風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第130回  天塩岳

『日本百景』  晩夏  第130回  天塩岳  〔北海道〕
 

優しい起伏を示す天塩岳
 
  天塩岳 てしおたけ (天塩岳道立自然公園)
北海道南部の未開山域が『日高』なら、北部の未開山域はこの天塩岳を有する『北見』であろう。 
山のガイド本でも無視されがちなこの山域へは、当然の事ながら訪れる登山者も少なく、豊かな自然のおりなす幻想的な景観をゆっくりと心ゆくまで味わう事ができるのである。 
この山域を訪れると、そして登ってみると、“名峰”とは・・、そして自然の営みとは、最高の水から創造されるという事を実感できるであろう。 

豪雪地帯であり、我が国で最も寒いといわれる北見山地は夏の最盛期でさえ豊富な残雪を残し、その雪解け水を集めて“大河”・天塩川として北海道の大地を育んでいるのである。 
ここに、愚劣な宗教歴史などはない。 愚劣な人の思惑が“名峰”を造るのではなく、大地を創造する“水”が・・、そして自然の営みが“名峰”を創造するのだ。
 

 

天塩岳 新道登山道周回ルート 行程図
 
   行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
旭川市街より車(1:40)→天塩岳ヒュッテ(0:30)→ガマ沢・新道分岐(1:30)→天塩円山
(1:00)→天塩岳(1:00)→前天塩岳(1:30)→ガマ沢・新道分岐
(0:30)→天塩岳ヒュッテより車(1:40)→旭川市街

北海道北部の未開山域『北見』の盟主・天塩岳 1558メートル。 この天塩岳の山域は、北海道の山を知る者に“北海道でも五指に入る名峰”といわしめる程に懐の深い山域である。 
それは、北の大河・天塩川の最初の一滴となる水の営みと、その水が育む豊かな自然が“山の民”の心を魅きつけるからであろう。
そして、この山の山頂より望む大雪山も、また格別である。 

それでは、密かな山の魅力がいっぱいの天塩岳山域を一周する素晴らしい山旅を御紹介しよう。 
この山域を一周するコースは所要6時間半と十分日帰り可能であるが、せっかく魅力あふれる北の雄峰に登るのである。 ここは、是非とも前夜に天塩岳の登山口までアプローチをして、山が最も素晴らしい景色を魅せてくれる早朝から登り始めよう。 なお、天塩岳の登山口には、《天塩岳ヒュッテ》というこれまた素晴らしい山小屋が無料解放されているので、これを利用しない手はないだろう。
 

朝の光にけむる前天塩岳
 
北海道の朝は緯度が高いだけに早い。 朝4時過ぎには、もう空が白くなっている。 
《天塩岳ヒュッテ》の裏手に、登山道案内の大きな立て看板が立つ登山口がある。 
これよりしばらくは、《天塩川》の源流に沿って平坦な道をゆく。
 
やがて、《天塩川》の源流沢が落差を見せ始めると、《新道・旧道分岐》に出る。 このまま直進すると、もう一度《旧道》との分岐を経て前天塩岳への直登へと続いていく。 前天塩岳までは樹林帯のイッキ登りで、辛い登りの上に視界は前天塩岳の頂上直下まで利かない。 

一方、《新道》ルートは右に折れて、天塩岳の支稜の山肌を斜めに登っていく。 こちらを行くと、1時間足らずの登りで稜線上に出たその後は展望が利くので、逆周りではあるがこちらをお薦めしたい。
だが、先に前天塩岳を行く《正回り》も、前天塩岳で山火事跡の“ハイマツワラ”と朝日の情景が望めるので、捨て難いものではあるが。 ここは、各自の好みを優先して、見逃した方は次回のチャレンジにとっておけばいいだろう。

《新道》ルートを示す道標の通り、天塩岳支稜の山肌を斜めに登っていくと徐々に沢音が遠ざかって、代わりに逆光を背に受けて黒く輝く前天塩岳が姿を魅せてくれるだろう。 
ひと汗をかく程に登りつめると、天塩岳の主稜線上の端に出る。 ここで林道へ下る《新道》の正規ルートを右に分けて、穏やかな傾斜の続く天塩岳稜線を歩いていく。
 

天塩岳へは緩やかな
起伏を越えていく

稜線上はお花畑あり、山上庭園あり・・と、展望と共に楽しませてくれる。 山上庭園では、ナキウサギが甲高い鳴き声を響かせている事だろう。 人影の少ない山域だけに、無警戒に飛び出るナキウサギがその愛らしい姿を魅せてくれるかもしれない。 ナキウサギの窩である庭園地帯から、丘のような穏やかな膨らみを登りつめると、ハイマツとお花畑に囲まれた天塩円山 1433メートル の頂上に出る。
 

緑濃き天塩円山
 
周囲は、眩いばかりのライトグリーンの草原が広がっていて心地良い。 天塩円山からは視界いっぱいに広がる草原を伝って、前方にそびえる天塩岳への山上プロムナードが続く。 途中の稜線の窪みには、これまた立派な《天塩岳避難小屋》が建っている。 1周6時間余りで周れるこの登山コースでは利用価値は薄いが、立派な設備が綺麗なままであるのは心強い。
 

雲にけむる天塩岳と
天塩岳避難小屋
 

天塩岳へ続く道

避難小屋を過ぎると、いよいよ盟主・天塩岳へと取り付く。 足場は草原からハイマツ交じりの砂礫の登りへと変わり、ガレが転がる中をジグザグにつめていくと天塩岳の頂上だ。
 

天塩岳頂上標と前天塩岳
 
天塩岳の頂上からは、雲海より突き出す大雪の山なみ、ライトグリーンの草原を広げる天塩山域、山火事跡が生々しい前天塩岳、《天塩川》源流を刻む深い沢筋など素晴らしい展望が広がる。
また、渚滑岳であろうか、尖った峰を2つ突き立てる特異な山容の峰にも目を奪われる。
 
天塩岳稜線に遊ぶ

頂上より望む
前天塩岳と渚滑岳
 

頂上より続く柔らかいうねり
 

鋭い角を魅せる渚滑岳

山上での眺めを十二分に味わったなら、眼前に対峙する前天塩岳へ進路を取ろう。 山頂直下の小さなお花畑を伝うと、左へ折れてハイマツの生い茂る中を前天塩岳との鞍部へと下っていく。 これが結構な急下降で、前天塩岳への登り返しを含めて所要は約1時間という所であろうか。 前天塩岳を巻く短絡道を分けて、山火事跡のハイマツの白骸が覆う中を縫うようにつめていくと前天塩岳 1540メートル 頂上だ。
 

山火事跡のハイマツワラと西天塩岳
 
前天塩岳の頂上からは、山火事で焼けて白骸化したハイマツワラの斜面を前景に飾って、天塩岳本峰が神秘的な眺めを魅せてくれる。 また、天塩岳の背後には、チョコチョコと突き出した大雪山も望めるだろう。
 

西天塩岳の背後には大雪の山々が
 

山火事跡のハイマツワラと
深い山なみ
 
それにも増してこの前天塩岳の魅力を引き立てているのは、高山植物の“白の女王”が咲いている事であろう。 世にも珍しい白いコマクサである。 赤いコマクサと共に、山火事跡の砂礫サークルに清楚な姿を魅せてくれる。 山火事が土壌をどう変化させたのか、正に自然の復元力の神秘である。
しばし、この神秘の花園で戯れよう。
 

白の女王 降臨

山火事跡の砂礫帯が途切れると、樹林帯に突入して約700mの急下降となる。 始めにも述べたが、正周回のルートを取ると、この下りがイッキ登りとなるのである。 約1時間半下り続けると、《天塩川》の源流沢を伝って直接天塩岳へ突き上げる《旧道》ルートを併せて(《旧道》ルートは沢沿いの踏跡程度との事で、一般向けではない)、《天塩川》の源流沢の右岸を伝うようになる。 

後は2~3度沢を渡り、《新道》分岐で登りに使ったコースと合流して《天塩岳ヒュッテ》へと歩いていくのみだ。 ヒュッテを早朝出発すると、正午前後には戻ってくる事ができるだろう。 
なお、山旅の後の温泉であるが、下川方面ならば《五味温泉》、上川方面なら《共和温泉》とクアハウスがあるので心強い。

   ※ 詳しくは、メインサイトより『天塩岳』を御覧下さい。
 
 
 
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