2012-12-16 (Sun)✎
日本の滝を訪ねて 第79回 インクラの滝
滝のおりなす
オーケストラを魅にいこう
インクラの滝 いんくらのたき 直瀑 落差 44m 北海道・白老町
苫小牧市外より国道36号線を16km程走って、社台という所から農道へ入っていく。
農道といっても広域農道で、道幅はしっかりと轍もついている。 付近はただ広い牧草地のようだが、今は白一色の銀世界。 その中の坂も急カーブもないなだらかな道を、延々と奥に分け入っていく。
道はしっかりと轍がついているので床を雪で擦る事もなく、また1300㏄と力もあるので余裕で進む事ができた。 でもこのデミオ、コンパクトカーとしてはかなり出来のいい車だ。 かなりの安定性がある。
ホンダやトヨタのコンパクトとは大違いだ。 やはり、車乗るならニッサン(マーチはあの風体にしてはすごぶるいい)かマツダだね(あくまでも個人的に・・だが)。
道はしっかりと轍がついているので床を雪で擦る事もなく、また1300㏄と力もあるので余裕で進む事ができた。 でもこのデミオ、コンパクトカーとしてはかなり出来のいい車だ。 かなりの安定性がある。
ホンダやトヨタのコンパクトとは大違いだ。 やはり、車乗るならニッサン(マーチはあの風体にしてはすごぶるいい)かマツダだね(あくまでも個人的に・・だが)。
なお、デミオ以上の車でないと、確実に雪が車床につかえて立ち往生しちゃいますので、念の為。←実際にトヨタバッソでオチャメって探訪断念と相成った筆者が言うので本当です。 もちろん雪が深ければ、デミオ以上でも無理です。
雪道を最大30km/hまでの常時20km/hで進んでいく。 8km程奥へ分け入り、農道から林道に変わって周囲の情景が幾分に鬱蒼とし始めると、トイレらしき小屋が建つ雪の吹き溜まりが見えてくる。
どうやらここが駐車場のようだが、吹き溜まっていて車の床が支えそうなので、その少し先の展望櫓の所まで車を進める。 ここはそれほど雪が吹き溜まってはおらず、この櫓の側に車を止める。
轍はこの櫓の広場に仕切られている林道ゲートの奥にも続いており、どうやら林野関係の車が行き来しているようだ。
滝のオーケストラを響かせる
滝岩盤のオブジェ
秘められたる
情景を魅せる滝へ
静寂なる季節
冬に訪ねてみよう
それでは行ってみよう。 だが、行き詰ったならば、『途中で引き返し』となる事を想定しての行軍である。 まぁ、轍があるとはいえ雪道をここまで車で来れた事自体が奇跡的な事かもしれないのだし、残念な結果と相成っても納得はいくだろう。 そうなったら、かなり悔しいとは思うだろうが。
こんな穏やかな沢を目にしたら
楽観視しますよねぇ
トイレの小屋がある吹き溜まりから、雪に埋もれかけた進入禁止の警告の看板のあるパイプ柵を跨いで沢へと降りていく。 沢の前には砂防ダムによる治水事業のあらましを記した案内板があり、それを越えると沢が現れる。 通行禁止にする位だからどんな沢かと思いきや、掲載写真の如く何とも穏やかな沢で拍子抜けであった。
沢に沿って深くもない雪道を300m位進んでいくと、砂防ダムを乗り越えてブッシュ地帯に突入する。
所々にピンクの道標リボンが括りつけてあり、割と道は明瞭だ。 だが、これに頼りすぎると『リボンを探して右往左往』って事になりかねないので、ある程度のルートファインによる予測が必要だ。
沢に沿って深くもない雪道を300m位進んでいくと、砂防ダムを乗り越えてブッシュ地帯に突入する。
所々にピンクの道標リボンが括りつけてあり、割と道は明瞭だ。 だが、これに頼りすぎると『リボンを探して右往左往』って事になりかねないので、ある程度のルートファインによる予測が必要だ。
砂防ダムを越えると
状況は一変する
しかし、沢筋で変な所で詰まってしまうと冗談では済まなくなる。
小滝そばの崖の登下降を強いられたり、沢徒渉やヘタすればカンヅメ(帰れなくなる事)も有り得るのだから(札内川・八ノ沢や御来光ノ滝めぐりで、このような目に遭った経験者〔愚か者〕は語る)。
ブッシュの中をリボンのある位置の見当をつけながら進んでいくのだが、ここで遅ればせながらある事に気がついた。 そういえば、雪に踏跡が一切ないな・・と。 これほどの有名な滝でも、冬は訪れる人が皆無のようである。 来た道の轍があれ程にしっかりと付けられていたので、週に何人かは遡行していると思ったのだが。
ブッシュの中をリボンのある位置の見当をつけながら進んでいくのだが、ここで遅ればせながらある事に気がついた。 そういえば、雪に踏跡が一切ないな・・と。 これほどの有名な滝でも、冬は訪れる人が皆無のようである。 来た道の轍があれ程にしっかりと付けられていたので、週に何人かは遡行していると思ったのだが。
ブッシュの合い間から覗き見る沢は行きがけに見たあの穏やかな沢ではなく、大岩がゴロゴロと転がり、瀬滝が岩を食む源流沢となっていた。 「おいおい、ここまで豹変するか」とも思ったが、文句を言った所で状況が好転する訳でもないので止めるとしよう。
そういえば、沢で転んでピッケルで掌を割った時(今でも傷跡は残ってる)は痛さで喚き散らそうと思ったが、ふと考えると「喚いた所で誰も聞いてはくれないな」と思い、喚くのを自重したタワケた経験が筆者にはあるし。 まぁ、このケースと状況が似ているかな!?(どこが?)
岩がゴロゴロと転がり遡行困難となった沢を避けるべく、川岸の土手上をゆく。 ブッシュを掻き分けながら雪道をズボズボと歩いていくと、遂にきた。 出来れば避けたいと思う状況が・・。
岩がゴロゴロと転がり遡行困難となった沢を避けるべく、川岸の土手上をゆく。 ブッシュを掻き分けながら雪道をズボズボと歩いていくと、遂にきた。 出来れば避けたいと思う状況が・・。
それは、沢瀬の徒渉である。
できれば遭遇したくなかった
冬の沢の徒渉
冬の沢の徒渉
夏ならばいい。 むしろ爽快だろう。 だが今は冬。 ハマってズブ濡れになれば、その時点で『ジ・エンド』だ。 なぜなら、水は体温を著しく奪うからである。 この状況で体温を奪われると、とどのつまり“サヨウナラ”ともなり得る訳だから。
そして、ワテは自慢ではないが、高校時の最も身体が動く時でも『垂直飛び』の記録が30cm、『走り幅跳び』に関しては「生涯1度たりとも3mのカベを超えた事がない」という金字塔の持ち主である。
それゆえに、思いっきり緊張した。
沢の石の飛び伝いは、着地にしくじればドボンとはまる。 また、沢の畔なので助走をつける事も叶わない。 それに加えて飛ぶ事に関しての己の身体能力は金字塔モノだし、また沢で流された経験も数多くあるし・・と、嫌な思い出が頭の中を駆けめぐる。
一度は『引き返し』も検討した位である。 往生際悪く徒渉せずともすむルートを探したものの、徒渉した沢の対岸にピンクリボンが咲いている現実を目の当たりにすると、「渡る以外はないのだな」と思い知らされる。
沢の石の飛び伝いは、着地にしくじればドボンとはまる。 また、沢の畔なので助走をつける事も叶わない。 それに加えて飛ぶ事に関しての己の身体能力は金字塔モノだし、また沢で流された経験も数多くあるし・・と、嫌な思い出が頭の中を駆けめぐる。
一度は『引き返し』も検討した位である。 往生際悪く徒渉せずともすむルートを探したものの、徒渉した沢の対岸にピンクリボンが咲いている現実を目の当たりにすると、「渡る以外はないのだな」と思い知らされる。
結局、勝負。 でも、コレって結構命がけかも。 沢を念入りに見て渡れそうな所をチェックしていくと、「少し下流地点で中州となった所へ渡り、中洲を伝って上にいくと何とかなりそうだ」と思い、そこでチャレンジする。
「沢にハマってズブ濡れになる位なら、岩にブチ当る方がマシ」との思いで、「とにかく、あの中州の岩に抱きつこう」との意思を持って飛ぶ。 何とか沢にハマる事もなく、岩にブチ当る事もなく渡る事に成功。
中州からは足が届く歩幅で水面より岩が出ていたので、難なく伝い渡る。
「沢にハマってズブ濡れになる位なら、岩にブチ当る方がマシ」との思いで、「とにかく、あの中州の岩に抱きつこう」との意思を持って飛ぶ。 何とか沢にハマる事もなく、岩にブチ当る事もなく渡る事に成功。
中州からは足が届く歩幅で水面より岩が出ていたので、難なく伝い渡る。
ドデカい岩が転がる中を
上下しながらゆく
この難関を越えると、再び土手に上がってブッシュと倒木帯の間を縫うようになる。 今度はブッシュ以上に、流木か倒木かは定かでないが、横たわった巨木に進路を阻まれる。 横たわった巨木を潜ったり、根の所まで迂回して乗り越えたりしながら進んでいくと、また“嫌なの”が再来した。 沢の渡り返しである。
だが、最初の沢よりも岩の配置が良く、1度克服した強みも手伝って、これは難なく渡り終える。
沢を渡り返して少しばかり遡行すると、茂ったブッシュの間から4~5mはあろうという大岩塊と、その先にアーチダムのような岩盤に覆われた端正な滝を魅る事ができた。 だが、あの端正な滝へ行くには、この4~5mはあろうかという大岩を乗り越えねばなるまい。
岩と枝樹の合い間から滝屏風が・・
:
だがそこにゆくには最後の試練
だがそこにゆくには最後の試練
(大岩の乗り越え)が待っている
雪の乗った大岩を、滑り落ちぬように抱えながらよじ登っていく。 だが、山の修練の賜物(そんなのあったのか?)からか、見かけよりはあっさりと大岩を上りつめる。 だが、調子に乗って上らなくていい大岩に登ってしまって下りるのに苦労したオマケが付くのは、いつもの如くのこの筆者(タワケ)の習性だったのであった。
この大岩をキャンセルし、岩の間のルンゼ状の段を伝っていくと、岩盤のオーケストラに囲まれたが如くのその中央から端正な滝が流れ落ちているのが見えてくる。 憧れやまぬ《インクラの滝》だ。
この大岩をキャンセルし、岩の間のルンゼ状の段を伝っていくと、岩盤のオーケストラに囲まれたが如くのその中央から端正な滝が流れ落ちているのが見えてくる。 憧れやまぬ《インクラの滝》だ。
ルンゼ状に刻まれた涸れ沢の途切れる先の高台の上に立ち、この滝を思う存分カメラに収める。
だが、これ以上先には行きたいとは思わなかった。 なぜなら、滝前に刺さる大岩が「これ以上先は進んではいけない」と訴えかけているように思えたからである。 まぁ、「これ以上しんどい思いをしたくはない」と思った事も動機の一つではあるが(半分以上がこの動機かも)。
でも、大自然の意思に逆らって、ここまでやってきたのである。 「端正あまりある美麗滝を魅る」という事を成し遂げた今、「これ以上、大自然の意思に背くような事はしたくないな」と思ったのである。
そして、雪道との格闘で濡れた手袋やダウンジャケットが、「もう、これで十分に満足しただろう」と訴えかけているようにも思えた。 だから、滝直下には行かずにおこう・・と思う。
滝全体を撮った時ふと思った
もうこれ以上進むべきではないと
濡れたダウンジャケットや手袋を枝に吊るして天日干し(天気は青空が広がる程に良くなっていた)。
雪との格闘でかいた汗を蒸発させつつ、鶴翼の如く広がる『岩盤オーケストラ』と滝を望遠と広角を交えて撮りまくる。 もう、フイルム3本目に入る“バカ撮り”だ。
でも、この高台に立った時の私の心は満たされていた。 これほど充実した時を過したのは、山の素晴らしい景色に魅せられた時以来だ。 充実した幸せに帰る事を忘れてしまいそうになりかけたが、そこは我に帰って「この場所での滞在は1時間ちょっと」と時間を決める。 それでは、その充実した時をごろうじろ。
でも、この高台に立った時の私の心は満たされていた。 これほど充実した時を過したのは、山の素晴らしい景色に魅せられた時以来だ。 充実した幸せに帰る事を忘れてしまいそうになりかけたが、そこは我に帰って「この場所での滞在は1時間ちょっと」と時間を決める。 それでは、その充実した時をごろうじろ。
落水模様で遊ぶ
伏流水も一端の飛沫となっていた
岩に飛沫が凍りつき
それは安易に近寄る事を
拒絶するかの如く
その一瞬がクリスタルアートてあった
さて、楽しい時はあっという間に過ぎ去り、先程定めた時間が経過した。 名残惜しいが戻る事にしよう。
帰りは、雪面に付いた足跡が『道しるべ』となるので心強い。 まぁ、間違ったり、彷徨ったりした所も『道しるべ』となるのだが。 間違った踏跡は、『自身の逃れようのない軌跡』として苦笑いする事にしようか。
立ち去り難かった
何度も何度も同じアングルで
シャッターを切る自分がいた
また、例の徒渉地点も、帰りは行きの時よりも安易な徒渉点が見つかり(余裕があると違うものですねぇ)、難なく渡る事ができた。 ブッシュの掻き分けも、足跡を辿っていけば自身が通れる『最適ルート』を手繰る事ができるので心強い。 そうこうしている内に、あっという間に砂防ダムの所まで戻り着く。
行きで撮れなかった『ルートの説明写真』を撮りつつ戻っても、往路よりも所要時間はかからなかった。
結局、往路は1:15、復路は写真を撮りながらで1:05のタイムであった。 13:30に、車の所まで無事に戻り着く。後は林道を安全第一にゆっくりと下って、苫小牧に戻るだけである。
結局、往路は1:15、復路は写真を撮りながらで1:05のタイムであった。 13:30に、車の所まで無事に戻り着く。後は林道を安全第一にゆっくりと下って、苫小牧に戻るだけである。
また来るぞ、いつの日か
素晴らしき滝よ so long
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No title * by 風来梨
メラニーさん、こんばんは。
いつも見て頂いて、有難うございます。
鶴翼の如く広がる滝の岩盤は、オーケストラの大ホールを思わせました。 その中央からゆっくりとオーケストラが鳴り響いています。
もう一度、行ってみたい滝です。
いつも見て頂いて、有難うございます。
鶴翼の如く広がる滝の岩盤は、オーケストラの大ホールを思わせました。 その中央からゆっくりとオーケストラが鳴り響いています。
もう一度、行ってみたい滝です。
落水の音がオーケストラ素晴らしい表現です!
奏でる音を是非聞いてみたいですね、きっと心が浄化される事と思います。
人の侵入を拒むかの様な岩盤群、見方によっては芸術的でもありますね。
笑い事ではありませんが、「金字塔モノ」には大笑いさせて頂きました。^^
有難う御座いました