風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰次選の山々 第106回  次郎岌

名峰次選の山々 第106回 『194 次郎岌』 徳島県 
四国山系(剣山国定公園)1929m  コース難度 ★  体力度 ★
 

四国第三の高さを誇る峰・次郎笈
 
今回は〔名峰次選〕で、年末に入れ替えた6峰の内の1峰、四国の次郎岌(じろうぎゅう)を取り上げよう。 この山の魅力は、対峙してそびえる山系の盟主・剣山より望む美しい容姿にあるだろう。
そして、たおやかな稜線に広がるササ原も、この峰の魅力をより大きくしている。 それでは剣山と共に、最もこの峰が美しく望める時に登ってみよう。
 

剣山~次郎岌 周遊ルート 行程図
 
   行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
貞光町市街より車(1:15)→見ノ残(0:45)→西島リフト駅(0:45)→剣山(0:50)→次郎笈
(0:50)→西島リフト駅(0:30)→見ノ残より車(1:15)→貞光町市街

剣山は登山口の《見ノ残》が標高1400mと高く、初心者にはうってつけの山である。 だがこの事は、それなりに山の経験を積んできた者にとってはやや物足りない事だろうと思う。 山の猛者ならば、剣山から山系の西の果てにそびえる三嶺 1893メートル までの縦走を行なって十分という所だろうか。 

ならば、ワテのように経験だけで技術の伴わない者(これは私のみにあてはまる事なのだが、ほとんどの人がこの反対であろう)はどうすればいいのか。 “そう、冬期の剣山に登るのがいいだろう”という事で、安易に登山計画を立ててみたのだが。 それでは、冬のひと味違った“名峰”の魅力を剣山に探しにいこう。
 
南国・四国といえども、厳冬期に標高1400mまで上がれば霜の1つもあろう。 まず、一番の難関は、登山口の《見ノ残》までのアプローチである。 バスなどの交通機関は夏のシーズンのみの運行で、通常期間は麓の集落でストップする。 

貞光町からおよそ50kmもあるので、よほどの強心臓!?でない限りタクシーは使えない。 
つまり、マイカーで向かうしかないのだ。 霜の一つどころか路面凍結さえあり得る道を、それも“四国横断ヨサク酷道”と陰口を叩かれる国道439号線を通るのである。 細い道に急坂・急カーブが続き、ともすれば登山行動より汗をかくかもしれない。 くれぐれも、安全運転でいこう。
 

剣山主稜線を望む

“余裕のある登山とは、余裕のあるアプローチである”。 これを登山信条に掲げるワテとしては、空の明るい内に《見ノ残》に着いておくのがセオリーと考えるのだが。 それでは、このアプローチ方法を前提に、翌朝日の出前に登山開始するプランで剣山に登ってみよう。
 
厳冬期ならば、日の出時刻は7時過ぎであろう。 《見ノ残》から剣山の山頂までは、1時間半位である。この事から逆算すると、登山開始は早朝5時頃がベストであろう。 もちろん、この季節での早朝5時は、まだ空の端に白みさえ出ていない真っ暗闇だ。 当然の事ながら、カンテラ・ヘットランプの類は必需品となる。
 

四国第三の高さを誇る次郎岌も
全国地図では無名峰だ

《見ノ残》の剣山登山口は、剣山神社の鳥居をくぐる所から始まる。 鳥居をくぐって石段を50段程登ると剣山神社の本殿があり、その横の神社の宿坊(登山者の宿泊可能)の脇を通って、しめ縄の飾ってある山門をくぐる。 ここから道は登山道らしくなり、徐々に高度を上げていく。
 
やがて、《見ノ残》からの参拝リフトの下を簡易トンネルでくぐると、『西島神社まで880m』の道標を見かける。 下を望むと、《見ノ残》の集落がまだ夜明け前の山里としてひっそりと街灯を灯していた。
さて、登山道は、森に分け入ってそれなりの急登で標高を稼いでいく。 

闇の森の中を行くので辺りは何も見えず、風が吹く毎に樹木がざわめく。 ちょっと、肝っ玉が必要な道だ。 この登りを乗りきると、不意に強く冷たい風が頬を叩くようになるだろう。 稜線に出たのである。 この付近でようやく空の端が白み始め、剣山の山体と《頂上小屋》が影となって眼前に浮かび上がってくる。 強い風が舞う稜線を伝っていくと、《西島神社》にたどり着く。 ここは参拝リフトの頂上乗場となっている。 

ここから剣山の頂上まではいくつものルートがあり、最短は残り930mから最長2150mまでと、いろいろコースを組める。 ここは御来光を頂上で拝むのが主目的なので、迷わず最短ルートを取る。
このコースは、《刀掛けの松》ルートと呼ばれている。 源平末期の悲運の幼帝・安徳帝が滅戦の前にこの御剣を奉納され、その際に刀を立て掛けた故事にちなむ大松がこの《刀掛けの松》だそうである。 

《刀掛けの松》を過ぎると頭上に《頂上小屋》が見えてきて、それに向かってつづら折りの坂が続く。 
最後のひと踏ん張りである。 これを乗り越えると《頂上小屋》(冬季閉鎖)の脇を抜けて、いよいよササ原が木枯らしにそよぐ山頂大平原に飛び出る。
 

剣山頂上にて
 
だだっ広い大平原の全てをめぐることができるように木道が敷設され、その木道が途切れた所が剣山 1955メートル の頂上だ。 ただ、ササ原が広がる大平原だけあって、風が吹き抜け寒い。
朝日が昇るまでのひととき、ここで耐える。
 

この年の初日の出は
独特の雰囲気だった

空はオレンジ色に染まり、前方にそびえる次郎笈が光を受けて骨っぽい節を浮き上がらせてくる。 
こうなると、待ちに待った御来光の瞬間がやってくる。 今朝の御来光は、空の中央部を鈍い雲層が居座っていたためなのか、何か起きる前兆の如く妙に眩い光だったような気がする。 
御来光を拝んだなら、眼中にそびえる次郎笈へいってみよう。
 

朝日を浴びて
黄金色に輝く次郎岌へ

剣山から一度大きく急下降するその途中では、次郎笈の山肌が昇りたての朝日によって黄金色に輝き、その美しさにしばし時が経つのを忘れる。 剣山から標高にして150mほど下って、《大剣神社》への巻道(登り時に剣山への最長ルートとされたコースである)を分けて、次郎笈へ下った分をそのまま急登でつめていく。 これを登りつめると、次郎笈 1929メートル の頂上だ。 
剣山から約50分の道程である。
 

石鎚山方向を望む

頂上からの眺めは、剣山のそれを凌ぐ素晴らしい眺望だ。 三嶺まで続く深い山なみも印象的だ。 
遙か遠くにそびえる三嶺へは、これより14km。 今日はこの地より望むだけにとどめて、もう一つの〔名峰次選〕のこの山へは次の機会にチャレンジしようと思う(実は、2013年末にアタックするものの、雪深く断念)。 そして、この頂からのとっておきの眺めは、霜に覆われた冬のササ原越しに望む剣山の姿だろう。
 

ササ原を前景に望む
剣山の艶姿

ここから望む剣山は、正に艶姿。 これぞ、“名峰”といわれる峰だけが放つ艶姿なのである。 
この眺めを十分満喫しよう。 きっと、その素晴らしさに興奮して時が立つのを忘れ、そして寒さも忘れる事だろう。 素晴らしき眺めに去り難い思いが募るが、頃よく引き上げよう。 

 大剱神社
 
帰りは往路を戻るが、途中の分岐で《大剣神社》を経るルートを取ってもいいだろう。 《大剣神社》を経る道には、山名の一端を担い神社の御神体となっている《大剣岩》や、《大剣岩》より湧き出る清泉・《御神水》がある。 この清水は、安徳帝が御髪を洗ったという故事が伝えられている。
 
神社よりは、頂上への短絡道と《西島神社》への下り道が分かれている。 この下り道を行くと、登りに通った道と合流してリフト乗場(もちろん、冬季は運休中)へ。 後は往路を忠実に下る。 健脚の人なら、10時過ぎには下の神社に下り着く事ができるだろう。

   ※ 詳細は、メインサイトより『剣山』を御覧下さい。
 
 
 
 
 



 
 
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