2012-08-29 (Wed)✎
名峰百選の山々 第76回 『71 南アルプス・鋸岳』 その1 act 2 山梨県・長野県
甲斐駒山系(南アルプス国立公園) 2685m コース難度 ★★★★ 体力度 ★★★★★
甲斐駒ヶ岳から望む鋸岳
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR甲府駅よりバス(2:05)→広河原よりバス(0:25)→北沢峠(1:00)→仙水峠
(1:20)→駒津峰(1:20)→甲斐駒ヶ岳(1:30)→六合石室
《2日目》 六合石室 (2:10)→中ノ川乗越 (0:40)→鋸岳・第二高点
《2日目》 六合石室 (2:10)→中ノ川乗越 (0:40)→鋸岳・第二高点
(2:00)→鋸岳・第一高点(0:30)→角兵衛沢ノコル(1:40)→大岩下ノ岩小屋
(1:40)→角兵衛沢入口(2:20)→北沢峠
《3日目》 北沢峠よりバス(0:25)→広河原よりバス(2:05)→JR甲府駅
《3日目》 北沢峠よりバス(0:25)→広河原よりバス(2:05)→JR甲府駅
※ 《1日目》行程『名峰百選 第75回 南アルプス・鋸岳 その1 act 1』からの続き
最も朝の仙丈ケ岳を美しく望める所
六合石室にて
《2日目》 鋸岳稜線を伝って角兵衛沢出合へ
朝、日の出の少し前に石室の中から出てみよう。 そこには、朝の美しい光に染まりゆく仙丈ケ岳の姿が・・。
朝、日の出の少し前に石室の中から出てみよう。 そこには、朝の美しい光に染まりゆく仙丈ケ岳の姿が・・。
やがて、朝日が昇り始めるとほのかなオレンジ色に山が染まる。 この素晴らしい情景に、しばし出発の準備の手が止められる。
中央アルプスがほのかに染まるのに
魅せられながら出発の身支度をしよう
しかし、今日は、この山行の“メインイベント”なのである。 歩行時間も11時間に達する超ハード行程である。
今日のこの日を素晴らしいものにする為にも、出発時間を余り遅らせないようにしたいものだ。
御岳山と雲海も朝日を浴びて
“夢の一夜”の幻想を魅せてくれた《六合石室》と別れ、稜線上へ花崗岩の大岩を伝っていく。 道なき道を伝うこと10分で、砂礫の広がる縦走路に出る。 この砂礫帯を少し下ると、《赤河原》への《七丈ノ滝尾根》ルートが分岐している。
こちらの方は道標リボンが多く吊り下げられていて、すぐに道だと判断できる。 だが、鋸岳へのルートは分岐でさえもリボンがなく、踏跡による自らの判断だけが頼りとなる。
なお、リボンがあるから・・と、このルートに安易に入り込まぬように。 《七丈ノ滝尾根》ルートは《丹渓山荘》があった時のルートで、現在は完全な廃道であるので念の為。
鋸岳縦走ルート 詳細図
《三ッ頭》からは急下降でイッキに潅木帯に突入し、廃道となった烏帽子岳への道を分けて更に不明瞭となった踏跡を伝っていく。 《扇平》の岩稜を避けるべく甲州側(右手)を巻いていくのだが、これがまた道が不明瞭で、やたらめったらに倒木が散乱している。 多分近年の気象災害で荒れ果てたのだろう。 倒木によってほとんど道が消失した中を、かすかに残された踏跡を伝って上下していく。 途中にはイバラのブッシュを漕いだり、草付きの急斜面を草を握ってよじ登るなどの“大ワザ”もなりふり構わず行使せねばならない。
朝のうちは仙丈ヶ岳の
朝景を望みながらゆく
縦走路は潅木帯に突入し、細い獣道のような踏跡を上下していく。 やがて、《六合石室》上の稜線から間近に見えた岩稜・《三ッ頭》に向けて登っていくようになる。 稜線上には小規模なお花畑が朝日を浴びて輝いている。
《三ッ頭》の頂上に立つと、北岳から仙丈ケ岳・鋸岳、振り返ると白亜の頂をもたげる甲斐駒ヶ岳が周りを取り囲むように迫り立ってくる。
《三ッ頭》からは急下降でイッキに潅木帯に突入し、廃道となった烏帽子岳への道を分けて更に不明瞭となった踏跡を伝っていく。 《扇平》の岩稜を避けるべく甲州側(右手)を巻いていくのだが、これがまた道が不明瞭で、やたらめったらに倒木が散乱している。 多分近年の気象災害で荒れ果てたのだろう。 倒木によってほとんど道が消失した中を、かすかに残された踏跡を伝って上下していく。 途中にはイバラのブッシュを漕いだり、草付きの急斜面を草を握ってよじ登るなどの“大ワザ”もなりふり構わず行使せねばならない。
道なき道を大きく斜上していくと稜線上に這い上がり、樹林に囲まれた細い稜線上を伝っていく。 この細道は《熊穴沢ノ頭》のピークで途切れて、これより《中ノ沢乗越》まで木の根や岩角をつかんでの急下降となる。 前面には、山全体が瓦礫石の積み重なりである鋸岳・第二高点の高みがそそり立っているのが見える。 これを見ると、嫌な予想が頭に過ってくる事だろう。 それは、“あのガラ場を本当に登るのか?”という事である。
中ノ川乗越から望む
鋸岳・第二高点岩稜
急下降で“石の海”と化した《中ノ川乗越》に下り着く。 周囲を見渡すと、一面瓦礫の海だ。 草付きなどの巻道もなさそうだ。 どうやら、あの嫌な予想は正解のようで、第二高点から落ちる瓦礫の“滝”を登っていかねばならない。
急下降で“石の海”と化した《中ノ川乗越》に下り着く。 周囲を見渡すと、一面瓦礫の海だ。 草付きなどの巻道もなさそうだ。 どうやら、あの嫌な予想は正解のようで、第二高点から落ちる瓦礫の“滝”を登っていかねばならない。
3歩進むと1歩崩れるガラ場を直登でつめていく。 直登ゆえに、崩れると連鎖反応で大きく崩れて歯止めが利かない。
苦労に苦労を重ねて標高差250mほど登って上部の僅かな草付きを越えると、最も左の岩稜の上に出る。
岩稜の上に出ると傾斜は幾分ましになり、展望もすごぶる良くなってくる。 後は、南アルプスの名峰のおりなす絶景を見ながら瓦礫を伝っていくと、鉄剣が岩に立てられている鋸岳・第二高点 2675メートル の頂だ。
第二高点より望む第一高点は
独特な山容を示している・・
甲斐駒ヶ岳・北岳など南アルプスの山なみ、そして真綿のような雲海に浮かぶ中央アルプスや御岳の高峰群。
独特な山容を示している・・
甲斐駒ヶ岳・北岳など南アルプスの山なみ、そして真綿のような雲海に浮かぶ中央アルプスや御岳の高峰群。
それにも増して魅きつけられる情景は、前面に立ちはばかる鋸岳・第一高点への悪絶たる吊尾根の情景だ。
この悪絶たる岩稜を望むと、これを越える事の喜び、そして不安と、様々な思いが頭を過ってくる。 とりあえず素晴らしい景色で気を落ち着かせてから、あの悪絶たる岩稜に挑んでみよう。
第二高点から10m程戻って、『第一高点→』と記された木の札の指す通りに信州側(左手)へ下っていく。 やがて、ガレ場から潅木帯に突入し急激に下ると、《大ギャップ》から落ち込んでくるガラ沢に出る。 ガラ沢に出ると、踏み出す毎に崩れる“石の河”を“徒渉”して、第三高点から延びてくる岩尾根に取り付く。 これを伝って50mほどガレ沢を下って、《鹿窓》に通ずる巨大なルンゼに入っていく。 ここからは完全なる岩登りの領域だ。 このルンゼの上から、天窓の如く光を注ぐ《鹿窓》までの200mを直登していくのだ。
鹿窓
下界を覗く“窓”かのように
ルンゼは足の取っ掛かりが小さく、脚力・腕力全ての力でよじ登らねばならない。 本来ならば、鹿窓を仰ぎ見るアングルの写真を掲載せねばならない所であるが、カメラを構える余裕などなく、写真を撮る事はできなかった。
これを登っていくと《鹿窓》が眼前に現れ、古びたロープが一本垂れ下がっているのが見えるだろう。 ちなみに、このロープはあまり当てにしない事である。 風雨にさらされたものゆえに、いつ切れるか判らないからである。 とにかく、ここまできたらもうひと踏ん張りだ。 ルンゼを登りつめると、天から光を一筋降り注いでいた《鹿窓》を実際に潜り抜けて甲州側に出る。
これを登っていくと《鹿窓》が眼前に現れ、古びたロープが一本垂れ下がっているのが見えるだろう。 ちなみに、このロープはあまり当てにしない事である。 風雨にさらされたものゆえに、いつ切れるか判らないからである。 とにかく、ここまできたらもうひと踏ん張りだ。 ルンゼを登りつめると、天から光を一筋降り注いでいた《鹿窓》を実際に潜り抜けて甲州側に出る。
甲州側に出ると、稜線を通らずに軽く右下の草付きを巻く。 《鹿窓》の岩峰を巻いたなら再び左の小尾根から稜線を乗り越えて、草をつかんでの下降を強いられる急下降を30m程こなすと、猫の額のように狭い《小ギャップ》の底に出る。
目の前にはほぼ垂直の20mばかりの岩壁がたちはばかる。
小ギャップ
ロープに頼らず自力でよじ登ろう
ここにも古いザイルロープがあるが、登りにくい筋に垂れ下がっているので、これに頼らずに自力でよじ登った方が楽である。
岩の取っかかりも十分にあるので、見た目程には難しくない。 だが、岩が脆い為、崩落石には注意したい。 《小ギャップ》の直登を乗りきると悪場はなくなり、見上げる第一高点まで痩せ尾根を登りつめるだけだ。
小ギャップを越えると
第一高点はもうすぐだ
登り着いた鋸岳・第一高点 2685メートル は南北に細長い山頂で、仙丈ケ岳・北岳・甲斐駒ヶ岳が第二高点を取り囲む絶景が広がる。 但し、第二高点からの縦走でもう昼近くになっている事だろうから、ガスが上がってきて景色は皆無という可能性も高い。
鋸岳・第1高点にて
とにかく、この悪絶たる難関を乗り越えたのだ。 その興奮が、この山頂に立った時の全てだろうと思う。
その感動と喜びを十分にかみしめたなら、下山に取りかかろう。
下山路であるが、《角兵衛沢ノコル》までは木の根や岩角をつかんでの急下降となる。 下り着いた《角兵衛沢ノコル》は、《中ノ川乗越》に勝るとも劣らない“石の海”だ。 これより、この“石の海”を下っていかねばならない。
南アルプス北部の峰々を望む
下山路であるが、《角兵衛沢ノコル》までは木の根や岩角をつかんでの急下降となる。 下り着いた《角兵衛沢ノコル》は、《中ノ川乗越》に勝るとも劣らない“石の海”だ。 これより、この“石の海”を下っていかねばならない。
この石の海は下が
見えない程に傾斜が急なのだ
その全てが“純粋”な浮石である
下の沢まで1400mを下っていくのだ
その上で山腹に刻まれた
南ア林道まで登り返すのだ
真に石の海
角兵衛沢の下降
石は大なり小なり全てといっていい程に転石で、踏み出す毎にガラガラと崩れ落ちる。 また、石全てが転石で常に移動しているので、踏跡がつかずルートマーキングも定める事ができない。 周囲の状況を見渡して、適当に歩き良いと思う所を下っていくしかない。 道は概ね左側に延びているので、左の岩稜を意識しながら下っていくといいだろう。 右に《スフィンクス岩》を見送ると、足場はガラ場であるがカラマツが林立している所に出る。
このカラマツ林に道標リボンが吊り下げられていて、これを探しながらカラマツ林をジグザグに下っていく。 眼下には、『南アルプス林道』が対岸の山肌を縫うように続いているのが見渡せる。 これから、あの林道から遙か下にある沢に降りて、なおかつあの林道の終点まで行かなければならないのである。 考えてみたなら、もの凄い高低差と行程距離である。
再びガラ沢を下り、広葉樹林の樹林帯に突入すると、左側の大岩壁の下部に人の身長位の洞窟が口を開けているのが見えてくるだろう。 これが、現在でも使われている自然の岩小屋・《大岩下ノ岩小屋》である。
絶妙に張り出した岩の庇は
快適!?なビバークを約束する(かもしれない)
洞窟の中は清水が湧き出ており、テント・ツェルトの類があれば十分利用ができる。 なお、この水場が《仙水小屋》前の水場以来の久しぶりの水場である。 持ち水が欠乏したなら、岩小屋の探検がてら汲んでいこう。
大岩下の岩小屋から
湧き出る天然の岩清水
岩小屋よりは、少しガラ場を下ってから広葉樹林の林の中をジグザグに切りながら下っていく。 しかし、これまでのガラガラの大下りはさすがにキツく、関節の感覚はほとんど麻痺している事だろう。
後は、鬱蒼とした樹林帯に入り、道なりにどんどん下っていくと一合目の《角兵衛ノ岩小屋》が現れる。 これより先はやや道が不明瞭となるが、下っていけば鋸岳の案内板が立つ登山口に下り着く。 とにかく、《戸台川》の河原に出るのだが、まだまだ難関が立ち塞がるのである。
岩小屋よりは、少しガラ場を下ってから広葉樹林の林の中をジグザグに切りながら下っていく。 しかし、これまでのガラガラの大下りはさすがにキツく、関節の感覚はほとんど麻痺している事だろう。
後は、鬱蒼とした樹林帯に入り、道なりにどんどん下っていくと一合目の《角兵衛ノ岩小屋》が現れる。 これより先はやや道が不明瞭となるが、下っていけば鋸岳の案内板が立つ登山口に下り着く。 とにかく、《戸台川》の河原に出るのだが、まだまだ難関が立ち塞がるのである。
石が全般的に尖っていて
素足だと痛そうでソ
まずは、《戸台川》の徒渉である。 素足になって登山靴をリュックに詰めて渡ろう。 なお、渡渉はこの後もあるので、いちいち靴下を履き直すのは時間のムダだ。 素足のまま登山靴を履いて歩いていこう。
《戸台川》を渡ると左岸を伝い、支沢を渡り20分程歩くと本流を渡って広い中州に出る。 この辺りが《丹渓キャンプ場》のようである。 中洲をつめていくと、流木で荒れた《薮沢》との出合に出る。 出合の突端に、今や石垣のみが残る“休業中”の《丹渓山荘》がある。
《戸台川》を渡ると左岸を伝い、支沢を渡り20分程歩くと本流を渡って広い中州に出る。 この辺りが《丹渓キャンプ場》のようである。 中洲をつめていくと、流木で荒れた《薮沢》との出合に出る。 出合の突端に、今や石垣のみが残る“休業中”の《丹渓山荘》がある。
中洲から流木伝いに右岸に渡って、荒れた河原を右の岩壁に沿って登っていくと、《八丁坂》の入口に出る。 ここからは、整備されたつづら折りの坂を登っていくだけだ。 もちろん、沢には丸太の橋も掛けられていて靴を脱ぐ心配はない。 今日は11時間も歩いた事だし、登り着いた《太平山荘》でゆっくり休む事にしよう。
甲斐駒ヶ岳を仰ぎ見て
一つの山行を終えよう
《3日目》 北沢峠より帰路に着く
今日は、《広河原》行のバスに乗って帰路に着くのみだ。 歩くのも、《太平山荘》より《北沢峠》までの15分程である。
今日は、《広河原》行のバスに乗って帰路に着くのみだ。 歩くのも、《太平山荘》より《北沢峠》までの15分程である。
最後の総括を記したい所であるが、文字数制限ゆえに終わりにしたいと思う。
鋸岳第2高点より望む
北アルプスを思い出に
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