2013-06-16 (Sun)✎
名峰百選の山々 第90回 『72 仙丈ヶ岳』 山梨県・長野県
白峰山系(南アルプス国立公園) 3033m コース難度 ★★ 体力度 ★★
雄大な天然のうつわ
仙丈ヶ岳・薮沢カール
仙丈ヶ岳 せんじょうがたけ (南アルプス国立公園)
雄大なカール地形を抱く仙丈ヶ岳 3033メートル は優しい山容を示し、また高山植物の豊富な“花の峰”として知られている。 また、カールの上部は万年雪の雪渓を抱き、高山の魅力を大いに引き立てている。 万年雪と花の“うつわ”であるカールを越えると、雄大な眺めの山頂が待っている。
雄大なカール地形を抱く仙丈ヶ岳 3033メートル は優しい山容を示し、また高山植物の豊富な“花の峰”として知られている。 また、カールの上部は万年雪の雪渓を抱き、高山の魅力を大いに引き立てている。 万年雪と花の“うつわ”であるカールを越えると、雄大な眺めの山頂が待っている。
頂上に立つと、360°名峰がそびえ立つ大パノラマが望まれる。
東を見れば、甲斐国の守護神として崇められる甲斐駒ヶ岳 2967メートル が、対照的な荒々しい山容を魅せている。 振り返れば、南アルプスの盟主・北岳 3192メートル ・間ノ岳 3189メートル 、更に奥には塩見岳 3052メートル など、山が途切れる事なく連なっている。 左右両サイドも名峰が目白押しだ。 右には鳳凰三山、左には中央アルプス、果てには北アルプスの剱や鹿島槍など、日本の名峰が一度に見渡せるのである。
この山なみを見渡すなら、やはり日の出が最高である。 日本の名峰が朝日を浴びて紅に染まる姿には、言葉では語り尽くせぬ“感動”がある。
東を見れば、甲斐国の守護神として崇められる甲斐駒ヶ岳 2967メートル が、対照的な荒々しい山容を魅せている。 振り返れば、南アルプスの盟主・北岳 3192メートル ・間ノ岳 3189メートル 、更に奥には塩見岳 3052メートル など、山が途切れる事なく連なっている。 左右両サイドも名峰が目白押しだ。 右には鳳凰三山、左には中央アルプス、果てには北アルプスの剱や鹿島槍など、日本の名峰が一度に見渡せるのである。
この山なみを見渡すなら、やはり日の出が最高である。 日本の名峰が朝日を浴びて紅に染まる姿には、言葉では語り尽くせぬ“感動”がある。
仙丈ヶ岳 藪沢カールルート行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 伊那市街より車(0:45)→戸台よりバス(1:00)→北沢峠(1:50)→大滝ノ頭
(0:50)→馬ノ背(0:50)→仙丈避難小屋(0:30)→仙丈ヶ岳
※ 仙丈ヶ岳より大仙丈岳まで往復1時間(0:25)→仙丈避難小屋
《2日目》 仙丈避難小屋(0:30)→仙丈ケ岳(1:45)→大滝ノ頭(1:20)→北沢峠よりバス
(1:00)→戸台より車(0:45)→伊那市街
(1:00)→戸台より車(0:45)→伊那市街
甲斐駒ヶ岳より望む仙丈ヶ岳
《1日目》 薮沢カールを経て仙丈ケ岳へ
仙丈ヶ岳は、南アルプスの中でも比較的楽な“初級編”の山だ。 コースもさして厳しい所もなく、歩行時間も健脚者や上級者なら4時間を切る事も可能だろう。 当然の事ながら、前夜北沢峠泊での日帰り山行も可能である。
いや、可能というより、ほとんどの人が日帰りでこの山に登っている。 しかし、それではこの山の抱く魅力を十分に味わう事ができない。 この山の最大の魅力は冒頭でも述べた通り、朝日を浴びて紅く染まる山々の眺めにあるのだ。 これを見ずして、この山は語れない。
この『日本百景』の原点である“行ってみたい”“眺めてみたい”という思いに沿うためにも、ここは前夜《戸台》泊での1泊2日の行程で望む事にする。 マイカーならば、前夜のうちに《戸台》の駐車場まで入り、その夜を車中泊とすれば《戸台》発の始発バスに乗車できる。 交通機関利用ならば、JR甲府駅から《広河原》経由で《北沢峠》へアプローチして、《北沢峠》泊で翌朝登るのがベストだ。
いずれにしても、辛く苦しい登りは、午前中の涼しい内に済ませてしまうのが山行のセオリーである。
従って、アプローチには日程を割きたいものだ。 それでは、この魅力あふれる優しい山容の山に登ってみよう。
この『日本百景』の原点である“行ってみたい”“眺めてみたい”という思いに沿うためにも、ここは前夜《戸台》泊での1泊2日の行程で望む事にする。 マイカーならば、前夜のうちに《戸台》の駐車場まで入り、その夜を車中泊とすれば《戸台》発の始発バスに乗車できる。 交通機関利用ならば、JR甲府駅から《広河原》経由で《北沢峠》へアプローチして、《北沢峠》泊で翌朝登るのがベストだ。
いずれにしても、辛く苦しい登りは、午前中の涼しい内に済ませてしまうのが山行のセオリーである。
従って、アプローチには日程を割きたいものだ。 それでは、この魅力あふれる優しい山容の山に登ってみよう。
仙丈ヶ岳に咲く花々 その1
オヤマノエンドウ ハクサンイチゲ
《北沢峠》から、シラビソの原生林の中をジグザグに切って登っていく。 登山口をくぐるなり、いきなりの急登だ。 三合目付近までシラビソの樹林が深く、見通しはほとんど利かない。
三合目までの急登に耐えると平坦な尾根上に出て、周囲の樹木もシラビソからダケカンバに変わり、樹林帯の薄暗い雰囲気より解放される。 日差しの差し込む明るい尾根道をしばらく歩いていくと、《薮沢カール》との分岐である《大滝ノ頭》にたどり着く。
仙丈ヶ岳に咲く花々 その2
グンナイフウロ
目の前を小仙丈岳が盛り上がるように立ちはばかっていて、思わず唾を飲み込む眺めだ。
ここは急登で、しかも直射日光で蒸し焼きになりそうな小仙丈岳経由の“直登”コースより、花や雪渓を抱く雄大なカールを越えていこう。 分岐からは、小仙丈岳の山裾を巻くようにトラバースしていく。
しばらくは、樹林帯の薄暗い道だ。 やがて、《薮沢》の沢音が近づいてきて、この沢を徒渉する。
この辺りから、チラホラと高山植物が姿を魅せ始める。 沢を渡って、両側を色とりどりの花が飾る丸太の階段を登っていくと、《馬ノ背ヒュッテ》前の広場に出る。 今日の宿泊地・《仙丈避難小屋》は無人の避難小屋(現在は食事まで出る“山荘”となっている)なので、装備を持たない場合は食事提供のあるこの小屋での宿泊となろう。 しかし、頂上での朝日を望むには、決定的に不利であるが。
小屋前のベンチでひと息着いたなら、再び登り始めよう。 《馬ノ背ヒュッテ》から、再び尾根筋へ登っていくのだが、その途中に《クロユリ苑》と呼ばれるお花畑がある。 その名の通りクロユリが咲き乱れるのだが、そのクロユリを引き立てるべく満開に咲くシナノキンバイの眩い黄色が印象的であった。
しばらくは、樹林帯の薄暗い道だ。 やがて、《薮沢》の沢音が近づいてきて、この沢を徒渉する。
この辺りから、チラホラと高山植物が姿を魅せ始める。 沢を渡って、両側を色とりどりの花が飾る丸太の階段を登っていくと、《馬ノ背ヒュッテ》前の広場に出る。 今日の宿泊地・《仙丈避難小屋》は無人の避難小屋(現在は食事まで出る“山荘”となっている)なので、装備を持たない場合は食事提供のあるこの小屋での宿泊となろう。 しかし、頂上での朝日を望むには、決定的に不利であるが。
小屋前のベンチでひと息着いたなら、再び登り始めよう。 《馬ノ背ヒュッテ》から、再び尾根筋へ登っていくのだが、その途中に《クロユリ苑》と呼ばれるお花畑がある。 その名の通りクロユリが咲き乱れるのだが、そのクロユリを引き立てるべく満開に咲くシナノキンバイの眩い黄色が印象的であった。
仙丈ヶ岳に咲く花々 その3
クロユリ キンバイソウ
ただ花が多いだけでは、“花の峰”の称号は与えられないだろう。 これらの目を引く“何か”があるから、“花の峰”と呼ばれるのだと思う。 素晴らしき花の園・《クロユリ苑》が終わると、いよいよ稜線上に出る。
仙丈ヶ岳は“花の峰”としても有名だ
ハクサンイチゲの群落
立体3Dの如く迫りくるカール地形
前方には、雄大なカール地形が立体映像の如く迫力ある姿を魅せてくれる。 右側は中央アルプスの山なみが、軍艦のように雲海の雲間に浮かんでいる。 左側は小仙丈岳を登る登山者が、喘ぎながら登っているのを見る事ができるだろう。 ここに立つと、コース選択が“正解”であった事をその“眺め”によって明らかにできるのである。
周囲に花が咲き乱れる緩やかな傾斜を、カール端に向かって登りつめていく。 登っていくにつれ、徐々にカールの全景が見えてきて広潤な雰囲気満点となる。 カール最奥にある雪渓と、カール底にちょこんと立つ《仙丈避難小屋》が視界に入ってくると、花の“うつわ”であるカール底も近い。 振り返れば、甲斐国の守護神・甲斐駒ヶ岳 2967メートル が、雲海の雲間から白亜の頂を突き出しているのが望まれるだろう。
仙丈ヶ岳頂上にて
カール底に取り付いたなら荷物を今日の宿泊場所・《仙丈避難小屋》にデポって、とりあえず仙丈ヶ岳に登ってこよう。 カールの右側からカール壁に取り付き、カール最奥に残る大きな雪渓を見下ろしながら馬蹄形にカール壁を巻いていくと、カール壁の中央にある仙丈ヶ岳 3033メートル の頂上にたどり着く。 頂からの眺めは、明日の日の出時に譲るとしよう。
仙丈ヶ岳頂上より望む
刃先鋭い鋸岳と雲海に浮かぶ八ヶ岳
ここまで4時間余り。 たぶん、時間にも余裕がある事だろう。 山頂でひと息着いたなら、大仙丈岳 2975メートル まで行ってみるのもいい。 大仙丈岳へは、ハイマツの中を漕ぎながら進む事約30分である。 この頂に立つと静かな雰囲気の中で、ちょっと違った北岳の眺望が期待できる。
山頂に立って充実した気分を十分に味わったなら、往路を避難小屋まで戻る。
暮れなずむ空と
甲斐駒ヶ岳
カール底では食事の用意をしながら、暮れに染まっていく甲斐駒ヶ岳や鳳凰三山を眺めるのが良しである。
甲斐駒ヶ岳の右から昇る
サンライズ
《2日目》 カールの夜明けを見て往路を下山
《仙丈避難小屋》の中はビニールの畳敷きで広々としているのだが、入口の扉は壊れていて、また壁も所々“ほころんで”いるので野ネズミなどが中を徘徊し、快適なのか不快なのか良く判らない小屋である(現在は立派な山荘となっているので、このような事はまず心配ない)。
《仙丈避難小屋》の中はビニールの畳敷きで広々としているのだが、入口の扉は壊れていて、また壁も所々“ほころんで”いるので野ネズミなどが中を徘徊し、快適なのか不快なのか良く判らない小屋である(現在は立派な山荘となっているので、このような事はまず心配ない)。
カール壁が朝日に染まり
1日が始まる
さて、空が白み始めた4時頃に小屋を出よう。 カール壁を登るにつれ、空が紺色から紅、オレンジ・黄金色・・と七色の変化を遂げる。 その光を浴びた山なみや万年雪の雪渓が、素晴らしき色彩を魅せてくれる。 甲斐駒ヶ岳や鳳凰三山が、かぎろい色の空と黄金色に輝く雲海、そして鈍重な雲に飾られて“美しい”の一言では語れぬ“何か”の予兆を感じさせてくれるのだ。
鈍く染まる雲が
何かの“前兆”を告げているかのようだ
程なく着いた山頂では黄金色に変わりつつある空の下、北岳 3192メートル ・間ノ岳 3189メートル ・塩見岳 3052メートル などの南アルプスの山々が凛々しくそびえ立っている。
また振り返ると、スカイブルーに変わりつつある空の彼方に中央アルプスや北アルプスの尖った山なみが望まれる。
仙丈ヶ岳での夜明け
雲海より突き出す北岳
中央アルプスの山なみ
東方の山なみ
八ヶ岳や浅間山が見える
雲海に浮かぶ北アルプス
日本の名だたる山々が、七色の変化を遂げる明けの空とあいまって眺める事ができるのである。
これこそ、この情景こそ、『日本百景』として選出されるべき風景なのだと思う。 この空の七色の変化と共に、様々な彩りを魅せる山なみの情景を味わう“至福のひととき”を満喫したなら、そろそろ帰路に着こう。
《仙丈避難小屋》に戻り、荷物を回収して往路を忠実に下っていこう。 下っていく稜線の途中で振り返ってみよう。 きっと、仙丈ヶ岳がカールを抱く雄大な姿を魅せて、優しく見送ってくれる事だろう。
後は、花を撮りながらゆっくり下っていこう。 ゆっくり下っても、余裕を持って《北沢峠》10:00発のバスに乗車できるだろう。
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No title * by makirin
素敵な風景ですね(*^O^*)
No title * by 風来梨
makirinさん、こんばんは。
この山は南アルプスの山での登り始めの山でして、この記事の写真はもう20年前のネタです。 この頃は山小屋も避難小屋で、山自体が初体験に等しく、寝袋もなしで避難小屋寝泊りした青い思い出の山です。 でも写真は下心がない分、結構よく撮れました。
思えば、寝袋なしなんて最初から無茶してるなぁ・・。
この山は南アルプスの山での登り始めの山でして、この記事の写真はもう20年前のネタです。 この頃は山小屋も避難小屋で、山自体が初体験に等しく、寝袋もなしで避難小屋寝泊りした青い思い出の山です。 でも写真は下心がない分、結構よく撮れました。
思えば、寝袋なしなんて最初から無茶してるなぁ・・。
No title * by makirin
こんばんはm(__)m
20年前か~~ww
でも風景だけは変わらないでいてほしいですね^^
で・・下心って?wwwwなんぞ?
20年前か~~ww
でも風景だけは変わらないでいてほしいですね^^
で・・下心って?wwwwなんぞ?
No title * by 風来梨
makirinさん、こんにちは。
お返事が遅れてスミマセン。
この頃はまだ山へは駆け出しで、「撮れるだけで嬉しィ~」って気持ちでした。 今は、「登るのにしんどかったから元を取らなきゃ・・」とか、「できるだけ楽にいいのが撮りたい」とか・・という打算的な思惑が多分に入ってきていますね。
いうなれば、化石化してしまって『初心』のハツラツさがないですね。
お返事が遅れてスミマセン。
この頃はまだ山へは駆け出しで、「撮れるだけで嬉しィ~」って気持ちでした。 今は、「登るのにしんどかったから元を取らなきゃ・・」とか、「できるだけ楽にいいのが撮りたい」とか・・という打算的な思惑が多分に入ってきていますね。
いうなれば、化石化してしまって『初心』のハツラツさがないですね。