2013-09-15 (Sun)✎
名峰百選の山々 第105回 『26 至仏山』 群馬県
独立峰(尾瀬国立公園) 2228m コース難度 ★ 体力度 ★
朝もやにけむる至仏山
尾瀬ヶ原より
尾瀬ヶ原~至仏山 縦走ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 会津高原駅よりバス(2:15)→沼山峠(0:50)→尾瀬沼(2:40)→下田代十字
(1:40)→山ノ鼻
《2日目》 山ノ鼻(1:10)→鳩待峠(2:30)→至仏山(1:50)→鳩待峠よりバス
(0:20)→戸倉〔バス乗継〕(1:35)→JR沼田駅
(1:40)→山ノ鼻
《2日目》 山ノ鼻(1:10)→鳩待峠(2:30)→至仏山(1:50)→鳩待峠よりバス
(0:20)→戸倉〔バス乗継〕(1:35)→JR沼田駅
尾瀬沼と日光連山
《1日目》 沼山峠より尾瀬沼・尾瀬ヶ原へ
今回は、最もアプローチが容易な《沼山峠》を起点として、『尾瀬』を縦断して《鳩待峠》に至る一番人気のあるコースを歩いてみよう。 もちろん、『尾瀬ヶ原』の重鎮・至仏山 2228メートル もコース設定に入っている。
さて、《沼山峠》までは、バスを利用した方が賢明だ。 それは『尾瀬ヶ原』の端にある至仏山より、車を回収するべく戻ってこなければならなくなる為である。 またシーズン中ともなると、首都圏からの夜行列車とそれに引き継ぐ早発のバス便が設定される。 これを利用すれば、朝の7時には《沼山峠》のバス停に到着する事ができるだろう。
今回は、最もアプローチが容易な《沼山峠》を起点として、『尾瀬』を縦断して《鳩待峠》に至る一番人気のあるコースを歩いてみよう。 もちろん、『尾瀬ヶ原』の重鎮・至仏山 2228メートル もコース設定に入っている。
さて、《沼山峠》までは、バスを利用した方が賢明だ。 それは『尾瀬ヶ原』の端にある至仏山より、車を回収するべく戻ってこなければならなくなる為である。 またシーズン中ともなると、首都圏からの夜行列車とそれに引き継ぐ早発のバス便が設定される。 これを利用すれば、朝の7時には《沼山峠》のバス停に到着する事ができるだろう。
尾瀬に咲く花々 その1
ヒツジグサ サワギキョウ
“茶屋”の建ち並ぶ《沼山峠》バス停の右手にある木の階段が、『尾瀬』への入口だ。 これを登っていくと樹林帯の中に木道が延びていて、これを15分ばかり登っていくと《沼山峠》の最高点に着く。
峠の上には案内標が立っているが、樹林帯に囲まれて展望は開けてはいない。 “峠からの眺め”は、この最高点より100m程進んだ展望台で味わう事ができる。 この展望台に立つと、《尾瀬沼》や《大江湿原》などがおりなす素晴らしい眺めを望む事ができる。
尾瀬に咲く花々 その2
コオニユリ ミズギボシ
展望を楽しんだなら、ニッコウキスゲが咲き乱れる《大江湿原》へ下っていこう。 大きくジグザグを切って緩やかに下ると、《大江湿原》の端に下り着く。 湿原内はほぼ完全に木道が敷設されているので、花に見とれて木道を踏み外さぬように注意したい。 湿原の天敵は“人間の足”なのであるから。
道は《小淵沢田代》への道を左に分けて、真っすぐに延びている。 途中、尾瀬の開拓に携わった平野家の墓所があり、この墓所の入口から、5分ばかり歩くと《長蔵小屋》だ。 ここまでは、1時間弱である。
ひと休みしたなら、《尾瀬ヶ原》に向けて歩いていこう。 《長蔵小屋》からは、来た道を少し戻って《大江湿原分岐》で進路を東に取り、《尾瀬沼》の沼畔沿いを進んでいく。 《大江湿原分岐》より20分程歩くと、燧ヶ岳への登路・『長英新道』を分ける。
もし、日程的に余裕があるのなら、このルートを使って《尾瀬沼》~燧ヶ岳~《尾瀬ヶ原》~至仏山の『尾瀬』完全縦走にチャレンジするといいだろう。 なお、燧ヶ岳については、前回の『名峰百選 第104回 燧ヶ岳』を参照して頂きたい。
尾瀬ヶ原全景
燧ヶ岳山頂より
『長英新道』を分けて、更に進むと《浅湖湿原》に出る。 辺りは、ニッコウキスゲ・サワギキョウなどの湿性の花がチラホラと咲いている。 《浅湖湿原》を抜けると《大入州半島》の潅木帯に突入し、これを抜け出るまでしばらく展望はお預けとなる。 この潅木帯を抜けると、再び《尾瀬沼》の沼畔に出て、畔の湿地帯を歩くようになる。
ここからが、《尾瀬沼》の“最高潮”である。 歩いていくうちに小さな湿原が次々と現れ、辺りは湿性の花々が咲き乱れている。 もちろん、お花畑越しに眺める《尾瀬沼》も絶品だ。 花と《尾瀬沼》のおりなす眺めを楽しみながら歩いていこう。 この湿地帯を抜ければ、尾瀬沼の左端にある《沼尻》に着く。 《沼尻》には立派な休憩所が建ち、ハイカー達の憩いの場となっている。
尾瀬に咲く花々 その3
コオニユリ ウサギギク
ひと休みしたなら、休憩所の裏手に延びる木道を歩いていこう。 《沼尻休憩所》から少し歩くと、左手に祠が建っている。 “沼尻そばや”である。 経緯は知らないが、その名の通り“そば”を祀っているとの事である。 道はこの辺りから樹林帯の中に入り、《尾瀬沼》より流れる《沼尻川》に沿って緩やかに下っていく。 下りきると、《白砂沢》を渡って《白砂田代》に出る。
この田代の中央には木道を挟んで左右に池塘があり、アクセントの効いた眺めを魅せている。
この小湿原を抜けると再び樹林帯に入り、5分程登ると《白砂乗越》である。 ここが《尾瀬沼》と《尾瀬ヶ原》を分ける境界で、後は《尾瀬ヶ原》に向かってひたすら下っていくだけだ。 ここから、《尾瀬ヶ原》の入口・《下田代十字》まで1時間位である。 燧ヶ岳から延びている『見晴新道』を併せれば、《下田代十字》は近い。
この田代の中央には木道を挟んで左右に池塘があり、アクセントの効いた眺めを魅せている。
この小湿原を抜けると再び樹林帯に入り、5分程登ると《白砂乗越》である。 ここが《尾瀬沼》と《尾瀬ヶ原》を分ける境界で、後は《尾瀬ヶ原》に向かってひたすら下っていくだけだ。 ここから、《尾瀬ヶ原》の入口・《下田代十字》まで1時間位である。 燧ヶ岳から延びている『見晴新道』を併せれば、《下田代十字》は近い。
至仏山と朝もやかかる尾瀬ヶ原
ここに泊まると
贅沢な尾瀬の朝を堪能できる
《下田代十字》は『尾瀬』の最大の宿泊地で、山荘が別館も含めると十数件も建ち並んでいる。
だが、これらの宿は風呂もあり、洋風の豪華な食事も可能で、もはや“山荘”というより“民宿・旅館”といった感じだ。 もし、燧ヶ岳に登ってきたのなら、この辺りで1日の行程を終えるにちょうどいいだろう。
だが、至仏山に登るのであれば、《山ノ鼻》まで進んでおきたい。
従って、ここは《尾瀬ヶ原》を縦断して《山ノ鼻》へ向かう事にしよう。 《下田代十字》よりは、緑眩しい湿原の中を真っすぐに延びる一本の木道を歩いていく。 眼前には、山裾を優雅に広げる至仏山がそびえている。 背丈の高い草に覆われた草原状の丘を30分程歩くと、《尾瀬ヶ原》を蛇行しながら流れる福島・群馬の“県境”である《沼尻川》を渡って、ほどなく《竜宮小屋》の建つ《中田代》に着く。
《尾瀬ヶ原》の景観は、これからいよいよ“最高潮”へと向かっていく。
尾瀬ヶ原にて その1
漂う雲を映す池塘
《竜宮小屋》を出ると木道に沿って大小様々な池塘が点在し、その水面にオゼコウホネ・ヒツジグサなどの水生植物が咲き競っている。 中でも、ヒツジグサの清楚な白には目を奪われる。
尾瀬ヶ原にて その2
深夜・羊の刻に花開くという
ヒツジグサ
またこの辺りは、珍しい《竜宮現象》を見る事ができる。 《竜宮現象》とは、湿原の一方から流れ出た水流が池塘の中をくぐり抜け、他方に流入する現象だ。 木道もこの現象を見やすいように、流入口と流出口で二手に分かれて敷設されている。
そして、正に“最高潮”なのは、《尾瀬沼》・《尾瀬ヶ原》の重鎮・燧ヶ岳と至仏山の美しきその姿を眺める事であろう。 眼前には優雅でしとやかな至仏山、振り返ると雄々しくそびえ立つ燧ヶ岳。
そして、これらの山々を水面に映し出す池塘の数々。 『尾瀬』の魅力とは、正にこれであろう。
そして、正に“最高潮”なのは、《尾瀬沼》・《尾瀬ヶ原》の重鎮・燧ヶ岳と至仏山の美しきその姿を眺める事であろう。 眼前には優雅でしとやかな至仏山、振り返ると雄々しくそびえ立つ燧ヶ岳。
そして、これらの山々を水面に映し出す池塘の数々。 『尾瀬』の魅力とは、正にこれであろう。
尾瀬ヶ原にて その3
池塘に影を落とす燧ヶ岳
だが、カメラを構えるとなると、国民的行楽地『尾瀬』ゆえにその人だかりに悩まされる。
もし、日程に余裕があるのなら《竜宮小屋》辺りを基点にして、早朝の人のいない時間帯に湿原散策するのもいいだろう。 早朝の『尾瀬』は、きっと格別の情景を魅せてくれるはずだ。
尾瀬ヶ原にて その4
静かなる雰囲気
これこそ尾瀬の醍醐味
さて、この《中田代》を過ぎると、《東電小屋》へ至る《ヨッピ川》沿いの道と合わさって、カキツバタの群落が咲き競う《牛首》を経て《上田代》へと続いていく。 《牛首》は《尾瀬ヶ原》の幅が最も狭まった所で、周りには大きな池塘が数多く点在する。 この池塘に影を落とす燧ヶ岳は、また格別である。
そして《上田代》。 ここは、コオニユリ・オトギリソウといった花は元より、池塘に浮かぶ“浮島”の妙が楽しめる所だ。
尾瀬ヶ原にて その5
池塘を漂う“浮島”
花を愛でて、そよ風にのって漂う“浮島”を楽しみながら歩いていくと、さしも広い《尾瀬ヶ原》もそろそろ終わりを告げる。 《ヨッピ川》を渡ると林の中に分け入り、その中を15分位歩いていくと、行楽客で賑わう《山ノ鼻》に着く。 《山ノ鼻》も、《下田代十字》同様に設備の整った“民宿街”である。
今日は、ここで1日の行程を終えよう。
尾瀬ヶ原にて その6
路傍に咲く
ノジギクの花
《2日目》 至仏山を往復して鳩待峠へ
山に登るには、早朝出発は絶対条件だ。 その為にも、ここはテント幕営が望ましい。 《山ノ鼻》の“民宿”は一般客、しかも家族連れが多いので、早朝の出発はし辛いであろうから。
山に登るには、早朝出発は絶対条件だ。 その為にも、ここはテント幕営が望ましい。 《山ノ鼻》の“民宿”は一般客、しかも家族連れが多いので、早朝の出発はし辛いであろうから。
《山ノ鼻》から《鳩待峠》へは階段状の木道を登っていくが、周囲の光景には幻滅させられる。
何と、電柱に高圧電線が架かっているではないか。 昨日の《尾瀬ヶ原》を味わった目には、腹立たしくも映る“物”である。 《尾瀬ヶ原》にそびえる至仏山の優雅な姿を“魅”とするなら、これは“非”そのものだ。
『尾瀬』の負の部分を垣間見た感じである。 この間は見るべきものもないので、足早に《鳩待峠》へ登り着く事ができるだろう。 要するに《鳩待峠》までは、まだ俗界を抜け出してはいないのだ。
さて、《鳩待峠》の広場奥にある登山口をくぐると、ササに覆われた緩やかな傾斜の道が続いている。
所々、急傾斜となるこの道を登りつめると1886.9mのピークをかすめるように通り抜け、その頂から広がる湿原の中を歩いていく。 この湿原には、タテヤマリンドウやイワオトギリなどの背丈の低い可憐な花が咲き競っている。
何と、電柱に高圧電線が架かっているではないか。 昨日の《尾瀬ヶ原》を味わった目には、腹立たしくも映る“物”である。 《尾瀬ヶ原》にそびえる至仏山の優雅な姿を“魅”とするなら、これは“非”そのものだ。
『尾瀬』の負の部分を垣間見た感じである。 この間は見るべきものもないので、足早に《鳩待峠》へ登り着く事ができるだろう。 要するに《鳩待峠》までは、まだ俗界を抜け出してはいないのだ。
さて、《鳩待峠》の広場奥にある登山口をくぐると、ササに覆われた緩やかな傾斜の道が続いている。
所々、急傾斜となるこの道を登りつめると1886.9mのピークをかすめるように通り抜け、その頂から広がる湿原の中を歩いていく。 この湿原には、タテヤマリンドウやイワオトギリなどの背丈の低い可憐な花が咲き競っている。
至仏山に咲く花 その1
タテヤマリンドウ チングルマ
この小湿原を抜けて更に15分程登ると、至仏山の湧き水・《オヤマ沢》の清水を口にする事ができるだろう。 この《オヤマ沢》の湧き水はコース唯一の水場なので、水筒などに汲んでおくといいだろう。
この水場より少しばかり登ると、展望が開けて正面に笠ヶ岳 2058メートル や上州武尊山 2158メートル などが望める。
再び《オヤマ田代》なる湿原を通り、『湯ノ小屋温泉』からの登路と合わさって前方に小至仏山の岩稜がそびえるガレ場に出る。 一度このガレ場を急下降して、ゴツゴツした小至仏山への“岩登り”に至る。
所々、補助ロープをつけている箇所もあるので、足元には注意したい。 なお、この辺りは、“花”の至仏山の中でも一番のお花畑だ。
所々、補助ロープをつけている箇所もあるので、足元には注意したい。 なお、この辺りは、“花”の至仏山の中でも一番のお花畑だ。
至仏山に咲く花 その2
ハクサンイチゲ イワギキョウ
オゼソウ・チングルマ・ハクサンイチゲなど、色とりどりの花々が咲き乱れるのだ。 小至仏山の岩稜を登りつめると、ハイマツ越しに至仏山の頂が望まれる。 麓の《尾瀬ヶ原》から見た優雅な姿とは違って、ゴツゴツした岩尾根を集めてドーム状を成していかつい感じである。
至仏山頂上にて
小至仏山からは見た目通り、ゴツゴツした岩の転がるガレ場をトラバース気味に登っていく。
至仏山の手前に立つ岩の門をくぐり抜け、ひと登りすると至仏山の山頂である。 山頂からは、《尾瀬ヶ原》の広がりとその背後にそびえる燧ケ岳のおりなす素晴らしき眺めを望む事ができる。
また、四方遮るものはなく、平ヶ岳 2141メートル や越後三山・会津駒ヶ岳 2133メートル など名峰目白押しだ。
至仏山の頂上より眺める
尾瀬ヶ原と燧ヶ岳
奥越後の山々を望む
山頂にある山なみの挿絵入りコンパス盤で、山の名前と方位を確かめながら望むと、より一層楽しめるだろう。 展望を十分に堪能したなら、往路を戻ろう。 バスは《鳩待峠》から1時間に1本の割合で出ているので、時間の心配はない。 カメラ片手に花でも撮りながら、ゆっくりと下っていこう。
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No title * by 風来梨
yamanbouさん、こんにちは。
お返事が遅れましてスミマセン。
燧ヶ岳の樹氷は、見てみたいですね。
尾瀬はやはり水芭蕉の頃に行きたいですけど、なかなか時期を合わせれなくて。
朝もやの至仏山は、テント幕営の賜物です。 6時過ぎの旅館(山荘)宿泊者はまだ出発してませんから、比較的尾瀬ヶ原のフィールドは静かです。
今年は夏にどこも行けなかったので、体育の日あたりに餓鬼岳へでも計画中でっす。
お返事が遅れましてスミマセン。
燧ヶ岳の樹氷は、見てみたいですね。
尾瀬はやはり水芭蕉の頃に行きたいですけど、なかなか時期を合わせれなくて。
朝もやの至仏山は、テント幕営の賜物です。 6時過ぎの旅館(山荘)宿泊者はまだ出発してませんから、比較的尾瀬ヶ原のフィールドは静かです。
今年は夏にどこも行けなかったので、体育の日あたりに餓鬼岳へでも計画中でっす。
燧ケ岳は樹氷でしたし尾瀬ヶ原の木道は凍ってました。
風来梨さんと同じように池糖に写る燧ケ岳も狙ったんですが
風で水面は波打ってボツでした。
至仏山と朝もやの写真がいいですね。。