2014-03-23 (Sun)✎
『日本百景』 春 第112回 比良連山 〔滋賀県〕
重厚な山の連なり
1200mそこそこの山の景色とは思えない
比良連山 ひられんざん (琵琶湖国定公園)
比良連山は主峰・武奈ヶ岳 1214メートル を中心とした山地であるが、標高はさして高くなく日帰り登山が可能な山として関西圏で人気のある所だ。 眺望も、琵琶湖・伊吹山などが遠望できて楽しい。
比良連山は主峰・武奈ヶ岳 1214メートル を中心とした山地であるが、標高はさして高くなく日帰り登山が可能な山として関西圏で人気のある所だ。 眺望も、琵琶湖・伊吹山などが遠望できて楽しい。
そして、何よりもこの山の魅力となっているのは、冬山登山の初級コースが設定できるという事である。 この山域はある程度雪が積もるので、本格的な冬山訓練ができるのである。 また、冬の武奈ヶ岳山頂からの眺望は、峰々が全て白銀に変わり素晴らしい。
比良連山縦走ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR京都駅より鉄道(0:45)→北小松駅(0:50)→楊梅ノ滝(1:30)→ヤケ山
(1:45)→釈迦岳(1:20)→比良ロッジ(0:20)→ヤクモヶ原キャンプ場
《2日目》 ヤクモヶ原キャンプ場より武奈ヶ岳往復・所要約2:20(0:35)→金糞峠
《2日目》 ヤクモヶ原キャンプ場より武奈ヶ岳往復・所要約2:20(0:35)→金糞峠
(3:20)→打見山(1:00)→小女朗ヶ池
《3日目》 小女朗ヶ池(1:00)→薬師滝(1:00)→JR蓬莱駅より鉄道(0:40)→JR京都駅
《1日目》 北小松より北比良稜線縦走
今回は、JR北小松駅を起点に《比良連山》を縦走してみよう。 行程的にはかなりハードコースとなるので、初級者は途中までロープウェイなどを利用した方がいいかもしれない。
しかし、ハードコースを乗りきった時の充足感、これがあるから登山はやめられないのだ・・と思う。
《3日目》 小女朗ヶ池(1:00)→薬師滝(1:00)→JR蓬莱駅より鉄道(0:40)→JR京都駅
《1日目》 北小松より北比良稜線縦走
今回は、JR北小松駅を起点に《比良連山》を縦走してみよう。 行程的にはかなりハードコースとなるので、初級者は途中までロープウェイなどを利用した方がいいかもしれない。
しかし、ハードコースを乗りきった時の充足感、これがあるから登山はやめられないのだ・・と思う。
基礎体力を高めて、体調を整えて是非アタックしたいコースである。 それでは、このコースを使って《比良連山》を縦走してみよう。
・・JR北小松駅で下車して、急勾配の舗装道路を登っていく。 この舗装道路はかなりの急勾配で、登山靴履きではふくら脛が大いに突っ張ることだろう。 約50分、《比良山岳センター》の建物を越えて更に登りつめると、《楊梅ノ滝分岐》に出る。 舗装道路はここまでだ。
この地点の標高は僅か260m。 これだけ汗をかくとはいったい何なのか・・と思える程に汗をかく。
それは、ほぼ海抜0m地点から登り始めているに他ならないからである。 標高1200mそこそこの山なれど、獲得標高差は1200m~1300mを数える“侮れない”コースなのだ。
・・JR北小松駅で下車して、急勾配の舗装道路を登っていく。 この舗装道路はかなりの急勾配で、登山靴履きではふくら脛が大いに突っ張ることだろう。 約50分、《比良山岳センター》の建物を越えて更に登りつめると、《楊梅ノ滝分岐》に出る。 舗装道路はここまでだ。
この地点の標高は僅か260m。 これだけ汗をかくとはいったい何なのか・・と思える程に汗をかく。
それは、ほぼ海抜0m地点から登り始めているに他ならないからである。 標高1200mそこそこの山なれど、獲得標高差は1200m~1300mを数える“侮れない”コースなのだ。
比良連山 尾根概念図
さて、少々汗をかき過ぎたかもしれないが、まだまだこれは“前座”に過ぎない。 登山コースは、舗装道の途切れるこの地点から始まるのだ。 分岐を左へ行けば滝を俯瞰しながら行く尾根道ルート、右へ行けば《楊梅ノ滝》を直接登る沢コースである。 沢コースを行くと数回の徒渉があるので、その装備がなければ靴の中を濡らすハメとなる。 ここは縦走が目的で、のっけから靴の中を濡らす訳にもいかないので、左の尾根道を行こう。
なお、余裕があれば、分岐に荷物をデポって滝見物(滝までは遊歩道がある)もいいだろう。
ちなみに、この《楊梅ノ滝》は雌雄の二つからなり、下の雌滝が落差15m・上の雄滝は落差40m近くあり、比良山系では最大の滝とのことである。 また、この滝の呼び名は、『楊梅』と書いて“ようばい”と読む説と、“やまもも”と呼ぶ説があるとの事である。 沢コースを行く場合、雌滝の上からはちょっとした滝遡上となるので気を引き締めていこう。
さて、滝見物を終えて荷物を回収したなら、分岐の左へ進路を取って尾根筋を登っていこう。
雑木のモシャモシャした所を登っていくと、《涼峠》と呼ばれる分岐に出る。 景観を求めるなら右を行こう。 右の《寒風峠》経由の道の途中には、《獅子ヶ谷》の源流が創りだした“オトシ”と呼ばれる自然庭園がある。 但し、左の尾根道より30分余計に時間がかかるのであるが。 まぁ、そこは体力や時間と相談しながら決めればいいだろう。
北比良・ヤケ岳より武奈ヶ岳を望む
さて、左の尾根筋の道は、相変わらず雑木林のモシャモシャした感じの道が続く。
《涼峠》から40分ほど登ると、雑木林を抜けてクマザサに覆われたヤケ山の上に出る。
ここがまた名称の如く風が全くそよがず、“焼ける”ように熱い所なのである。
しかし、ここで何とか稜線上に出る事ができたのである。 これからは稜線を南へ伝っていくのだが、今度は猛烈なクマザサのブッシュが行く手を遮るようになる。 比良山系でもロープウェイやリフトから離れたこの区域は、歩行者がかなり少ない・・という事を端的に示しているのである。
特に大石辺りはクマザサの下が湿地状となっていて、足探りで進まなければならない所もある。
このクマザサのブッシュ帯を越えると、ヤケオ山への急登となる。 標高差250m。
しかも、暑苦しいクマザサのブッシュを掻き分けた直後なので、かなりコタえる急登だ。
登りきったヤケオ山には目印が一切なく、いささかがっかりするが、切れ落ちた《大谷》の断崖と雄大な《琵琶湖》の眺めに、何とか気を取り直せそうである。
ここで標高は、1000mを少し越えた位だ。 だが、鋭く切れ落ちた《大谷》の眺めに、その意識は完全に凌駕される事だろう。 やがて、シャクナゲの名所・釈迦岳 1060メートル の頂上にたどり着く。
特に大石辺りはクマザサの下が湿地状となっていて、足探りで進まなければならない所もある。
このクマザサのブッシュ帯を越えると、ヤケオ山への急登となる。 標高差250m。
しかも、暑苦しいクマザサのブッシュを掻き分けた直後なので、かなりコタえる急登だ。
登りきったヤケオ山には目印が一切なく、いささかがっかりするが、切れ落ちた《大谷》の断崖と雄大な《琵琶湖》の眺めに、何とか気を取り直せそうである。
ここで標高は、1000mを少し越えた位だ。 だが、鋭く切れ落ちた《大谷》の眺めに、その意識は完全に凌駕される事だろう。 やがて、シャクナゲの名所・釈迦岳 1060メートル の頂上にたどり着く。
シャカ岳にて
かつての山仲間と
後は、テレキャビンのゴンドラが行き交う《神爾 しんじ 谷》を見ながら、今日の宿泊場所・《ヤクモヶ原》まで歩いていくだけだが、途中のカラ岳からは主峰・武奈ヶ岳をはじめ、蛇谷ヶ峰・《八池谷》・《琵琶湖》・・と、360°の大展望が広がる。
最後にこの素晴らしい景色を目にしたなら、明日以降の行程への期待が大きく膨らむ事だろう。
今日は無理せず、主峰・武奈ヶ岳は明日に登ることにして《ヤクモヶ原》でテントを設営しよう。
この《ヤクモヶ原》キャンプ場は、洗い場付の炊事場がある快適なキャンプ場である。
また、体調を崩した時などは《比良ロッジ》などの宿泊場所もあるし、ゴンドラを使って下山も可能・・と、あらゆる事態に対応できるのもいい。 それでは、キャンプ場で明日の“山の夢”を結ぼう。
最後にこの素晴らしい景色を目にしたなら、明日以降の行程への期待が大きく膨らむ事だろう。
今日は無理せず、主峰・武奈ヶ岳は明日に登ることにして《ヤクモヶ原》でテントを設営しよう。
この《ヤクモヶ原》キャンプ場は、洗い場付の炊事場がある快適なキャンプ場である。
また、体調を崩した時などは《比良ロッジ》などの宿泊場所もあるし、ゴンドラを使って下山も可能・・と、あらゆる事態に対応できるのもいい。 それでは、キャンプ場で明日の“山の夢”を結ぼう。
武奈ヶ岳にて
さすがに四半世紀以上前は若いな
《2日目》 武奈ヶ岳を往復して南比良稜線縦走
今日は、《比良連山》の主峰・武奈ヶ岳を往復して、伝説が伝わる神秘の池・《小女朗池》まで縦走しよう。 今日も7時間超のハード行程になるので、なるべく早めに武奈ヶ岳を往復したいものである。
できるだけ時間のロスがないように、出発に際しては素早くテントを撤収できる状態に準備を整えてから武奈ヶ岳に挑もう。
今日は、《比良連山》の主峰・武奈ヶ岳を往復して、伝説が伝わる神秘の池・《小女朗池》まで縦走しよう。 今日も7時間超のハード行程になるので、なるべく早めに武奈ヶ岳を往復したいものである。
できるだけ時間のロスがないように、出発に際しては素早くテントを撤収できる状態に準備を整えてから武奈ヶ岳に挑もう。
武奈ヶ岳へは、道標に従ってキャンプ場裏手のブナの原生林の中を縫っていく。
さすがは《比良連山》の盟主ということで至る所に道標があり、まず迷うことはなさそうだ。
原生林の坂をつめると、上に武奈ヶ岳のピークが覗くルンゼ状のガレた急斜面に出る。
あとは、これをひと頑張りで比良最高峰・武奈ヶ岳 1214メートル 頂上だ。
頂上からの眺めは、360°の大パノラマだ。 この峰の中心に鶴翼の如く広がる《比良連山》の山なみ、そして日本一の湖・《琵琶湖》。 また、その対岸には独立峰・伊吹山が姿まろやかにたたずんでいる。
さすがは《比良連山》の盟主ということで至る所に道標があり、まず迷うことはなさそうだ。
原生林の坂をつめると、上に武奈ヶ岳のピークが覗くルンゼ状のガレた急斜面に出る。
あとは、これをひと頑張りで比良最高峰・武奈ヶ岳 1214メートル 頂上だ。
頂上からの眺めは、360°の大パノラマだ。 この峰の中心に鶴翼の如く広がる《比良連山》の山なみ、そして日本一の湖・《琵琶湖》。 また、その対岸には独立峰・伊吹山が姿まろやかにたたずんでいる。
伊吹山の横には、これと対照的に連山の美を魅せる鈴鹿の山なみが見渡せる。 振り返れば、《朽木》の山里がひっそりとたたずんでいる。 また、天気が良ければ、加賀の名峰・白山や木曽の御岳が雲海の合間に浮かんでいる事だろう。 これが望めたなら大満足である。
頂上で素晴らしい景色を味わったなら、テントを撤収して先に進むべく往路を下っていこう。
《ヤクモヶ原》キャンプ場に戻って、荷物を整えたなら出発だ。 遅くとも、9時にはキャンプ場を出発したいものである。
頂上で素晴らしい景色を味わったなら、テントを撤収して先に進むべく往路を下っていこう。
《ヤクモヶ原》キャンプ場に戻って、荷物を整えたなら出発だ。 遅くとも、9時にはキャンプ場を出発したいものである。
キャンプ場からは南の《金糞峠》へ南下していくが、テレキャビン駅に戻って稜線上を行く道と武奈ヶ岳の山裾の900m等高線上をたどるコースに分かれる。 前者は展望が楽しめるものの時間がかかり、後者は時間を20分短縮できるが展望はなし・・と、一長一短だ。 どちらを選ぶかは、その時の判断に委ねたい。
さて、歩いていくと、呼び名からくるイメージが著しく悪い《金糞峠》に着く。 この下には“金糞滝”もあるそうなのだが、呼び名から想像すると黄色い汁が滝となっていそうな感じがして嫌である。
さて、歩いていくと、呼び名からくるイメージが著しく悪い《金糞峠》に着く。 この下には“金糞滝”もあるそうなのだが、呼び名から想像すると黄色い汁が滝となっていそうな感じがして嫌である。
でも、この地名の名誉の為に、その由来を述べておこう。 もちろん、あの『生理的排泄物』とは無関係で、溶解した金属のカスが混じった石が多く転がっている事から名づけられた・・との事である。
豪雪をまとった堂満岳
峠からは、堂満岳の西側を巻くようにして主稜線をたどる。 武奈ヶ岳の頭や南比良の大きな山なみを見ながら進んでいくと、歴史に名を記す峠に次々と差しあたる。 展望の利く《南比良峠》、《琵琶湖》畔の遺跡部落を望む寂れ果てた《荒川峠》、古代人の通った峠・《葛川越》、木立の中の寂しき峠・《木戸峠》・・と乗り越えていく。 当然、峠があればピークもあるものなのだが、峠の間のピークはそれとなしに通り過ぎる位に存在感のないものばかりである。
アップダウンでこれらの峠を乗り越えるといつの間にか木立の中から抜け出して、見晴らしのいい《クロトノハゲ》に出る。 ここで、JR志賀駅へ下山道が分岐している。 やや単調な縦走に気が萎えたなら、下山するのもいいだろう。 後は、『びわこバレースキー場』のゲレンデリフトに沿って登っていくと蓬莱山 1174メートル 、ピークを越えて南側斜面に広がるクマザサの草原を下っていくと《小女郎峠》だ。
峠から西に少し下ると、悲哀伝説の色濃い《小女郎池》が見えてくる。 伝説については下に資料を記載したので、参照して頂きたい。 今夜は悲哀伝説を胸に、ここで一夜を結ぼう。
明日は、長い縦走を終えての下山である。
小女郎池伝説
ヤマケイ地図冊子より引用
《3日目》 小女郎谷を下山
朝、目覚めたなら、峠に出てみよう。 天気が良ければ、《琵琶湖》からの日の出が拝めるだろう。
朝、目覚めたなら、峠に出てみよう。 天気が良ければ、《琵琶湖》からの日の出が拝めるだろう。
日の出を拝んで朝食などを済ませたなら、さあ出発だ。
峠からは、雑木林のトンネルの中に入って急激に下っていく。 この下りを見て素直に感じることは、ズバリ“登りに使わなくて良かった”であろう。 イッキに500m下って、ようやくひと息つけそうな沢滝の上に出る。 この滝は、《薬師滝》と呼ばれる落差10m程の滝だ。 ここで喉を潤しながら、今までたどった比良の山々を思い返すのもいいだろう。
滝からは、沢を右に見て徐々に広がる扇状地を下っていく。 杉林や砂防ダムを数回越えていくといつしか砂利道、やがて舗装道に変わって、山の上では“灯”であった街が見えてくる。 後は、駆け出したくなる心を抑えながら、ゆっくりとJR蓬莱駅までの道程を歩いていこう。
峠からは、雑木林のトンネルの中に入って急激に下っていく。 この下りを見て素直に感じることは、ズバリ“登りに使わなくて良かった”であろう。 イッキに500m下って、ようやくひと息つけそうな沢滝の上に出る。 この滝は、《薬師滝》と呼ばれる落差10m程の滝だ。 ここで喉を潤しながら、今までたどった比良の山々を思い返すのもいいだろう。
滝からは、沢を右に見て徐々に広がる扇状地を下っていく。 杉林や砂防ダムを数回越えていくといつしか砂利道、やがて舗装道に変わって、山の上では“灯”であった街が見えてくる。 後は、駆け出したくなる心を抑えながら、ゆっくりとJR蓬莱駅までの道程を歩いていこう。
・・なお、この山行記録は四半世紀以上前の筆者高校山岳部在籍当時のもので、現況はかなり整備が進んでいるものと思われます。 ですので、参考程度に。
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