風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第92回  荒沢岳

『日本百景』 秋  第92回  荒沢岳  〔新潟県〕
 

秋色に彩られる荒沢岳
 
   越後の名峰めぐり えちごのめいほうめぐり (越後三山只見国定公園)
越後の山々は、花あり、湖あり、岩壁がおりなすアルペンの雰囲気あり、温泉ありと、あらゆる角度で山を楽しめる山域だ。 中でも、高山植物が豊富な越後駒ヶ岳 2003メートル と奥只見にそびえる弧高の峰・荒沢岳 1968メートル は、是非登ってみたい峰である。
 
毎冬、越後地方に降り積もる大量の雪が山を削り、急峻な谷を創造し、雪解け水が清らかな沢音をとどろかせる。 そしてこれらが、山での素晴らしい情景を演出してくれるのだ。 この自然が創造したワンダーランドに、自らの足を思う存分使って訪ねてみよう。
 

 

荒沢岳登山ルート 行程図
 
    行程表              駐車場・トイレ・山小屋情報
小出町市街より車(0:40)→奥只見湖・銀山平(2:40)→前嵓(1:40)→荒沢岳
(3:40)→奥只見湖・銀山平より車(0:40)→小出町市街

越後の名峰を語る上で忘れてはならないのが、この荒沢岳である。 穏やかな山容の越後の峰々の中にあって、コウモリの翼のように骨っぽい尾根を張り出した荒々しい山容を魅せている。 また、望む方角によっては、尖峰を天に衝き出すピラミタルな姿も魅せてくれる。
 
そして、この峰への登路も、荒々しい岩峰によって手強く、登り甲斐のあるものとなっている。
さて今回は、越後の名峰群の中にあって最も魅力的な山に、最も彩り鮮やかな秋の紅葉時に登ってみよう。
 

絢爛絵巻に彩られる
荒沢岳への尾根道
 
登山口となる《銀山平》は、《奥只見湖》の最奥端にあたる所で、《尾瀬》や《奥只見》の名峰への玄関口だ。 かつて、陸の孤島であったこの地域も、『奥只見シルバーライン』の開通によって今では車で容易に訪れる事ができる観光地となってしまった。
 
ここまで観光地化してしまうと“秘境”のイメージは薄れゆくが、山と大自然のおりなすその姿だけは自らの足をもって行かねば体感することは叶わない。 さぁ、これより彩り鮮やかな秋の峰々へ、大自然のキャンパスいっぱいに広がる秋の気配を味わいにいこう。

『奥只見シルバーライン』の《銀山平》出口にある《銀山茶屋》より、500mほど《枝折峠》側へ進んだ所が荒沢岳の登山口だ。 登山口には、荒沢岳への登路状況が立て看板で記してあるので一目確認していこう。
 
これを怠ると、筆者が体験した如くの怖ろしい思いをするので御用心。 登山道よりは、対岸の彩り鮮やかな山肌を見ながらイッキに高度を300m上げる急登だ。 日頃の鍛錬度合がすぐに把握できるような急登を乗りきると、標高1091mの三角点のある荒沢・前山に登り着く。
 

天高い秋空と越後駒ヶ岳

ここでは、誰しもひと息着きたくなるだろう。 それは、雄大に裾野を広げる越後駒ヶ岳と秋の気配。 
そして正面には、コウモリの翼の如く尾根を展開する荒沢岳の彩り鮮やかな山肌。 ちょうどひと汗かいて何かを欲する時に、的面の情景が広がるのだ。 しばし、カメラ片手に大自然からの最初の贈物を享受しよう。
 
この荒沢・前山からは少したわみ気味に下り、眼前にそびえる《前嵓》に向かって尾根筋を伝っていく。 
辺りは彩り鮮やかな紅葉群、しかし足下は落葉が霜に巻かれているなど、季節の変わり目を肌で感じ取れる中を歩いていく。 尾根筋を伝っての《前嵓》の大岩盤の付け根までは、緩やかな勾配で何ら問題はない。 

だが、《前嵓》に取り付くと様相は一変する。 これより、相次ぐ鎖場とハシゴ群、“門”や“ルンゼ”状に迫り出した岩崖が行く手を阻む。 取り付いた最初の内は、まだ“鎖場”であるので、何とかよじ登れる。
しかし、登っていくごとに、“鎖場”が“鎖場”ではなくなっていく。 それは、このルートが夏のシーズン以外は鎖を取り外してあるからである。 彩り鮮やかな秋でさえ、この山域はシーズンオフで静寂な所なのである。 

《前嵓》の肩に登り着くまでに1ヶ所オーバーハングでツルツルの岩肌の登りがあり、それも期待通り!?鎖が取り外してあって、周りの潅木をモンキークライムで這い上がらねばならない。
登山口の立て看板には、登山道のこのような状況が告知してあったのである。 当然、これを見て自重する登山者がほとんどで、何も見ずにやってくると前述のように怖い思いをするのだ。
 

石斧のような前嵓の岩塊

さて、《前嵓》の肩までやってくると、一度展望が開けて錦色に染まった荒沢岳への登路が一望できる。
《前嵓》の石斧のような大岩盤も美しく彩りづいていた。 しかし、ここからが本当の難路である。 
あの石斧に向かって一度下ってから、斧の刃渡り下部をトラバース気味に斜上していくのだ。
 
もちろん、鎖は一切取れ外してある。 鎖はあっても北アの奥穂高岳~西穂高岳なみの難路であるのに、これで鎖がないと大変怖ろしいのである。 登り時はそれ程キツくはないが、下りともなると足元が見え辛くおっかない。 概要は次の通りである。 

《前嵓》の肩からは、一枚岩状(傾斜はそれ程でもない)の岩盤を下り、底部に広がる沢の源頭のような岩石礫帯を跨ぐ。 ここから泡状にボコボコした崩岩帯を100mに渡って、ほぼ直登気味に登っていくのである。 手掛かりは、半分浮石みたいな泡状の岩ボコと、鎖を掛ける為に岩に打ち込まれたアングルのみである。
 

前嵓での試練
鎖のない岩場
 
下りの場合、泡状の岩が下方の視界を遮って、しかも浮石も多くホジションが取り辛い。
もう、アングルに手足を掛けながら下らねばならない。 この場所を鎖なしの状況で余裕に通過するには、登攀 とはん (岩登りの事)の技術が必要だろう。
 
これを登りつめると、取り外した鎖がトグロを巻いて置いてあった。 そして、そのすぐそばに、白ペンキで『頂上アト2.0h』と記された岩道標と《前嵓》の頂上標がある。 ここからは、《前嵓》の肩から望んだあの錦色の尾根上を一直線に頂上までつめていく。 登っていくごとに、紅葉樹林からダケカンバなどの潅木林に変わっていく。
 

頂へ・・
絢爛に彩る秋色から白銀の冬の世界へ

足下も落葉という秋の世界から、雹や氷という冬の世界に様変わりしつつある。 荒沢岳本峰に突き上げる《北ノ又川》支流の左俣源頭も、雹と氷の筋に飲み込まれていた。 尾根筋を一直線に登りつめて、花降岳 1891メートル と荒沢岳との稜線の肩に出る。 ここまでくれば、頂上まで一投足だ。 1ヶ所鎖場(大した事はない所だが、どういう訳かここには鎖があった)を越えて、越後の名峰・荒沢岳 1969メートル の頂上に立つ。
 

秋の筋雲と奥只見湖
 
越後の名峰からの展望は、周囲の山々の眺めを欲しいままにできる。 山らしい容姿を魅せる越後駒ヶ岳 2003メートル と、抱いていたイメージとは違う骨っぽい節々を《北ノ又》へ落とす中ノ岳 2085メートル 、その名が示す通りどこまでもまろやかな山容を魅せる平ヶ岳 2141メートル 、2つの角を突き上げて一目でそれと判別できる燧ヶ岳 2356メートル。
 
荒沢岳発 絶景かな

荒沢岳頂上より望む
越後“一郎”と“次郎”
 

燧ケ岳の二つのも手に取るように
 

未丈ヶ岳は深い秋色だ
 

深い山なみの果てには平ヶ岳も

その他にも、至仏山 2228メートル や浅草岳 1586メートル ・未丈ヶ岳 1553メートル、そして飯豊や奥日光の山なみも望める。 それは、この山が名だたる名峰群の中央の位置にあるからだろう。
山だけではない。 《北ノ又川》から続く《奥只見湖》も深い蒼を示し、周囲の錦絵巻に溶け込んでいる。

これ程の眺めを魅せられると真に去り難いが、ここには水もなく、ましてや幕営適地もない。 
秋も深まると、夕暮れも早くなる。 程よく切り上げて、下山に向けて気持ちを高めていこう。 
生半可な気持ちで下ると、あの難所は事故の元だ。 鎖が取り外されている時はより集中力が必要となり、下りも登りと同じ位に時間がかかるかもしれない。 なお、鎖は例年7月~10月初旬の登山シーズンのみ掛けられるとの事である。
 

秋満開の荒沢岳

前述の通りこの山域では、周囲が錦絵に染まる秋本番は“オフシーズン”なのである。 
下山を終えて“観光地”に戻ると、温泉あり、湖上遊覧船ありと、途端にシーズンたけなわとなる。 
日程に余裕があれば、行楽に費やすのもいいだろう。

   ※ 詳細は、メインサイトより『越後の名峰めぐり<2>』を御覧下さい。
 
 
 
 
 



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