風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第93回  ニペソツ山

名峰百選の山々 第93回  『8 ニペソツ山』   北海道
大雪山系(大雪山国立公園) 2013m  コース難度 ★★  体力度 ★★★
 

アルプスばりの美しい姿を
魅せるニペソツ山
 
  東大雪 ひがしたいせつ (大雪山国立公園)
奥大雪より更に深く位置する東大雪。 登山客で賑わう『表大雪』と違って、人もあまり入山せず静かな山旅を味わえる事だろう。 また山容も、石狩連峰やニペソツ山など、『表大雪』にはない切りたった岩稜を示し、登山的な魅力を大いに引き立てている。
 
展望も『奥大雪』の絶好の展望台として、雄大な景色を魅せてくれる事だろう。
もちろん花も豊富で、今や大雪の中でも最も原始の香りが漂う山域ではないだろうか。
 

 

ニペソツ山・杉沢ルート 行程図
 
    行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
上士幌町・糠平より車(0:50)→杉沢出合(2:00)→天狗ノコル(1:00)→前天狗
(1:40)→ニペソツ山(1:10)→前天狗(0:40)→天狗ノコル(1:30)→杉沢出合より車
(0:50)→上士幌町・糠平

この山は日帰りで登頂できる・・とはいっても、往復15kmの長丁場であるので、早朝から登り始めたい。 それには、前夜の内に《杉沢出合》に入っておく事が望ましい。
 
かつての木材搬出の要衝・『十勝三股』から林道が延びている。 この林道は途中で2方向に別れ、右手は石狩岳の《十石峠》や《シュナイダーコース》の登山口へ、左手はこれから目指すニペソツ山の《杉沢出合》へ、それぞれ延びている。 

進路を左手に取って、林道の砂利道を都合約9km進んでいくと、《杉沢出合》の林道終点に着く。 
車がやっとUターンできる程度の狭い空地に車を止めて、林道脇にテントを張って休もう。 
なお、《杉沢出合》の車止めの前は、目の前を清らかな沢が流れる絶好のキャンプ適地となっている。 

これは先程も述べたように、早朝から登り始めなければタイムオーバーとなってしまう危険があるので、ぜひ前日アプローチを心掛けて欲しい。 早朝出発は山行の鉄則だ。 いい山旅の鍵は、ほとんどこれにかかっている。
 

山岳美を魅せるニペソツ山へ
 
天狗岳やニペソツ山への距離が示してある登山口の道標を越えると、清らかな杉沢が流れていて、これを桟橋で渡る。 ここで、今日の行動水を水筒に汲んでいくといい。 沢を渡ると、対岸の土手を急登していく。 途中、山の湧水で足場がぬかるんで歩きにくい所もあるが、おおむね足場のしっかりした樹林帯の急斜面を登っていく。 

区間ごとに、《前天狗》までの距離を示してある看板が木に掛けてあるが、これは“クセ者”であまり信用はできない。 それは、『上部にある看板が、下の看板よりも残りの距離表示が長い』という決定的な欠陥があるからだ。 これをアテにして登ると、事実を知った時の疲れが倍増するので念の為。
 

イワブクロ

登山口から延々と続く樹林帯の急登で汗を搾り取るだけ搾り取られるが、小天狗山が樹木の間から見えるようになると、ようやくこの急登も一段落着く。 しばらく、小天狗山を見ながらの緩やかな道が続くが、アカエゾマツの木々が視界を遮るようになり、最後のつめの急登でこれを乗りきると小天狗山から延びた稜線上のピークの上に出る。 しかし、ピークといっても展望の全く利かない林の中で、ピークに立った事すら意識できないであろう。 

ここから下りとなり、迫り出した大岩を巻くようなトラバースで進行方向を180度転換して下っていく。 
辺りが樹林帯から笹地に変わるまで下っていくと、《天狗ノコル》に下り着く。 ここは、雪渓のある時は何とか展場として使えそうだが、雪渓が消えると蒸し焼かれたような荒地で、とてもではないが泊まる気にはなれない。
 

東大雪の更に奥の山々を望んで

この荒地を越えると、ハイマツの上に積み重なった《前天狗》への登りだ。 それ程キツくないハイマツのブッシュ漕ぎでこのハイマツ帯を抜け出ると、ロックガーデンのような岩ガレ場の直登だ。 ロックガーデンまで抜け出ると展望はすごぶる良くなるが、これといって際だった山がなく、まだ一級の展望とは言い難い。 従って、黙々とこのロックガーデンを登っていこう。 

やがて傾斜は緩くなり、大きな窪地状の中を歩いていく。 ここは、辺り一面岩ガレとなっていて同じような眺めが続き、ともすればリングワンダリングに陥る危険性のある所だ。 ガスに巻かれた時などは、充分な注意が必要だろう。 ガレ場の窪地を高台までつめるように登ってこのピークの上に立つと、前面の展望がパッと開けて、第一級の素晴らしき展望が眼前に広がる。
 

天狗岳より望むニペソツ山
1度目はガスって×
2度目も残念ながら天候が今イチだった
 
ここが《前天狗》で、ここから撮られたニペソツ山の写真がしばしば風景写真集に使われていることからも解かるように、ニペソツ山が最も凛々しくその姿を魅せる所なのだ。 しかし、ガスのかかり方も早く、なかなかいいシャッターチャンスにならないのも確かな事だ。 私も、このおかげで撮り損ねたのである。
 
さて、《前天狗》からは、一度窪地に向かってロックガーデンを150m急下降する。 途中、浮石などが多くあり歩きにくい。 これを下りきると窪地のお花畑となるが、花を愛でる暇もなく、再び岩ガレ場の登り返しとなる。 これから、このようなアップダウンを数回繰り返すので、思った以上に時間がかかる。
この登り返しを乗りきると、砂礫地のお花畑を見ながら、全面に迫り出してくる天狗岳への緩やかな登りとなる。

天狗岳の登路は切りたった西斜面を巻くように登っていくのだが、この山には頂上の標示が全くなく、いつの間にか乗り越えてしまう感じである。 感覚としては、最も下が切れ落ちて見える所辺りがピークであると考えていいだろう。
 
天狗岳を越えると、眼前にそびえるニペソツ山に向かって急下降していく。 約150m下りきって稜線の鞍部に立つと、これより限りなく急峻なニペソツ山の東斜面の縁を350mイッキに登り返す、この山行最大のアルバイトが始まるのだ。
 

ミヤマオダマキ

ルンゼ状のザラ地の急登で汗を搾り取られ、ふくら脛が引きつるのにひたすら耐えて登っていこう。 
このキツい登りも、ニペソツ山東斜面の崩落地が眼前に立ちはばかって見えるようになると一段落する。
ここは、ニペソツ山の崖っぷちに沿ってミヤマオダマキやミヤマアズマギクのお花畑となっていて、切りたった東斜面の崖を背景にするといいアングルなりそうだ。 だが、何分切りたった崖に近づくので、充分な注意の上で撮影して頂きたい。
 

               エゾイソツツジ        ミヤマアズマギク
 
このお花畑を過ぎると、東斜面の崩落地を避けるように進路を右に変えて、北斜面のガレ場を巻くようにトラバースして反対側の西斜面に乗り移る。 この辺りは、辛い登りにひたすら耐えたご褒美の如く、辺り一面にお花畑が広がる。 西斜面に移ると尾根筋の緩やかな道となり、そのままニペソツ山の頂上へと連なっている。 

ニペソツ山山頂にて 
 
西斜面に乗り移ってから約7~8分登ると、『東大雪』の秀峰・ニペソツ山 2013メートル の頂上だ。
頂上からの眺めは、石狩連峰の大きな“楯”の後ろに、残雪模様の美しい大雪の山々や《高根ヶ原》の大平原が広がって壮観だ。 一方、振り返った東側は、先程に見た東斜面が怖い位に真っすぐ谷底に切れ落ちている。 


残雪眩しい高根ヶ原や
トムラウシを望んで
ニペソツ山も
『表大雪』の好展望台だ
 
この切れ落ちた崖っぷちにも花が群落を成していて、カラフトゲンゲ・シコタンソウ・エゾルリソウなどが可憐な姿を魅せている。 思わず近づきたい所なのだが、過去に転落死亡事故のある危険地帯なので、近づかない方が良さそうだ。
 

           ニペソツ山東面の崩壊地に広がるお花畑      チシマフウロ
                しかしその先は奈落の底だ
 
『東大雪』の最高点の眺めを満喫したなら、下山に取りかかろう。 帰路は往路をたどるが、天狗岳・前天狗・小天狗と3つの登り返しがあるので、思ったより時間がかかる。 カメラ片手に下っていくなら、登りと同じ位の所要時間を見るべきであろう。

    ※ 詳しくはメインサイトより『東大雪<2>』を御覧下さい。
 
 
 
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