2014-09-21 (Sun)✎
『日本百景』 秋 第134回 蔵王 〔山形県・宮城県〕
蔵王のシンボル 御釜
蔵 王 ざおう (蔵王国定公園)
蔵王といえば、まずは“モンスター”と呼称される樹氷林を思い描くだろう。 そして、無雪期のエメラルドグリーンに輝く火口湖《御釜》であろうか。 しかし、山上道路が頂上直下まで敷設され、ゴンドラやリフトが麓から開設されて、誰もが知りえる大観光地になった今日では、一大レジャーランドの様相を呈している。
蔵王といえば、まずは“モンスター”と呼称される樹氷林を思い描くだろう。 そして、無雪期のエメラルドグリーンに輝く火口湖《御釜》であろうか。 しかし、山上道路が頂上直下まで敷設され、ゴンドラやリフトが麓から開設されて、誰もが知りえる大観光地になった今日では、一大レジャーランドの様相を呈している。
特に冬は巨大なスキーゲレンデと化して、“モンスター樹氷林”という素晴らしい情景があるにも関らず、惜しい事であるが「『日本百景』の情景としてはもう一つ当てはまらない」と感じ得たのである。
だが、シーズンを外れた頃の静かなる火山山塊とエメラルドグリーンの湖水を称える《御釜》は、「日本百景たる素晴らしき情景」として挙げるに相応しいものだと感じたのである。 従って、追加の補欠といういささか無礼な扱いであるが、この蔵王も我が『日本百景』の一つとして取り挙げる事にしたのである。
だが、シーズンを外れた頃の静かなる火山山塊とエメラルドグリーンの湖水を称える《御釜》は、「日本百景たる素晴らしき情景」として挙げるに相応しいものだと感じたのである。 従って、追加の補欠といういささか無礼な扱いであるが、この蔵王も我が『日本百景』の一つとして取り挙げる事にしたのである。
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
上山市街より蔵王エコーライン・ハイラインを車利用(0:45)→蔵王ハイライン・刈田岳駐車場
(0:50)→熊野岳(0:40)→御釜展望所(0:20)→刈田岳
朝もやに煙る
蔵王のスカイライン
この項目では冒頭の紹介で述べた通りに、シーズンオフの日の夜明けから朝の時間帯にかけて、朝の静けさ漂う蔵王山域をハイキング気分で散策してみよう。 なぜ、『シーズンオフ』という時期と『夜明けから朝』という時間帯を選んだかというと、無論観光客による喧騒をできるだけ避けて、『日本百景』たる情景を心ゆくまで堪能する為である。 それでは、朝の贅沢な時間を使って、蔵王山域を散策してみよう。
この行程を実行するには、2つの事が成しえなければならない。 一つは、夜明けから朝の日が昇るまでの天候が快晴である事である。 だが、こればっかりは、前日の天気予報によって“アテ”をつける以外に手はなさそうだ。 もう一つは、前日の夜までに《蔵王ハイライン》の《刈田駐車場》までアプローチしておく事である。 これは確実に実行しないと、この散策企画は実行不可能となるのである。
だが、シーズンオフの《刈田岳駐車場》にある《刈田岳レストハウス》はトイレさえも閉鎖してしまうので、《蔵王ハイライン》の料金所手前にある《蔵王エコーライン》のパーキングエリアで仮眠して、夜明け前に《蔵王ハイライン》の《刈田駐車場》まで向かうのも一つの手である。 ここなら、トイレも開放されて使用可なのである。
しかし、たった2.5kmの距離でしっかりと割高な通行料を取るのだから、トイレ位は常時使用可とするのが義務ってもんだろう・・と思うのだか。 さて、《蔵王ハイライン》への愚痴は終わりにして、夜明けと共に散策を開始しよう。
日の出前の稜線にて
立ち込めていた霧が晴れていき
シーズン中以外は閉鎖している《刈田岳レストハウス》の脇の石段を登っていくと、程なく蔵王をめぐる縦走路に出る。 この縦走路を右へ行けば神社社殿のある刈田岳で、社殿のある頂上台地まで段スロープの坂が続いている。 一方、左へ行けば、道蔵王最高峰の熊野岳への道とのなる。
1日の始まりを告げる
美しき御来光
山がほのかに染まって
せっかくの朝景、しかも日の出という絶好の時間帯である。 神社社殿などの人工物で最も美味しい時間帯を逃すのは勿体無いので、ここは迷わず熊野岳への道を取る。
振り返ると朝の清々しい雰囲気が
大きく広がっていた
熊野岳に連なる稜線が
美しく染まる中をゆく
起伏のほとんどない整備された砂利状の道を伝っていくと、程なく《御釜》のすぐ左側よりサンライズが上がってくるだろう。 このサンライズとピンクに染まった夜明けの空、そして日の出の光を浴びて輝く蔵王の山々を目にするだけで、昨夜出発の車内仮眠という苦行!?の元は十分過ぎる程に取れるのである。
蔵王発 サンライズ
光が雲海を渡って山に届く
徐々に光が強くなり
周囲が濃いシャドーに
御釜も光の幻術で
神秘的に
そして《御釜》であるが、こちらは日の出の光が強すぎてまだ蒼くは輝いていないので、帰りのある程度陽が上がった時に近寄る事にしよう。 さて熊野岳への道であるが、《御釜》の端を過ぎる位から緩やかな起伏が出てくる。 一度軽く下って、火山特有の火山岩礫のゴーロ石の転がった傾斜をひと踏ん張り登りつめると、熊野岳の肩に立つ避難小屋前に出る。
避難小屋越しに真っ白な雲海と
頂を突き出す朝日連峰を望む
旧来あった石室であろうか
謎に満ちめいた石垣と壕
謎に満ちめいた石垣と壕
避難小屋前には古来の避難小屋跡なのであろうか・・、石の鳥居と石で囲まれた壕があり、石の鳥居には『クマノ・・』と書かれていて、それに続く言葉は消えていた。 恐らく、御神体である熊野岳を奉る言葉が刻まれていたのだろう。 なお、この肩に立つ避難小屋はどうやら使用不能のようで、扉は開かず内部確認はできなかった。
さて、最高峰の熊野岳 1841メートル へは、ここより広く緩やかな頂稜を10分も歩けば到着する。
広い頂上台地の西端に奉られた熊野岳神社が三角点ピークとなっている。
広い頂上台地の西端に奉られた熊野岳神社が三角点ピークとなっている。
熊野岳頂上標
熊野神社鳥居と
神社の奉納庫
眺めは雄大で、雲海に浮かぶ飯豊や月山の山なみ、山形盆地の町なみが一望できる。 また、今回はここで切り上げるが、更に先に続く蔵王の縦走路と緑豊かな山なみも見渡せる。 日程に余裕があるなら、この先に続く縦走路を伝って《蔵王温泉》への1deyハイクを企画するのもいいだろう。
ガスが神秘的に
山上大地を覆って
さて、熊野岳より戻ると、次はエメラルト色に輝く《御釜》を見にいこう。 熊野岳より往路を戻る事30分程で、先程サンライズを眺めた《御釜》の端に出る。 これより広い稜線を、《御釜》の方向へ柵のある所まで近寄ってみる。
時間はゆっくり熊野岳を往復した後なので、たぶん7時前後だろう。 なお、柵を越えるのはNGだ。
有毒な火山ガスが漂っている場合もあるので、敢えて越えるとするなら生命も含めての危険と不法行為による責任がかかってくるので念の為。
有毒な火山ガスが漂っている場合もあるので、敢えて越えるとするなら生命も含めての危険と不法行為による責任がかかってくるので念の為。
日が昇るにつれて
御釜に光が当たって
エメラルドブルーの輝きを
魅せるようになる
季節にもよるが、この時間帯になるとそろそろに日も昇ってきて、それに合わせて《御釜》も日の光を受けてエメラルドブルーに輝き出すのである。 朝の雰囲気を損なわずにエメラルドグリーンのお釜が望めるこの時間帯が、『極上の時間帯』といえるだろう。 《御釜》に沿っての崖上に柵が立てられているので、それに沿って絶妙の“《御釜》の輝く位置”を見つけながら歩いていこう。 絶妙の位置が見つかったなら、カメラを向けて山の思い出を写真として刻んでいこう。
御釜の全景
日がバッチリと当たるのは
日がバッチリと当たるのは
午後のようだ
さて、思う存分《御釜》を味わったら、柵のある《御釜》展望所より離れ、縦走路へ戻っていく。
縦走路へ戻ると、程なくレストハウスへの分岐に出る。 ここは朝に分岐となっていた社殿のある山頂・刈田岳へと立ち寄って帰る事にしよう。 刈田岳へは出発時に述べた通り、丸太で仕切った段スロープを10分ほど上がっていくだけだ。
登り着いた刈田岳 1758メートル には熊野岳から遠望できる程の立派な社殿が建っていて、蔵王神社的な山頂はこちらのようである。 山からの眺めは、お釜の情景とそろそろに秋の色着きを始めた山々と蔵王ハイラインのつづら下りの道路が見渡せる。
登り着いた刈田岳 1758メートル には熊野岳から遠望できる程の立派な社殿が建っていて、蔵王神社的な山頂はこちらのようである。 山からの眺めは、お釜の情景とそろそろに秋の色着きを始めた山々と蔵王ハイラインのつづら下りの道路が見渡せる。
徐々に立ち込める霧が
山上を覆い始める
:
この1時間後はシトシトの
この1時間後はシトシトの
雨模様となってしまった
刈田岳の眺めを十分堪能して駐車場に戻ると、時間は8時前後であろうか。 ここからは、《蔵王エコーライン》沿いにある滝めぐりもいいし、蔵王温泉や遠刈田温泉などの麓のいで湯めぐりもいいだろう。
なお、私が探勝した秋のこの日であるが、朝の8時過ぎまでは快晴であったが、急に曇りだして9時頃から霧雨状態になってしまったので、残念ながら滝めぐりはお預けとなってしまった。 従って、『蔵王の滝めぐり』は、また次の機会を待つ事にしようと思う。
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