風来梨のブログ

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私の訪ねた路線  第134回  三江線

『私の訪ねた路線』  第134回  三江線  〔島根県・広島県〕
 

桜の駅・粕淵にて
 
《路線データ》
       営業区間と営業キロ       輸送密度 / 営業係数(’16)    
      江津~三次 108.1km        46  /   1109
         廃止年月日             転換処置
          ’18/4/1      備北交通・大和観光・邑南町営・石見交通
                        など区間によって分担
運行本数(’17)
             江津~三次   下り2本・上り1本
             江津~石見川本 上り1本
             江津~浜原   3往復
             石見川本~三次 上り1本
             浜原~三次   2往復
             口羽~三次   1往復
      ※ 廃止日までの残り2週間は昼間便の浜原~口羽の通し運行を実施した
             江津~三次   下り4本・上り3本
             江津~石見川本 上り1本
             石見川本~三次 上り1本 
             江津~浜原   1往復
             浜原~三次   1往復
 
  《路線史》
三次と江津を江ノ川沿いに結ぶ『陰陽連絡線』として建設されたが、全通年が1975年と遅く高速道路網も完成していたので、この目的に供する事なく地方閑散線へと転落していった路線である。

路線の建設は江津・三次の両端から開始され、江津側の北線は1930~37年にかけて浜原までが開通した。 一方、三次からの南線は、1955~63年にかけて口羽までが開通した。 
未通区間の建設はスローペースで進められ、建設開始から45年もかかってようやく未通区間が開通して全線開通となる。

その数年後に国鉄再建法が施行されて地方線建設の大半が凍結されるなどしたので、未通区間の開通は奇跡的に間に合ったと捉えてもいいかもしれない。 もし、南線と北線に分断されたままであったならば、500人キロ/kmを切る輸送量からしても、恐らく廃止対象候補に名を連ねて廃線の憂き目に遭っていた事であろう。

路線上で有名なのは、階段116段の駅・宇都井駅であろう。 この駅は両端が山に囲まれた谷を高架で跨ぎ、その真上に駅が設けられた為、駅ホーム上に立つには谷にある集落から30m・116段の階段を昇る必要がある構造となっている。

沿線は江ノ川の流域に沿う事もあり、周囲が山で囲まれた地形である為、沿線の至る所で渓流や瀑布をかけているのが見られる。 『日本の滝100選』で落差126メートルの常清滝を筆頭に、観音滝や竜頭ノ滝、千丈渓などの名爆が潜んでいる。

なお、この風光明媚三江線も、東北の岩泉線が災害で休止となってその後廃止となってからは、輸送密度が全国最低の数値の46人/キロとなり、2017年9月末に正式に廃止が決定し、廃止を指定された期日の2018年3月末をもって路線廃止となった。
 

 

江ノ川を渡る
 
  《乗車記》
三江線は路線名の通り、広島県の三次と島根県の江津を結ぶ路線だ。 路線建設の目的は前述の如く陰陽連絡であったが、路線の全通年が’75年と遅く、この頃は既に高速道路網が完成しつつあった事や、路線が江ノ川沿いに沿って無駄に迂回するなど、陰陽連絡の用に供する事は全くなかったようである。
 
そして、国鉄時代に『ローカル線』と称された路線のほとんどが廃止・淘汰され、そして辛うじて残った岩泉線や只見線も災害で路線が寸断され、復旧せぬまま放置されてやがては廃止されるであろう流れとなっている今、この三江線が我が国の路線で最もローカル線で、そのローカル線の最後の生き残りという事になるだろう。 それでは、その奇跡的に現代に生き残ったローカル線に乗ってみよう。
 

春が野山のキャンバスを
彩る頃がいいだろう
 
江津駅の3番線が、三江線の発着ホームとなる。 山陰本線の長大編成の優等列車の発着に供された1・2番ホームに比べて、3番線はこじんまりとして短いホームなので、すぐに判るだろう。 その江津を出ると、すぐに右に折れて江ノ川の川縁に出る。 程なく江津本町だ。
 
江津本町は駅名からは市街地の中に置かれた駅に感じるが、駅の周囲を見渡しても穏やかに流れる江ノ川のみで民家はほとんど見当たらない。 この駅まで江津から僅か1.1kmだが、ここまで人の気配がないとは驚きである。 何でも、ここ数年の1日の利用者はゼロとの事である。 もちろん、駅は待合室のみの棒線駅だ。
 
次の千金も、待合室のみの棒線駅。 だが、周囲に民家が数件ある分、江津本町より駅らしい。
駅前は細い2m道路が通るのみで、江ノ川対岸にある街からすると隔世の感がある。 千金で少し川から離れるが、すぐに川縁に戻る。 やがて、川平に着く。 木造駅舎の駅舎があるが無人駅。 元は交換設備のある相対ホーム駅だったが、跨線橋と対面ホームは放棄・閉鎖されている。
 

線内の多くの駅で
交換設備が撤去されて
粕淵にて
 
次の川戸は、旧桜江町(現 江津市)の中心だった駅だ。 元は町の中心だったので、周囲にはそれなりに民家がある。 かつては交換設備のある有人駅だったが今は無人駅となり、交換設備も前駅の川平同様に廃棄されている。 この川戸駅から5kmほど南に、美しい渓谷美を魅せる千丈渓がある(詳細はリンク先へどうぞ)。
 

木漏れ日が宝石のように輝いて
千丈渓・三三ノ滝
 
次の田津は待合室がホーム上に乗る棒線無人駅で、相変わらず江ノ川の畔にある。 田津の次は、モルタル駅舎の建つ石見川越だ。 駅舎がある事や近くに郵便局がある事などから、小集落前の駅である事が伺える。 駅の南2kmに龍頭ヶ滝という滝がある。
 

岩に染み入る
落水の音に心が和む
龍頭ノ滝
 
次の鹿賀は、前出の田津と同じような待合室の棒線無人駅。 この駅の南1kmに観音滝がある。
この辺りは滝の宝庫である。
 

岩肌を踊る飛沫が美しい
観音滝
 
次の因原から江津市より川本町に入る。 因原駅前には広島方面に抜ける国道261号線が通るが、乗客と思しき人影は近くの『道の駅・かわもと』にあるバス停に集まるようだ。 一方の因原駅は交換設備は廃され無人駅となり、駅事務室は地元の運送会社に払い下げられている。
 
次の石見川本は、川本町の中心駅だ。 江津からの途中駅全ての無人化と交換設備の撤去で、この駅が最初の交換可能駅となっている。 駅は常時閑散としているが、駅前にある広島や太田市方面へのバス停は乗客で賑わっている。
 
石見川本を出ると木路原・竹と小集落にある小駅に止まっていく。 何でも、この両駅の1日の利用者数はゼロとなったとの事である。 次の乙原も同じようなシチュエーションの駅だか、集落が少ししっかりしているのか、1日の利用者が2人と前2駅よりはマシのようである。
 

春うららかな
江ノ川流域をゆく
 
石見川本を出てから少し離れていた江ノ川は、次の石見簗瀬で再び寄り添ってくる。 石見簗瀬は木造駅舎があり、かつては島式ホームの交換駅だったが撤去されている。 駅舎のある駅の周りは、それなりの小集落が確立しているようだ。
 
次の明塚は江ノ川付近の小さく開墾された田畑にある棒線駅。 ホーム上の待合所は、囲いがなく庇があるだけだ。 この駅も数年前から利用客ゼロとの事である。
 

『国鉄バス』に『丸ポスト』
良き時代の雰囲気が漂っていた
かつての粕淵駅舎
 
次の粕淵は美郷町(かつては邑智町)の中心駅である。 今は洋風の建物に建替えられたが、以前は鹿鳴館レトロの雰囲気漂う駅舎だった。 そして、春は桜並木のある花見の駅であったが、今はどうなっているのであろうか?
 

桜の駅・粕淵を発車する気動車
 

花見の宴会ができる駅
粕淵駅
 

花見の臨時列車も
運転されていた
 
次の浜原は、1975年に三江線が全通するまでは北線区間の終着駅だった所だ。 駅前には全通を祝す石碑がある。 交換設備のある駅で、運行の数本がこの駅を折り返す運行形態を取っており、運用面では主要駅となっている。 だが利用客は、近年1桁に落ち込むなどジリ貧という。
 
浜原からは’75年開通の新線区間となる。 開通年が若く、今までの江ノ川に沿って蛇行していた線形から、川を橋で山をトンネルで貫いた直線的な線形となる。 駅も沢谷・潮・石見松原と、ブロックで囲った待合所の乗る棒線駅と規格された内容の駅が続く。
 

江ノ川を渡る
三江線列車
 
続く石見都賀は、現在は合併により美郷町となった大和村の中心駅・・のはずなのだが、田圃に囲まれた築堤上に囲いすらない待合所のみの無人駅だ。 だが、島式のホームで交換設備は設けられている。
 
次の宇都井はTVで取り上げられた事もあるなど、線内では最も有名となった駅である。 それは地上から30mの高さに駅があり、高い塔状に設けられた116段の階段を伝う必要のある駅であるからだ。
これは山間のトンネルの間にある小集落に駅が計画された為に、地上から30mの高架上に駅を設けざるを得なかった為である。 だが、この駅も、近年は利用者がゼロとなってしまったようである。
 
筆者はこの駅で駅寝をした事があるが、その日は夏祭りがあったようで、打ち上げ花火を駅から見物できたラッキーな思い出がある。 次の伊賀和志も、沢谷駅などと同様のブロック待合所の駅。 路線が島根・広島県境の江ノ川を串刺し状に貫いている事から、新線区間ではこの駅だけ広島県に属している。
この駅も、利用客ゼロのようである。
 

 可愛(えの)川と名を変えた
江ノ川沿いをゆく
 
次の口羽は、新線が開通するまでの南線区間の終端駅。 また、旧羽須美村(現 邑南町)の中心駅であった駅である。 従って木造駅舎と島式ホームの交換設備もあるが、無人化されてからは、駅舎の事務室が完全撤去されてがらんどうとなっている。
 
口羽を出ると、可愛(えの)川と呼び名を変えた江ノ川に沿ってゆく。 江平・作木口と庇のみの棒線駅に停まっていく。 いずれの駅も所在地は島根県だが、集落のある川の対岸は広島県となっている。
作木口駅の東2.5kmに、日本百名滝に指定された常清滝がある。
 

秋の雨天の時に訪ねて
常清滝
 
次の香淀は、六角形のログハウスの駅舎が建てられている。 だがこれは後に建設されたようで、ホーム上は庇のみの待合所があるのみだ。 次の式敷は島式ホームの交換可能駅で、ログハウスの駅舎と駅前に大きな駐車スペースがある。
 
その後も可愛川の畔をゆき、信木・所木と庇のみの棒線駅に停まっていく。 次の船佐も前2駅と同じ格の棒線駅だが、ホームより離れた所に待合所があるだけマシだ。
 

以前は時刻表にも載らなかった
秘境駅・長谷に進入する
三江線列車
 
次の長谷は、元仮乗降場からの昇格駅で、今も半数が通過する。 これは、地元の小中学校の廃校により三次に通学を余儀なくされた生徒の為に設けられた駅で、利用する生徒の安全の為に駅待合室も設けられている。 だが、もうこの駅を通じて通学する生徒はいなくなった様だ。
 
後は庇のみの棒線駅・粟屋と、桜の名所・尾関山公園の近くにある尾関山を経て、終着三次駅に着く。
かつては三次駅の広島寄りは端にあった切欠きホームの0番線より発着していたが、0番線は三次市の公共事業に供する為に収用されて、現在は島式ホームの3番線発着となっている。

   ※ 詳細は『魅惑の鉄道写真集』より『三江線』を御覧下さい。
 
 
 
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No title * by mino710710_0203
おはようございます。三江線は10年前位に乗った事があります。
山あいの江の川沿いを走り、今でも脳裏に焼き付いています。
お気に入りへ登録させて頂きたいですが宜しいですか。

No title * by 風来梨
mino710710_0203 さん、こんにちは。
見て頂いて有難うございます。

春の三江線はいいですね。 江ノ川沿いの山里の春を魅せてくれます。 それと、江ノ川の流域は滝が豊富で、鉄道だけではなくちょっとしたハイキングや自然観賞も楽しめますね。

でも、列車本数が極端までに少ないので、プラン立てに苦労する旅先です。

お気に入りのお申し出を頂き、有難うございます。
今後とも宜しくお願いします。

No title * by こうしの母
『観音滝』の検索からの訪問です(*^_^*)
先日、行ってきましたぁ。。。
とても魅力的な滝でした(^^♪

No title * by 風来梨
こうしの母さん、こんばんは。 見て頂いて、有難うございます。

観音滝が掛ける白布は、秀逸ですね。 島根県には、この他にも「百名滝」の竜頭ヶ滝や幻の滝の如く神秘的な奥匹見峡の大竜頭もあります。

「日本の滝を訪ねて・・」の西日本編にありますので、宜しければ御覧くたさい。

コメント






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No title

おはようございます。三江線は10年前位に乗った事があります。
山あいの江の川沿いを走り、今でも脳裏に焼き付いています。
お気に入りへ登録させて頂きたいですが宜しいですか。
2013-04-01 * mino710710_0203 [ 編集 ]

No title

mino710710_0203 さん、こんにちは。
見て頂いて有難うございます。

春の三江線はいいですね。 江ノ川沿いの山里の春を魅せてくれます。 それと、江ノ川の流域は滝が豊富で、鉄道だけではなくちょっとしたハイキングや自然観賞も楽しめますね。

でも、列車本数が極端までに少ないので、プラン立てに苦労する旅先です。

お気に入りのお申し出を頂き、有難うございます。
今後とも宜しくお願いします。
2013-04-01 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

『観音滝』の検索からの訪問です(*^_^*)
先日、行ってきましたぁ。。。
とても魅力的な滝でした(^^♪
2015-07-30 * こうしの母 [ 編集 ]

No title

こうしの母さん、こんばんは。 見て頂いて、有難うございます。

観音滝が掛ける白布は、秀逸ですね。 島根県には、この他にも「百名滝」の竜頭ヶ滝や幻の滝の如く神秘的な奥匹見峡の大竜頭もあります。

「日本の滝を訪ねて・・」の西日本編にありますので、宜しければ御覧くたさい。
2015-07-30 * 風来梨 [ 編集 ]