風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第79回  富士山が最も美しく望める場所へ

『日本百景』 夏  第79回  富士山が最も美しく望める場所へ  〔静岡県〕
 

かぎろいの空に浮かぶ富士
『富岳百景』たる眺めに酔う
 
今回は世界遺産に登録された(登録されたといっても『文化遺産』で、登録の主対象が山に寄生する腫れモノ(宗教建造物)である事に釈然としない思いを抱いているのであるが)富士山を最も美しく眺める事のできる場所を御紹介しよう。 そしてその続きは、広大なお花畑で遊び、南アルプスでも最も静けさの漂う区間を縦走して行こうと思う。
 
それでは、南アルプスきっての『いぶし銀』のコースを歩いてみよう。 南アルプスの山々は、総じてアプローチが厄介だ。 多くの山域で登山口まで2日がかりとなるのである。 今回ゆく椹島も、その一つである。
 
その椹島へは大井川鉄道(SLで有名ですね)とバスを乗り継いでいくが、バスの通る《県道60号》が隔年間隔で災害運休になるなど、アプローチはかなり困難だ。 それらを乗り継いで畑薙ダムにやって来たとしても、かつては悪名高き《リムジンバス》に、汗ならぬ費用を搾り取られるのである。
それでは、筆者の体験記を元に大井川鉄道の始発駅から話を始めよう。
 

南アルプス中央稜線縦走・行程図 その1
 
   行程記録  ※ 今回実際にかかった時間ですけど・・、何か? 
《1日目》 大井川鉄道・千頭駅よりタクシー利用(1:30)→畑薙・登山者駐車場
     (0:55)→椹島
《2日目》 椹島(3:00)→清水平〔水場〕(3:30)→千枚小屋
《3日目》 千枚小屋(0:45)→千枚岳(1:40)→悪沢岳(1:40)→中岳分岐
       中岳分岐より荒川前岳斜面のお花畑散策、往復1時間(2:30)→高山裏露営地
《4日目》 高山裏露営地(3:20)→小河内岳(2:20)→三伏峠(2:20)→鳥倉登山口よりバス
     (1:50)→JR・伊那大島駅
 
  《1日目》 椹島まで
10時少し過ぎに《大井川鉄道》の始発駅である金谷に着く。 金谷駅は東海道本線の中でも寂れた“町外れの駅”なのであるが、夏休みに入ったこの時期のこの時間は暑苦しい程の人だかりであった。
なぜなら、《大井川鉄道》名物のSL仕立ての列車が、この時間に運行されるからだ。

私は自身を『○鉄』と呼称する程の鉄オタではあるが、なぜかSLには全く興味がない。
無理クリに“好き嫌い”で2等分すれば、“嫌い”の部類に入る位だ。 夏のクソ暑い時に、しかも夜勤明けで寝不足の時に、高い特別料金を払ってまで冷房も無いあんな暑苦しいモノになど乗りたくはない。 
切符を買う時に「若干の空席がある」とSLの乗車券を勧められたが、もちろん『冷房付』の定期列車を選択する。
 
山で出逢う花々 その1

グンナイフウロ
蒸気機関車など撮った事ないし
京阪特急も見飽きて撮ってないので
掲載写真がないよ~

暑苦しいSLが去るまでの時間は、夏らしくかき氷アイスでも食ってやりすごす。 
SLという喧噪が去って10分後、京阪特急が入線する。 希望としては、近鉄【吉野特急】か南海【四国】号だったのだが、これでも冷房が付いてるから良しとしよう。
 
発車してすぐさま、座席をボックスにして1時間半ぐっすりと寝息を立てる。 従って、初めて乗車の《大井川鉄道》とはいえ、金谷駅と千頭駅以外の記憶は一切ない。 『テツ』の風上にも置けないだろうな、この所業は。 だから、中途半端極まる『○鉄』なんだよな。
 
話はのっけから脱線してしまったが、一応これは『山行記』なのである。 決して、『鉄道旅行記』ではないのだ。 千頭駅からは、山関係の話に入っていこう。
 

今回歩く稜線を望む
いちおう『山行記』ですので
山の写真おば
 
ちなみに、なぜこの《大井川鉄道》に乗車したかというと、県道60号《南アルプス公園線》が井川ダム付近の土砂崩壊の為に通行止となっていたからである。 この県道の通行止は珍しいものではなく、隔年毎に土砂崩れを起こす事で有名な道だ。 県道の通行止を受けて静岡始発の登山バスもシーズン通しての運休となり、のっけからタクシー利用の大出費を強いられるハメとなった。
 
山で出逢う花々 その2

イワツメクサ

タクシーの予約時に「千頭駅からのタクシーは13000円」と聞いたが、現地に着いて「他の登山者との乗合で良ければ」と8000円に割引してもらう。 タクシーの中でもぐっすりと寝息を立て、14時前に畑薙ダムより1.5km手前の登山者駐車場前に着く。
 
8年位前はダムサイトに数珠つなぎで車を止めていたのだが、さすがに管理者サイドも「これではマズい」と思ったのだろう。 ダムの資材置場だった野っ原に急造の駐車場を仕立てていた。
まだ7月下旬と言う事でそれほど混んではいないようであったが、裕に150台位は止まっていた。

後は接続する《東海フォレスト》のリムジンバスに乗換えて、15時半頃に《椹島ロッジ》到着。
しかし、この《椹島ロッジ》は、相当儲かっているようである。 受付は会館状の建物となり、客室は完全冷暖房完備で、しかもトイレは全てウォシュレットであった。 また、土産物屋兼喫茶のログハウスもあった。 もちろん、親会社が《東海パルプ》なので、トイレットペーパーは芯も流せる最新式が山積みされていた。
 
山で出逢う花々 その3

ミヤマオダマキ

ちなみに素泊専用であったボロ小屋は建て替えられてはいたが、冷暖房は完備ではなかった(当たり前か)。 トイレは、素泊者でもウォシュレットを使っていいように改正されていた(昔は、ボットン以外使用禁止だったのよ コレ、どう思います?)。
 
素泊でもなければ山旅をしているのではなく、パック旅行をしているかのような錯覚を覚える《1日目》の行程である。 さて、明日は久々の山歩きだ。 どれ程に体力が落ちているか、どれほど所要時間がかかるか、見ものである。 とりあえず明日は5時前に出発すべく、早めに寝る事としよう。

  《2日目》 椹島より千枚小屋へ
目指すは正面の頂直下に建つ山荘

朝、4時に目覚める。 小屋泊まりでテント撤収の手間がなく、予めに朝飯用に買ってあったコンビニおにぎりを食って、4時半にはトイレ以外の出発準備を終える。 
トイレを済ませて、出発は4:40過ぎ。
テント一式と2日分の食料で約19㎏位となったザックを担ぐ。

でも、久々はちょっと怖いものである。 
これより、コースタイム6:30の長丁場だ。 途中でヘバりはしないか・・という不安が当然つきまとう。 だが、以前に2回使ったルートであり水場の位置も知っている事から、水の所持は最小限の行動水だけで行ける。 これは、真に心強いのである。

このルートを行くと、やはり最盛期の事が頭に過る。 もう、自慢以外の何物でもないが9年前にこのルートを登った時、5時ちょうどに《椹島》を出て《千枚小屋》に着いたのは9:15。 何と、4:15のタイムで登りきったのだ。

荒川三山~赤石岳周遊の山中2泊3日行程だったので、荷の重さは今回とほとんど同じだったと思う。
しかし、あの時のペースを今追い求めると、確実に撃沈の憂き目を見るだろう。 だから、「ゆっくり、ゆっくり・・」と念仏の如く呟きながら歩いていく。

このルートは距離が長く、また横に林道が着かず離れず並走している事から、あまりキツイ登りがない分、喘ぐような場面に追い込まれる事はない。 それどころか、林道が樹林の隙間から見える区間は時間を稼ぐ事ができるのである。

このような感じなので、登った感触がほとんどないままに時が過ぎてゆき、いつの間にかルート上の水場である《清水平》に着く。 大して息も上がらずにやって来れたので、少し期待を抱いて時計を見る。 
8時少し前。 以外に時間が過ぎていた事に、ちょっとガッカリ。 やはり、コースタイムを割る事は適わなかった。
 
この《清水平》からは、それなりに傾斜がキツくなっていく。 それにつれて、そろそろに18~19㎏の荷を3時間以上担いだダメージが肩に圧しかかってくる。 標高2000mちょっとの《蕨段》を越えたあたりからら、脂肪まみれの上半身が暴れだして息が上がり始める。
 

展望台から望む赤石岳
3度目で初めてここで展望が叶ったなぁ

《蕨段》より少し登った所にある展望所で、息を整えるべく休む。 シャツを見ると、かなり汗でシケっている。 この汗の量を推し量ると、かなりバテているようだ。 “バテる”というものは、身体の状態がどうこうというよりも、感情の起伏が大きな要因となるようだ。 この汗の量を見て途端に気が萎え始めた。

それに呼応するが如く、ルートは《駒鳥池》まで標高差350mの最大傾斜の登りとなる。
もう“バテた”というより、“ダレた”という感覚となる。 アッチの切り株に座り、コッチの“育ちのいい”平たい岩に寝そべったりと、ひたすらダラダラと登っていく。
 

コオニユリ

そういえば白馬岳の時も、山頂山荘手前の平たい岩で30分位『路上寝』したっけなぁ。
もう、視線を浴びようがお構いなく、通路の真ん中で。 今回は“寝そべる”まではいかなかったが、アグラをかいてパンを貪り食う醜態はしっかりと示す。 そういう訳で、《駒鳥池》へは随分と時間かかってしまった。 そして、《駒鳥池》からの標高差残り160mは、最盛期との違いをイヤという程に思い知らされる。

最盛期はものの30分とかからず、あっさりと冬小屋が見えてきた記憶が頭にこびりついている。
だが、今回はチンチクリンに射す日差しに1時間以上焼かれ、11回座り休憩を経て正午の30分前に《千枚小屋》に到着。 空は、もう積乱雲が湧き立つ昼下がりの様相を呈していた。 
所要時間6:30。
コースタイムとほぼ同じである。 最盛期のあの時よりも、2時間以上かかってしまったのである。
体力の衰えをこれ程までに数字でハッキリと示されると、もはや遺憾ともし難いよな。
 

千枚小屋前からの笊ヶ岳
小笊が入道雲に隠された

まぁ、何はともあれ、今日の目的地である《千枚小屋》に着いたのだ。 小屋でテントの手続きをして、木陰にあるテント場(小屋より150m位離れている)で昼寝としゃれこもう。 まぁ、こんなに疲れたなら、昼間グッスリ寝たとしても、夜も寝れるだろうし。 小屋や便所と離れているので用事はまとめる事を心掛けつつ、久しぶりの山登りを省みる事としようか。
 

本当は明日の朝の情景なのだけれど
お題の『富士山が最も美しく・・』に促して
ほんの一つまみ
 
    続きは次回『第80回 荒川三山』にて

   ※ 詳細はメインサイトの『撮影旅行記』より、『南ア・最後の未踏区へ その1』をどうぞ。
 
 
 


 
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