風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

TOP >  名峰百選・はじめに >  名峰百選・中部山岳 >  名峰百選の山々 第101回  塩見岳 act 1

名峰百選の山々 第101回  塩見岳 act 1

名峰百選の山々 第101回 『77 塩見岳 act 1』  長野県・静岡県
塩見山系(南アルプス国立公園) 3052m  コース難度 ★★  体力度 ★★★
 

ギラリと光る漆黒の鉄冑
塩見岳
 
  南アルプス南部 みなみアルプスなんぶ (南アルプス国立公園)
南アルプスは白峰三山を越えると、頂を踏むのに二日がかりとなる。 それだけに、深山の趣をあふれんばかりに感じ取る事ができるのである。 まず、『漆黒の鉄兜』の異名を持つ塩見岳 3052メートル。 
この山は南アルプスのほぼ中央にあり、どこから登っても二日以上かかるのだが、頂上に立つと南・中央・北と全てのアルプス、そして日本の全ての3000m級の山を見渡せるのである。
 

 

塩見岳・蝙蝠岳 登山ルート行程図
 
    行程記録             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR・伊那大島駅よりバス(1:50)→鳥倉登山口(2:50)→三伏峠
《2日目》 三伏峠(1:20)→本谷山(1:50)→塩見小屋
(1:30)→塩見岳
     (0:35)→蝙蝠岳分岐
《3日目》 蝙蝠岳分岐より蝙蝠岳往復、所要・片道2時間(0:45)→塩見岳(1:05)→塩見小屋
《4日目》 塩見小屋(1:30)→本谷山(1:20)→三伏峠(2:00)→鳥倉登山口よりバス
     (1:50)→JR・伊那大島駅
 

チシマフウロ
 
  《1日目》 三伏峠まで・・
伊那大島からのバスは、朝の便と昼の便がある。 朝の便は6時台で、これに乗るには伊那大島駅の周辺で宿泊しない無理だろう。 従って、昼の12時台の便に乗る事にしよう。 バスは14:15の定刻より10分程早く着いた。 以前に下山で通った事もあるので“勝手知ったる”と、即効『登山届』を書いて出発。

登り始めの鹿の食害対策のビニールをグルグル巻きにした植樹帯は、ハイペースで登っていく。
本来なら『午後から登山』などセオリーとしては“もっての他”なのであるが、今日は《三伏峠》までの3時間程度の登りのみなので、今回は“セオリー無視”を許してネ。
 

花の名前知らないけれど
道中にはいっぱい咲いていた

今日はカメラを取り出す事もないし、また暗くなる前の17時半位には着いておきたい。 いつもなら植樹帯の登りを抜けた頂点で“ヘタっている”ハズなのだが、ノンストップでゆく。 《三伏峠》到着は、17時3分前。 小屋でテントの受付をして、テントを設営する。
 
水は小屋で買うか、往復30分の旧《三伏沢小屋》の手前まで汲みに行かねばならない。 旧《三伏沢小屋》前のテント場は、遠の昔に閉鎖されちゃったんだって。 条件的には、あちらのテント場の方が良かったんだけどね。 離れていると管理が大変なのと、監視がいないと場が荒れるので仕方がないか。

さて、夕食であるが、着くのが遅くなってしまう事も想定して、火を使う事をやめて『コンビニ・おにぎり』を持ち込んでいた。 そして、飲み水は登ってきた時の飲料水の残りで事足りる。
最悪、小屋で買ってもいいのだし。 こうすれば、『午後から登山』のマイナス面をカバーできる。
 

コオニユリ
三伏峠小屋管理の高山植物養成区
で一輪だけ咲いていた
 
水は翌日の登り始める前に汲む事として、とっとと『コンビニ・おにぎり』を食って寝に入る。
空は暗くなり始めた18時位より、雨がしたたり落ちてきた。 この雨が夜半中にやむ事を願って就寝する。
 


 

明けの空に美しい三角形を
浮かび上げる間ノ岳
天気が良ければこのような情景が望める
 
  《2日目》 塩見岳を経て、南ア・最後の未踏峰の懐へ・・
昨日、テント受付時に小屋で聞いた事なのだが、塩見岳奥の《雪投沢》は原則的に幕営禁止になっているのだそうで。 そして、ホントかウソか解らないが、「《雪投沢》の水場もかなり下の沢筋まで下らねば水は得れない」と聞く。 これを聞いて、計画の修正の必要が出てくる。 
なぜなら、『水がない』のはその場所での幕営が困難となるからだ。
 
稜線に咲く花 その1

ハクサンフウロ

当初の計画では飲料水のみを持ち、登路での補給は《塩見小屋》でジュースでも飲んで、今夜と明日の2日間の生活・行動水は《雪投沢》で補給するというものだった。 今の体力ではキツい事が予想される塩見岳への登りは、『水』という荷を最小にして楽に挑む・・という腹づもりであった。

だが、「《雪投沢》の水場が遠くて確保の成否が不透明」と知らされたなら、最悪の事を考えると見送らざるを得ないのである。 となると、別の手を考えねばならなくなる。 まずは、《塩見小屋》に連泊しての空身での蝙蝠岳往復だが、これは『金がかかり過ぎる』のである。 しかも、幕営を見越してあまり所持金を持ってきていなかったので、“物理的”に不可能(つまり、持ち金が足りん!って事ですね)であった。
 
稜線に咲く花 その2

チシマギキョウ

前案が『ボツ』となると、後は根性論か撤退論しかなくなるのである。 天気が悪い訳(夜半過ぎの雨は上がって薄日が射している)でもないので、“撤退”というのは有り得ないだろう。 となると、“根性”を出して水を担ぎ上げるか、《雪投沢》に水がある事を信じる“博打”に出るか・・である。
 
稜線に咲く花 その3

トリカブト

“博打”は外れた場合の痛手が今回の山行の目的である『蝙蝠岳踏破』の断念につながりかねないので、これは先程いったように“見送り”であろう。 そうなると、選択肢は水を担ぐ“根性”論しかなくなるのである。 だが、今は御存知!?のように“根性”があまりない。 なので、2泊分の水を担ぐ事も不可能だ。 それに、2日分の水を持ち運ぶ水筒も持っていないしね。

稜線に咲く花 その4

イワツメクサ
 
・・という訳で半分の2.5㍑を担ぎ、とりあえず1泊を水のない稜線で凌ぎ、次の日は様子見で柔軟に対応しよう・・という計画にした。 この持参水には手を着けずに、途中の行動水の補給は“《塩見小屋》でジュース”でいいだろう。 これで今日の幕営と、明日の蝙蝠岳往復の行動水は確保できた訳である。
 

スペクトルの空に浮き立つ塩見岳のシルエット
以前は幕営地だった三伏沢にて

さあ、出発だ。 小屋へ行って“簡易水筒”を得るべく、ペットボトルのジュースを買って朝食のパンと共に飲む。 そして、登山道の途中から分岐している水場までいって、荷物をデポって水を2.5㍑汲んできてから“スタート”だ。 水を汲んで、今の荷は23㎏位。 担ぐだけなら、そんなに苦もない重さだ。
だが、これを担いで総計標高差900mを登るとなると、後ほどにジワジワと効いてくるのである。

幸い、空は雨上がりの朝で曇りがちだった事で暑くはなかったので、荷を担いでるにしてはハイペースで歩いていく。 程なく、三伏山という地図上に標高の記載のないピークを越える。 
頂上は《三伏峠小屋》の展望台で、正面に塩見岳がデカデカと見渡せる。 だが、出発した小屋もデカデカと見えて、まだ少しも進んでいない事を思い知らされる。
 

真に『漆黒の鉄兜』との
呼称が相応しい塩見岳

ここから潅木の中を緩やかに下っていく。 この下りがダラダラと長く、かなりもったいない印象を与える。 約20~30分下って通行禁止看板とゼブラロープで進入を拒絶している旧《三伏沢小屋》への分岐を見やると、本谷山への登り返しだ。 この登りも基本的にはダラダラとしていて、あまり登り甲斐のない道だ。 
お花畑もあるものの、もうピークを過ぎた秋の花で、足を止める程の感慨も湧かなかった。
まぁ、これは帰りにでも撮るか。
 

樹間より望む荒川三山
天気が良ければ望む事ができる

登りでペースは落ちたものの、最近では稀ないい“手応え”で登っていく。 いい“手応え”とは、登っている最中に途中でダレて立ち止まる事はなかったのである。 立ち止まらないものだから、遅くても確実に進んでいく。 そして、体力がないのは重々承知している事なので、“ゆっくり、ゆっくり”と呟きながら、立ち止まるまでに息が上がらぬように歩いていく。

これを登りつめると本谷山 2658メートル だ。 でも、この時間帯がこの日で最も“曇っていた”状態で、頂上では塩見岳も見えない位だった。 だが、登りでこれだけ涼しいと身体への負担が軽減されて好都合なので、「状況的にはベストかな」って思える。 今で7:30。 ここまでの所要は、1時間と15分位か。 
それ程の疲れもなく少し暑くなった程度だったので、防寒着代りのカッパを脱いで出発。

ここからは、またダラダラとした下りが始まる。 本谷山へ登った分をそのまま下り、鞍部の水はけの悪いヌタ場に出る。 水はけは悪そうなものの、平らな所が多くビバーク地点としては使えそうなので、一応“もしか”の時の為にチェックを入れておく。
 

ホシガラスかな?
野鳥の名前には疎いもんで

この鞍部のヌタ場を抜けると、しばらく平坦な道が続いてから《塩見小屋》の建つ塩見岳の肩への急登となる。 ツガなのだろうか、ボロボロと皮が剥がれ落ちる樹々が囲む樹林帯をジグザクを切りながら登っていく。 この急登を大方登りつめると、角柱の南ア固有の道標が現れる。
その角柱には、『塩見新道分岐』とあった。
 
塩見小屋付近にて その1

南アの『戦艦大和』
巨大峰・間ノ岳
 

鳳凰三山と熊ノ平へと続く稜線

この角柱から少し登ると、稜線上に出て展望がワッと開ける。 本谷山では雨が落ちてきそうな様相であった空は、『快晴一歩手前』までに回復していた。 塩見岳は元より、間ノ岳や仙丈ケ岳、甲斐駒ヶ岳、振り返れば荒川三山も雲に覆われがちだったが姿を魅せてくれた。 稜線上に出て山々を見渡すと、程なく《塩見小屋》に着く。 9:15。 なかなかの好タイムだ。
 
塩見岳付近にて その2

仙丈ケ岳
薄っすらと頂上に抱くカールも見渡せる
 

間ノ岳の背後に北岳も
 
  続く行程は、『名峰百選 第102回 塩見岳 act 2』にて
 
  ※ 詳細は、メインサイトの『撮影旅行記』より『南ア・最後の未踏区へ その2』を御覧下さい。
 
 




 
 
 
関連記事
スポンサーサイト



コメント






管理者にだけ表示を許可