2013-06-15 (Sat)✎
『日本百景』 夏 第71回 雨飾山 〔新潟県・長野県〕
布団菱が姿を魅せる
雨飾山 あまかざりやま (上信越高原国立公園)
北アルプス・後立山連峰よりも更に奥。 長野・新潟県境に個性的な名峰があるのを御存知だろうか。
その峰とは、雨飾山 1963メートル である。 この山は妙高を盟主とする頚城山系に属するが、標高2000mを割る事もあってか、盟主・妙高山や後立山連峰の存在感に隠されて“山好き”以外にはほとんど知られていない山でもある。
しかし、その個性的な山容には目を見張るものがある。 山頂部の“形の良い”双耳峰や山頂部を覆う草原、あまりにも豪快な《布団菱》の大岩壁、そしてこれを彩る高山植物と秋の絶景、また山を下りた後でも各所に湧く温泉が出迎えてくれる。 このように、登山を楽しむ要素が一杯の山。 それが名峰・雨飾山なのである。
北アルプス・後立山連峰よりも更に奥。 長野・新潟県境に個性的な名峰があるのを御存知だろうか。
その峰とは、雨飾山 1963メートル である。 この山は妙高を盟主とする頚城山系に属するが、標高2000mを割る事もあってか、盟主・妙高山や後立山連峰の存在感に隠されて“山好き”以外にはほとんど知られていない山でもある。
しかし、その個性的な山容には目を見張るものがある。 山頂部の“形の良い”双耳峰や山頂部を覆う草原、あまりにも豪快な《布団菱》の大岩壁、そしてこれを彩る高山植物と秋の絶景、また山を下りた後でも各所に湧く温泉が出迎えてくれる。 このように、登山を楽しむ要素が一杯の山。 それが名峰・雨飾山なのである。
雨飾山登山ルート 行程図
糸魚川市街より車(1:10)→小谷温泉・雨飾山登山口(1:20)→荒菅沢(1:20)→笹平
(0:30)→雨飾山(2:20)→小谷温泉・雨飾山登山口(1:10)→糸魚川市街
(0:30)→雨飾山(2:20)→小谷温泉・雨飾山登山口(1:10)→糸魚川市街
爽やかな朝の雰囲気の中を
登っていこう
“山”を楽しむには、絶対的に朝の情景を望まねばなるまい。 それは、この雨飾山とて同じである。
日帰り可能な山といえども、是非にも前夜アプローチの早朝発登山を心掛けて頂きたい。
それでは、ガイドを始めよう。
大きな駐車場があり、その高台の上に宿泊可能な休憩舎がある《小谷温泉・雨飾山登山口》から登っていく。 このコースは、《布団菱》を望む名所・《荒菅沢》を通る雨飾山随一の登山ルートである。
オヤマノエンドウ
ハクサンフウロ ツリガネシャジン
登山口を過ぎると、程なく《大海川》の伏流水が創造した《大海川湿原》に差しかかる。
この湿原は、おおむね際を巻くように進んでいく。 もちろん、木道は完全敷設である。
また、雨飾山までの全長を『11』で割った合目道標(全長は4400mとの事なので、割り切れる11を単位としたのだろう)も設置され、整備状況は完全である。 湿原を越えるとそろそろ登り坂がキツくなってきて、樹林帯を縫うように伝っていく。
この登りは、道標『4/11』の辺りが最もキツいようである。 この急坂を越えると、中間地点の倒木ベンチ(中間地点だけは、なぜか倒木した木に『2200m地点』と記してあった)を境に急下降となる。
この湿原は、おおむね際を巻くように進んでいく。 もちろん、木道は完全敷設である。
また、雨飾山までの全長を『11』で割った合目道標(全長は4400mとの事なので、割り切れる11を単位としたのだろう)も設置され、整備状況は完全である。 湿原を越えるとそろそろ登り坂がキツくなってきて、樹林帯を縫うように伝っていく。
この登りは、道標『4/11』の辺りが最もキツいようである。 この急坂を越えると、中間地点の倒木ベンチ(中間地点だけは、なぜか倒木した木に『2200m地点』と記してあった)を境に急下降となる。
下っていく毎に《布団菱》の勇姿が、端から徐々に姿を現してくる。 中間地点から標高差にして100m位下るのだろうか、かなり下った所に《荒菅沢》の徒渉点がある。
荒菅沢より望む布団菱
ここから見上げる《布団菱》は真に豪快だ。 しばし、ここで休憩を取り、豪快な《布団菱》を眺めながら冷たい雪解け清水で疲れた体と喉を潤すといいだろう。 素晴らしい景色を眺めながらの休憩は心地よいものだ。 ついつい長居してしまいそうだが、切りよく腰を上げよう。 さもなくば、その機会を逃してしまうかもしれないから。
《荒菅沢》の流れを飛石伝いに渡ると、対岸の急傾斜を直登気味に伝っていく。 少し登りだして《荒菅沢》の全容が見渡せるようになると、《荒菅沢》が小さなカール地形であるのが視認できるであろう。
《荒菅沢》のカールバンドというべきこの壁崖の急傾斜を登りきって尾根筋の上に出ると、高山植物の花々が出迎えてくれるだろう。 シモツケソウ・オヤマノエンドウ・ミヤマオダマキ・ハクサンフウロなど、彩り鮮やかな花々が細長い尾根筋を飾っていく。 これを愛でながら登ると疲れは消し飛ぶのだが、花に酔って時間を食い潰してしまう危険もあるのだ。
布団菱の上はお花畑であった
やがて、頂上丘の一角に飛び出す。 そこにはお花畑と草原が広がり、気分は更に爽快となる事だろう。 そして草原の端、程よい距離に雨飾山の頂上が鎮座している。 これより雲上のプロムナードを渡って、雨飾山の頂上へいってみよう。
稜線の草原から望む雨飾山本峰
この雨飾山も御多分にもれず『百名山ブーム』で、シーズンともなると山頂へ至る登路は中高年ハイカーの団体登山で満杯となる。 咥えタバコの投げ捨てや登山道いっぱいに広がってくっちゃべって歩くなど、目を覆いたくなる光景だ。
さて、少し文句が入ったが、『11/11 =4400m』の看板を越えるとすぐに雨飾山双耳峰の鞍部に飛び出る。 鞍部といっても、南峰・北峰共に30m程離れているだけである。 まずは、最高点 1963メートル で三角点のある南峰に立とう。
さて、少し文句が入ったが、『11/11 =4400m』の看板を越えるとすぐに雨飾山双耳峰の鞍部に飛び出る。 鞍部といっても、南峰・北峰共に30m程離れているだけである。 まずは、最高点 1963メートル で三角点のある南峰に立とう。
ここからは、北ア・後立山連峰が雲海の上にスライド状に展開していく。 まるで、軍艦の閲覧式のようだ。 この山なみを端から指示して山名を連ねるのも、山好きの冥利である。 それが全て登ったのであれば尚更だ。
後立山連峰の山屏風
ちなみに右から、白馬乗鞍岳・小蓮華山・白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳・《不帰ノ嶮》・唐松岳・大黒岳・五竜岳・《八峰キレット》、そして連峰の最後を締めくくるのが鹿島槍ヶ岳の“二ッ耳”である。
何とも壮観な“閲覧式”である。 その更に奥には、“北アのシンボル”・槍ヶ岳のトンガリ穂先も雲海に突き出ている。 振り返れば、入道頭の妙高や端正な三角錐の火打山、そして頚城山系唯一の活火山・焼山が噴煙を上げるなど、こちらも個性満点の眺めだ。
頂上より望む妙高・火打
頚城の山々を望む
また、《笹平》の草原が、日差しに輝く色調も素晴らしい。 雲が頭上を通過する毎に草原がシャドーを帯び、そして輝く光景は真に淑やかで見ごたえがある。 眺めの南峰を満喫したなら、いにしえの香り漂う北峰へ向かおう。
南峰より北峰を望む
北峰には五穀豊穣を念じた石仏が、《糸魚川》の街を見守るように鎮座している。
決して、宗教や歴史という無味乾燥なものでは表せない昔人の“山への思い”である。
これが、“あの山に登りたい”という、登山の思いに通ずるなら素晴らしい事である。
決して、宗教や歴史という無味乾燥なものでは表せない昔人の“山への思い”である。
これが、“あの山に登りたい”という、登山の思いに通ずるなら素晴らしい事である。
頂上より稜線の草原を望む
山の情景を思いっきり堪能したなら、そろそろ切り上げて下山に取りかかろう。 下山道は往路をそのまま行くが、もし自由が利くなら、“都忘れの湯”という露天風呂のある《雨飾温泉》へ下るもいいだろう。
もちろん往路を下っても、下山の後は《小谷温泉》という名湯が待っている。
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