2014-10-19 (Sun)✎
路線の思い出 第67回 角館線・松葉駅、羽後長戸呂駅 〔秋田県〕
1日の内の朝の数分しか蘇らぬ
松葉駅
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度 / 営業係数(’83)
角館~松葉 19.2km 183 / 1035
移管年月日 転換処置 移管時運行本数
’86/11/ 1 秋田内陸縦貫鉄道 3往復
松葉駅(まつばえき)は秋田県仙北市西木町桧木内字松葉にある秋田内陸縦貫鉄道・秋田内陸線の駅である。 経営移管前の国鉄時代は、角館線の終着駅であった。 1面1線の駅でホーム上に待合室があるだけの無人駅である。 その待合室には貸出図書コーナーがある。 急行【もりよし】の停車駅。 2016年の1日平均乗車人員は1人との事。
当駅は無人駅であるが、当駅最寄りの『(株)中央商会 JOMO桧木内SS』にて、当駅発の秋田内陸線企画乗車券を発売している。
羽後長戸呂駅(うごながとろえき)は、秋田県仙北市西木町桧木内字長戸呂にある秋田内陸縦貫鉄道・秋田内陸線の駅である。 単式ホーム1面1線を有する無人駅で、駅舎はないが待合所が設置されている。 2016年の1日平均乗車人員は5人との事。
現在は第三セクターの秋田内陸縦貫鉄道に経営移管されて、日に10往復と『鉄道』としての状況を維持しているが、私の訪ねた『国鉄』時代は1日に僅か3往復と、徹底的にヤル気のない路線であった。
そして、この路線を車もナシの高校生時代に走行写真を撮ったのは、自分自身であの頃の自分を褒めてやりたい気がする。 3往復の路線を車もナシに撮りにいく自体が凄い快挙だと思う。 但し、記録としては撮った写真以外は何も残ってないが・・。 このようにこの路線の思い出は、3往復の路線を撮る為に苦労した長大な『時間潰し』の思い出なのである。
ウロウロがてら何気ない風景を撮る事で
風景写真の技量が上がった・・のかな?
まず、この『3往復の路線』を車ナシに撮影するには、現地に宿泊滞在するか、この路線の始発列車に乗るなどして「朝に現地に到着する事」が必須条件となる。 そして場所は、遥か遠い・・感覚的には北海道より遠い秋田県の奥地である。 そして、左沢線の項目でも記したように切符の関係上、東京始発の夜行列車は使えないのである。
それに加えて小僧故に金もなく、日程も限られているのである。 なお、「秋のド平日に学校はどうしたの?」とかいう解りきった野暮な問いかけは、筆者を困らせるだけなのでナシにしようね。
・・となると、こういう『困ったちゃん』の行動性質としては、始発駅かはたまたこの線の始発列車に接続する列車の始発駅で駅寝・・の成り行きとなるのだ。 今回は、特定地方交通線の廃止第一号として廃止された白糠線借別撮影紀行(何が紀行なんだろ?)からの帰りで、北海道から普通列車を乗り継いで前夜の最終で大曲駅までやってきたのだった。
その大曲駅であるが、運よく待合室は開放(今はどうか知らないが)で、前夜23時過ぎの到着時から4:50位の田沢湖線の始発列車まで仮眠する。 でも、ローカル線の始発列車って早いね。
恐らくこの田沢湖線の始発列車は、『3往復の角館線』の始発列車兼、唯一の午前中の列車に接続する為だけに設定された列車なのだろう。
そして、この始発列車は角館線の始発駅である角館で後1両を切り離し、それが角館線ホームに転線して角館線列車となるのである。 即ち、車両回送を担う便でもあったのである。 大曲駅の駅寝には不向きなプラッチックイスで寝不足気味だったのでついつい寝過ごしてしまったが、車両切り離しと転線の為に乗客を全て下ろす必要があり、角館駅到着前に車掌により起こされてこの事を知ったのである。
そして6時過ぎに、角館線の始発列車にして唯一の午前中の列車が、松葉へ向けて『回送』の業務に着いた。 いや・・、この日は特別に小僧時代のワテというエトランゼの『コブ』を乗せていたが。
要するに、松葉からの折り返しで列車通学の通学生を捌く為に、こんな早くに下り列車を仕立てていたのである。 まぁ、3往復と言えども、何とか一抹の役に立つように仕立てているのは、今から見ると大したものである。
さて、着いた松葉では学生が十数人ホームに待機していて、到着と同時に列車に乗り込む。
この朝イチの列車の折り返しとなるほんの5分足らずの時間が、常時人っ子一人いない松葉駅が唯一駅として蘇る時間なのだ。 取り敢えず、朝日に輝く列車を1ショット。
1日3往復で列車走行写真を撮るのは
壮大な行動計画を要します(笑)
だが、この心地よい朝の光を受けた列車を撮ると、その後は2番列車の行き交う16時過ぎまで8時間の時間が開くのだ。 1日の運行が3往復で解っていた事とはいえ、これは乗り越えるのが一苦労の長い開き時間である。 それも、何もない所で・・である。 そして、今のように『コンビニ』もないのである。
状況的には、結構『八方塞がり』の状態なのである。
・・となると、する事と言えば、ひたすらウロウロと歩きまわる事くらいである。
で、周囲をウロウロしていると、道路の行先表示に『田沢湖畔 4.5km →』とあるのを見つけ、「これは時間潰しになる」と、田沢湖までハイキングに出かける。 もちろん、荷物は松葉の駅にデポって・・である。
田沢湖への道程は、カルデラ湖である田沢湖を隔てる峠越えの道で、当時(約30年前)からの舗装道であった。あり丁寧にいえば、何の面白みもない『普通の道』である。 それを4.5km歩いて湖畔にたどり着くが、そこでも何をするでもなく湖をボ~っと眺めていただけであった。 もうちょっと湖畔を散策すれば、田沢湖の氏神を奉る御座石神社などのスポットがあったのに・・、残念。
4.5km歩いて
ただ漠然と湖を撮っただけ
時間潰しの無駄の神髄ここにアリ
往復9kmの『無駄歩き』で5~6時間時間を潰して、松葉に戻り着いたのが15時前と理想の時間であった。 後の残り1時間で、角館線の撮影場所を決めて列車を待てばいいのである。
だが、松葉付近は何かイメージが合わず、羽後長戸呂まで線路上を歩いて撮影地の『品定め』をする。
まぁ、本来線路上を歩くのは重大危険行為で御法度であるが、1日3往復以外に運行は皆無(開業当初から荷物の取扱はなかったらしい)の路線なので許してネ。 そして、線路に沿って移動せねば、初めて訪れたエトランゼ故に駅の位置が解らなくなる←帰りの列車に乗れなくなるのだからマズいよコレ。
・・で、羽後長戸呂駅の手前で清らかな川を渡る鉄橋があったので、松葉方面の列車を撮ってから羽後長戸呂駅に戻り、折り返してやってくる列車に乗って帰る・・という行程を立てて、この鉄橋の袂で待機する。
松葉行きの二番列車がやってきたのは、16時ちょっと過ぎ。 もう秋で山間部は後ちょっとで陽が山に陰る瀬戸際の時間帯だ。 この列車の通過まで陽が持つように・・と願うが、残念ながら1分前に陰ってこんなのしか撮れませんでした。
1日3往復は少なすぎる
“2番列車”が夕方16時台
“2番列車”が夕方16時台
後は駅に戻って、黄昏の無人駅舎などを撮りつつ帰りの列車を待つだけである。
こうして、3往復のローカル線撮影の為だけに費やした長い1日が終わったのである。
黄昏の羽後長戸呂駅舎
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