風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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日本の滝を訪ねて 第106回  松見ノ滝

日本の滝を訪ねて  第106回  松見ノ滝  〔青森県〕
 

松見ノ滝
間もなく見頃の秋風景
滝の秋を読むのは難しい
 
   松見ノ滝  まつみのたき  落差 90mの段瀑  
   
   アプローチ  国道102号線・黄瀬バス停より黄瀬川林道を西へ9km
          徒歩で約3時間 林道は一般車両通行不可
 

松見ノ滝・黄瀬林道ルート 行程図
  
    行程表           駐車場・トイレ・山小屋情報
弘前市街より車(1:50)→黄瀬川林道ゲート(0:55)→林道分岐
(0:50)→㈱コバヤシ社有地ゲート(0:45)→松見ノ滝下り口(0:25)→松見ノ滝 
※ 帰路は往路の通り 黄瀬川林道ゲートまでの所要は約2:30
黄瀬川林道ゲートより車(1:50)→弘前市街

今回は、十和田湖周域の名瀑《松見ノ滝》を御紹介しよう。 この滝は「探勝をするのに困難が伴う」という、『みちのくの名瀑』に共通する特徴を示している。 その探勝を困難とする点は、何をおいても歩行距離とそれに伴う歩行時間だろう。 ルート自体はただひたすら歩くだけなのだが、その距離は約9kmにも及び、所要は片道3時間近くかかってしまう事だろう。 夏ならばいざ知らず、滝が最も彩られる秋は総じて日中の時間が短いのである。

それを踏まえて、滝前での滞在時間を含めて7時間超を設定しなければならないのだ。 そして、今回の行程では短い週末の連休にレンタカー利用を想定しているので、レンタカーの返却時間や都市圏への帰路にかかる時間などを考慮すると、かなり困難な滝探勝行程となってしまう。
 

この滝を目にするには
片道9kmの林道歩きの
試練が課せられる
 
また、あまりモタモタして7時間の所要を8時間、9時間としてしまうと、日が落ちて真っ暗な林道を歩くハメに陥ってしまうのだ。 計画性をもってカンテラ等を準備してならいざ知らず、遅れて日没に間に合わない・・となると途端に行き詰ってしまうのである。 また、秋の山峡ともなると16時を周ると薄暗くなって、17時はドップリ日が落ちてしまう事が想定されるのである。

日の出を7時と設定して行動したとして、7時間の所要で帰着が14時台。 これでは弘前駅に戻るのが16~17時となり、かろうじて夜行列車利用でのみ翌朝に都市圏に帰り着けるのである。 
もちろん、新幹線を利用しても盛岡か精々仙台止りで、その日の内の都市圏への帰着は不可であろう。

このように「日の出と共に」という計画で、週末の連休のみでこの滝を探勝すること自体が『甘い』と言わざるを得ないのである。 通常の計画を採るなら、この滝を探勝するのに3日という休暇が必要なのだ。 即ち、往路で東北の弘前までやってくるだけで1日、もちろん帰りも1日かかるのである。
そして、この滝の探勝で1日を目一杯使うのである。

だが、通常の考え方から逸脱した方法を採れば、これを可能にする方法もない訳ではない。
しかし、心身にかなりの負担をかける行程となってしまうのである。 従って、ワテの採った方法はあくまでも一つの『方法論』として、できる事なら採用しないで頂きたい。 3日という休暇を取って余裕ある行程で「日の出と共に」というセオリー通りに滝探勝を行い、そしてその夜は十和田湖で宿泊して、翌日に余裕ある行程で都市圏へ帰る計画を立てて頂きたいものである。

途中の見所といえばこの無名滝位
退屈という試練もある林道歩きだ
  
ワテは関西圏に居住しているので、首都圏よりも東北は遥か遠い地域だ。 それを踏まえて、2日の週末休みのみでこの《松見ノ滝》を探勝するとなると、方法論としてワテが実行した行程以外に見当たらないだろうと思う。

それは、「往復とも夜行の急行【きたぐに】の利用と弘前駅レンタカー利用で車中泊、翌朝は朝の4時より行動開始して《松見ノ滝》の探勝は午前11時までに終え、14時までに弘前へ戻り着く」といった行程である。
 
弘前14時半の特急にさえ乗れれば、日本海側の路線を伝って、月曜日の朝7時前に大阪に戻れるのだ。
簡単に書くとこのような行程なのだが、朝の4時の真っ暗闇の林道をトボトボ歩く事は、かなり神経を擦り減らす事になる。

そして、たぶん遭遇する事はないと思うが、『クマ注意』の立札の立つ林道である。 また、柵のない川の側を真っ暗闇の中、カンテラ一つで歩き抜くのである。 これらの記述を見て「バカな真似だ」と直感的に感じた方は、週末の土日を使っての『都市圏からの東北滝めぐり』は断念して頂きたい。 それは、これ以外の方法では物理的に不可能だからだ。
 
前置きでいつもの如く余計な事を羅列して脱線したが、ルートを歩いてみよう。 ワテが出発したのは4時過ぎであるが、時間は日照時・・即ちデータイムに探勝した事としてガイドするとしよう。

《奥入瀬渓流》探勝の拠点で、東北有数の温泉地として有名な《十和田湖温泉郷》の中心集落・焼山がこの滝の探勝の拠点となろうか。 この焼山の温泉街より約2kmほど十和田湖方向へ入っていくと、《黄瀬》というバス停前に着く。 このバス停の所からダートの林道(黄瀬川林道)が延び、その入口に立派な櫓の公衆トイレが建っている。 その林道に入り2~300m進むと、ヌタ地となった駐車スペースがあるゲート前に着く。

ゲートは常時施錠されて一般車は通行不可だ。 ゲート前の注意書きにも、「滝探勝の方はこれより徒歩で向かってください」と記されている。 そして、人ひとりが通れる位の通行門が左側に設けられている。 これをくぐって、後はひたすら林道歩きだ。

ワテが夜明け前の4時を選択したのは、この林道を脇目も振らず歩ききる事で時間短縮する目論見を持っていた事もあるが、デーライトの最中でも2つばかり無名滝が沢の対岸にあるのを見るだけの少々退屈な林道歩きだ。
 

第一継点の分岐 
この分岐は「山を甘くみるな!」の
看板がある右側をゆく
 
まず第一の通過目標地点として、林道の分岐が挙げられる。 この分岐はゲートから林道を約4.5km歩いた地点にあるが、この分岐は右手に進路を取る。 なお、右手の道には「山を甘く見るな!」との警告看板があり、100m程進むと橋で黄瀬川を渡るので、これを覚えておけば道を違える事はないだろう。

分岐を右に入っていくと、大きな粘土層の岩崖の前を横切ってから、この岩崖の中腹を斜め切ってせり上がっていく。 この辺りはちょっと急坂だが、山の急登に比べると車でも上がれるレベルの坂なので、登山経験者なら息も上がる事無く登りきる事ができるだろう。 天気が良ければ、登っている最中に右手に焼山の温泉街が見えてくる事だろう。

ワテの時は、この温泉街の灯は夜景のそれであったが。 まぁ、今までが時折月が見え隠れするだけの真っ暗闇だったから、この街の灯を見て多少なりともホッとひと息つけたのだか。 
この坂を登りきると、林道は緩やかな傾斜で真っ直ぐと奥に延びていく。 秋ならば、そろそろに落葉が道を覆ってくる事だろう。

落ち葉の柔らかい感触を踏みしめながら歩いていくと、林道最大の目標点である《㈱コバヤシ社有地ゲート》が見えてくる。 通常で、ここまで2時間足らずって所だろう。 夜明け前の4時過ぎに出たワテで、この辺りで夜が明けてきた。
 

この滝を紹介するサイトの全てが
『重要地点』とする
㈱コバヤシ社有地ゲート

この《㈱コバヤシ社有地ゲート》であるが、ゲートとはいっても錆びきった鎖で朽ちた門柱をつなぎ架けているだけのシロモノだ。 「取り敢えず施錠をして警告看板を掲示したので、後は人が勝手に入って事故を起こしても責任は持ちません」という意志と意図が丸見えのイヤな部類のゲートである。

この意図が丸見えのゲートを跨ぐと、道床のバラストは流され落葉に埋もれて、車の通行も四駆車でないと不可能のような様相となっていく。 また、気象災害で倒壊した樹林が横たわって道を塞ぐなと、林道の破損に関しても修復がおざなりとなっていく(一年後の再訪時はさすがに取り除かれていたが)。

ゲートから30分程歩くと、両脇に植林された杉の若木が並ぶようになる。 これを500mほど伝うと、右手に石で囲まれたサークルに杖が刺さり、その先にリボンを結んだ道標と、割れた「滝まで20分」の板標識が現れる。 秋ならば周囲の草が減退して容易に見つけられるが、夏はクマザサが付近に密集して滝への下降口を塞いで判りくいので注意されたい。
 

滝への降り口を示す
割れ板道標とリボンサークル
 
ここで長い林道歩きは終了であるが、ここまで健脚で2時間、普通の方で2時間半て所だろう。
これより落葉に完全埋め尽くされた滝への下降道を下っていくが、途中クマザサのブッシュあり、雨で落葉と共に道床を流されてぬかるんだ上に幅が細く削られている厄介な踏跡あり、激しい泥層となった傾斜のヌタ場など、かなり険悪な踏跡である。
 

リボンのある方向は
落葉で埋もれていた

特に雨で落葉と一緒に道床の土が流されて削られた所は、踏み外せば土手から転げ落ちかねない危険がつきまとうので注意が必要だ。 濡れた落葉の上に乗るとズル滑りとなり、転倒などをしたなら衣服が泥坊主と化してモチベーションを落とす事になるので用心されたい。
 

ひと雨毎に土床が
落葉と共に流れ落ち
土床が削られた上に
ヌルヌルで滑りやすい
 
帰りも2時間以上の歩行が待っているのだから、やる気(モチベーション)が殺がれるとタイムオーバーからの帰着不能などの不利益に直結しかねないのだ。 今までツラツラと記してきたが、この草付きの斜面はスニーカーなどの軽装では絶対に無理である事は認識頂けたと思う。 このぬかるみの急傾斜を軽装の靴で行くと、間違いなく足はボロボロになるだろう。 もし、このガイド文を目にしてこのような想像力が働かないのなら、沢や山・滝の探勝は諦めて頂いた方がいいと断言しよう。

さて、この下降点の入口に割れた木の板で「滝まで20分」とあったが、これは絶対に20分では不可能だろう。 ワテで29分かかってしまった。 下りが特別遅いワテはさて置き、普通の方でも25分はかかるであろう。 さぁ、この最後の困難を下りきると、2段の勇壮な滝が白布を掛ける広い河原に出る。
待ちに待った《松見ノ滝》との御対面だ。
 

松見ノ滝はあまり落差を
感じない滝ですね

放物線を描いた落水の軌跡を魅せる上段を強調するも良し、ドッシリした下段で力強い落水模様を描くも良し、周囲の巨大岩盤と彩られた秋をまじえて描くも良し・・である。 それでは、滝の素晴らしさを表現する言葉を見出せないので、拙い私の写真でその一端を表現できれば・・と思う。 
それでは、秋の《松見ノ滝》をごろうじろ。
 

秋の遅めに行くと
こんな感じでした
 

秋を読むのは難しい
 
思う存分カメラを通じて滝と語り合えたなら、帰路に着こうと思う。 帰りも往路を忠実に戻るが、ゲートに戻り着くまで2時間半から3時間かかるのだ。 夜明けと同時に出発したとして、標準的に帰り着ける時間は午後2時から3時頃であろう。
 
これは何を意味するかと言うと、あと1時間ほどモタモタしてたなら落日に間に合わなくなるかも・・という事なのだ。 そして秋深まった山峡の深き谷では、午後4時ともなると太陽は山向こうに沈み落ち、途端に薄暗くなるって事を頭に入れておくべきだろう。
 

滝の周囲はそろそろに
色着き始めていた

また、聞く所によると、「《蔦温泉》から林道を15キロ入った先に歩行時間を1時間ほど短縮できる短絡道がある」との事だが、地理を把握せぬ余所者が単独で15kmもの複雑に入り組んだ林道を車で駆け、そして全く通った事のない獣道を伝って行けると考えるなら、認識が甘いと言わざるを得ないだろう。 

止めておいた方が無難である。 なぜなら、道に迷ったり車が脱輪・破損したりするリスクを負う確率が高くなるからだ。 今回御紹介した《松見ノ滝》への正規ルートは、長いとは言えほぼ一本道で『道に迷う』というリスクが無く、確実に滝へ向かう事ができるのだから。 
「より安全に目的地に着く」という事も、探勝行動では重要なファクターと成り得るのである。
 
   ※ 詳細は、メインサイトより『みちのくの滝めぐり<3>』を御覧下さい。
 
 
 




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