風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰次選の山々 第91回  ピパイロ岳

名峰次選の山々 第91回  『114 ピパイロ岳』  北海道 
日高山系(日高山脈襟裳国定公園)  1917m  コース難度 ★★★  体力度 ★★★★
 

鬼の角の様相を魅せるピバイロ岳
 
  北日高国境稜線 きたひだかこっきょうりょうせん (日高山脈襟裳国定公園)
未開の山『日高』。 そこに一歩踏み入れると、誰もが虜になる不思議な力を持つ山域『日高』。 
だが、この『日高』はアプローチ手段もなく、未開ゆえに満足な登山道もなく、そう易々とは受け入れてはくれない所でもあるのだ。 しかし、その困難なルートを突き破って『国境稜線』に立つと、“憧れ”を思い存分味わう事ができるのである。 

氷河遺跡であるカール群、豊富な高山植物、未開の山域でのみ生きる事ができる小動物たち、自然を育む最高の水。 これらに囲まれて、夢の一夜を明かし、空がスペクトルに輝く“生まれたての朝”を望む事は、山を志す者にとって“憧れ”を実感できる至福の瞬間なのである。 さあ、この“憧れ”を体感すべく、しっかりと山の準備をして『日高』の『国境稜線』へチャレンジしてみよう。
 


 

北日高国境稜線・伏美登山ルート 行程図
 
    行程表
《1日目》 芽室町市街より車 (0:50)→伏美岳避難小屋 (3:00)→伏美岳
      (3:20)→ピパイロ岳 (2:00)→1967峰
《2日目》 1967峰 (1:50)→ピパイロ岳 (3:20)→伏美岳 (2:20)→伏美岳避難小屋より車
      (0:50)→芽室町市街
 
 
  《1日目》 伏美岳・ピパイロ岳を経て北日高国境稜線へ
さて今回は、『十勝』・『日高』を分ける《北日高》の『国境稜線』へ向けて、長い長い稜線を伝う山旅を御紹介しよう。 このルートは、『日高』の山を目指すルートとしては困難な徒渉もなく、ブッシュもそれ程キツくはなく、日高山脈の稜線では“一級国道”の格付けができる登山ルートである。
だが、これはあくまでも『日高』の稜線を対象としての事で、北アルプスなどの中央高地とは比べ物にならぬ程の困難なルートである。
 

戸蔦別Aカールと幌尻岳
予定ではあのカールの裏側にある
七ッ沼カールが折り返し地点だ

まずは、折り返し予定の地点である《七ッ沼カール》まで2日がかりというロングランコースである・・という事。 また、確実に水が確保できるのは《七ッ沼カール》のみという厳しい条件、そして幕営地点がどこも一張りか、かろうじて二張りのビバークサイトでの強行幕営・・と、全てにおいて的確な判断力が要求されるルートである。
 

札内岳と十勝幌尻岳
 
そして、何より怖いのが“雨”である。 この《北日高》は北海道でも雨の多い地域で、低気圧や前線を伴う雨ともなると、稜線上はテントが吹き飛ばされかねない程の暴風雨に見舞われるのである。 
本行程では稜線上で2泊するので、天候はいつにも増して重要な用件となる。 
天候によっては、途中で引き返す事やエスケープルートへ逃げる事も想定せねばならない。
 
しかし、困難が増せば増す程に、やり遂げた後の充実感と感動は大きく膨らんでいくのだ。 
この充実感と感動を体感する事こそが、“憧れ”を体感して心を打ち振るわす事こそが、山好きが山に登る所以ではなかろうかと思う。 前おきが長くなったが、“憧れ”の体感を求めて難関たる『日高』への登竜門をくぐろうと思う。
 

朝もやのベールにつつまれる
日高の嶮峰たち
 
さて、ただでさえ長いルートである。 もちろん、前夜のアプローチと早朝出発は当たり前で、これを怠るような者には『日高』を登る資格はないとも言えるだろう。 幸い、登山口には《伏美岳避難小屋》という立派な山小屋があり、前日の明るい内に小屋に入ればグッスリと睡眠を取る事ができるのである。
それを踏まえて、早朝5時の出発を心掛けよう。 

20台程駐車できる大きな駐車スペースの端にある登山道から、最初のピークである伏美岳を目指す。 
伏美岳まで標高差1000m、約4kmの道程だ。 この伏美岳へのコースは、“日帰りで気軽に登れる日高の展望台”として《芽室》町が最近テコ入れしているらしく、道は整備されて道標も整い(一合目より、二合毎に“合目道標”がある)、空身の“日帰りスタイル”ならば初級者レベルのルートとなっている。 

しかし、楽なのは“空身”が前提の事で、テント一式に加えて稜線上での水の確保が難しいが為に普段の倍の3.5㍑の水を担いだなら、それ相当の体力が必要となるのである。 伏美岳で“音を上げる”ようでは、引き返した方が無難である。 伏美岳までは樹林帯を登っていくので、展望はなく単調極まる登りである。 救いとしては、五合目で腰を下ろせる切株があるのと、頂上直下の九合目に小規模のお花畑が目を和ませてくれる位であろうか。
 

チシマフウロ


伏美岳まで約3時間のキツい登りを終え、9合目のお花畑の草付きを斜めにひと登りすると伏美岳頂上だ。
 
この伏美岳は、《芽室》町イチ押しの“日高の展望台”との事であるが、私の登った時は雨が降り出す悪天で、残念ながら視界もなにもなかった。
 
 
←伏美岳頂上にて
 
しかし、帰りに通った時はまたとない快晴であったので、これより続く山岳風景はその時に譲るとして今日はコースの概要のみを記そうと思う。
 

伏美岳頂上より望む日高の山なみ
 

エサオマントッタベツ北カールの奥に
“憧れの山”カムエクが・・
 
伏美岳 1792メートル の頂上は東西に細長く、ピパイロ岳側にはハイマツと土手に覆われて風を避けれそうな好ビバークサイトがある。 但し、一張りのみのスペースであるが。
細長い頂上は50m程で終わり、ハイマツと潅木のブッシュの中に身を沈めるが如く急下降で突入する。
 
日高の稜線では“一級国道”と評されども、ブッシュの通過は大小問わず困難なものである。
枝はザックに引っ掛かり、そしてしなるので進む毎に荷重がかかり、また足元もハイマツがバチバチと足の脛を叩く。
 
それに加えてこの日の悪天。 見る見る内にカッパは元より全身ズブ濡れとなる。 
ハイマツを弾く毎に、葉にたまる水をぶっ掛けられているようなものだ。 これは気力・体力共に、大いに殺ぎ取られるのである。 こんなに雨が降っているのに、“稜線上では水が得れない”という矛盾にも悩まされる。
 

妙敷山とピパイロキンバイの斜面

晴れていたなら指呼の先にそびえるピパイロ岳まで、実際に稜線を伝うとなると裕に3時間はかかるのである。 いや、3時間で行けたならかなりの健脚か、よほど体がデキていると認める事ができるであろう。 それもそのはず、近くに見えても伏美岳よりピパイロ岳までは約5km・最低鞍部は標高1490mであるので、300m下って430mを登り返す結構な“オーダー”なのである。
 
それに加えての、ハイマツと潅木のブッシュである。 このロングランコースを行くには、それ相応の体を作ってからでないと不可能であるという事をこの文から読み取って頂ければ幸いである。
 

だがこの困難を乗りきると
国境稜線の奥に憬れの山がズラリと
そびえ立つのが眺められるのだ

ブッシュを切り抜け最低鞍部に下りきると、地図上で“幕営可能地点”と表記されている手狭い平坦地(一張り可能で、下り15分で水の入手可能との事だが、雨が降るとドロドロのぬかるみとなりとても使えない)があり、これを境に今度はヌルヌルの土斜面の急登となる。 

この粘土質の黒土の斜面は雨水を含むと途端に踏ん張りが利かなくなり、気を抜くとズルズルと滑って一歩も上に進めない。 もはや、足の力だけで這い上がれるのは不可能で、ブッシュやクマザサをわしづかみにしてようやく“ノメり上がる”のがやっとの状況である。 これは、かなりの体力を殺ぎ取られる。
しかし、幕営可能な地点はこの辺りには皆無で、疲れていようがバテていようが幕営可能地点まで登りつめるべく前進するしかないのである。 


 
地図が示す今度の幕営可能地点は、ピパイロ岳と1967峰の間にある1753mのコルである。
 
ピパイロ岳への登りの最中、名花・ピパイロキンバイの咲き乱れるお花畑が2ヵ所程あったが、今日のこの時はそれ所ではなく、“花レポート”についても帰りの晴天に通った時の事を語りたいと思う。
 
 
名花・ピパイロキンバイ→
 
ヌルヌルの粘土質の急登を何とか登りつめると、ピパイロ岳の肩に出る。 どうやら潅木の限界を越えたらしく、岩とハイマツの細い稜線となる。 これを緩やかに登りつめると、岩のドームが折り重なったピパイロ岳 1917メートル 山頂だ。
 

鬼の角のように
両端の峰を突き出すピパイロ岳
 
この日の天気は記述の通り最悪であったがゆえ、展望もへったくれもなかったのだが、晴天ならば『日高』の深い山なみが欲しいままに望める位置にそびえていて、「静かなる北日高の名峰」と評判も高い山である。 この山からの眺めも、帰りに語ろう。
 
ピパイロ岳からの眺め

ピパイロ岳頂上より続く
北日高国境稜線の山々
 

戸蔦別の双子のカールと幌尻岳
 

憧れの山々を眺めて

雨と悪い足場の急登で体力を取られて、ちょっとやそっとの休憩では変わりばえもしないので、ピパイロ岳の頂上では少し腰を下ろしたのみで通過する。 ピパイロ岳は西方に長い岩尾根を連ねていて、1753mのコルへはガチャガチャとした岩場をトラバース気味に伝っていく。 この岩尾根が途切れるとハイマツ帯の下りとなり、下る毎にハイマツの根が深く絡みついてくる。 

最低鞍部と思しき所まで下るとテント二張りほど可能な草付きがあって、ここでストップも考えたが、とても風を避けれるようなロケーションではなく断念する。 ここからお花畑の急斜面を全身を使って“ノメリ上がる”と、岩稜のピーク上に立つ。
 
その脇に岩壁に囲まれて風を避ける事ができる、テント一張り可能な平坦地があった。
今日は、ここを文字通り“ビバークサイト”とする。 今回はこの荒天ゆえ荷物の濡れ具合が激しく、“引き返し”を検討せねばならないかもしれない。
 

明日は憧れの山々を一望する
贅沢な眺めを堪能しよう
 
 
   続く《2日目》の行程は、次回『名峰次選 第92回 1967峰 その2』を御覧下さい。
 
 
    ※ 詳細はメインサイトより『北日高国境稜線〈1〉』を御覧下さい。
 





 
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