2013-01-11 (Fri)✎
『日本百景』 冬 第42回 タウシュベツ 〔北海道〕
雪に埋もれる『幻の橋』
初回の探訪より
訪問記 《幻の橋・再訪・・へ》より抜粋
糠平には一般で言う夕方6時過ぎに着いた。 恐らく都会では、どの放送局も『6時のニュース』を放映して、まだ夕食の段階でもない位だろう。 でも、ここの6時は、深夜にドップリとハマった雰囲気だった。 店の全ては閉店し、ホテルも豆球のような補助灯のような光を出している。 人は全く出歩かず(まぁ、氷点下14℃で出歩く奴もどうかしていると思うが)、車も峠を越えてきたトラックが疾走するだけ。
それに加えて、「コンビニの一つも」というアテが外れて、途端に夕飯に干上がってしまった状況。
これで、前回のように完全に人里離れたタウシュベツへの林道まで車を回送してそこで寝るっつ~のは、かなりリスクが高いよな・・と思えてきた。
それに加えて、「コンビニの一つも」というアテが外れて、途端に夕飯に干上がってしまった状況。
これで、前回のように完全に人里離れたタウシュベツへの林道まで車を回送してそこで寝るっつ~のは、かなりリスクが高いよな・・と思えてきた。
少しアンダーで
大雪の白嶺を強調してみる
それで、糠平の観光用の駐車場で寝る事にした。 ここは目の前がトイレだし、トイレは暖房が効いて温かいし・・である。 で、何もする事ないし、外出ると寒いし、食料もなくてひもじいので、7時過ぎには寝た。 この前の正月は、氷点下4℃位だった。 だが今回は、『スワン44・ねむろ』で氷点下9℃まで下がっていた。
で、寒さで何回か小用を催して起きたが、AM1:20の時点で、車の中が氷点下14.0℃まで落ちてやんの。 ダウンジャケットを着てシュラフに包まり、首に毛糸の服を巻きつけたらそんなに寒くは感じなかったけど、山でのテントで味わった氷点下20℃や、旧天北線・松音知の氷点下26℃(駅舎内は氷点下18℃)に匹敵する温度だ。
目論みでは
橋の下から御来光
さすがに「少しヤバめ」と感じてエンジンをかける。 なぜエンジンをかけたかと言うと、朝にエンジンがかからなかったらジエンドだからである。 どこまで気温が下がるとエンジンがかからなくなるかは解らんが、とにかくここで10分ほどエンジンをかけて冷却水を暖めておいた方が無難か・・と思ったので始動キーをひねる。
幸いエンジンは一発でかかり、「さすがは寒冷地仕様の車だ」と感心する。 10分でエンジンを止めて再び就寝。 この後、4:25まで3時間グッスリ寝る。 氷点下14℃の中で、都合7.5時間寝たよ。
でも、車の中では風に煽られる事も結露で濡れる事もないから、テントで山の中での氷点下3℃(この時です)よりも体感温度は暖かいのである。
でも、車の中では風に煽られる事も結露で濡れる事もないから、テントで山の中での氷点下3℃(この時です)よりも体感温度は暖かいのである。
さて、風に煽られぬとはいえ、車内温度は-14℃。 2リットルボトルの伊藤園「お~い、お茶」は、至凍園「おぉ・・氷茶(こおちゃ)」になっとるがね。 まぁ、天北線の松音知の膨張氷結よりはマシだがね。
でも、近ごろ滅多に味わえないものすごく美味な茶になっていた。 この茶があれば、朝飯のひもじさも耐えられる?
さて、ここからタウシュベツの入口である糠平湖東岸林道まで10km。 パリパリに凍ったアイスバーンなので30km/hでゆくと30分以上かかる。 出発は5時前で、到着は5時半頃。 着いてすぐに林道に繰り出す。
でも、近ごろ滅多に味わえないものすごく美味な茶になっていた。 この茶があれば、朝飯のひもじさも耐えられる?
夜明けのタウシュベツへ
車を止めた所は前と同じだったが、今回はゲートが設けられて施錠されていた。 施錠されたゲートの脇をすり抜けて、林道を歩いていく。 今回はゲートで車を締め出していたので轍がなかったが、前回より道が広く感じたし、思ったより歩きやすかった。 どうやら、雪は少ないみたいだ。 それに一度歩いた強みからか、周囲の状況が思ったよりも目に入ってきた。
前回は轍を見つめて必死に歩いた感があったが、今回は空の縁が徐々に明けて紫色からオレンジ色に変りゆくのを目にできた。 また、糠平湖が湛える氷も視認できた。 そして、ちょうど1時間の6時40分、空がおぼろげに明るくなった頃にタウシュベツの前に着く。
夜明け前の素晴らしき情景だったが
橋は(前回以上に)ほぼ雪に埋もれていた
で、そのタウシュベツは・・、御覧のようにこの前よりも更に埋もれてた。 橋のアーチ部分が完全に雪に埋もれてる。 でも、天気は雲一つない快晴で、その分放射冷却も凄く、時計についてる温度計は氷点下18.5℃まで落ちていた。 昨日、耳ワッカ買っといて良かったよ。 さすがに、氷点下18.5℃まで落ちると、耳アテ無しではキツいし。
タウシュベツの露出部分と
朝に染まる東大雪の山なみ
でも、周囲の山は朝日に程よく染まって美しい。 また7:20頃には、御来光が氷に埋まった橋のやや左後ろという絶好のポジションから橋と氷上を金色に染め上げながら上がっていく。 これだけでも、夜明け前から歩いてきた甲斐があったというものだ。
美味しい事に
最も望まれる所から朝日が昇り
雪に埋もれた朽ちた橋は
朝の光を浴びて
湖から現われる金の龍の如く
キラキラと輝き始めた
タウシュベツへの足跡
ただの氷に埋もれた橋が、氷の湖から現れる金の龍の如くキラキラと輝いている。 我を忘れて写真を撮りまくった。 やがて、その黄金のショーも終わって、朝の情景も一段落する。 こうなると、そろそろに引き上げ時たろう。 帰りは、黄金のおりなす情景に興奮も醒めやらなかったので、あっという間にゲートまで戻りきる。
半世紀に渡って風雪と水にさらされた
『まぼろしの橋』の傷みは激しく
時の経過と共に“魅せる”役割も
時の経過と共に“魅せる”役割も
終えようとしている
後は出発地の帯広に戻って車を返すのみだ。 車に戻って、今朝におっかなびっくり通ったアイスバーンを戻っていくが、途中に士幌線付け替え線のアーチ橋がいくつか見えてくる。 「一応、これも撮っておこうか」と、車を止めて写真を撮る。 「これも撮っておこうか」と評したこの橋梁たちは、今やこの糠平郷の主観光資源となっていて、駐車を止めて観覧するスペースが国道沿いにいくつもある。
遊歩道として渡れる橋もある程である。
遊歩道として渡れる橋もある程である。
士幌線のアーチ橋
:
タウシュベツと共に
タウシュベツと共に
北海道文化遺産である
だが、タウシュベツのような『オーラ』の漂う橋は残念ながら見当たらないが。
まぁ、湖水の中に晒されて65年の年季が入ってるタウシュベツは、もはや魂が宿っているかのさえの錯覚を覚えるので、比べるだけ無駄なのかも。
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No title * by 風来梨
よっちゃんさん、こんばんは。
見て頂いて有難うございます。 それとリンクも有難うございます。
こちらこそ、宜しくお願いいたします。
タウシュベツの中ほどの橋壁が3年ほど前に崩壊した・・と聞きました。 タウシュベツは夏に1回と厳冬期に2回訪れましたが、いずれも湖面(氷結面)に埋まっていました。 いつか、橋脚まで出た姿を見たいなぁ~と思っています。
見て頂いて有難うございます。 それとリンクも有難うございます。
こちらこそ、宜しくお願いいたします。
タウシュベツの中ほどの橋壁が3年ほど前に崩壊した・・と聞きました。 タウシュベツは夏に1回と厳冬期に2回訪れましたが、いずれも湖面(氷結面)に埋まっていました。 いつか、橋脚まで出た姿を見たいなぁ~と思っています。
No title * by tom
こんばんは
タウシュベツ橋梁は昭和14年全面開通で昭和30年に路線変更されているので汽車が走っていたのはたかだか16年なんですね。列車が走る画像は見たことないですね。
厳冬期に訪れる執念に敬服いたします。昭和末期に糠平湖で士幌線のキハ22を狙いました。タウシュベツには行ったことがないですが、印象に残るエリアではあります。しかし3回も訪れているのはすごいですね。
タウシュベツ橋梁は昭和14年全面開通で昭和30年に路線変更されているので汽車が走っていたのはたかだか16年なんですね。列車が走る画像は見たことないですね。
厳冬期に訪れる執念に敬服いたします。昭和末期に糠平湖で士幌線のキハ22を狙いました。タウシュベツには行ったことがないですが、印象に残るエリアではあります。しかし3回も訪れているのはすごいですね。
No title * by 風来梨
tomさん、こんばんは。
私も廃線の際の時に、萩ヶ丘~清水谷で白樺林を絡めて士幌線列車を撮りましたよ。 この時は結構良く撮れて、お気に入りの写真になってます。
まぁ、この頃の方が鉄道にかける情熱があって、鉄道撮影のウデは、今よりも上手かったような・・。
私も廃線の際の時に、萩ヶ丘~清水谷で白樺林を絡めて士幌線列車を撮りましたよ。 この時は結構良く撮れて、お気に入りの写真になってます。
まぁ、この頃の方が鉄道にかける情熱があって、鉄道撮影のウデは、今よりも上手かったような・・。
タウシュベツはもう中の鉄骨さえも丸見えになってきているのでこんな姿が見られるのも時間の問題かもしれません。
風化していく姿に魅せられる、まるで軍艦島みたいですね。
追記
ブログリンク登録させて頂きますのでよろしくお願いします。