風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第92回  五竜岳,鹿島槍ヶ岳 その2

名峰百選の山々 第92回  『50 五竜岳,51 鹿島槍ヶ岳 その2』  長野県・富山県
後立山山系(中部山岳国立公園) 五竜岳 2814m , 鹿島槍ヶ岳 2890m
コース難度 ★★★  体力度 ★★★
 

茜色に染まる五竜岳
 
  後立山連峰 うしろたてやまれんぽう (中部山岳国立公園) 〔再掲〕
秀峰・白馬岳を盟主とした後立山連峰は個性的で優れた山容を持つ名峰が多く、人気・魅力とも北アルプスではトップクラスである。
 
大雪渓と広大なお花畑を擁する盟主・白馬岳 2932メートル 、高山のいで湯とお花畑が自慢の白馬鑓ヶ岳 2903メートル 、山々の姿を映す八方沼と広大なお花畑をかかえる唐松岳 2699メートル 、武田氏の御陵菱を雪形に持つ五竜岳 2814メートル 、2つのピークが吊尾根で結ばれていて他の山から眺めてもひときわ目立つ後立山連峰のもう一つの盟主・鹿島槍ヶ岳 2890メートル など、今すぐにでも飛んでいきたい名峰がそろっている。
 

 

後立山連峰・南部縦走ルート 行程図
 
  行程表                駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR信濃大町駅よりバス(0:40)→扇沢(0:10)→扇沢出合(3:20)→種池山荘
     (0:50)→爺ヶ岳・南峰(1:00)→冷池山荘
《2日目》 冷池山荘 (2:00)→鹿島槍ヶ岳・南峰 (0:35)→鹿島槍ヶ岳・北峰
     (1:50)→八峰キレット(0:50)→口ノ沢ノコル(3:00)→五竜岳
     (0:50)→五竜山荘
《3日目》 五竜山荘(1:20)→大遠見山(1:30)→小遠見山(1:00)→地蔵ノ頭よりリフト 
     (0:05)→アルプス平駅よりテレキャビン(0:10)→山麓駅(0:25)→JR神城駅
 
  ※ 鹿島槍ヶ岳の積雪期を歩いた記録はコチラをどうぞ。
    《1日目》行程『名峰百選 第91回 五竜岳,鹿島槍ヶ岳 その1』 からの続き
 
  《2日目》 鹿島槍ヶ岳から八峰キレットを越えて五竜岳へ
今日は、鹿島槍ヶ岳から八峰キレットを越えて五竜岳へと向かう。 鹿島槍ヶ岳から五竜岳の間には天然の要害・《八峰キレット》があり、距離の割りには随分と所要時間がかかる。 従って早発は、この日の必須条件となる。 それでは出発しよう。 山荘の前から続く縦走路を北上し、お花畑の広がる主稜線上の小高い台地に出る。
 

そびえ立つ“二つ耳”へ登っていこう

この台地より信州側の草地を横絡みしながら登っていくと潅木帯にぶつかり、これも絡みながら乗り越えると、いつの間にか道は越中側に移ってハイマツの中をジグザグに登っていく。 これを乗りきると、布引山 2683メートル 山頂だ。 この山は信州側が大きく切れ落ちているので、道は越中側のハイマツ帯の中につけられている。 ハイマツの中を漕いでいくと二重山陵となった窪地を抜けて、鹿島槍・南峰に向かっての直登へと続いていく。 
 
越中側につけられた直登路を喘ぎながら登っていくと、山頂に積んである大きなケルンの剣先が見えてくる。 
ケルンがだんだん大きくなってきて、やがて南峰の頂上台地の左端に飛び出る。 

鹿島槍ヶ岳・南峰 2890メートル からの眺めは正に雄大で、残雪眩しい剱・立山連峰、そして恐竜の背びれのような稜線の突き出しを魅せる《八峰キレット》と五竜岳岩峰群と、素晴らしい山岳風景が目白押しだ。
 

鹿島槍から望む山なみ
 
これより鹿島槍ヶ岳を下って、先程見えた“恐竜の背びれ”を越えていかねばならない。 
あの美しき岩峰も、“一つ一つ上下せねばならない”と思うとゲンナリしてしまう。
 

これより恐竜の背びれのような
八峰キレットを越える

南峰の頂上台地より黒部側を周り込むようにして下ると、“二ッ耳”をつなぐ吊尾根の上に出る。 吊尾根の上はザラついた不安定なガレ石帯で、急な下降とあいまって歩きにくい。 所々突き出す岩の間を縫って鞍部に出ると、北峰直下のテラスに向かって少し登り返す。 北峰直下のテラスで縦走路は左に折れて、《八峰キレット》に向かって大きく落ち込んでいく。
北峰へは、真っすぐについている踏跡をたどっていけばすぐに登り着く。 

北峰 2842メートル からはより高い位置にある南峰と、それをつなぐ吊尾根が左肩上がりで連なり迫力満点だ。
そして、断崖絶壁となっている北東面から足下を覗き込むと、U字谷となっている《カクネ里》の雪渓が逆光に鈍く光り、その上を北壁のブッシュが急傾斜で落ちている。 北壁の核心部は、あまりにも角度がなさ過ぎて死角となり見えない。
それほど垂直、いやそれ以上に下にもぐり込んでいるのだろう。 このダイナミックな風景を十分目に焼きつけたなら、分岐まで戻って縦走路を急下降していこう。
 

鹿島槍ヶ岳~八峰キレット~五竜岳 ルート詳細図

この下降は強烈で、1km足らずの距離で300mイッキに下っていく。 下っていく最中に《キレット小屋》の屋根が見え隠れするがこれがまた不可解で、下れば下る程に離れてやがて見えなくなる。 《カクネ里》のU字谷やそそり立っている鹿島槍の北壁など素晴らしい景色が続くのだが、それらに目を向ける余裕のない程の急下降の連続に気持ちが萎えてくるかもしれない。 《キレット小屋》が隠れてしまう辺りから黒部側に移って下っていくと、ハシゴが現れる。 いよいよ《八峰キレット》越えだ。 

このハシゴを下り鹿島槍の稜線と別れて、迫り出す岩を黒部側に大きく巻いてキレット最低部に下り立つ。 ここからは、迫り出す岩壁をヘツるように下っていく。 “底”と呼ばれる最低部からは斜めに架けてあるハシゴを上り、迫り出す岩を鎖片手にヘツっていくと、右側に周り込んで両側から迫り出した岩壁が創る“門”のような所をくぐる。 

これをくぐり抜けると信州側に出て、信州側の岩壁を背にヘツっていく。 やがて前方が岩で塞がれるようになり、この岩を越えるべく架けられたハシゴを昇って越中側へ乗っ越す。 長い鎖場やハシゴが続いた《八峰キレット》核心部もここで終わり、再び足下に見え出した《キレット小屋》にホッとひと息着ける事だろう。 この岩崖の上から針金片手に急下降していくと、《キレット小屋》だ。
 

絹のような雲海に浮かぶ山なみ

小屋の正面にあるテラスからは、剱の《八ッ峰》が残雪眩しく横たわっている。 そして、そのテラスには、下から涼風が吹き上がり休憩にはもってこいの所だ。 あまりの心地良さに、昼寝が過ぎてタイムオーバーでこの小屋に宿泊・・なんて事にならぬよう。 

ここからは、あの恐竜の背びれのような五竜岳岩稜群の乗り越えが始まる。 これがかなりのアップダウンで、《キレット小屋》からすぐ前にそびえ立つ五竜岳まで4時間近くかかる。 《キレット小屋》小屋の建つ狭い鞍部より、右側の岩壁を鎖片手に乗り越えていく。 この岩壁の上に立つと、《キレット沢ノコル》に向かって下っていく。 早速、アップダウンの始まりだ。
「せっかく登ったのに」という言葉が出る程見事に下っていく。 次は、赤茶けたピークに向かっての急登だ。 

この登りは、ザラザラした砂礫帯に大きな岩が浮石状に乗っかって不安定な事この上ない。 この赤茶けたピークを乗り越えると、再び急下降して《口ノ沢ノコル》に出る。 足元を覗くと、信州側には《カクネ里》の雪渓が鈍く光っている。
コルのツメのような小狭い鞍部から、越中側を斜めに切るように登っていく。 次に目指すピークは、赤茶けた屋根型の小壁を魅せる《北尾根ノ頭》である。 このピークは、『G7』とも呼ばれている。 

『G7』を越えると、黒い小岩峰の集まりである『G5』の領域を越えていく。 『G5』の南端の峰を黒部側を巻いて越えると、砂利石で敷きつめられてザクザクした急坂となる。 めり込んで滑りやすい嫌な急登だ。 これを踏ん張って登りつめると稜線に出て、『G5』の小岩峰群の細かい起伏を乗り越える。 

やがて、一番北側のピークを踏むと、主稜線から離れて越中側に下っていく。 『G5』に続いて主稜線上にそびえ立つ『G4』の岩峰を左に見送って、この峰の越中側を巻いていく。 『G4』の峰が背後にくるまで巻いていくと、五竜岳の南東斜面がそそり立つ狭く痩せた鞍部に出る。
 
ここから急傾斜で突き上げる南東斜面を、ジグザグとトラバースを絡めながら登っていく。 ここもボロボロと小石が崩れ落ちる脆い地質の急登で、ふくら脛が悲鳴を上げる事だろう。 踏ん張り損ねてスリップするとボロボロと砂利石が崩れ落ちるので、これにも神経を使う。 これに耐えて登っていくと、やがて上にアーチダム型の雪田が見えて、周囲がハイマツで囲まれていく。
こうなると、もう頂上は近い。

この雪田の上をトラバース気味に伝い、ハイマツの中につけられた道を登っていくと頂上標柱が見えてくるだろう。この頂上標柱の立っている丘は頂上への分岐で、五竜岳 2814メートル 頂上と三角点は、これより50mほど岩稜帯を西に移動した所にある。 五竜岳の頂上からは、苦労して越えてきた《八峰キレット》と五竜岳岩峰群、そして鹿島槍の“二ッ耳”を眺めてみよう。 しみじみとした思いが募り、感慨深い眺めとなるはずだ。
 

五竜岳の頂上についた時は
剱の方向だけが望めた
鹿島槍の方向は雲が覆って写真は撮れず
 

五竜岳にて

 五竜岳頂上からは
御領菱をかたどる岩峰・『G2』のザラ場を下る
 
後は《五竜山荘》に向かって下っていくだけだが、疲れて足が棒になり普段のコースタイムの40分では到底無理だと思う。
従って、所要50分としたのだが、これは私の気のまわし過ぎだろうか。 今日は、《五竜山荘》前のキャンプ場でストップとしよう。


五竜山荘暮情
 

 

五竜岳の肩からの
御来光で1日が始まる
 

シルエット美しき剱・立山連峰
を望んで下山に取りかかろう
 
  《3日目》 遠見尾根を下山
下山路は《遠見尾根》コースを下っていく。 先程の道を白岳の分岐まで戻り、岩屑を盛り上げたような山頂に向かって登っていく。 白岳 2541メートル 山頂は縦に細長い感じで、山頂広場は北アの山にしては珍しく荒れている。
白岳の細長い頂上台地を尽きるまで歩いていくと、右の《白岳沢》に向かって大きく進路を変えて、ザラザラのガレ場を急下降していく。
 

朝日をいっぱいに浴びて輝く
ハクサンフウロ

この下りは調子ついて下ると、必ずといっていい位転倒する。 ここでの転倒は小さな砂利石に乗っかっての“スライディングタックル”なので、全身擦り傷となりかなりのダメージを受けるのである(筆者の体験より)。 この下りを終えると、痩せた鞍部を越えて西遠見山に向かって登り返す。 どこが頂上か判らぬ樹林帯の中を通り抜ける。 たぶん、素知らぬ内に西遠見山の頂上を越えているのだろう。 

やがて、汚い水溜りのような《西遠見ノ池》を横に見て湿地帯をダラダラと上下すると、ネマガリタケに覆われた大遠見山 2106メートル の山頂に出る。 ここも山頂がどこか判らぬ丘の上だが、ただ一つ自慢できるものがある。
それは、五竜岳と鹿島槍ヶ岳が肩を並べてそびえる“風景”である。
 

越えてきた峰々を一望する高揚感

大遠見山からは、小さく下って北に位置する《平川》側の支稜から南の支稜へ乗り換える。 後は、ネマガリタケに囲われた道を何度か上下すると、中遠見山の頂上を経て小遠見山直下の広場に出る。 ハイキング程度のトレッカー達は、ここまでで引き返す事が多いみたいである。 

ここからはダケカンバの樹林帯を越えて整備された《見返り坂》を下り、《地蔵ノ頭》の山頂公園を通ってリフトの乗場に下り着く。 リフトに乗って、足をブラブラさせながら山の余韻に浸るのも結構“乙”である。 《アルプス平》からは、テレキャビンを利用しよう。 標高差800mをイッキに下ろしてくれる。 山麓駅に着いたなら、クアハウスで汗を落としていこう。 JR神城駅からの松本方面の列車は、1時間に1本程度あるので心配はないだろう。

   ※ 詳しくはメインサイトより『後立山連峰<4>』を御覧下さい。
 
 
 
 


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