に着く。 この小屋は’91年に新築された真新しい小屋で、泊り心地も良さそうだ。 《畑薙ダム》から登ってくるとしたなら、ここら辺りまでが初日の行程となろう。
さて、下りはまだまだ続く。 水量豊富な《柿窪沢》を鉄の吊橋で渡り《柿窪峠》を越えると、再びアカマツの樹林帯の中のジグザグ下りとなる。 下を俯瞰すると情け容赦のないジグザグ下りが続いてウンザリするが、足元はアカマツの落葉がソフトクッションとなっていて、思ったより楽に下っていける。
さて、下りはまだまだ続く。 水量豊富な《柿窪沢》を鉄の吊橋で渡り《柿窪峠》を越えると、再びアカマツの樹林帯の中のジグザグ下りとなる。 下を俯瞰すると情け容赦のないジグザグ下りが続いてウンザリするが、足元はアカマツの落葉がソフトクッションとなっていて、思ったより楽に下っていける。
“これでもか!”との下りを1時間も続けると、ようやくジグザグは途切れてハシゴ伝いの急下降となる。
急なハシゴを4~5ヶ所下ると、森の中に囲まれた《ウソッコ沢小屋》の前に出る。 ここからは、“南アルプス名物”・木の吊橋や丸太を伝いながら沢に沿って下っていく。 途中に、《ヤレヤレ峠》なる登り返しがあるので留意しておこう。 ゴール間際の約150mの登り返しは、その名の通り“ヤレヤレ”である。
1500mの標高差を下ってきて、なおかつ《大井川東俣林道》が視界に入り、“もうすぐだ”と気が急く中で・・である。 地勢には逆らえぬとはいえ、これは虚脱感に襲われても止むを得ないだろう。
《ヤレヤレ峠》の上に立つと、《畑薙大吊橋》が見えるだろう。 見えてきても大きく山肌を巻く為に、なかなか着かないのだ。 その為だろうか、《畑薙大吊橋》を渡る時はとても感慨深い。
万感の思いを込めて
畑薙大吊橋を渡ろう
後は、《大井川東俣林道》を3km程歩くと、《畑薙第一ダム》のダムサイトに着く。 下山したなら、まずは温泉に行こう。 3km下に無料の温泉『赤石温泉』があるので、利用するといい。
山のいで湯で山の疲れを洗い流しながら、相風呂の方々と山の思い出を語り合うのもまた楽し・・である。
南アルプスの名峰を望む朝
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