2014-11-02 (Sun)✎
『日本百景』 秋 第142回 後立山連峰 晩秋 〔長野県・富山県・新潟県〕
あれだけ賑わった白馬岳頂上も
シーズンオフはひっそりと
後立山連峰北部回遊コース 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR白馬駅よりバス(0:30)→猿倉(0:55)→白馬尻(1:40)→葱平
(2:00)→白馬山荘(0:15)→白馬岳(0:25)→白馬岳キャンプ場
《2日目》 白馬岳キャンプ場(0:40)→白馬岳(0:30)→三国境(2:00)→雪倉岳避難小屋
(0:50)→雪倉岳(1:30)→小桜ヶ原(0:30)→白馬水平道分岐(1:45)→朝日平
《3日目》 朝日平(1:00)→白馬朝日岳(0:30)→千代ノ吹上(1:40)→五輪ノ森
《2日目》 白馬岳キャンプ場(0:40)→白馬岳(0:30)→三国境(2:00)→雪倉岳避難小屋
(0:50)→雪倉岳(1:30)→小桜ヶ原(0:30)→白馬水平道分岐(1:45)→朝日平
《3日目》 朝日平(1:00)→白馬朝日岳(0:30)→千代ノ吹上(1:40)→五輪ノ森
(0:40)→花園三角点(1:20)→白高地沢徒渉点(1:30)→兵馬ノ平
(0:50)→蓮華温泉よりタクシー(0:40)→JR平岩駅
白馬大雪渓を登る
夏の写真よりの使い回しでっす
《1日目》 白馬大雪渓から白馬岳へ
本日の行程の白馬大雪渓の登高は何度となく通っているので、過去記事に委ねるとして割愛する事にしたい。 ただ違う所は、今回はシーズンオフで小屋が営業を終える頃に訪れたという事である。
本日の行程の白馬大雪渓の登高は何度となく通っているので、過去記事に委ねるとして割愛する事にしたい。 ただ違う所は、今回はシーズンオフで小屋が営業を終える頃に訪れたという事である。
白馬岳頂上より
果てしなく続く山なみ
だが、賑わいが消えるだけでこうも違うものなのか・・と、ギャップからの戸惑いさえ感じる登りであった。 昼過ぎには《白馬岳キャンプ場》に着くだろうから、昼寝でもしてあの瞬間を心待ちに待とう。
もうすぐ落日
雲海がバックライト気味に輝き出した
白馬岳より
クライマックス直前の情景
雲海もほのかにそまり
剱も染まり始める
そう、あの叙情的な夕景時だ。 今日は、あの素晴らしい夕景色を“我一人”だけで、とびっきり贅沢に味わおうと思う。 そして、その時がきたなら、カメラと防寒着を持って山頂へいこう。
後は、その時を心より堪能すればいい。
本日“我一人”だけの夕景
太陽は1日の終わりを惜しむかのように
叙情的な光を別れ際に放ってくれる
叙情的な光を別れ際に放ってくれる
夕日に染まる白馬三山の背後に
後立山の名峰群が
後立山の名峰群が
ポツンとたたずむ道標
叙情あふれる1シーンだ
落日の後
染まる空と剱
掲載写真であの時の感動を少しでも伝える事ができたなら、この企画をやって良かったと思えるのである。 いつまでも眺めていたい夕日のおりなすショーが終わりを告げたなら、明日の為に早めに就寝しよう。
あの背後にそびえる山まで
今日はかなりのロングランコースだ
今日はかなりのロングランコースだ
《2日目》 白馬岳より後立山連峰北部の峰々へ
今日の行程は距離にして13.5kmとかなりのロングランだ。 しかも、もう小屋が営業を終えて閉鎖している時期にいくので、否応でもテント一式を担がねばならない。 従って、空身よりも20~30%は所要時間を必要とするのである。 これだけ記述すればもうお解かりの事と思うが、早朝出発はこの設定では“義務”となるであろう。 それでは、出発しよう。
今日の行程は距離にして13.5kmとかなりのロングランだ。 しかも、もう小屋が営業を終えて閉鎖している時期にいくので、否応でもテント一式を担がねばならない。 従って、空身よりも20~30%は所要時間を必要とするのである。 これだけ記述すればもうお解かりの事と思うが、早朝出発はこの設定では“義務”となるであろう。 それでは、出発しよう。
この時期、10月の下旬であるが、日の出は6時少し過ぎ位であろう。 もう日の出時には、白馬岳 2932メートル の頂上に立っていたいものである。 日の出に関してだが、前項目でも述べた通り、あの感動的な夕景に比べると今イチの感がある。 だが、朝日を浴びて染まる剱岳の勇姿は朝だけの特権だ。
これを望んで気合を入れて出発しよう。
朝の白馬岳より望む剱の勇姿
白馬岳を越えて越中・越後・信濃の国境となる《三国境》までは、前項目と同じルートを伝う。
朝のバックライトに輝く妙高の山なみを見ながら進んでいこう。 30分程下って、振り返り見る白馬岳の全体が見える頃、《三国境》に着く。 ここには道標があり、右手は『白馬大池』ルートである。
今回の回遊ルートは進路を左に取って、岩屑の斜面を斜めに切るように下り、下に広がる砂礫の稜線を伝っていく。 この下りは緩やかながら250mも下降するので、下りきった地点から白馬岳を振り返ると、もう別の山系の山のように山屏風としてそそり立っている。 この砂礫の下り坂が落ち着くとだたっ広い砂礫の鞍部に出て、前方にそびえる鉢ヶ岳に向かってほぼ水平に進んでいく。 その途中、足元に目立たぬ道標があり道を2つに分ける。
振り返り見る白馬旭岳は
入道のような巨大な岩峰をもたげている
入道のような巨大な岩峰をもたげている
これは『鉱山道』という《蓮華温泉》を短絡するルートとの分岐であるが、この『鉱山道』ルートは人があまり通らぬ為に道が荒れてきて、エスケープルートとしても不適当となってきているようだ。
また、エスケープをするにしても、この場所から遙か遠くの《蓮華温泉》まで伝うのは余り意味がなく、その点でも利用価値は少ないであろう。
ただ、注意して頂きたいのは、この分岐を直進する踏跡に入っていくとこの『鉱山道』となるという事だ。 回遊コースはつづら折り状に左へそれているので、道標を見落とさぬようにして頂きたい。
さて、この分岐を過ぎると左下方に《長池》という氷河湖が見えてくる。 《長池》へは踏跡もついている。 晴れていて視界が良好な時はいいのだが、荒天でガスに巻かれた時などは、変な踏み跡に入り込まぬように注意したい。 道は、前方左にまろやかにそびえる鉢ヶ岳の東側山腹をほぼ水平に巻いていく。
さて、この分岐を過ぎると左下方に《長池》という氷河湖が見えてくる。 《長池》へは踏跡もついている。 晴れていて視界が良好な時はいいのだが、荒天でガスに巻かれた時などは、変な踏み跡に入り込まぬように注意したい。 道は、前方左にまろやかにそびえる鉢ヶ岳の東側山腹をほぼ水平に巻いていく。
鉢ヶ岳の中央辺りから、待望の雪倉岳が迫力を持って迫り出す。 山肌に縦の縞模様を描く、真に美しい山だ。 やがて、この水平トラバースを越えると鉢ヶ岳から延びる稜線に戻り、少し下って《雪倉岳避難小屋》に着く。 ここまでで約3時間少々歩いたので、避難小屋の中に入り休憩をしよう。
小屋は建て替えられたのか真新しく、想像していたものより段違いに立派な小屋だ。 土間に高床式の床もあり、また中にトイレもあるなど十分宿泊に耐え得る造りである。 ただ“玉にキズ”はあるもので、ここには水場がないのである。 利用するなら、水を持って白馬岳を越えねばならない。 小屋内にある落書き帳を見ると、稜線上での天候悪化でよく使われているようだ。
美しい斜め縞模様のライン
を魅せる雪倉岳
十分休憩したなら、これより眼前にそびえる雪倉岳の直登にチャレンジしよう。 小屋の建つ鞍部より頂上までは、約250mの直登だ。 迫り上がって頂上部が見えなくなるなど見た目はかなりキツそうであるが、実際登ってみると素直な傾斜で割りとテンポ良く登っていけるのである。 それでは、雪倉岳の登りを記述してみよう。
まず小屋を出ると、“見上げる頂上”に向かって草付きの坂を同じテンポで登っていく。 脇目も振らずイッキに登っていくと、この“見上げる頂上”に予想以上早く登り着く。 そこで、ある答えが判るだろう。
この山は二重山陵を示していて、先程の頂上は二重山陵の下の頂だと・・。
この稜線からは
いつでも剱の勇姿が望まれる
だが、ここまで登ってしまうと、あとはもう一投足だ。 この“見上げる頂上”の上まで登ると見える2つのコブを乗り越えると、縦に長い砂礫の丘に出る。 その先には黒い墓石のような標柱がある。
雪倉岳 2611メートル の頂上である。
雪倉岳山頂からは
贅沢な展望が広がる
雪倉岳の頂上からは、360°の大パノラマが広がる。 右手を望むと妙高・火打・雨飾といった頚城の山なみが望まれる。 そして左手は、岳人の憧れの峰・剱岳が鋭い鋭角の頂を空に衝き上げている。
また振り返ると、今朝から歩いてきた道が白馬岳に連なるのが確認できて、感慨もいっそう高まる事だろう。
また振り返ると、今朝から歩いてきた道が白馬岳に連なるのが確認できて、感慨もいっそう高まる事だろう。
雪倉岳の頂上より
白馬岳を望む
これより進む前方には白馬朝日岳が丸っこい峰を大きく張り出して、その左肩に《朝日平》の小屋が望む事ができる。 だがそれはまだ点景で、まだまだ道程の半分である事を再認識させられる。
思う存分この贅沢な風景を望んだなら、雪倉岳を後にしよう。
雪倉岳から望む白馬朝日岳
標高200mの差を感じる眺めだ
さて、雪倉岳の頂上からは、越中側の広い主稜線を緩やかに下っていく。 主稜線が砂礫から岩稜へと変わると越後側に移り、先程とは逆に岩崖の急斜面を下っていく。 右手を望むと、カール地形が広がり(これほど立派な圏谷地形なのに、カールではないようだ)、その中央に《雪倉池》などの池塘が点在する絶景が展開される。
雪倉池と頚城の山なみ
やがて、越後側に張り出してきた岩稜を避けるかのようにジグザグに下り、左にもあるカール地形(こちらはそれほど顕著なカール地形ではない)のカールバンドの中をトラバースで渡って、再び県境の主稜線に戻る。 背後の大ガレに追い立てられるように下った所が《ツバメ平》である。
ここは小湿地帯となっていて、ササヤブの中に細い水流が確認できる。 そろそろ水も欲しくなってきたころであるが、ここは我慢した方がいい。 その理由は追って説明しよう。 ここから主稜線を左に外れて、オオシラビソなどの樹林帯を抜けるとガチャガチャの岩ガレ場に出る。 眼前には《燕岩》が迫力を持って迫り出してくる。
《燕岩》の岩崩れの下を横切って赤男山の裾を抜けると、樹林帯を経て水量豊富な沢の前に出る。
喉を潤すなら、こちらの方が断然いい。 冷たい水が疲れ始めた体に染み透る事だろう。
この沢を渡ると、辺りが開けて《小桜ヶ原》に出る。
小桜ヶ原より望む白馬朝日岳
《小桜ヶ原》は夏になると一斉に高山植物が咲き誇る。 夏の素晴らしいお花畑の大群落は、この回遊コースを『花の回遊ルート』と呼ばわしめるに十分な理由であろう。 《小桜ヶ原》には木道が敷設されているので、踏み外したりしないようにしたい。 なぜなら、人の足で踏まれると、そこからは永年に渡って花が咲かないからだ。 このルートを、いつまでも『花の回遊コース』と呼び続けたい。 その為にも、湿原にダメージを与える事は避けて頂きたい。
大迫力で迫り立つ白馬朝日岳を真正面に望みながら進んでいくと、《小桜ヶ原》を越えて浅い樹林帯に入る。 これを少しつめると、白馬朝日岳への直登ルート分岐である。 木道はここまで続いている。
この分岐には道標が立っていて、この道標を見ると二重のショック!?を受ける。 それは、『←白馬岳9km・白馬朝日岳3.5km↑・朝日平4.5km→』と記してある事である。 この時の心理はたぶんお解かりであろう。 “9kmも歩いて、まだ4.5kmもあるのか”という事である。
いい加減疲れてきた頃なので、この道標を見ると大なり小なり誰でも思う事であろう。 とりあえず白馬朝日岳は明日の楽しみに取っておいて(というより、疲れるから回避したかった!?)、名前の響きのいい!?『白馬水平道』を行く事にしよう。
さて、この道であるが、“水平道”とは名ばかりのアップダウンの激しい道である。 始めは樹林帯の中を行くが、次第に展望が開けてこのルートが激しいアップダウン道であることが視覚によって明らかになる。
先に続く道を見ると、白馬朝日岳の山腹の100m上部に刻まれている。 もちろん、視覚に入った分だけ登らねばならないのである。 数えただけで4度の登りと3度の下り(いずれも100m前後のオーダー)があるのだ。 ハシゴあり、簡易ロープあり、桟道ありと、かなり嶮しいルートである。
なお、このルートは、夏の早い時期は雪で埋もれるので通行不可になるとの事。 この事を少しつめて考えると、このルートが嶮しい事を予想できたかもしれない。 唯一、このルートのいい所は、終わり近くになると素晴らしい水場がある事であろうか。
この水場を過ぎて白馬朝日岳の山腹を大きく右周りに周り込むと、上に朝日小屋の三角屋根が見えてくるだろう。 これが見えると、程なく《水谷ノコル》という白馬朝日岳からの道と合流する。
後は約30m上にある小屋の建つ《朝日平》まで、疲れきった体を持ち運ぶだけだ。 階段の整備された道を足どりも重く登りつめると、フィールドアスレチックのような施設のある丘に出る。 今日の宿泊地となる《朝日平》だ。
なお、このルートは、夏の早い時期は雪で埋もれるので通行不可になるとの事。 この事を少しつめて考えると、このルートが嶮しい事を予想できたかもしれない。 唯一、このルートのいい所は、終わり近くになると素晴らしい水場がある事であろうか。
この水場を過ぎて白馬朝日岳の山腹を大きく右周りに周り込むと、上に朝日小屋の三角屋根が見えてくるだろう。 これが見えると、程なく《水谷ノコル》という白馬朝日岳からの道と合流する。
後は約30m上にある小屋の建つ《朝日平》まで、疲れきった体を持ち運ぶだけだ。 階段の整備された道を足どりも重く登りつめると、フィールドアスレチックのような施設のある丘に出る。 今日の宿泊地となる《朝日平》だ。
朝日平より望む
白馬岳・雪倉岳のシルエット
シーズン中ならばトイレあり、小屋あり、水場施設あり、山岳指導センターあり・・の後立山北部の山岳基地であるのだが、今は全て入口が木の板によって封ぜられ、全ての物が使用不可である。
地図には“《山岳指導センター》の建物は『冬季小屋』として使用可”とあったので淡い期待を抱いてはみたが、やはり今日も耐寒訓練!?をせねばならぬようだ。
自らの趣味で自らが選んだ事とはいえ、やはり氷点下前後のテントは寒い。 この季節にこのスタイルで山行をするならば、“湯たんぽ”用のシグボトルは必需品であろう。 今日は長く歩いた事だし、暮れなずむ《朝日平》よりの情景を望んだなら、早めに就寝しよう。
自らの趣味で自らが選んだ事とはいえ、やはり氷点下前後のテントは寒い。 この季節にこのスタイルで山行をするならば、“湯たんぽ”用のシグボトルは必需品であろう。 今日は長く歩いた事だし、暮れなずむ《朝日平》よりの情景を望んだなら、早めに就寝しよう。
ほのかに染まりゆく朝日平
朝日を浴びて輝く毛勝三山
《3日目》 五輪尾根を通って蓮華温泉へ
朝、目覚ましを合わさなくても早起きはできるであろう。 とにかく寒い。 湯タンポが冷める時が目覚まし時となる。 早く目覚めたのはこれ幸いと、イッキに朝食を済ませてテントをたたんでしまおう。
氷点下前後の寒さというのは、動けば途端に暑くなってくる。
《朝日平》を出発して《水谷ノコル》へ一度下った後、白馬朝日岳へ300mの急登が始まる。
体が暖かくなる程に登ると、森林限界を越えて展望がすごぶる良くなってくる。 剱岳の岩峰がほのかに赤く染まり、ピンク色の空とあいまって素晴らしい情景を魅せてくれる。 また、毛勝三山などの玄人向けの山々も味のある山容を魅せてくれる。
更に登っていくと小さな沢が寄り添ってきて、これとしばらく平行して登っていく。 たぶん、近くに湧泉があるのかもしれない。 やがて、ハイマツが周りを飾るようになると、丸い丘の下端に出る。
朝、目覚ましを合わさなくても早起きはできるであろう。 とにかく寒い。 湯タンポが冷める時が目覚まし時となる。 早く目覚めたのはこれ幸いと、イッキに朝食を済ませてテントをたたんでしまおう。
氷点下前後の寒さというのは、動けば途端に暑くなってくる。
《朝日平》を出発して《水谷ノコル》へ一度下った後、白馬朝日岳へ300mの急登が始まる。
体が暖かくなる程に登ると、森林限界を越えて展望がすごぶる良くなってくる。 剱岳の岩峰がほのかに赤く染まり、ピンク色の空とあいまって素晴らしい情景を魅せてくれる。 また、毛勝三山などの玄人向けの山々も味のある山容を魅せてくれる。
更に登っていくと小さな沢が寄り添ってきて、これとしばらく平行して登っていく。 たぶん、近くに湧泉があるのかもしれない。 やがて、ハイマツが周りを飾るようになると、丸い丘の下端に出る。
ここから、砂礫の丘を丘の中央に向けてつめていくといい。 丘の中央、白馬朝日岳 2418メートル の頂上からの眺めは正に360°の大パノラマだ。
うっすらと頚城の山も
ハイマツ越しに望む剱岳、遠く逆光のバックライトで輝く白馬岳からの稜線、スカイブルーの空の下に広がる妙高・火打などの頚城の山なみ、これより下る《五輪尾根》の秋色づく樹海、そして日本海へ抜ける超ロングランルート・『栂海新道』など、素晴らしい眺めを欲しいままにできる。 これだけ魅せられるとついつい長く留まってしまいがちだが、この《五輪尾根》ルートは下りで7時間近くかかるロングコースであるので、頃良く出発せねばタイムオーバーにもなりかねない。
白馬朝日岳よさらば
今度は夏の花期に再会しよう
さて、下山だが、白馬岳方向へ進むと10m位で下山道が分岐している。 溶岩のようなザク石が転がる中を30分程下っていくと、池塘が点在する小庭園状の鞍部に出る。 ここは《千代ノ吹上》といい、ここより超ロングランルートの『栂海新道』が分岐している。 その果てには《親不知》の街や日本海、遠く《佐渡ヶ島》が見渡せる。 “いつか歩いてみたい”との願望を呼び起こさせる眺めだ。
千代の吹上より
栂海新道方面を望む
《五輪尾根》ルートは、大きな岩に『ツガミ↑』と記された岩を見送って、右に大きく旋回するように伝っていく。 左を締める山腹を伝うと、いよいよ難路の始まりだ。 水の湧き出たガラガラのザク岩地帯の急下降だ。 ガラ岩の中を水が伏流しながら流れるので、踏み出すごとにジワジワ水が染み出してくる。
また、このガラ岩は浮石が多く、その下地はぬかるんでいるので、転びでもするとダメージは計り知れない。 ただ、唯一の救いは、背後に白馬朝日岳と雪倉岳のスカイラインが迫力を持ってそびえ立っている眺めであろうか。
残雪が消えるこの時期でこれなのだから、夏の早い内は残雪で悩まされる道となろう。 所々にシロウマアサツキやミズバショウらしき株を見ながら下ると、このガラ場は終わり樹林帯にもぐり込む。
残雪が消えるこの時期でこれなのだから、夏の早い内は残雪で悩まされる道となろう。 所々にシロウマアサツキやミズバショウらしき株を見ながら下ると、このガラ場は終わり樹林帯にもぐり込む。
《五輪ノ森》といわれるオオシラビソの林である。 長く緊張する急下降が続いたので、ひと息いれよう。 だが、ここまでで2時間近くかかるのだから、あまりのんびりとはしてられない。
秋色めく白馬朝日岳を見上げる
《五輪ノ森》を抜けると、《青ザク》と呼ばれるガラ場を下っていく。 これを100m程下ると、広い草原に木道が見えてくる。 この一帯を《五輪高原》といい、夏は湿性植物の花園となるそうだ。
この階段状の木道(雨の日はスリップに注意)を延々下っていくと、《花園三角点》と呼ばれるピークに下り着く。
ここの標高は1754m。 実に700m近く降りてきた事になる。 《蓮華温泉》の標高が1500mだから、標高差の上ではもう楽勝と思われるだろうが、それは次の坂を下るとショックに変わる。 それは次に述べよう。
この三角点より対岸に乗る《蓮華温泉》へ向けて下っていくのだが、その間には大きな谷があるのだ。
《カモシカ坂》と呼ばれる樹林帯の急坂を延々下っていくのだが、気がつけば《蓮華温泉》の建物が遙か頭上にあるのが見えるだろう。 約500mダダ下りをせねばならないのだから。 下山でゴール地点が遙か上にあるというこの光景を見せられると、少なからずのショックがあるだろう。
《カモシカ坂》と呼ばれる樹林帯の急坂を延々下っていくのだが、気がつけば《蓮華温泉》の建物が遙か頭上にあるのが見えるだろう。 約500mダダ下りをせねばならないのだから。 下山でゴール地点が遙か上にあるというこの光景を見せられると、少なからずのショックがあるだろう。
シーズンオフは橋が外されて
沢の徒渉となる
この坂を下りきると、《白高地沢》のたもとに出る。 この沢を渡るのだが、辺りを見渡すと“取り外された”橋の築堤がある。 ここはシーズン以外は橋を外しているようで、この沢は“直足”で徒渉せねばならないようだ。
10月下旬の沢は身を切るように冷たい。 水に素足をつけるのは1分が限界である。 ここは度胸一発、1分の荒行を敢行せねばならない。 登山靴と靴下をザックにつめて、ピッケルで川床を突きながら素早く渡りきろう。
この徒渉を過ぎると難関はなくなり、後は下りすぎた分300mを取り返すだけだ。 沢に沿う高台を伝って《ヒョウタン池》という沼のある湿地帯を経ると、また大きな川にぶち当たる。 この川には鉄橋が架けられているが、シーズンオフは御丁寧に欄干が全て外されている。 水面から30m上を幅1mの“平均台”で渡るのは、かなりスリルがある。
この橋を渡ると150mイッキに登って、《兵馬ノ平》という湿原台地の上に出る。 ここからは、もうハイキングコースだ。 《蓮華温泉》からの小ハイキングの行楽客も現れて、そのいでたちを見るとよもやこの先難路はあるまいと思えるだろう。 後は紅葉を楽しみながら木道を伝っていくといい。 途中に《雪倉ノ滝》を眺める展望台を経由する散策路もあるが、ちょっと下りに疲れてしまったので今回は見送りとしたい。
湿原の中を伝うと、《蓮華温泉》のキャンプ場を経て登山口に出る。 砂利道の500m先には、《白高地沢》でショックをまの当たりにした《蓮華温泉》のロッジが建っている。 せめて、このショックを取り戻すべく下山即温泉を実行しよう。
なお、《蓮華温泉》であるが、10月20日辺りの土日をもって冬季閉鎖するとの事。 ワテが訪れた日は、運良く営業最終日とのことであった。 帰路は、バスの運転はもう終わっている(体育の日の三連休位までの運行)ので、タクシーを呼ぶか温泉で上手くヒッチハイクさせてもらうか・・である。 費用の面を考えると、どうしても後者が魅力である。
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No title * by 散位 アナリスト杢兵衛
雲海て素晴らしいですね。ナイス
No title * by fumi
ご訪問ありがとうございました!!
山のぼりされる方、尊敬します!!精神的に強い方なんでしょうね~
頂上からの景色や夕日や雲海など地上では味わえないものがきっとあるんでしょうね・・・
山のぼりされる方、尊敬します!!精神的に強い方なんでしょうね~
頂上からの景色や夕日や雲海など地上では味わえないものがきっとあるんでしょうね・・・
No title * by 風来梨
アナリスト杢兵衛さん、こんばんは。
この日の夕景は格別でした。 「道標」を撮った時は、叙情的な絶景に震えましたよ。
この日の夕景は格別でした。 「道標」を撮った時は、叙情的な絶景に震えましたよ。
No title * by 風来梨
fumiさん、こんばんは。
こちらこそ、見て頂いて有り難うございます。
山は素晴らしい情景が広がってます。 そのひと欠けらでも写真に撮れたら、それだけで至福の幸せを感じますね。
でも、山は厳しさや試練も与えられます。
こちらこそ、見て頂いて有り難うございます。
山は素晴らしい情景が広がってます。 そのひと欠けらでも写真に撮れたら、それだけで至福の幸せを感じますね。
でも、山は厳しさや試練も与えられます。
No title * by たけし
ゴタテ、懐かしく思い出され写真に見とれてしまいました。
雲海は息をのむ素晴らしさです!
私が労山に所属していた時、会山行で三国堺から雪倉岳への縦走中
女性2人が滑落し、救助に向かった男性1人が遭難しました。
当時、新聞、TVなどのマスコミが大騒ぎしたのが思い出されます。
警察では同行者を犯罪者扱いにして取り調べたそうです。
重傷一名、軽傷一名で命に別条なかったのが救いでした。
※ 私は別の山に登っていましたけど・・・・。
雲海は息をのむ素晴らしさです!
私が労山に所属していた時、会山行で三国堺から雪倉岳への縦走中
女性2人が滑落し、救助に向かった男性1人が遭難しました。
当時、新聞、TVなどのマスコミが大騒ぎしたのが思い出されます。
警察では同行者を犯罪者扱いにして取り調べたそうです。
重傷一名、軽傷一名で命に別条なかったのが救いでした。
※ 私は別の山に登っていましたけど・・・・。
No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。
この日の白馬は、感動的な夕景色でした。
しかも、山荘は営業を終わっていて誰もおらず、この景色を一人占めでした。
雪倉岳方面は、特に危ない所はない・・と云われてますが、距離が長く疲労を伴えば、転倒滑落も有り得ますね。
今は雪倉岳のような中級以上向けルートに、中高生の素人さんが入って遭難するケースが多いので同行者は何も問われないですが、以前は中級以上のコースは山の猛者以外は入らず、パーティー登山となると連帯責任となってましたから・・。
まぁ、オール単独の私は、運がいいんでしょうね。 それと、脇腹ポッキンで沢下りをこなせるゴ★ブリ並のシブトさがあるからかも。
この日の白馬は、感動的な夕景色でした。
しかも、山荘は営業を終わっていて誰もおらず、この景色を一人占めでした。
雪倉岳方面は、特に危ない所はない・・と云われてますが、距離が長く疲労を伴えば、転倒滑落も有り得ますね。
今は雪倉岳のような中級以上向けルートに、中高生の素人さんが入って遭難するケースが多いので同行者は何も問われないですが、以前は中級以上のコースは山の猛者以外は入らず、パーティー登山となると連帯責任となってましたから・・。
まぁ、オール単独の私は、運がいいんでしょうね。 それと、脇腹ポッキンで沢下りをこなせるゴ★ブリ並のシブトさがあるからかも。