風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第139回  黒姫山

『日本百景』  秋  第139回  黒姫山  〔長野県〕
 

黒姫山頂より望む
信濃盆地と上信越の山なみ
 
  黒姫山 くろひめやま (上信越高原国立公園)
妙高や戸隠に隠れて今ひとつ知られていないのが、黒姫山を要する黒姫高原である。 だが、2000mを越える独立峰で、しかも名だたる山々の中央にそびえているので、頂上展望は素晴らしいものを魅せてくれる。

たが、登山ルートとして設けられている2ルートは、スキー場のゲレンデを縦断するモノや急傾斜の直登ルートでかなりキツく、これといった特徴が表に出ていない事もあって、あまり登山の対象として目されてはいない。 それゆえに、静かな登山が約束されるのだ。

さて、この山に登るなら、燃える秋がいいだろう。 スキー場ゲレンデの上部に樹立する樹々は見事に紅葉に染まり、急な直登が続き滅入る心を癒して余りある素晴らしい情景を魅せてくれる事だろう。
 

 

黒姫山登山コース 行程図
 
    行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
長野市街より車利用(0:50)→黒姫高原スキー場(2:20)→姫見台(0:30)→越見尾根
(0:40)→黒姫乗越(0:50)→黒姫山(0:45)→黒姫乗越(1:00)→姫見台
(1:30)→黒姫高原スキー場より車(0:50)→長野市街

私の選んだ『名峰次選』の中では、なかなか登る機会が得られなかった黒姫山に登ってみる事にしよう。 なぜ登る機会がなかったか・・であるが、それはこの山があまり名が通っていない事が理由に挙げられると思う。

名が通っていないとやはり“後回し”になってしまうし、またこの山の登山道ルートを取り上げたガイド本もほとんどなく、「どこから登るのか?」等の『登山ルートの予備知識』が入手し難いからである。
だが、名が知られてない山は、確実に山の静けさが味わえるのである。 それでは、黒姫山の抱く秘めたるベールを覗いてみる事にしよう。
 

ミルク色の空に谷川連峰がそびえる
贅沢な眺めの朝
 
前述の項目紹介でも述べたように、登山道は2つある。 どちらも稜線までイッキに登るルートで、2つとも登山口の偵察をしたが、旧登山道の《東登山道》は解りにくい林道の中に登山口があり、また駐車スペースや水の補給の事、登山道の延長に比べると解る急傾斜など、一般の登山道としては難があるようで、しかもほとんど通行者がいないせいか荒れている事が予想されるので、見送った方が無難だろう。

一方のスキー場ゲレンデからのルートだが、こちらはスキー場ゲレンデの直登という嫌な設定のルートだが、登山口はスキー場として整備され、車の駐車も水の入手もクリアできる。 
但し、水の入手は登山口だけであるが。 そのような訳で、今回の登山ルートは条件的にも有利なスキー場ゲレンデのルートを取る事にしよう。

さて、黒姫高原のスキー場だが、標高で800mで獲得標高差1250mのオーダーとなる。 
日帰り登山ではかなりキツめのオーダーであるが、そこは早朝6時よりの登山開始でリカバーしよう。 少なくとも7時までには登らないと、日没のタイムオーバーとなってしまうので、早出は当然と言えば当然であるが。
 

夜明けの光が黒姫山を染め始めたら
登山開始だ
 
雪がないと閑散としている広々としたスキー場の駐車場に車を駐車して出発だ。 まぁ、人の気配のない山なので、当然広い駐車場には私の車1台コッキリであったが。 スキー場ゲレンデは高く急傾斜で、見上げると遥かな高みにある標高1550mのリフト最上段の頂点まで、この急傾斜を詰めていかねばならない。
 

スキー場の草原にも
朝の光が当たり始めた
 

朝日を浴びて
ほのかに染まるアズマギク

登り始めはスキー場下部の初心者ゲレンデをゆくので傾斜は緩い。 そして周囲は無雪期の初心者ゲレンデはコスモス畑の散策路となっていて、コスモス畑を突っ切りながら《自然探勝路》と掲示された歩道をゆく。 登山口から、この《自然探勝路》の終点のペアゴンドラの山上駅までは何ら問題はない。
あるとしたら、ここからである。
 

ペアゴンドラ頂上駅よりは『直進』しよう
「ゲレンデを登る」に捉われ過ぎると
筆者のような目に遭います
 
これより中級や上級のゲレンデを突っ切っていくが、歩くルートは不明瞭なのである。 つまり、ゲレンデの中で行き詰るのである。 ガイド本を見ても「ゲレンデのどこでも歩いてゆける」としか記述しておらず、自身の見た目でこの急な傾斜を詰めていかねばならなくなるのだ。

要するに『自身の見た目』が外れると、足が攣るほどの急傾斜の登坂に見舞われるのである。
これは、見事に『自身の見た目』が外れて、リフトの下の道なき道の急傾斜でもがいた筆者の愚かな体験を基にしているので、この山に登る際は『反面教師』として役立てて頂きたい。
 

見ての通り凄い急傾斜デス
 
もうこの先の登りの継続が不安になる程にふくら脛が突っ張ってしまったが、まだ、リフトは先に大きいのが1段ある。 目指す標高1550mのリフトの最上段へはまだ300mほどあるのだ。 要するに、ゲレンデ内の登坂ルートの選択を誤ると、リフトのスパンの僅か250mしか登っていないのに、ふくら脛がダウン寸前まで突っ張るようなダメージを食らうのである。

なお、正しいと思われるルート(下山時に通った)は、ペアゴンドラよりリフトのあるゲレンデを避けて(リフトの下を行った筆者は偉い目にあった)、植樹されているゲレンデの右隅を小刻みなジグザグで登っていく踏跡と思われる。 まぁ、これとて、ふくら脛が悲鳴を上げる急傾斜には変わりないが。
 

キツイ傾斜に足が突っ張ってしまったが
まだ第二リフトの上まで来たに過ぎないのだ
 
さて、この第二リフト頂点からは、なぜか登山道がハッキリと刻まれている。 第二リフトの上まで登り着いた時は足が突っ張ってかなり不安であったが、これより続く紅葉の彩りのオーケストラが目に入ると、かなり心が癒された。
 

この紅葉の絶景で
足の突っ張る不安が癒された
 
多少オーバー目の表現かもしれないが、この紅葉が魅せる素晴らしい情景がなければ、ふくら脛が攣って登高不能になってたかもしれない。 もちろん、この第一リフトのスパンの登高も、半端にない急傾斜であるのだが。
 

スキー場のゲレンデ上部は
紅葉の真っ只中であった
 
紅葉を眺めつつ、本当に厳しい傾斜はつづらを切ってあるルートを詰めると、最上段リフトの上駅の制御塔が見えてくる。 リフトの駅は通らずにその脇を抜けていくとスキーゲレンデは終わり、森の中の枯葉が埋もれる山道となる。
 
キツい急な登り道も

青い空と燃える紅葉があれば

このキツイ登りも克服できる
 

色とりどりに染まる
紅葉があって助かった
 
ゲレンデを登りきって越えると傾斜は緩くなり、程なく《姫見台》という巨石のサークルに出る。
なお、展望であるが、《姫見台》よりもほんの少し下の《湖見台》の方が《野尻湖》が見渡せて良い。
だがその《湖見台》よりも、ゲレンデ上部の方が開けている分眺めがいい。
 

お立ち台の《湖見台》よりも
紅葉を手前にする方が野尻湖も引き立つよね
 
《姫見台》を過ぎると、枯葉が覆う山体のトラバース道となり、山の形に応じて左右にジグザクと伝ってゆく。 途中は枯葉の乗った滑りやすい岩が点在するので、下り時は転倒せぬように注意したい。
このトラバース道を30分近く歩くと、《越見尾根》という看板のある狭いスペースに出る。

ここから、樹木の隙間より望める《越見尾根》を、イッキ登りしていくのである。 
距離は1km未満でその標高差は280mと、かなりキツい急登である。 だが、ルートを間違えてスキー場のリフトの下を喘いだ時よりは幾分マシではあったが・・。 それは、やはり登道として踏み固められた正規ルートだからであろうと思う。

とはいえ、一度攣りかけたふくら脛である。 それを庇いつつ歩く為に、小休憩を数多く交えて登っていく。 所要40分の内、小刻み休憩が5回で計12分のオーダーでこの尾根の急登を乗り切ると、《黒姫乗越》に着く。 この《黒姫乗越》は樹林に覆われた薄暗い峠で、様相的には登り始めの《越見尾根》という看板のある狭いスペースと変わらない。 違いは、先に続く坂がキツいが緩いかの違いである。
 
森の中に入ると薄暗くなるので

彩る葉に光をかざして
撮る事が楽しみとなる

薄暗くてあまり心象のいい所ではないので、足早に先に進む。 これよりは稜線を伝っていくが、予想に反して森の中のジグザク道で全く持って展望はない。 これを乗越に掲示してあった『頂上までアト50分』、辛抱して登っていかねばならない。

この稜線上は樹木の根が道に絡み合って、また所々空洞に岩が詰まった足場の悪い所を通過する事もあってかなり歩き辛く、距離と標高差(190m)の割には時間を食う。 まぁ、キツい登りを乗りにウンザリして回避願望を全面に押し出して、「アト190mだ もう急な傾斜もないだろうから、恐らく50分もかかるまい」とタガをくくった筆者にはキッチリ50分の御奉公が待っていたのは藪の中に。

さて、なかなか終わらないこの足がもつれるような樹の根の絡み合ったルートを歩いていくが、終わり前の目標である《東登山道》との分岐はなかなか現れない。 そして、現れたらすぐに頂上と思い込んでいたら、《東登山道》分岐よりさらに10分かかっていた。
 
やがて、いつ終わるか解らぬような眺めから、パッと視界が開けて黒姫山の頂上に出る。 2053メートル。 ここまで4時間20分。 足が突っ張った割には、コースタイムを僅かにオーバーで乗り切ったのだから、タイムとしては上々だろう。
 

思ったよりキツかったけど
感慨ある眺めの黒姫山山頂
 
苦労して登り着いた黒姫山の頂上からは、今までの鬱蒼な森の中の鬱憤を晴らすような山岳パノラマが広がる。
 

前を向けば
戸隠の嶮峰と高妻山が
 
前を向けば、戸隠連峰と高妻山、その左が槍ヶ岳が角だす北アの連峰、もちろん高妻山の背後は白馬や鹿島槍の後立山の山なみが・・。
 

戸隠の嶮峰の背後に
槍を盟主とした北アルプスが
 
左は飯縄山の山体がドンと居座り、その左側に展開する麓の町と《野尻湖》を前景に苗場や鳥甲、越後三山に谷川岳などの峰々が、雲海に薄っすらと映し出されている。
 

左を向けば山頂からの
パノラマが楽しめる

まずは野尻湖と信濃盆地
そして上信越の山なみ
 

上信越の山々と信濃盆地が途切れると
逆光に黒光りした飯綱山が現れる
 
右側は少し樹木が前を遮るが、妙高や《小黒姫》と呼ばれる御巣鷹山が見渡せる。
 

振り返ると
焼山・火打の頚城の山々が
 

そして締めは入道のような
岩塔をもたげた妙高の頂で
 
頂の情景を満喫していると、空に「午後3時頃より雨が降り出す」との天気予報に沿うように、美しくも雨の前兆となる鱗雲が広がってきた。
 

頂上の楽しいひととき
だが気づかぬ内に
空に雨を呼ぶ雲が掛かり始め
 
なので、頂上で40分程山岳展望を満喫して頂上を離れる事にする。 下山開始の11時より、下山に4時間かかったとしても雨の直前に下山が適う計算だ。 まぁ、「天気予報の前倒しさえなければ」と、「下りでヘバッてやる気をなくさなければ」という条件が着くが。
 

天気予報通り雲が空を覆い始めてきた
そろそろ下り始めようか


下りであるが、下りていく毎に空は雲が広がって、《姫見台》につく頃はあれ程の快晴が完全な曇天となっていた。 だが、いつも下りが遅く、ともすれば登りより遅い事もある程に下りがダメな私だが、この時は信じられぬほど足が動いてくれた。 まぁ、空身だから・・と言う事もあると思うが。
そして空も、3時頃までは持ちそうである。

頂上から《黒姫乗越》まで45分、《越見尾根》の急坂の下りは25分、《姫見台》まで25分、そして最後のスキー場ゲレンデは90分と、快速下山ができた。 まぁ、段の少ない草原の道なので、膝に負担がかからなかった事が要因だろうと思う。 そして雨はジャスト2時より降り始めたが、この時は駐車場に駐車してある車の100m手前まで降りてきていたので、ポツポツの雨に2分ほど降られただけだった。

登山装備を解除して車に乗り込む事ができたら、雨が降っても構わないし・・である。 後は、山の後の温泉だ。 黒姫高原にも温泉はあるが、全てスキー客相手のペンションばかりで営業していない様である。 従って温泉は、新潟県に入った《妙高温泉郷》が宜しかろうと思う。 
《池ノ平温泉》、《妙高温泉》、《赤倉温泉》、《関ノ湯》、《燕温泉》と名湯が選り取り見取りなのであるから。

    ※ 詳しくはメインサイトより『黒姫山』を御覧下さい。
 
 
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No title * by 山が好き
すばらしい青空ですね。私が登ったのはオサバグサが群生の時で雨の中でした。前日の飯綱山は晴天だったんですけどね。

No title * by 風来梨
山が好きさん、こんばんは。

朝は快晴で絶好の紅葉狩り日和だったのですが、下山直後から曇り出し、やがて雨になりました。

でも雨に当たったのが駐車場に着く2分前だったのはラッキーでした。

これから当分秋の山旅の記事をアップする予定なので、宜しければ覗いてみてくださいね。

今日は見て頂いて有り難うございます。

No title * by 散位 アナリスト杢兵衛
この風景いいですね。
山の表情は好きです。
ナイス

No title * by 風来梨
アナリスト杢兵衛さん、こんばんは。

見て頂いて有り難うございます。

秋の空は素晴らしいですね。 近年は秋景色が見たくて、秋の山に凝ってる私です。

コメント






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No title

すばらしい青空ですね。私が登ったのはオサバグサが群生の時で雨の中でした。前日の飯綱山は晴天だったんですけどね。
2014-10-19 * 山が好き [ 編集 ]

No title

山が好きさん、こんばんは。

朝は快晴で絶好の紅葉狩り日和だったのですが、下山直後から曇り出し、やがて雨になりました。

でも雨に当たったのが駐車場に着く2分前だったのはラッキーでした。

これから当分秋の山旅の記事をアップする予定なので、宜しければ覗いてみてくださいね。

今日は見て頂いて有り難うございます。
2014-10-19 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

この風景いいですね。
山の表情は好きです。
ナイス
2014-10-19 * 散位 アナリスト杢兵衛 [ 編集 ]

No title

アナリスト杢兵衛さん、こんばんは。

見て頂いて有り難うございます。

秋の空は素晴らしいですね。 近年は秋景色が見たくて、秋の山に凝ってる私です。
2014-10-20 * 風来梨 [ 編集 ]