風来梨のブログ

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日本の滝を訪ねて 第87回  巻機山・割引沢の滝

日本の滝を訪ねて 第87回  巻機山・割引沢の滝 〔新潟県〕
 

沢ルートを伝って巻機山へ
 
さて今回は、越後の名峰・巻機山の旧登山ルートである割引沢に潜む滝を取り上げよう。 そして、ここまで来たのだから、巻機山にも登ってみよう・・という事で話を進めていこう。 途中からは『滝めぐり』でなくて、『登山体験記』になってしまう事は「悪しからず」という事で。
 

巻機山・割引沢登山ルート 行程図
 
    行程表             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR六日町駅よりバス(0:45)→清水バス停(0:40)→桜坂駐車場〔登山口〕
     (0:40)→吹上ノ滝(0:40)→ヌクビ沢出合(1:00)→行者ノ滝
     (2:00)→ヌクビ沢源頭(0:30)→巻機山・割引岳鞍部〔割引岳へは所要15分〕
     (0:20)→巻機山〔牛ヶ岳へは所要40分〕(0:30)→巻機山避難小屋
《2日目》 巻機山避難小屋より巻機山稜線への往復と周遊・所要4時間(0:20)→前巻機
     (1:00)→六合目展望所(1:10)→焼松〔五合目〕(1:00)→桜坂駐車場〔登山口〕
     (0:40)→清水バス停よりバス(0:45)→JR六日町駅

 《1日目》 割引沢・ヌクビ沢を遡って巻機山へ

さて、この項目では、南越後の名峰・巻機山へ登ってみよう。 ただ単に登るだけではなく、変化に富む沢ルートを絡めて、沢の源流にひそむ瀑布群も堪能するちょっと贅沢なプランで楽しんでみよう。
なお、アプローチであるが、JR六日町駅から1日3本ある路線バスを使うと関西・関東の主要都市からも週末利用山行の計画が可能なので、これは大いに利用したい。

前述したように、巻機山の登山口である《清水》までのバスは1日に3本ある。 山行の基本が早朝の行動開始である事から、前日の最終(JR六日町駅 17:45発 ’05年度)で登山口の《清水》までアプローチして、前夜はキャンプ場等で宿泊するのが望ましいだろう。 また、《清水》の集落には民宿が3件ほどあり、前日アプローチへの受入状況は整っている。 なお、筆者は前日の宿泊をキャンプ対応としたので、キャンプ場をスタート地点としたいと思う。
 

登山口のバンガロー区域より
見上げる巻機山
 
駐車場の奥にある登山口を越えると、すぐに尾根筋を伝う初心者ルートの《井戸尾根コース》を分けて、左下を流れる《割引沢》の上方を伝うようになる。 小さな乗越を一つ越えると、《割引沢》へ下降する沢ルートと、このまま沢の左岸を高巻く迂回ルートとの分岐に出る。 分岐には棒状の道標が立っているので見落とさないようにしたい。

分岐を左手に進んでいくと、急下降で沢へ下り着く。 飛び石伝いに沢を渡渉すると、いきなりオーバーハングに出っ張った大岩が現れる。 これを巻き伝うのだが、この大岩はかなり出っ張っていて、手足のホールド位置に苦労する事だろう。 また、この大岩巻きのアシストとなる『バンド』は鉄鎖ではなく赤い布で、見るからに“心許ない”のである。
 

滝を形成するツルツルのスラブ岩を
伝っていかねばならない

これを越えると、沢は一枚岩のスラブ上をウォータースライダーのように落とすようになる。
そして、その上はこのスラブ岩が形成した草付の土手となる。 このスラブ岩は見事な程にツルツルで、下手に足をかければ踏み外して転ぶ危険もある程だ。 このツルツルのスラブに乗った草付や土など、踏ん張りの利く部分を踏みしめながらしばらく行くと、スラブ岩がトヨ状に割れた中を落水が流れる《吹上ノ滝》が見えてくる。
 

『日本の滝100選』の《吹割ノ滝》を
思わせるナメ滝《吹上ノ滝》
 
《吹上ノ滝》を下に見下ろしながらこのスラブ岩を伝っていくと、やがて滝床の岩質と同じく真っ白なスラブ岩の巨大一枚岩盤にぶち当たる。 ルートはこの真っ白な大岩の上部を伝うように続いているのだが、この大岩には取っ掛かりが皆無といっていい程に乏しく、気を抜けば滑り台より滑り落ちるが如くズルズルとすべり落ちていくのである。 どうやらこのスラブ岩は、岩質が軟質過ぎてアングルを打ち込む事ができないようである。 ここは、岩の切り目に見当をつけて乗り切ろう。

この大岩を越えると沢は大きく右手に折れ、ルートもそれに従って右へ折れていく。 
その右へ折れた先には、この沢ルート最大の落差を誇る《アイガメの滝》が、沢全体を使って滝スダレを掛けている。
沢の原風景を思い描かせるなかなかの名瀑だ。 だが足場はすごぶる劣悪で、落ち着いて滝見物に興じれる状況ではない。 なぜなら、ルートは相変わらずのスラブ岩のトラバースが続き、しかも足場は先程にも増してか細くなってくるのである。
 

見渡しても道らしいものは見当たらず
事実もトラバースで伝うのみ
 
ザックを下ろすスペースもない細い足場のトラバースでこのスラブ岩を伝っていくと、《アイガメの滝》のすぐ横に切られたスラブ岩の段をほぼ直登で上部の草付までよじ登っていく。 先程目にした滑らかなスダレ滝とは思えぬ程の猛烈な急登だ。 しかも、滝飛沫で常時濡れたスラブの岩段という事で踏ん張りに乏しく、気を緩めればズルズルと滑り落ちかねない難所だ。
 

落差40mに滝スダレを掛け
沢の原風景を魅せる
名瀑《アイガメの滝》

スダレを掛ける名瀑を横目に見たなら是非ともカメラに収めたい所であるが、これほどに通過に難儀する所では見送るより手はないだろう。 こうなれば、イッキに難所を越えて安全な草付の中にもぐり込むに限るだろう。 草付の中に入って15分程登っていくと、滝上部に形成される河原の上に出る。
ここが、《ヌクビ沢出合》である。

ここは最初に分岐した迂回ルートとの合流点との事だが、漠然と広がる河原が続くせいか、どこが迂回路との合流点かが判別できなかった。 また、ここより分かれる《天狗尾根》へのルートも発見できなかった。 この事から、この河原付近は限りなく道が不明瞭で、『道ロスト』の危険が高いという事が懸念されるのである。 周囲に気を配って、ペンキで岩にマークしてある矢印を見落とさずにいこう。

ゴロゴロと転がる河原の大岩を伝っていくと、河床がスラブの大岩に変わって大きく傾斜をつけて盛り上がってくる。 ここは《布干岩》といい、この大岩を滑り落ちる落水を横目に見ながら滑り台を登るが如く、この傾斜を張り付いて登っていく。 言葉で記しても上手く表現できないので、ここは掲載写真から雰囲気をつかんで頂ければ・・と思う。
 

巨大なスラブの河床を登っていく
沢ならではのルートだ
《布干岩》にて
 
《布干岩》の巨大なスラブを最上部までつめると、右手から《三沢》が合流し、ほどなく20m程の直瀑《行者ノ滝》が見えてくる。 黒光りした岩段に落水模様を描き、“幽谷の美”を魅せる優雅な滝だ。
しばし、この滝を目にして、難路歩きで高揚する心を鎮めよう。 そして、心を落ち着かせたなら、“次の難関”に挑もう。
 

白布と黒光りした岩肌が印象的な
20mの直瀑《行者ノ滝》

さて、“次の難関”に当てはまるこの先の進路であるが、状況としては《三沢》を仕切るように張り出す支尾根によって左右とも塞がれ、また前方はこの直瀑によって行き場を封じられた袋小路なのである。
だが注意して見渡すと、右側の《三沢》を仕切った支尾根の土手に登路が掘られているのが発見できるだろう。

しかし、これはかなり困難な崖の直登である。 鎖やロープはなく、クラック状の崖に足を掛けてよじ登るしか手はない。 周りのクマザサをもつかんでよじ登るとこの滝の落ち口に出る。 
前方には烏帽子のように尖った割引岳の天狗岩が望まれるが、目的地の割引岳から続く稜線はまだ遙かに先だ。 そしてこれより先の沢は、先程よりも更に荒れたゴーロ地帯となる。

少し前に進むにも巨大な大岩を1つ1つ乗り越えねばならない。 また、函状の土手の足場の悪いトラバースや20mの段瀑の大高巻きなど、一般ルートと呼ぶにはかなり無理がある難ルートだ。
ここは、沢の源頭へつめるに従って細っていく沢に希望を見出して登っていこう。 

幾度かの支沢を分ける毎に沢は細っていき、徐々にではあるが“源頭近し”を思わせてくれるだろう。 
やがて、細くなった沢本流より左手の涸れ沢に移って、右手に延びる稜線からの草付きの土手へと登っていく。 この草付きの土手は緩やかに見えるものの、登ってみると取付がかなりキツく、今までの難路で疲れた心身にとってはかなりの“仕打ち”となる事であろう。
 

秋の晴天時に望む割引沢
今までの苦労が
ウソのような穏やかな眺めだ

この草付きを約30分程登ると、今までの苦労がウソのように緩やかな踏跡より稜線上に飛び出す。
稜線からこの沢への降り口を見ると、間違って安易に入り込む者がいないか・・と老婆心を抱く位である。 まぁ、横に『沢ルートは下山禁止』の看板が設置されてはいるのだが。 この稜線のコルより、一等三角点のある割引岳 1931メートル へは上り15分位であろう。
 

ピラミタルな山容の割引岳に向かって
一筋の道が連なる
※ これも秋の晴天時です
 
稜線よりは、木道の敷かれたなだらかな草原状の起伏を2つ程越えると《井戸尾根》への下降口である《御機屋 おはたや》である。 本峰の頂上三角点は少し先にあるが、現在はここを頂上としているみたいである。
 
本当の頂上に立ち寄ったなら、この《井戸尾根》を下って今日の宿泊場所である《巻機山避難小屋》へ向かおう。 道は完全に整備され、木道と木の階段が敷設されたルートを25分程下ると、これまた立派な《巻機山避難小屋》が見えてくるだろう。 

なお、この避難小屋であるが近年に建替えられたらしく、中に人力撹拌式のバイオトイレがあるなど住環境の優れた小屋である。 この立派な小屋で一夜を明かそう。
 

翌日は一晩にして
積雪50cmの大雪が降った
《巻機山避難小屋》にて
 
なお、下山ルートについては、文字数の制限があるので割愛したいと思う。 この時の下山であるが、夜半に降った大雪で雪山下山となってしまった。 下山の模様は、 『越後の名峰めぐり<3>』の《2日目》をどうぞ。
 

下りは思いがけない
雪山下山となってしまった

    ※ 詳細は、『日本の滝を訪ねて』より『巻機山・割引沢の滝』を御覧下さい。
 
 
 
 
 


 
 
 
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No title * by yamanbou
沢のルートはナメのいい感じですね。
山よりもルートで楽しめますね。
そうそう、切符のスキャンのヒントありがとうございました。
念願の地図をアップできました。

No title * by 風来梨
yamanbouさん、こんばんは。

割引沢は変化に富んで楽しめるコースですが、沢ルートなので滑る危険も多少あります。 滝を背後に滑ると心臓がバクバクしますよ。

でも、布干岩やナメ滝の連続など、一般ルートでは見られない情景がまっている名ルートですね。

コメント






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No title

沢のルートはナメのいい感じですね。
山よりもルートで楽しめますね。
そうそう、切符のスキャンのヒントありがとうございました。
念願の地図をアップできました。
2013-02-04 * yamanbou [ 編集 ]

No title

yamanbouさん、こんばんは。

割引沢は変化に富んで楽しめるコースですが、沢ルートなので滑る危険も多少あります。 滝を背後に滑ると心臓がバクバクしますよ。

でも、布干岩やナメ滝の連続など、一般ルートでは見られない情景がまっている名ルートですね。
2013-02-05 * 風来梨 [ 編集 ]