2011-02-18 (Fri)✎
『オホーツク縦貫鉄道の夢』の第6回目は、最も心の中に抱く『岬』のイメージを魅せる落石岬と、それに続く海岸段丘を訪ねてみよう。 そして、このシリーズで初めて、鉄道撮影もしてみようと思う。
前回は落石駅の夜の風景を御披露した事であるし、今日の行程は朝夜明け前からの行動が望ましいので、この落石で宿泊した事を前提として話を進めよう。 ちなみに、落石周辺の宿泊施設のデータはないので悪しからず。
草原の果てに、ポツリと立つ縞模様の灯台・・。
灯台の背後は切りたった断崖で、海より吹きつける強風にカモメが舞う。 そこに立つと、厳しい中にも懐かしい潮の香りがする。
・・これらは、私が抱く岬の情景だ。 この私の“思い”そのままの情景を魅せる岬が、根室半島の付け根から太平洋に突き出る落石岬である。
紅白の縞模様の灯台の建つ落石岬
この素晴らしい“岬”の風景を魅せる落石岬は、花でも魅せてくれる。 ここは、天然記念物・サカイツツジの南限地としても知られている。 6月の初旬になると、サカイツツジがこの岬の草原一面に花開く・・。 この花は、アラスカ・東アジア北部と、日本のこの地にしか自生せぬ・・という珍しい花である。 また、岬から続く海岸線も、素晴らしい海岸段丘を魅せて壮観だ。
落石岬大地の冬の草原・・
人が心の中に描く岬の原風景を魅せる落石岬へは、今や無人駅となった落石駅を出て、駅前から延びる道を線路に沿って歩いていく。 辺りは、のどかな漁村風景が広がる。
約3kmほど歩くと、海岸段丘の下り坂となって、漁港に向かって下っていく。
下りきった所が、《元落石》の漁港だ。 ここは、案内板の立つ『落石岬入口』でもある。
落石岬へ・・
アカエゾマツのトンネルをくぐると
草原の岬大地が広がる
ここから、再び岬の丘に向かって登り返す。 登り坂がが収まった頃、辺りは砂利敷の広い丘となり、車の進入を防ぐゲートが現れる。 ここからは特別天然記念物のサカイツツジの植生保全地域となるので、人的な施設は後述のロラン局跡の建物を除いて一切存在しない。 もちろん、公衆トイレも含めて・・である。
ロラン局を越えると、岬灯台へのまっすぐな桟道が延びている。 この草原の真ん中に延びる一筋の桟道は、岬の果てにポツンと建つ赤と白の縞模様の灯台の前まで続いている。
これは天然記念物であるサカイツツジの保護の為の桟道だが、トド松のトンネルをくぐり、その先にそびえる草原と紅白の灯台は、私が長い間思い描いていた“岬”の情景そのままなのだ。
日の出前の岬風景
氷点下の重いピンク色の空と
氷点下の重いピンク色の空と
漁船の灯火とそれに続く1本の木道・・
この岬には、できれば日の出前に立ちたいものだ。 それは紺から紫、そして橙色とスペクトルに変りゆく夜明けの空と、か細い灯台の光がおりなす素晴らしい情景を魅せてくれるからである。
か細い灯台光が
最涯ての情感を呼び起こす
空が紺色から
ほのかなピンク色に変わって・・
この情景に言葉は要らない。 その時の私は、自然情景とコンタクトできる小道具であるフイルムカメラを使って、この情景を切り取ろうと必死だったのである。
朝日が照らす光跡を
漁に出る船がゆっくりと渡っていく
漁船の群れが次々と
朝日を背にして漁場へ向かっていく
漁場という戦場へ向かう
海の漢の意気込みを感じた
やがて、朝日が沖の真正面から昇り始める。 そして、運良く出漁した漁船が何艘も海より昇る陽の光跡に入ってきて、素晴らしい情景を魅せてくれた。 この素晴らしき情景に魅せられての高揚感は、いかばかりのものだろう・・。 灯台を越えて岬の断崖に立つと、海から吹き上げる風が懐かしい潮の香りを運んでくる。 断崖にぶち当たって、砕け散る波音も叙情的だ。
穏やかな草原大地とは裏腹に
岬直下は荒れ狂う断崖絶壁だ
強い風に巻かれて思うように飛べないカモメの群れは、哀愁を漂わせている。
一時、何もかも忘れてたたずもう・・。 ぼんやりとたたずんで、“さぁ、行こうか・・”と思い立ったなら、この地を後にすればいい。
岬からは、往路を《元落石集落》まで戻る。 ここから往路で歩いた海岸段丘の坂を登って、寄り添ってくる線路脇の土手を歩いていくのだが、かなりの荒地なので注意しよう。
海に出ると海岸段丘の
素晴らしい情景が広がる
視界が開けて太平洋の大海原が見えてくると土手は途切れる。 線路脇から離れて、小高い草原の丘を海に向かって歩いてみよう。 丘の際に立つと、下は断崖になって切れ落ち、そこから延びる海岸線は見事な海岸段丘の連なりを魅せている。
最果ての情感あふれる眺めが続く
この丘に立ち・・、列車が来るのを待って、海と海岸段丘に列車のアクセントを添えてカメラに収めるのもなかなか乙である。 それでは、この地での風景鉄道をごろうじろ。
海側の雪が飛ばされる程の
突風が吹き荒れて・・
この海岸段丘では、エゾシカの群れが駆け抜ける姿が見られるかもしれない。 なぜなら、手付かずの大草原地帯だからだ。
立ち枯れのアカエゾマツの隙間から
エゾシカの群れが駆け去るのを見た
なお、帰りは往路を戻るので、足元には注意しよう。 落石駅に戻る頃には、正午過ぎとなっている事だろうと思う。 駅前集落にある『何でも雑貨屋』で空腹を満たしてから、午後1番の列車で先に進もう。 次回は糸魚沢とチライカリベツ川湿原を訪ねてみよう。
※ 詳細はメインサイトより、
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No title * by 風来梨
オータ様、こんばんは。
20年ほど前に初めて立ち寄った時は、記述にあるようにほったらかしの廃墟で、中はコンクリートの結露が鍾乳石となっていた記憶があります。 中はがらんどうで、本当に放ったらかし状態だったような・・。 でも、今回訪れた時は、建物は綺麗にお色直しされて、戦前に使ってたかのようなレトロのプレートが掲げてあり、鉄扉も新調されて錠前が掛けられていました。
たぶん、文化財指定でも受けての事だと思います。
20年前と180度間逆の対応を見ていると滑稽に思えましたね。
20年ほど前に初めて立ち寄った時は、記述にあるようにほったらかしの廃墟で、中はコンクリートの結露が鍾乳石となっていた記憶があります。 中はがらんどうで、本当に放ったらかし状態だったような・・。 でも、今回訪れた時は、建物は綺麗にお色直しされて、戦前に使ってたかのようなレトロのプレートが掲げてあり、鉄扉も新調されて錠前が掛けられていました。
たぶん、文化財指定でも受けての事だと思います。
20年前と180度間逆の対応を見ていると滑稽に思えましたね。
航海する船に、信号を出しつづけていたとか…
国道を一度通ったことがあるので、想像はつくのですが、やはりこんなさびしいところだったのですか…