2012-10-31 (Wed)✎
『日本の滝を訪ねて・・』 第74回 夜明島渓谷・茶釜ノ滝
神秘の香り漂う姿を魅せる
秋の茶釜ノ滝
茶釜ノ滝 ちゃがまのたき 直瀑 落差 100m
茶筌ノ滝 ちゃうけのたき 直瀑 落差 10m 全て秋田県鹿角市
雲上ノ滝 うんじょうのたき 分岐瀑 落差 60m
アプローチ 鹿角市街より 県道191号線・夜明島林道経由で約25km
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
鹿角市街より車(0:50)→夜明島渓谷入口(0:15)→泊滝(1:30)→クグリ滝
(0:40)→茶釜ノ滝分岐
※ 分岐より左の本流沢を行くと雲上ノ滝、右の支沢を行くと茶釜ノ滝 いずれも所要20分
茶釜ノ滝分岐(2:10)→泊滝(0:15)→夜明島渓谷入口より車(0:50)→鹿角市街
茶釜ノ滝分岐(2:10)→泊滝(0:15)→夜明島渓谷入口より車(0:50)→鹿角市街
『100名滝』の中でも最も訪れるのが困難な滝《茶釜ノ滝》。 そして、最も紅葉が映え、この時期に訪れてみたい滝の№1の滝《茶釜ノ滝》。 そして、遡行の困難を物語るコミカルな伝説が伝えられる渓谷が、この《茶釜ノ滝》を擁する《夜明島渓谷》である。
その渓谷へ足を踏み入れれば、ガレ場の登りやヘツリの鎖場、オーバーハングの岩壁に架けられたハシゴの昇降、渡渉や飛沫を浴びながらの沢瀬のすぐ際の直遡行etc・・と、変化に富んだ沢遡行が待ち受けている。
そして、訪れた季節が秋ならば、周りの樹々が赤や黄色に色着き、沢の岩瀬に落葉が絵模様のように貼り付いて目を楽しませてくれる。 そして、秋に訪れる事の真骨頂が、困難な遡行の末に魅せられる赤く黄色く色着く錦絵巻のような滝姿だろう。 周囲の紅葉と瀑布の白布、日の光を浴びて金や銀に輝く滝飛沫・・が合わさって、何とも言えない素晴らしい情景を魅せてくれるだろう。
そして、訪れた季節が秋ならば、周りの樹々が赤や黄色に色着き、沢の岩瀬に落葉が絵模様のように貼り付いて目を楽しませてくれる。 そして、秋に訪れる事の真骨頂が、困難な遡行の末に魅せられる赤く黄色く色着く錦絵巻のような滝姿だろう。 周囲の紅葉と瀑布の白布、日の光を浴びて金や銀に輝く滝飛沫・・が合わさって、何とも言えない素晴らしい情景を魅せてくれるだろう。
だが、秋が深まる10月の中旬ともなると日が昇る時間も遅く、早朝からの活動も難しい。
さりとて、遡行の出発を悠長に構えていては、滝前の滞在時間を含めて往復で6~7時間という時間を設ける事ができなくなる。 それに加えて沢遡行としては難度は初級であるが、やはり沢の徒渉や鎖・ハシゴのあるルートである。
また、難路で秋という事で訪れる人も疎らである。 ワテは秋に数回この地を訪れたが、いずれも他の入渓者と合う事はなかったのである。 即ち、怪我や遡行困難の事態に陥っても助けはないのである。
さりとて、遡行の出発を悠長に構えていては、滝前の滞在時間を含めて往復で6~7時間という時間を設ける事ができなくなる。 それに加えて沢遡行としては難度は初級であるが、やはり沢の徒渉や鎖・ハシゴのあるルートである。
また、難路で秋という事で訪れる人も疎らである。 ワテは秋に数回この地を訪れたが、いずれも他の入渓者と合う事はなかったのである。 即ち、怪我や遡行困難の事態に陥っても助けはないのである。
この事から、秋に入渓する・・という事の難しさを端的に理解して頂ければ・・と思う。
前置きが長かったが、行程ガイドを始めよう。 鹿角市街から国道282号を《八幡平》へ進み、市街の外れから分岐する県道191号を南下し、《長牛》という集落の所で右折して《夜明島林道》に入っていくといい。 林道のダート道を13km奥につめると、『秋田30景・夜明島渓谷』と記された大きな案内看板のある入渓口に着く。
変な伝説の紹介と共に
軽く『急峻区間』に対する
“脅し”が入っていますね
さて、渓谷遡行の準備をするがてら、大きな看板に描かれた図と看板の内容を見てみよう。
図を見て、ある程度の滝の位置取りは憶えていった方がいいだろう。 看板で滝の位置を把握したなら、徒渉靴に履き替えて気合を入れて出発。 なぜ気合が必要かというと、沢への入足一発目は、それはもう冷たいからである。
秋ならば枯葉に埋もれる踏跡が続き、それが途切れると沢にぶつかって徒渉する・・というのが2回程続くと、左岸(進行方向右側)の軽くへつった踏跡に出る。 何でもない所だがロープが張ってあって、この先に見える《泊滝》までは、未装備者でも何とか探勝できるように配慮されている。
泊滝
気象災害により
気象災害により
周囲は荒れていた
このヘツリを抜けると、近年の気象災害からか・・大きな流木が横たわって岩石と共に埋まっている沢ガレ地帯の上に、落差30m程の直瀑の豪壮な水量の滝が見えてくる。 《泊滝》だ。 この《泊滝》までは一般の解放区との事で、『泊滝までは普通区間でコレより先が急峻区間』とある。 これよりは看板通りの急峻区間となる。 まずは、この《泊滝》の大高巻き越えである。
滝の左岸(進行方向右手)のガレにロープが垂れ下がっており、これをつかみながら岩ガレを急登する。
ロープは始めの10m位で、これをよじ登るとジグザクを切ったガレ坂の急登となる。
これで左岸の屏風のような大岩崖に取り付き、ヘツるように斜めに登っていく。
だが、この岩崖のヘツリは一枚岩系のツルツルと滑るスラブ岩で、ロープは付いているが、下に《泊滝》が滔々と落ちる様を見やる中の高度感ある登りだ。 これを登りつめると《泊滝》の頭上50m程の高さのヘツリとなり、細いヘツリを針金とロープを手繰りながら滝の落ち口へ周り込む。 滝の落ち口が見える頃から急下降となり、ロープ片手に滝の上流20mほどの所の崖上に立つ。
下流側のハシゴは
古く華奢でオーバーハングのオマケ付
ここから、この崖をオーバーハングとなったハシゴで30m下降する。 だが、このハシゴは古く、踏み代も細く、なおかつオーバーハングに迫り出した岩盤に張り付くように“くの字型”に取り付けられているので、高度感を感じるハシゴ下降となる。
ハシゴを下りると
この沢瀬を徒渉する
やや水深が深く
やや水深が深く
すぐ側が泊滝なので危険
これを降りると、《泊滝》のすぐ上部のトヨ状の沢を徒渉して対岸に架かるハシゴを登っていくが、この徒渉では決して滑らぬように。 滑って流されると、20m先は《泊滝》で文字通り『ジ・エンド』となる。
沢を渡った対岸のハシゴは新しいモノに付け換えられたのか、しっかりして昇り良い。
2段のハシゴで30m程昇ると、右岸の岩崖をヘツるようにトラバースしていく。
上流側はハシゴが
取り換えられている
明るい様相の夜明島渓谷の中で
唯一幽谷の趣を魅せる
唯一幽谷の趣を魅せる
虎ノ尾滝
この難所をトラバースし終えると、斜めに降下して沢に降り着く。 沢を渡って左岸に垂れ下がるロープをつかんでガレ場を登っていくが、こちらはガチャガチャしているだけで、登りに関してはロープは必要ないレベルだ。 これを登って左岸(進行方向右側)の土手の踏跡を伝っていく。 しばらく伝うと沢は函状を成してきて、その中央を落差10m程の《虎ノ尾滝》が落ちている。
この滝は函状になった中にあり、明るい印象の滝が多い《夜明島渓谷》の中では幽谷の趣を示す滝である。 《虎ノ尾滝》を越えると再び土手の上の踏跡を通る。 途中《夫婦滝》で沢の辺に出て、滝のすぐ側にあるロープでよじ登ったりするが、概ねルートは左岸の土手の草付きの中にある。
沢が直角に曲がって
クグリ滝を滑らせている
「《泊滝》から50分弱歩いたか」と思える頃に、沢が直角に曲がって滑り落ちる《クグリ滝》が見えてくる。 ルートは、ここから《胎内クグリ》と呼ばれる滝を形成する岩をくぐって《クグリ滝》の上部へ抜けていく。 この上部に抜けると、明るく開けた沢の河原歩きとなる。
逆光に光る紅葉に
魅せられながらの楽しい沢歩き
河原は広く、流木が積み重なって通路を塞ぐなど、開けている割には歩き辛い。 だが、秋の最盛期ならば周囲の樹々が彩られ、また沢がキラキラと日の光を浴びて輝く素晴らしい情景を目にする事ができるだろう。
沢に出ると目を見張るような
素晴らしい情景が広がっていた
約40分ほど沢歩きすると、落水を帯の紋様に流す斜滝《白糸ノ滝》を右岸に見やる。
この滝を越えると沢は狭く急峻となっていくので、ここら辺りでひと息着くのもいいだろう。
《白糸ノ滝》を越えると両岸の岩盤が狭まって、瀬滝を連続で落とすトヨ状の沢となる。
《白糸ノ滝》を越えると両岸の岩盤が狭まって、瀬滝を連続で落とすトヨ状の沢となる。
所々で流木で埋まる河原を抜けると
白糸ノ滝が現れる
その右岸はスラブの滑りやすい一枚岩が連なり、その上をアングルとロープを使って連続的に伝っていく。 このトラバースはロープや鎖が設置され、欲しい所に『足置き』のアングルも打ち込まれているなど難所としては初歩的なレベルではあるが、落葉期に入って落葉の堆積があると更に滑りやすくなるので注意が必要だ。
白糸ノ滝を過ぎると
沢はトヨ状となり斜瀑が連続する
連続的に4~5回の一枚岩のトラバースを終えると、沢の合流点に出る。 左の本流沢へ行くと《雲上ノ滝》で、右の支流沢へ入ると『百名滝』の《茶釜ノ滝》だ。 いずれも、この分岐から20分程である。
秋に見落とすと来年まで
待たねばなりませんのでご注意を
それでは、本流沢の《雲上ノ滝》から探勝してみよう。 一見進路であるような錯覚にとらわれる本流沢を行くと、すぐに瀬滝の左岸(右側)をロープとアングルで10m程よじ登る。
分岐を過ぎると
すぐに7m瀬滝の岩崖を登る
後は河原を伝っていくと、落差60mの大瀑布《雲上ノ滝》が正面に行止まりを示すが如く発ちはばかっている。 滝前は気象災害で凪ぎ倒された流木が岩と積み重なり、やや荒れている。 だが、上部の秋色はまた格別だ。
滝の上に秋が輝いていた
この滝は滝つぼは荒れているようなので、一歩下から見上げる方がいいようだ。 また、《大場谷地》からの山道ルートの登路もあるので、途中まで登って上から滝を見下ろすのもいいだろう。
十分に《雲上ノ滝》を楽しんだなら、往路を分岐まで戻ろう。
大場谷地ルートから見下ろす
雲上ノ滝
分岐まで戻って、岩にある赤ペンキの矢印に従って、右の支流沢に入っていく。 支流沢に入って100mもせぬ内に、《茶釜ノ滝》の前衛滝である《茶筌ノ滝》が滔々と白布を掛けているのが見えてくる。
前衛滝の茶筌ノ滝
以前はその後ろにショボイ旧ハシゴが垂れ下ろされていたが、最近《茶筌ノ滝》のすぐ側に新しいハシゴが設置されている。 この新しいハシゴはシッカリしているが、ハシゴの設置位置がほぼ垂直の崖の為に高度感は旧ハシゴより大だ。 また、ハシゴの長さが短く、何回かハシゴの横移動を強いられるようになった。 即ち、新しく取り換えられた割には、“シッカリした”という以外にメリットの見出せない新ハシゴである。
放置された旧ハシゴ 取換えられた新ハシゴ
ショボかった 高度感は旧以上
これを登りつめると、旧ハシゴが滝前の馬ノ背の坂を埋めるように敷設されている。
馬ノ背は粘土質の土砂崖で滑り易く、旧ハシゴを滑り止めにして登っていく。
馬ノ背は粘土質の土砂崖で滑り易く、旧ハシゴを滑り止めにして登っていく。
これを登りつめると馬ノ背上のテラスから名瀑《茶釜ノ滝》が滔々と白布を掛けている。
その際に赤や黄色に彩られた紅葉が滝を絢爛絵巻に彩っている。 その姿は十二単を纏う絵姿を彷彿させる。 もう言葉では上手く表現できそうもないので、拙い写真で私の感じた思いを記す事にしよう。
それでは、しばし錦絵巻きをごろうじろ。
それでは、しばし錦絵巻きをごろうじろ。
緑・赤・黄色・橙の紅葉に
白布の白と滝壁の銀色の斑が織り成す絶景
帰りは往路を戻っていくだけだが、往路で容易だった所が帰りは下りとなって難度が増す事もある。
時間配分・自らの体力を考慮したペース配分をしっかりと把握し、街までの帰りの所要時間を計算して余裕ある行程計画を立てて頂きたい。 余裕を持って、最後の最後まで美しい情景を目一杯味わいたいものだ。
時間配分・自らの体力を考慮したペース配分をしっかりと把握し、街までの帰りの所要時間を計算して余裕ある行程計画を立てて頂きたい。 余裕を持って、最後の最後まで美しい情景を目一杯味わいたいものだ。
沢の流れ中にも
秋絵巻があった
※ 詳細はメインサイトより『みちのくの滝めぐり2』をどうぞ。
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No title * by 風来梨
メラニーさん、おはようございます。
見て頂いて有難うございます。
これは以前の時ですが、最初の時に紅葉が大当たりで、その後通算4回行ったのですが、全てハズレでした。 紅葉の時期を読むのは難しいですね。
仰るとおり、訪れた者だけにしか解らない雰囲気が多分にある所です。 それは、一筋縄では行けない難路だから・・という事も理由の一つだと思います。
これからも、何度も訪れたいと思う滝の一つです。
見て頂いて有難うございます。
これは以前の時ですが、最初の時に紅葉が大当たりで、その後通算4回行ったのですが、全てハズレでした。 紅葉の時期を読むのは難しいですね。
仰るとおり、訪れた者だけにしか解らない雰囲気が多分にある所です。 それは、一筋縄では行けない難路だから・・という事も理由の一つだと思います。
これからも、何度も訪れたいと思う滝の一つです。
よくご無事でお帰りなさいました。
素晴らしいお写真ばかりで時間を忘れてしまいます。
この地に行かれた方にしか分らない空気、匂い野鳥の囁きがあると思います。
夜明島渓谷の名の由来には思わず笑ってしまいました。
素晴らしい秋を有り難う御座いました。