風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第94回  槍ヶ岳  その2

名峰百選の山々 第94回  『59 槍ヶ岳 その2』  長野県・岐阜県
槍穂高山系(中部山岳国立公園) 3180m コース難度 ★★  体力度 ★★★
 

裏銀座縦走路より望む
槍・穂高連峰のシルエット
 
  槍・穂高連峰 やり・ほたかれんぽう (中部山岳国立公園)
北アルプスのハイライトとして登りたい山。 また、眺めても美しい姿の山として圧倒的に人気があるのが、この槍・穂高連峰である。 標高が日本第3位の奥穂高岳 3190メートル や、極めて山容秀麗な槍ヶ岳 3180メートル がそびえ立つ北アルプスの代表となる山域だ。 登山ルートはバリエーションルートも含めて色々あるが、一般的なコースは上高地から槍沢経由のコースである。 

ちょっと上級の方ならば、やっぱり縦走コースの『表銀座』・『裏銀座』を目指す事だろう。 
これらのコースは北アルプスの展望が素晴らしく、人気共々第一級の縦走コースだ。 また、登山の“玄人”を自負する方には、槍ヶ岳から大キレットを通り奥穂高岳へ抜ける嶮しいコースもある。
 

 

山の民の心を虜にする
あの槍の穂先へ
 
前回積雪期に歩いた槍ヶ岳(『名峰百選の山 第88回』参照)を、今回は夏山で歩いてみよう。
それも、スリルがあり人気が最も高い大キレットを通過するルートを歩こうと思う。
 

槍・穂高連峰 縦走ルート行程図
 
   行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR松本駅より鉄道(0:25)→新島々よりバス(1:15)→上高地(3:00)→横尾
     (1:40)→槍沢ロッヂ
《2日目》 槍沢ロッヂ(1:40)→氷河公園分岐
     (2:30)→槍ヶ岳山荘より槍ヶ岳往復・所要約1時間(2:30)→南岳
     (0:10)→南岳小屋
《3日目》 南岳小屋(1:20)→大キレット・長谷川ピーク(2:20)→北穂高岳(2:20)→涸沢岳
     (0:30)→穂高岳山荘
《4日目》 穂高岳山荘(0:50)→紀美子平より前穂高岳往復・所要約50分(2:45)→岳沢
     (2:00)→上高地よりバス(1:15)→新島々より鉄道(0:25)→JR松本駅

  《1日目》 上高地より槍沢へ
《上高地》から始まるこのコースは、実質的な登山口となる《横尾》までのアプローチが実に長い。 
しかも、“観光地”《上高地》の雰囲気そのままのいでたちで歩く連中を尻目に、黙々と歩き続けなければならない。 眺めも《梓川》が見えるだけで山はほとんど見えず、あるのは休憩所と出店だけ・・と、単調な道が続く。 眺めの為に“目を使う”より、出店で“財布の中身”を使う可能性の方が大きいみたいだ。 

11km・・、3時間かけて、やっと《横尾山荘》の前に着く。 眺めが今いちなら、気も萎えて疲れも感じてくる。 そして極めつけは、スニーカー・ディパックのいでたちで『槍・穂高』を目指そうという連中がいるという事実である。 こういう連中を目にすると、余計に疲れてくる。
 

真夏の日差しを浴びる
槍の穂先に会いにいこう

さて、《横尾山荘》の前で奥穂高岳への《涸沢ルート》を分け、《梓川》から名前を代えた《槍沢》の縁を歩いていく。 やや樹林が深くなってきて、ここにきてようやく登山道らしくなってくる。
後は、樹林帯を緩やかにアップダウンしながら《槍見河原》という槍ヶ岳の穂先が僅かに見える所を越えると、《一ノ俣沢》の常念岳・沢コースを分け、30~40分で《槍沢ロッヂ》に着く。 

今回は、鎖付きの難所・《大キレット》越えが大きなウェイトを占めるので、安全を期して小屋泊山行の形態で進めていこう。 なお、テント幕営ならば、《槍沢ロッヂ》より20分上方にキャンプ指定地の《ババ平》があるので、そこを利用して頂きたい。 明日は、いよいよ北アルプスのシンボル・槍ヶ岳の穂先に立つ。
 


 

槍の穂先より望む笠ヶ岳
 
  《2日目》 槍沢より槍ヶ岳へ
《槍沢ロッヂ》を出ると沢から少し離れ、樹林の中を登っていく。 20分ばかり登ると再び《槍沢》の河原に飛び出し、河原にたたずむ《赤沢岩ノ岩小屋》を横目に見ながら歩いていく。 
この岩小屋の上部一帯がキャンプ指定地となっている。 やがて沢幅が狭まり、沢の右側の土手に彫られた道を伝っていくようになる。 

沢に沿って土手を登っていくと、やがて沢が涸れていって露岩帯が広がるようになる。 沢がチョロチョロの小沢になる頃、土手道から露岩帯に降りて槍ヶ岳本峰から延びる雪渓の前に立つ。 この辺りは《大曲》と呼ばれており、ハイマツと高山植物がおりなす庭園を形成している。 7月初旬の時期ならば槍本峰からの雪渓がこの辺りまで延びて、思わぬ雪渓歩きとなろう。 

《大曲》からしばらく登ると《氷河公園》への道を分けて、モレーンの露岩帯の急登が始まる。 
所々に延びる雪渓を避けるように、その右側を伝って登る。 このモレーンを乗り越えると、前方に槍ヶ岳が敢然とそびえるハイマツ丘の上に立つ。 ここから望む“そそりたつ”槍ヶ岳の姿には、登る闘志がグングンと湧き出してくる。
 

この付近より望む槍ヶ岳は
西欧スタイルだ

モレーンの丘の上からは、しばらくハイマツと高山植物の群落が広がる緩やかな傾斜を登っていく。 
坊主岩の岩屋を見過ごしてから、程なく右手の高台に《殺生ヒュッテ》が見えてくる。 立ち寄ってひと息着くのもいいが、もうあとひと踏ん張り。 40分のジグザグ急登をイッキに乗りきってしまおう。
登りに少し疲れても、道脇に咲く高山植物の花々が慰めてくれる事だろう。
 

槍沢を見下ろす

・・約40分、見た目よりも楽に“飛び出る”感じで、山荘の建つ槍ヶ岳の肩に登り着く。 憧れの槍の穂先へは、ここから鎖とハシゴを伝うこと30分余りだ。 硬いササクレ立った岩を鎖とハシゴの助けを借りてよじ登ると、畳10畳程の広さの槍の穂先の上に立つ。
 

槍の穂先より望む
裏銀座の山なみ
 

穂先の下に建つ
頂上山荘と笠ヶ岳
 
標高3180mの穂先の上からは、遮るもののない360°の大展望が広がる。 中でも、明日以降進んでいく《大キレット》から奥穂高岳までの嶮しい山なみと、全く対照的なモスグリーンの山肌を魅せる『表銀座』・『裏銀座』の山なみが特に目を引く。 頂上の祠に掲げてある頂上標を片手に記念写真を撮って、しばらく眺めを満喫したなら往路を引き返そう。 

頂上は狭いので後がつかえている時などは、長々と留まると他の人の不興を買うので御用心。 
復路も鎖付きの下りなので、落ち着いて“登り優先”の心得を持って下っていこう。 《槍ヶ岳山荘》の前まで戻ってひと息着いたなら、3000mの稜線を楽しみながら歩いていこう。
 

これより“大キレット”を
越えて穂高連峰へ

まずは、日本最標高の“峠”・《飛騨乗越》だ。 標高3000m。 なみいる山を凌駕する高さの峠である。
この峠辺りは槍ヶ岳山荘の管理するキャンプ場となっていて、おそらく日本一高いキャンプ地であろう。 
《飛騨乗越》で《槍平》への道を分けて、大喰岳への登りに取り付いていく。 ゴチャゴチャした感じの岩場をハシゴを伝って登っていくと、広く丸い感じの山頂に登り着く。
 

槍の穂先をバックにゴキゲン!

この大喰岳は標高3101mと我が国でも十指に入る標高を誇っているのだが、隣にはあまりにも有名な槍ヶ岳が控えている為かほとんど目立たぬ“陰”の存在の山である。 大喰岳の山頂からは中の掘れた窪状のザラ場を下っていき、中岳との鞍部に出る。
 
今日3つ目の3000m峰・中岳へは、この鞍部より飛騨側から信州側に巻くように登り返し、最後に脆い岩場を急登で突きつめるといい。 中岳 3084メートル の山頂からは、程よく離れた槍ヶ岳の勇姿と《大キレット》を挟んでの奥穂高岳までの荒々しい稜線の眺めが印象的だ。
 

槍の穂先を振り返る

中岳からは、堆積岩の白く眩しい山肌をジグザグに下っていく。 下った先には中岳南斜面の雪田から流れ出る沢があり、白く眩しい岩肌からの照り返しに“参った”喉と体には嬉しい水場である。 
なお、《南岳小屋》は天水利用で、水は不足しがち・・との事である。 テント利用ならば、この稜線中ではここが最終水場となるので十分補給しておいた方がいいだろう。
 
後は、3000mの“高原散歩”ともいうべき広い稜線を快適に歩いていこう。 山頂手前で《氷河公園》からの道を併せて、南岳 3033メートル の頂上に着く。 山頂からは、槍ヶ岳が記念写真を撮るのにちょうどいい大きさにそびえ立っているので、是非にも“一枚”撮っておこう。 南岳で“到着前の一服”をしたなら、眼下に見える《南岳小屋》に向かって下っていこう。
 

穂高稜線の夕景
かぎろい色の空に移りつつ
 
《南岳小屋》は広いキャンプ地となっており、ここから眺める笠ヶ岳と夕日のおりなす情景はとても叙情的だ。 いよいよ、明日はこのコースの核心・《大キレット》越えである。 明日への鋭気を養うべく、ゆっくりと休息しよう。
 
  続く《3日目》の行程は、『名峰次選 第90回 北穂高岳,涸沢岳』を御覧下さい。

    ※ 詳細はメインサイトより『槍・穂高連峰』を御覧下さい。
 
 
 



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