風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

TOP >  『日本百景』  >  『日本百景』 晩夏 >  第131回  平ヶ岳

第131回  平ヶ岳

『日本百景』  晩夏  第131回  平ヶ岳  〔新潟県・群馬県〕
 

大自然の“悪戯” たまご石
 
  平ヶ岳 ひらがたけ (越後三山只見国定公園)
奥只見の山は懐が深い。 そして自然が創造する雄大な眺めを併せ持っている。 
この平ヶ岳 2141メートル もそうだ。 嶮しく深い山斜面と全くもって対照的な穏やかな山頂大平原からの眺めは、キツい山登りの汗をイッキに吹き飛ばしてくれる。 また、“たまご石”に見られる突拍子な自然の創造物にも驚かされる。 

大自然は雄大で、壮観な眺めを創造するか・・と思えば、このような“悪戯”も魅せてくれる。 
この奥深き山・平ヶ岳を補欠ながら、“登ってみたい山”として訪ねたいと思う。 
“行ってみたい”という魅力こそが、この『日本百景』の原点であり、そして【名峰百選】の最も重要な選択基準であるのだから・・。
 

 

平ヶ岳 鷹ノ巣登山ルート行程図
 
    行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 桧枝岐村・村落街より車(1:00)→鷹ノ巣・平ヶ岳登山口(2:20)→下台倉山
     (1:00)→台倉清水(1:50)→姫ノ池(0:30)→平ヶ岳
     (0:20)→平ヶ岳沢源頭キャンプ指定地
《2日目》 平ヶ岳沢源頭キャンプ指定地(0:30)→たまご石(0:45)→姫ノ池(1:30)→台倉清水
     (0:50)→下台倉山(1:40)→鷹ノ巣・平ヶ岳登山口より車(2:00)→小出町市街

  《1日目》 鷹ノ巣登山口より台倉山を経て平ヶ岳へ
《鷹ノ巣口》から平ヶ岳までは、延々12km。 かなりの長大コースだ。 そして、正規に認められた平ヶ岳への登山ルートはこのコースしかない。 このような訳で、前日までに必ず《鷹ノ巣登山口》までアプローチする必要がある。 そして、できれば行程表の通り、テント利用での山中1泊の山行としたい。
 

奥只見の山々は
その奥深さが魅力だ

なぜなら、往復24kmというのはかなりの強行軍で山頂での余裕はほとんどなく、またその下りがかなりの急下降となるので、ここを時間に追われて焦って通過する事となる。 そうなると転倒や滑落の危険が高くなり、また足にも負担がかかり足首などを痛めやすくなる。 山を楽しむ為にやってきて、楽しむどころかケガを持ち帰っては何にもならない。 

故に、コース編成にあたっては、この平ヶ岳に限らず“余裕のある行程”となるように配慮してきたつもりである。 この事は『日本百景』の編集に当たって、最も気にかけた事である。 せっかく行くのである。 それもあまりガイドで紹介されていない所に行くのである。 是非とも、“楽しい思い出”を持ち帰って頂きたいものだ。
 

なだらかな山容を示す平ヶ岳
 
さて、“まえおき”が長くなったが、平ヶ岳に向かって登っていこう。 登山口からしばらく砂利道が続くが、『下台倉山3.0km』の道標が立つ《下台倉沢出合》から、いよいよ急登が始まる。
《前坂》と呼ばれる標高差700mの尾根登りだ。 この急登は下台倉山までイッキに登りきる強烈なもので、ひとことで言い表すと“バカ登り”である。 また、途中にかなりの痩せ尾根地帯があり、下りでは厄介なものになりそうだ。
 

前坂の登り
奥にそびえる山が下台倉山だ

強烈な登りで汗を搾り取られる急坂なのだが、登りがいのある坂でもある。 
それは、尾根筋全般に渡って眺めがいい事にある。 特に燧ケ岳の姿が素晴らしい。 登っていくごとに朝の光を受け、かぎろい色から七変化する空と燧ケ岳のシルエット。
 

美しき朝の
燧ケ岳のシルエット

これを見ながらだと、滴り落ちる汗も心地よいものとなる。 疲れたなら、尾根の節目ごとにある鞍部でひと息ついて、燧ケ岳の絶景に心を癒すといいだろう。
 
尾根の節目にある鞍部を5~6ヶ所乗り越えた辺りから、この急坂でも最大の傾斜となっていく。 
もはや、岩角や木の根につかまりながらでないと登りきれない。 更に登りがキツくなってから鞍部を3~4ヶ所乗り越えると、ツガの原生林が樹立する下台倉山に登り着く。
 

下台倉山より眺める燧ケ岳

ここまででも、充分1つの山行をやり遂げた位のボリュームを感じるが、距離に直すとまだ全体の1/3を過ぎた辺りである。 下台倉山からは、稜線上につけられた道をひたすら歩いていく。 
眺めも樹林帯に入ることがほとんどで、それらに遮られてほとんどなくなる。 小さな登降を数回こなすと、三角点だけがあり山名表示が全くない台倉山 1695メートル がある。
 
これより、燧ケ岳の勇姿とは、平ヶ岳の山頂付近までしばらくお別れとなる。 ここからは、深いコメツガの樹海の中にもぐり込んでいく。 樹林帯に突入してしばらく歩くと、《台倉清水》の広場に着く。
この広場から20mほど下りた所に清水が湧いている。 水量は少ないが、なかなかの清水である。
 

タカネスミレ

《台倉清水》を過ぎると更にコメツガの樹海の中深くに入り込み、緩やかな登降を繰り返しながら進む。 ここからは登る分には大した事はないのだが、樹海の中の木漏れ日一つ差し込まぬ環境のせいで水はけが悪く、ぬかるみ化した道ともいえぬ所を進まねばならない。
 
ここを歩くには、少しでもましな所を見つける『ルートファインディング』が必要だ。 ぬかるみの端を伝ったり、木の枝が転がっている所を伝ったり、ついには周りのササヤブの上を漕いだりしながら歩いていく。 このような歩き方を余儀なくされるので、時間も思った以上にかかってしまう。
 

イワイチョウ

ぬかるみの中のピーク・標高1751m地点を越えるとひたすら緩やかな下りとなり、これを下りきった所が《白沢清水》だ。 この清水は少しよどみ気味で、あまり水場としては活用せぬ方がいいだろう。
この清水を越えてしばらく歩くと平ヶ岳が樹木の隙間より見えてきて、やがてこの樹海を抜け出る。
ここで、ようやく“ぬかるみ歩き”より解放されるのだ。 樹海を抜け出ると進路を右に変えて、右側そびえる池ノ岳に取り付いて、そのままイッキに登っていく。
 

平ヶ岳の頂上に広がる大平原
急峻な尾根筋からは想像できない

ササのブッシュの中に埋もれた急坂を、ササを掻き分けながら登っていく。 
このササのブッシュを乗りきると池ノ岳の肩に出て、再び平ヶ岳の丸く穏やかな姿を見ながら登っていく。 ここは砂礫地のお花畑となっていて、穏やかな平ヶ岳の山容と可憐な花々がキツい登りや悪路に滅入った心を潤してくれる。
 
肩から続くガレた岩場を登りつめると、木道が現れる。 ようやく、池ノ岳山頂だ。 キツい登りに思わず腰を下ろしたくなる所だが、ここはグッとこらえてあとひと踏ん張り木道を歩いていこう。
なぜなら、この木道の僅か100m先に絶好の憩いの場・《姫ノ池》があるからだ。
 
《姫ノ池》からは、緩やかな起伏に続いて膨らむ平ヶ岳の姿や風になびく草原、空をたなびく雲を映す池塘など、いつまでも眺めていたい穏やかで心なごむ情景が広がる。 しばらく休んで、この優しき風景に疲れを取り払おう。
 

姫ノ池と平ヶ岳
辛く長い登りを乗り越えると
山は素晴らしき風景を魅せてくれる

心ゆくまでくつろいだなら、平ヶ岳の山頂を目指して登っていこう。 ここからは平ヶ岳のなだらかな山容が示す通り緩やかに下って、乳房のように膨らんだ山頂に向かってひと登りするだけだ。
 

平ヶ岳に散らばる池塘群
 
登り着いた山頂付近は池塘を無造作に散りばめた大湿原が広がっており、その先に燧ケ岳や至仏山を“衛士”とした《尾瀬ヶ原》が見渡せる。 この穏やかな大湿原を見ながら進んでいくと、丸い丘の中心に着く。 ここが平ヶ岳 2141メートル の最高点だ。
 

平ヶ岳山頂から望む
奥只見の山々

最高点からの眺めは北側の眺望が一段と良くなり、越後駒ケ岳 2003メートル を盟主とした越後三山や荒々しく突き出た荒沢岳 1969メートル 、そして《奥只見湖》の蒼く輝く湖水を挟んで浅草岳 1586メートル の穏やかな姿など絶景が広がる。
 

山頂に散らばる池塘と
越後三山の山なみ
 
また、周囲に無造作に散りばむ池塘はたなびく雲や周囲にそびえる山々を映し、さながらアストロビジョンの画面を見ているようである。 花もイワイチョウ・リンドウ・ハクサンチドリなどが、池塘の周りを飾っている。
 

タテヤマリンドウ

ちなみに平ヶ岳の三角点はこれより2m低く、また潅木に囲まれた中にあり、あまり見通しが良くないので、湿原が広がり“平ヶ岳”の魅力を押し出している最高点を山頂とした。 
頂上でのひとときを満喫したなら、今日の宿泊地・《平ヶ岳沢源頭》にあるキャンプ場に向かおう。
 
キャンプ場の分岐は平ヶ岳と池ノ岳の鞍部にあり、ここから平ヶ岳沢源頭にある雪渓に向かって10分程歩いていくと着く(早い時期は雪に埋もれて判り辛いので注意が必要)。 ここは、《平ヶ岳沢》の生まれた水が雪渓の下より湧き出る絶好のキャンプ地である。 今日は、ここで大自然に抱かれよう。

  《2日目》 “たまご石”を経て下山
平ヶ岳にやってきたなら、是非とも見ておきたいものがある。 それは、大自然の悪戯“たまご石”である。 キャンプ場から平ヶ岳沢源頭の雪渓に登り、その上の朽ちかけた木道を歩いていく。 
池塘やハイマツが生い茂る中を30分程行くと、俗世界とかけ離れた不思議な光景が目に入ってくるだろう。
 

大自然の“魔訶不思議”
たまご石と池塘群

“たまご石”とその下方に散らばる池塘群だ。 大きな土台の上に、坊主の頭のような見事な“たまご”が乗っかっている。 何とも奇妙な光景だ。 そして、その背後を飾る宝石のように蒼い輝きを放つ池塘群。
言葉には表せぬ魔訶不思議な空間が眼前にある。 本当に、何とも奇妙な光景だ。 大自然が一枚の大岩をその力によって“悪戯”したのだ。 

これを見ていると、時など忘れてつっ立っていたくなる。 それゆえに、あまりじっと眺めるのは良くないのかもしれない。 時には周囲にそびえる山々に目をそらさないと、『パラレルワールド』に引き込まれそうだから・・。 この何だか解からぬ魔訶不思議な光景を満喫したなら、帰路に着こう。
 

                マリンドウ        タテヤマリンドウ

下りは往路を忠実に下っていくのだが、12kmの長丁場であり、しかも《前坂》は痩せ尾根の急下降となるので十分な注意が必要だ。 落ち着いて、慎重に下っていこう。 また下山の後、マイカーで小出方面に抜けるのだが、国道352号線は《奥只見湖》に沿った山斜面につけられている為に道幅が細くかなりのグネグネ道なので、小出に着くまで気が抜けない。 安全運転でいこう。

    ※ 詳しくは、メインサイトより『平ヶ岳』を御覧下さい。
 
 
 
 
 
 


 
 
関連記事
スポンサーサイト



No title * by たけし
美しい写真と紀行文、楽しませていただいてます。
私、雨男でございまして、秋田駒、八甲田、早池峰、至仏山、ヒウチケ岳等々東北の山々はほぼ全滅・・・・号泣。
山行の6割ほど降られてしまいます。
風来梨さんはどうでしょうか?

No title * by yamanbou
この山の池糖には感動しました

しんどい山でしたけど・・・

No title * by 風来梨
たけしさん、こんにちは。

私の場合は3割位が雨かな?
でも、今年は訳あって6回山に行きましたが、内3回が雨で、しかも稜線歩行の際どい所で降られて難儀しました。 あぁ・・、天候不順・・。

ちなみに東北の山は、
秋田駒・・曇
八甲田・・雨と曇のち雨
早池峰・・曇
至仏山・・快晴
燧ケ岳・・快晴
飯豊・・1回目は3日とも晴、2回目は初日のみ大雨であと快晴
朝日は4回山滞在計10日間で雨2日
鳥海は2回山滞在計4日間で雨2日
白神山は雨
岩手山も曇時々雨・・

あれ・・、結構降られているな。

No title * by 風来梨
yamanbouさん、こんにちは。

平ヶ岳正規ルートの前坂の登りは強烈ですね。
平ヶ岳まで、テント一式担いで最盛期で5:30かかりましたよ。
今のヘタレな身の上では、7時間超えるでしょうね。
でも今は麓の宿に泊まって、宿の車で中ノ岐沢まで入って、3時間程度で登れるコースを使う人が多いみたいです。 ほんとは通行止のルートなのだけれど・・。

私は、たまご石に心を奪われました(笑)

コメント






管理者にだけ表示を許可

No title

美しい写真と紀行文、楽しませていただいてます。
私、雨男でございまして、秋田駒、八甲田、早池峰、至仏山、ヒウチケ岳等々東北の山々はほぼ全滅・・・・号泣。
山行の6割ほど降られてしまいます。
風来梨さんはどうでしょうか?
2014-09-01 * たけし [ 編集 ]

No title

この山の池糖には感動しました

しんどい山でしたけど・・・
2014-09-01 * yamanbou [ 編集 ]

No title

たけしさん、こんにちは。

私の場合は3割位が雨かな?
でも、今年は訳あって6回山に行きましたが、内3回が雨で、しかも稜線歩行の際どい所で降られて難儀しました。 あぁ・・、天候不順・・。

ちなみに東北の山は、
秋田駒・・曇
八甲田・・雨と曇のち雨
早池峰・・曇
至仏山・・快晴
燧ケ岳・・快晴
飯豊・・1回目は3日とも晴、2回目は初日のみ大雨であと快晴
朝日は4回山滞在計10日間で雨2日
鳥海は2回山滞在計4日間で雨2日
白神山は雨
岩手山も曇時々雨・・

あれ・・、結構降られているな。
2014-09-02 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

yamanbouさん、こんにちは。

平ヶ岳正規ルートの前坂の登りは強烈ですね。
平ヶ岳まで、テント一式担いで最盛期で5:30かかりましたよ。
今のヘタレな身の上では、7時間超えるでしょうね。
でも今は麓の宿に泊まって、宿の車で中ノ岐沢まで入って、3時間程度で登れるコースを使う人が多いみたいです。 ほんとは通行止のルートなのだけれど・・。

私は、たまご石に心を奪われました(笑)
2014-09-02 * 風来梨 [ 編集 ]