風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第97回  北岳

名峰百選の山々 第97回  『74 北岳』  山梨県
白峰山系(南アルプス国立公園) 3192m コース難度 ★★ 体力度 ★★★
 

巨大な山体の間ノ岳と
端正な姿を魅せる北岳
 
  白峰三山 しらみねさんざん (南アルプス国立公園)
南アルプスの北部には、北岳 3192メートル ・間ノ岳 3189メートル ・農鳥岳 3026メートル と、ひときわ高い峰が連なっている。 この3つの峰は、『白峰三山』と呼ばれている。

北岳は、“知る人ぞ知る”日本第二の高峰で、間ノ岳も日本第四位につけている。 現在は、南アルプス林道の開通によってアプローチが容易となり登山者も増えてきたが、ひと昔前はこの山に登ろうとするなら前に立ちはばかる鳳凰三山を乗り越えるしか手がなく、限られた熟練クライマーのみが登頂を許される山であった。

・・景観では北岳が特に素晴らしく、雲海から上の眺めや周りの山々全てを“肩越し”に眺める爽快感、東面に落ち込む北岳バットレスの大岩壁とその斜面を飾る花々がおりなす“アルペン”風景、そしてこの山を染める高山植物の大群落など、高山的魅力はつきない。
 

 

白峰三山周遊ルート 行程図
 
    行程表             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR甲府駅よりバス(2:05)→広河原(2:30)→大樺沢二俣
     (2:00)→八本歯ノコル(0:45)→吊尾根分岐(0:15)→北岳
     (0:50)→北岳山荘
《2日目》 北岳山荘(1:35)→間ノ岳(1:10)→農鳥小屋(0:45)→西農鳥岳
     (0:35)→農鳥岳(1:10)→農鳥小屋(1:30)→間ノ岳(1:20)→北岳山荘
     (1:10)→北岳(0:45)→北岳・肩ノ小屋
《3日目》 北岳・肩ノ小屋(0:25)→小太郎尾根分岐(1:45)→大樺沢二俣
     (1:15)→広河原よりバス(2:05)→JR甲府駅
 

白峰三山
右より北岳・間ノ岳・農鳥岳
 
  《1日目》 大樺沢雪渓を経て北岳へ
このコースは、南アルプスの盟主・北岳を始めとして、間ノ岳・農鳥岳といった名だたる名峰をめぐるゴージャスさが売りものだ。 また、高低差600mを誇る《大樺沢雪渓》の登高や多彩な種の高山植物群、600mの大岩壁を振り落とす《北岳バットレス》、巨大な二等辺三角形を示す間ノ岳、南アルプスの名だたる山を見渡せる爽快感と、ダイナミックな風景と登山の魅力をふんだんに味わう事ができるのである。 

登山を始める前に、登山口の《広河原》へは必ず前日にアプローチしておこう。 
なぜなら、登山口の《広河原》の標高は1590m。 北岳までは、実に1600mの標高差があるのだ。 それを7kmの距離で登りつめるのである。 従って、コース全般に渡って急登を強いられる。 甲府方面からバスでやってきて、“朝”とはいえぬ時間に“降りたで”登山をするのは、登高最中に午後の直射日光で蒸し焼きとなる自殺行為だ。
 

タカネツメクサ

このコースは、山の魅力を全て味わえる最高のコースであると同時に、南アルプスの第一級の登山路でもあるのだ。 当然のセオリーとして、いやマナーとして《広河原》へのアプローチに日程を割いて、翌朝の夜明けと同時に登り始めたいものだ。 登山口にある《広河原山荘》は、夜明けの出発に対応しているので利用するといいだろう。 それでは、この魅力あふれるコースを使って、日本第二の高峰に登ってみよう。 

朝、空が白み始めた頃、登り始めよう。 先程も述べた通り《広河原山荘》では、早朝4時に朝食をご飯で提供してくれる。 これは誠に有り難い。 パンに比べてご飯は、体内ですぐさまエネルギーに変わるので、激しい運動でエネルギー消耗の激しい“登山”というスポーツにはよりマッチしているのである。 
より“バテる”のを引き延ばす為には、ご飯の朝食は有効な方法である。 しっかりした“体”と時間のゆとり、すなわち“心”を充実させると、どんなキツい事も何とかこなせるものである。
 
《広河原山荘》の裏手から、樹林帯の中へ分け入っていく。 まだ夜が完全に開けやらぬ中、しかも薄暗い樹林帯の中を通るので、“ヘットランプ”は必需品かもしれない。 《大樺沢》の沢音が聞えてくると樹林帯を抜け、砂防ダムが連なる沢の土手の上に立つ。
 

目指す八本歯ノコルはまだ遠い 
 
この頃に程よく空が赤みを帯びてきて、眼前にはギザギザに伏し尖った北岳の《八本歯ノコル》が朝の柔らかい光を浴びてオレンジ色に輝くのが望めるだろう。 これを目にすると勇気倍増、気合も入ってくる。 これよりしばらく“いい景色”とはお別れとなるので、十分この情景を目に焼きつけてから先に進もう。 

この砂防ダムより再び樹林帯に入り、沢の土手を登っていく。 しばらく見通しの利かないダケカンバのトンネルの中を通るが、やがて沢に下りてゴロゴロと大きな岩が転がる河原の上を歩くようになる。 
河原の上を行くのは、転がる岩を乗り越える小さな登降を数多くこなさねばならないので、かなり疲れるのである。 言わば、“ジャブ”を連発で食らうようなものだ。 

このような訳で距離の割りに時間を食う河原歩きを乗り越えると、左側の土手を一度高巻いてから右手の土手の樹林帯に突入していく。 これは、沢の途中に沢滝がある為である。 この樹林帯は少し長くちょっとフラストが溜まるが、これを抜けると壮大な雪渓の端が見渡せる《大樺沢二俣》にたどり着く。 
ここは、《北岳バットレス》の好展望ルートである『右俣コース』との分岐点だ。
 

北岳バットレスの脇に
白い筋を突き上げる大樺沢雪渓
 
この『右俣コース』は下山の時に使うとしよう。 なぜなら、コース全般に渡って強烈な傾斜が続くので、登りには不向きであるからである。 せっかくの素晴らしい景色だ。 余裕を持って楽しもう。 
さて、分岐からは、上から延びる雪渓に向かって登っていく。 この《大樺沢雪渓》は途中に大きなクレバスがあり、雪渓の“中央突破”とはいかない。 雪渓の縁を巻くようにしながら登っていくのである。 

従って、本格的に雪渓を登るのはせいぜい8月上旬までで、秋口に近づくとコースのほとんどが岩ガレ道の登りとなる。 であるから雪渓を登っているにかかわらず、とても“暑い”のである。
暑さに耐えて黙々と登っていくと、いつしか雪渓中央部の巨大クレバスが背後に見下ろせるようになる。
 

              トウヤクリンドウ        トウヤクリンドウ
 
そして、ハクサンイチゲやグンナイフウロなどの高山植物も草地に咲き競うようになる。
こうなると、600mの標高差を誇る巨大な雪渓も終わりを迎える。 雪渓の最後で、雪渓の中に入って中央部にトラバースする。 《大樺沢》にほとんど雪渓が残っていない“最悪”の場合、雪渓を踏む事ができるのはこのトラバースのみとなるかもしれない。
 

八本歯ノコルへ

雪渓を抜けると、《大樺沢》の源流の清水が流れている。 きっとこの清水は、“暑く、キツい”登りを乗り越えた『御褒美』であろう。 十分にこの『御褒美』を味わおう。 雪渓上部の清水からは、お花畑の点在するガレ場となる。 最初はジグザグを切って登っていけるが、徐々に個々のガレ岩が大きくなってきて、岩と岩の間にハシゴが架かるようになる。 この辺りから森林限界前の最後の樹林帯に入り、ハシゴと木の根を踏みしめながら登っていく。


北岳バットレスとうろこ雲
 
樹木の間から、《北岳バットレス》の大岩壁がすざましい威容をもって迫り出してくる。 
3192mの北岳を支える“屋台骨”だけあって、その壮大さと威圧感は強烈である。 
 
ルートは最後に左に大きくそれて角度的に《北岳バットレス》が見えなくなると、ようやく《八本歯ノコル》の最低鞍部に這い出る。 朝、美しく輝いていた《八本歯ノコル》のギザギサにようやく着いたのだ。 この上からは、戦艦大和の艦橋のようにどでかく盛り上がる間ノ岳と、シルエット美しき“眺めるべき山”・富士山が見渡せる。
 

夏の終わり
秋の花が山を飾る
 

雲海に浮かぶ富士山
 
そして間ノ岳の右端、ここから距離にして300m程の所に《北岳山荘》が建っている。 但し、その間は深い谷底だ。 この《北岳山荘》まで行き着くには、北岳の山腹を大きく巻いて行かねばならない。
 
《八本歯ノコル》でひと息着いたなら、北岳の頂上に向かって登っていこう。 気持ち的には《八本歯ノコル》に着いた事で、もう九割方登った気分になってしまうがこれは“甘い”考えで、実際にはあと標高差にして300m登らねばならない。
 
ガレにガレた岩道をハシゴ伝いに登っていくと、3000mを越えるお花畑があちらこちらに現れる。
富士山がほとんど高山植物のない山であるので、おそらくここが“日本一標高の高い”お花畑の群落であろう。
 

           北岳山頂直下のお花畑           オヤマノエンドウ
 
ミヤマオダマキ・ハクサンイチゲ・オヤマノエンドウ・クセンナイフウロ・チシマギキョウなど、様々な花がガレた大斜面を美しく飾る。 花々に誘われて、“もう登る所のない所”の頂上へと導かれる。
 

北岳山頂にて

3192m・・。 私の登りたいと思う山の中で、最も高い山の“てっぺん”だ。 この“てっぺん”からは、周りの山々を全て見下ろせる。
“名峰”と呼ばれる全ての山々を・・だ。

北岳頂上より山々を望む

           優雅な姿を魅せる仙丈ケ岳             鳳凰三山
 
鳳凰三山・甲斐駒ケ岳・仙丈ケ岳・八ヶ岳・浅間山・中央アルプス・北アルプス・間ノ岳・農鳥岳・塩見岳・荒川三山・赤石岳・・。 この一大パノラマを全て“見下ろす”爽快感は、言葉では語れない。 
是非とも、その目でその素晴らしさを確かめて欲しい。 この素晴らしい眺めをいつまでも眺めていたいが、午後はたいてい天気が崩れてくるので、そろそろ今日の宿泊地・《北岳山荘》に向かおう。
 

北岳頂上直下の
岩盤を花が埋め尽くす

下りは、前方に間ノ岳のどでかい山容と様々なお花畑の群落、そして仙丈ケ岳の優雅な稜線をみながら降りていく。 カメラ片手に下っても、1時間もあれば山荘前に着く事ができるだろう。 山荘はシーズン中、常に“すし詰め”の満員だ。 ゆっくり足を伸ばして眠る、そして美しい朝日をいち早く眺めたいならば、テント幕営をお薦めする。 山をより楽しむならこれに限る。
 

明日の朝に魅せられた
絶景をひとつまみ
 
   続きは、次回『名峰百選 第98回 間ノ岳,農鳥岳』にて。
   また、『名峰次選 第93回 中白峰,三峰岳 act 1』も、この続きから記載しております。
   宜しければ、どうぞ。

    ※ 詳細はメインサイトより『白峰三山』を御覧下さい。
 
 
 



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