2013-08-15 (Thu)✎
名峰次選の山々 第94回『175 中白峰 ,176 三峰岳 act2』 山梨県・長野県・静岡県
白峰山系(南アルプス国立公園) 中白峰 3055m ,三峰岳 2999m
コース難度 ★★ 体力度 ★★★★
:
「なぜトップが塩見岳?」という問いかけは
筆者を困らせるだけなので御遠慮下さい(笑)
白峰三山~塩見岳 縦走路 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR甲府駅よりバス(2:05)→広河原(2:30)→大樺沢二俣(2:00)→八本歯ノコル
(0:45)→吊尾根分岐(0:15)→北岳(0:50)→北岳山荘
《2日目》 北岳山荘(1:35)→間ノ岳(0:40)→三峰岳(2:00)→熊ノ平
《3日目》 熊ノ平(2:45)→北荒川岳(2:00)→塩見岳(1:00)→塩見小屋
《2日目》 北岳山荘(1:35)→間ノ岳(0:40)→三峰岳(2:00)→熊ノ平
《3日目》 熊ノ平(2:45)→北荒川岳(2:00)→塩見岳(1:00)→塩見小屋
(2:20)→三伏沢幕営場
《4日目》 三伏沢幕営場(0:20)→三伏峠(3:30)→塩川よりバス
《4日目》 三伏沢幕営場(0:20)→三伏峠(3:30)→塩川よりバス
(1:25)→JR伊那大島駅
※ 前回『名峰次選 第93回 中白峰,三峰岳 act 1』からの続き
すでにact1で踏破しているので、このact2では表題の名峰次選の峰は出てきません。
悪しからず。
《3日目》 塩見岳を踏んで三伏沢へ
《熊ノ平》の幕営場は快適なものの、樹林に囲まれて眺望は冴えない。 せっかく、白峰三山や塩見岳といった名峰が周りを取り囲んでいるのである。 この山なみと朝の爽快さを満喫しない手はない。
《熊ノ平》の幕営場は快適なものの、樹林に囲まれて眺望は冴えない。 せっかく、白峰三山や塩見岳といった名峰が周りを取り囲んでいるのである。 この山なみと朝の爽快さを満喫しない手はない。
従って、ややキツいかもしれないが、キャンプ場は日の出前に出発したいものだ。 キャンプ場からいきなりの急登を20分ほどこなすと、稜線に出て展望はすごぶる良くなる。
雲海に浮かぶ軍艦のような
中央アルプスの山なみ
間ノ岳や農鳥岳のそびえ立つ東側からの御来光、ピンク色の空、朝日を浴びて輝く塩見岳の入道頭、遠くに角を突き出すように峰を魅せる荒川三山など、素晴らしい景色が大展望となって広がる。
早出した分、カメラ片手に素晴らしき朝の“ショータイム”を十分に堪能しよう。
塩見岳
朝のシルエット
この稜線の名もなき展望台を越えると、再び樹海の中に入り込む。 少し下ると、『安部荒倉岳 2693メートル の頂上へ5分』の小さなプラカードが掲げてある分岐に出る。 余裕があれば立ち寄るといい。
進路はこの分岐を左に取り、樹林帯の中をどんどん下っていく。 やや不安になる程に下っていくと、“お約束”通りに下った分だけきっちりと登り返して樹海を抜け出し、《小岩峰》という展望台に出る。
ここまで来ると日も空高く昇り、白とスカイブルーの中での眺めとなる。 中でも目を引くのが、塩見岳の“入道頭”を形成する《バットレス》で、3つの大きな節が“入道頭”の頂に向かって一直線に筋を切っている。
その眺めのダイナミックな事・・、その威圧感に、これからこの山を極める喜びが込み上げてくる。
だが、塩見岳に至るまでに、まだまだ越えなくてはいけない“壁”があるのだ。 その“壁”とは、一度標高2450m地点まで下りきってからの北荒川岳への登り返しである。
《小岩峰》から再び樹海の中に潜り、稜線から離れる。 稜線上のピーク・新蛇抜山 2687メートル は通らず、もちろん展望も北荒川岳までお預けとなる。 この樹海の中の“ダダ下り”は、北荒川岳の最低鞍部に広がる湿原と、そこに広がるお花畑が視界に入ってくると終了する。 この湿地帯は両側に狭く、進行方向に細長く広がっている。
だが、塩見岳に至るまでに、まだまだ越えなくてはいけない“壁”があるのだ。 その“壁”とは、一度標高2450m地点まで下りきってからの北荒川岳への登り返しである。
《小岩峰》から再び樹海の中に潜り、稜線から離れる。 稜線上のピーク・新蛇抜山 2687メートル は通らず、もちろん展望も北荒川岳までお預けとなる。 この樹海の中の“ダダ下り”は、北荒川岳の最低鞍部に広がる湿原と、そこに広がるお花畑が視界に入ってくると終了する。 この湿地帯は両側に狭く、進行方向に細長く広がっている。
塩見岳とお花畑
花はキンポウゲやモウセンゴケなど地味めだが、ちょっと気になる花々が彩りを添えている。
この湿地帯を越えると、250mの直登でひたすら汗をかかされた後、北荒川岳 2698メートル の頂上へ登り着く。
北荒川岳の頂上は三角点のみの簡素なものであるが、より大きくなった塩見岳の《バットレス》の威圧感と、《三峰川》まで落ち込むすざましい大崩壊の一端が覗き込めて壮観だ。 北荒川岳山頂から、“塩見岳の大崩落”と呼ばれる大崩壊地を横目に見ながら巻くように下っていくと、北荒川岳の露営地に出る。
迫力満点の塩見岳バットレス
ここから崩壊地を避けるように東側に大きく巻き込んで2719mのピークをやり過ごし、コバイケイソウのお花畑を抜けて、再び塩見岳から延びる稜線に出る。 振り返ると、かつて縦走路だった“道”が崩落し、ハイマツの“天ノ橋立”となって迫り出す様は、大崩壊地のすざましいまでの進行具合を物語っている。
これから、直視すると背筋の凍る思いのする大崩壊地を見ながら《塩見岳バットレス》の側面に取り付いて、これをイッキに登っていくのだ。
《塩見岳バットレス》の圧倒的な威圧感は、ともすれば登ろうとする“戦意”をそぐかもしれない。
だが、登ってみれば案外“クセ”がなくリズムよく登れて、以外と楽に塩見岳の“肩”に当たる蝙蝠岳分岐に登り着く。
《塩見岳バットレス》の圧倒的な威圧感は、ともすれば登ろうとする“戦意”をそぐかもしれない。
だが、登ってみれば案外“クセ”がなくリズムよく登れて、以外と楽に塩見岳の“肩”に当たる蝙蝠岳分岐に登り着く。
もし、日程に余裕があるなら、是非とも蝙蝠岳 2865メートル に行ってみたいものだ。
メインルートから外れた孤高の山から見る塩見岳は、“入道頭”ではなくすっきりとした端正な姿との事だ。
また、蝙蝠岳の山頂は広くなだらかな白亜の砂礫帯で、山の夢を馳せるに十分なロケーションである。
さて、ひと息着いたなら、塩見岳の頂上に向かおう。 頂上へは、あとひと息だ。 お花畑で仕切られた稜線の静岡県側を巻くように登りつめていくと、塩見岳最高峰の東峰 3052メートル に着く。
さて、ひと息着いたなら、塩見岳の頂上に向かおう。 頂上へは、あとひと息だ。 お花畑で仕切られた稜線の静岡県側を巻くように登りつめていくと、塩見岳最高峰の東峰 3052メートル に着く。
頂上に乗っかる大岩の上に立って、360°の大パノラマを満喫しよう。 悪沢岳・荒川中岳・荒川前岳からなる荒川三山の端正で崇高な姿に酔い、白峰三山の、特に間ノ岳のこれ程離れてまでも巨大な山容に魅せられる。
塩見岳頂上からの
南アルプス南部の展望
荒川三山の奥に角突き出す聖岳と、“愛の六連発”の山なみも見渡せる。 またこの日は、見事なレンズ雲がスカイブルーの空にアクセントを効かしていた。 この雲が現れるのは天気の“下り坂”を示す事なので、これを目にしたのは“運がいいのか悪いのか”という所であろうか。
富士山に向かって
巨大なレンズ雲が連なっていた
巨大なレンズ雲が連なっていた
この大展望を十分に味わったなら、三角点頂上の西峰 3047メートル へ“アリバイ写真”を撮りにいこう。 西峰までは、吊尾根を100m程たどるだけだ。 西峰からは、より《バットレス》とそれに連なる《塩見岳の大崩落》を覗き見る事ができる。 日本で最も奥深い位置にある3000m峰からの眺望を楽しんだなら、今日の宿泊地・《三伏沢》へ向けて下っていこう。
塩見岳の下りは南斜面のガリガリの岩場を巻くように下っていくので、気を引き締めていこう。
また、《天狗岩》の辺りは岩が迫り出した“へつり”状となっていて、上り下りのすれ違いも困難な“難所”だ。 頂上から間近に見えた《塩見小屋》まででも、小1時間かかるのもうなずける。
この《塩見小屋》は有人小屋で、蝙蝠岳を往復するなどしてタイムオーバーになったなら宿泊もやむを得まいが、宿泊するにはちょっと難点の多い小屋でもあるのだ。 トイレまで往復10分、水場に至っては往復40分と、かなり不便なのである(現在はトイレは小屋敷地内に移設され、水も1リットル100円で分けてもらえる)。 ここまできたら、もうひと踏ん張りして《三伏峠(沢)小屋》まで進もう。
小屋の立つ台地から深い樹林帯の中へ、“突き刺す”ように急下降で下っていく。 コースは《権右衛門沢》の源頭まで300mイッキに下って、本谷山へ200m近く登り返す“南アルプスらしい”アップダウンに容赦のない内容だ。 そろそろ疲れを感じてきた体には、実にキツい内容である。 ともすれば、樹林帯の中での“蒸し焼き”登りがある分、この日の行程で最大の“難関”かもしれない。 頂上から間近に見えた《三伏峠小屋》の赤い屋根が目に残像として残っていたなら、尚更である。
疲れもあって感慨の湧かない本谷山 2658メートル を越えてしばらく下り気味に歩いていくと、沢小屋と峠小屋の分岐に差しかかる。 もし小屋泊りなら、設備の整った峠小屋を選ぶ事だろう。
また、《天狗岩》の辺りは岩が迫り出した“へつり”状となっていて、上り下りのすれ違いも困難な“難所”だ。 頂上から間近に見えた《塩見小屋》まででも、小1時間かかるのもうなずける。
この《塩見小屋》は有人小屋で、蝙蝠岳を往復するなどしてタイムオーバーになったなら宿泊もやむを得まいが、宿泊するにはちょっと難点の多い小屋でもあるのだ。 トイレまで往復10分、水場に至っては往復40分と、かなり不便なのである(現在はトイレは小屋敷地内に移設され、水も1リットル100円で分けてもらえる)。 ここまできたら、もうひと踏ん張りして《三伏峠(沢)小屋》まで進もう。
小屋の立つ台地から深い樹林帯の中へ、“突き刺す”ように急下降で下っていく。 コースは《権右衛門沢》の源頭まで300mイッキに下って、本谷山へ200m近く登り返す“南アルプスらしい”アップダウンに容赦のない内容だ。 そろそろ疲れを感じてきた体には、実にキツい内容である。 ともすれば、樹林帯の中での“蒸し焼き”登りがある分、この日の行程で最大の“難関”かもしれない。 頂上から間近に見えた《三伏峠小屋》の赤い屋根が目に残像として残っていたなら、尚更である。
疲れもあって感慨の湧かない本谷山 2658メートル を越えてしばらく下り気味に歩いていくと、沢小屋と峠小屋の分岐に差しかかる。 もし小屋泊りなら、設備の整った峠小屋を選ぶ事だろう。
だが、テント泊ならば、静かで清らかな沢が流れる沢小屋前の幕営地を“お薦め”する。
深い樹林帯から涼しげな沢音が聞えてくると、ようやく塩見岳からの“長くコタえる”3時間半から解放される。 《三伏沢幕営場》は、小屋の目の前を水量豊かな沢が流れる絶好のキャンプサイトだ。
そして、何よりも空いている事が一番の“お薦め”理由だ。 聞く所によると、《三伏峠》のキャンプ場は常時100張近くのテントがひしめいているとの事である。
なお、《三伏沢小屋》は、食事提供なしの“有料”避難小屋である(残念ながら、三伏沢幕営場及び三伏沢小屋は閉鎖されている)。
深い樹林帯から涼しげな沢音が聞えてくると、ようやく塩見岳からの“長くコタえる”3時間半から解放される。 《三伏沢幕営場》は、小屋の目の前を水量豊かな沢が流れる絶好のキャンプサイトだ。
そして、何よりも空いている事が一番の“お薦め”理由だ。 聞く所によると、《三伏峠》のキャンプ場は常時100張近くのテントがひしめいているとの事である。
なお、《三伏沢小屋》は、食事提供なしの“有料”避難小屋である(残念ながら、三伏沢幕営場及び三伏沢小屋は閉鎖されている)。
《4日目》 塩川へ下山
空が白み出した頃、目を覚ます。 そばを流れる清らかな沢の水で顔を洗い、眠気を払拭して下山しよう。 下山後、塩川からのパスが1日2便しかなく、できれば朝9時の便に乗りたいので、余裕を持つべく夜明けと共に出発しよう。
朝日のまだ昇らぬ内から出発して、河原状の坂をゆるやかに登っていくと《三伏峠》のキャンプ場の水場に着く。 振り向くと、かぎろい色の空におぼろげに浮かぶ塩見岳のズングリ頭が印象的だ。
空が白み出した頃、目を覚ます。 そばを流れる清らかな沢の水で顔を洗い、眠気を払拭して下山しよう。 下山後、塩川からのパスが1日2便しかなく、できれば朝9時の便に乗りたいので、余裕を持つべく夜明けと共に出発しよう。
朝日のまだ昇らぬ内から出発して、河原状の坂をゆるやかに登っていくと《三伏峠》のキャンプ場の水場に着く。 振り向くと、かぎろい色の空におぼろげに浮かぶ塩見岳のズングリ頭が印象的だ。
スペクトルの空に浮き立つ
塩見岳のシルエット
この水場から林の中を10分程歩くと、建付けのいい《三伏峠小屋》に着く。 小屋の周りにひしめくテントの群れを見るにつけ、沢小屋前でテントを張った事が“正解”だったと思えるのである。
水場が10分も離れていて、しかもこの混み具合は、ちょっと敬遠したいものである。
小屋前にある『日本一高い峠・三伏峠2560m』の立て看板を見やり、小屋脇の道を下っていく。
今回下っていく《塩川》への道は、“南ア三大バカ登り”のコースとして知られている道だ。
小屋前にある『日本一高い峠・三伏峠2560m』の立て看板を見やり、小屋脇の道を下っていく。
今回下っていく《塩川》への道は、“南ア三大バカ登り”のコースとして知られている道だ。
ちなみに他2つは、北岳の『草スベリ』と《二軒小屋ロッジ》から千枚岳への『万斧沢ノ頭越』との事である。
下り始めると“南ア三大バカ登り”を下るだけあって、容赦のないダダ下りが標高差1500mに渡って延々と続く。 普通のコースなら鞍部や平坦な丘など“一服”する場所があるものなのだが、このコースは全く妥協を許さぬ同じ傾斜の坂が延々と続くのだ。 登るとなると、キツい事この上なさそうなコースだ。
この登りの辛さゆえ、塩見岳が“奥深き”山との印象が強いのかもしれない。
明けの空に美しい三角形
を浮かび上げる間ノ岳
下っていく合間に、樹林の間から間ノ岳が“鶴翼”の如く優雅に山裾を広げているのが見えるだろう。
これだけが、唯一の拠り所である。 さて、この情け容赦ない下りは、《奥水無沢源頭》の水場まで続く。
時間にして、約2時間半のダダ下りだ。 この水場より進行方向を左に変えて、《塩川》の本沢に向けて急下降していく。
水場から30分程下ると、水量豊かで清らかな沢音を響かせる《塩川》の本流に出る。 ここからは河原を歩くようになり、所々丸太の桟橋で激流する沢を渡るなど、スリルあり、そして爽快さも満点な道となる。 沢を50分程いくと無名滝を左岸奥に見やり、砂防ダムの土間作業をしている《塩川土間》に飛び出る。
《三伏峠》を夜明けと同時に出発すると、7時半から8時位には下り着く事ができるだろう。
水場から30分程下ると、水量豊かで清らかな沢音を響かせる《塩川》の本流に出る。 ここからは河原を歩くようになり、所々丸太の桟橋で激流する沢を渡るなど、スリルあり、そして爽快さも満点な道となる。 沢を50分程いくと無名滝を左岸奥に見やり、砂防ダムの土間作業をしている《塩川土間》に飛び出る。
《三伏峠》を夜明けと同時に出発すると、7時半から8時位には下り着く事ができるだろう。
9時のバスにはちょっと早すぎると思われるかもしれないが、心配御無用。 それは、《塩川小屋》が朝風呂を用意してくれるからだ。
山の疲れと汗を洗い落として、気分をリフレッシュしてバスに乗り込もう。 なお、《塩川》までのバスは夏休みシーズン中のみの運行で、しかも道路状況によっては途中の《鹿塩》まででストップしてしまうので注意が必要だ。
注 鳥倉コースが開設されてからは、このルートは登山者が少なくなり荒れているとの事です。
- 関連記事
スポンサーサイト