風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第10回  日高・幌尻岳

名峰百選の山々 第10回  『11 日高・幌尻岳』 北海道 日高山系(日高山脈襟裳国定公園) 
2052m コース難度 ★★★★  体力度 ★★★★
 

七ッ沼カールと
中部日高の山なみ
 
  《メインサイトより抜粋》
北海道の山も、近年ではかなりオープンとなってきた。 しかし、この日高山系だけは原始の姿を多くとどめていて、登山道はおろか未だ踏跡さえない山もあり、素人登山を決して受け付けない厳しさがある。
だが、原始の山とは、大いに征服欲をかきたてるものだ。 そして、大自然相手に数多くの困難の末、山頂にたどり着いた者のみが大自然そのままの景観を欲しいままにできるのである。
 
この山系の見どころとしては、七ッ沼・コイボク・八ノ沢など、この山系の特徴である《カール地形》が挙げられる。 花ならば、戸蔦別岳からペテガリ岳までのカール地形に群落を成している。
 しかし、これらの山々や“花の楽園”であるカールの底へたどり着くには、川を渡渉し、沢をつめ、時には滝を遡上しなければならない。 コース難度も全てが上級向きで、山小屋も北日高の幌尻山荘を除くと山中には全くなく、装備・体力・経験の全てが要求される。
 

1日の最後に夕陽は
山を美しく染め上げる
 
   行程表             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 平取町・振内より車(1:10)→林道・振内ゲート(1:20)→北電・額平川取水ダム 
     (2:40)→幌尻山荘
《2日目》 幌尻山荘(1:30)→命の水(2:30)→幌尻岳(1:30)→七ッ沼カール底
《3日目》 七ッ沼カール底(1:20)→戸蔦別岳(3:00)→幌尻山荘(3:50)→林道・振内ゲートより車
     (1:10)→平取町・振内
 
 《1日目》 平取町・振内から幌尻山荘へ
平取町・振内より、砂利道の林道を延々32km進んでいく。 途中、『幌尻山荘へ19km』という看板がある分岐を、その指示通りに進んでいく。 ここからは道脇にキロポストがあり、《5.0》地点にある林道ゲートまで車で行ける。 さぁ、ここからは“歩き”だ。

・・日高の山は、大抵が林道歩きから始まる。 この北日高も例外ではなく、《10.0》地点の取水ダムまで5kmの林道歩きだ。 テント装備一式・約20㎏担いでの辛いアプローチだ。 
見るべきものもなく、ただ黙々と歩き続けると、やがて《北電・額平川取水ダム》に着き、ここで林道は尽きる。 
 
ダム堤を越えて、額平川の河原に沿って着いてある踏跡をたどっていく。 途中、増水時に高巻く“バンド”が垂れ下がっていたり、両岸が函状に迫ってきたりして、沢に入っているのが実感できる。
ハシゴや岩がせり出す“へつり”の鎖場などをピッケル片手に越えていく。 

取水ダムより、歩くこと約1時間で《四ノ沢》の河原に出る。 《四ノ沢》が、勢いよく本流に合流している。 ここから靴を徒渉用に履き替えて、“気合を入れて”川を渡っていく。 
沢への第一歩は、すごく冷たくて背筋がピンとなる事だろう。
 

秘滝・心洗ノ滝 
 
この“儀式”を終えると、前方にけたたましい瀑音が聞えてくる。 《心洗ノ滝》である。 誰が名付けたのか・・、岩に赤ペンキで書いてある。 もし、この風流な“名付け親”がいなければ、日高の沢に無数とある“無名滝”として、人知れず瀑布を掛けているのであろうか。 

風流な響きの《心洗ノ滝》を過ぎると、両岸がぐっと迫り函状となる。 一枚岩の崖が迫り出し、高巻くことはできない。 約200mほど、ずっと沢の中を遡っていく。 この函状の所は、“増水”が最も危険だ。 増水すると、途端に逃げ場を失うからである。 従って、沢に入る時に一番大切なのは『技術』ではなく、天候を見分ける的確な『判断力』である。 この函状の難所を越えると、視界がパッと開けてくる。 

ここからは、戸蔦別岳を見ながらの楽しい遡行となる。 土手を高巻いたり、暑くなったなら沢を流れる“ミネラルウオーター”で喉を潤したりしながら、幌尻山荘のある《五ノ沢出合》まで着実に沢をつめていく。
 

立派な建付の幌尻山荘

・・沢に入ってから2時間40分・徒渉すること17~18回で、“こんな沢中によくもまぁ”と思うほどに立派な幌尻山荘に着く。 今日はここ泊ろう。



  《2日目》 幌尻岳を経て七ッ沼カール底へ 

戸蔦別Aカールを“露払い”に
幌尻岳がそびえ立つ
 
テントを担いで暑い中、長時間歩くのは避けた方がいいので、朝の涼しい内に稜線まで登ってしまおう。
従って、早朝5時に幌尻山荘を出発する。 山荘の前から、いきなりつづら折りの急登だ。 
この急登を汗をかきかき登っていくと、やがてダケカンバ林に朝日が輝く平坦な尾根の端に出る。 
つづら折りの樹林帯の登りがキツかった分、朝日の輝きに心が躍る。 

また、ここは小さなお花畑で、エゾカンゾウ・オトギリソウなどの花が朝日に映えて美しい。 
お花畑が両端を飾る尾根筋を歩いていくと、《命の水》の立て札が現れる。 
この立て札のある踏跡を下っていくと、清水が岩の間から流れ落ちている。 これが、銘水《命の水》だ。 幌尻岳・北カールの湧水だけあって、冷たくて美味しい。 だが、この踏み跡は、脆い岩場で崩れやすいので気をつけていこう。
 

エゾノハクサンイチゲ
 
水筒に《命の水》を汲んで、再び登山開始。 《命の水》からはうって変わって、ハイマツの根にしがみついての急登となる。 テント装備一式の大きいザックがハイマツに引っ掛かり、行く手を阻む。
また足元も、縦横無尽に絡み合ったハイマツの根によっておぼつかない。 高低差150m位の大自然からの試練に耐えると、いよいよお待ちかねの《北カール》の端に登り立つ。 カールの端に立つと視界がパッと開けて、眼前に幌尻岳が《北カール》を抱きそびえ立っている。
 

ヌカビラ岳から望む
幌尻岳・北カール
 
カールを彩る鮮やかな緑と、残雪の眩いばかりの白とのコントラストが美しい。 また、辺り一面を咲き競うお花畑の群落に目を奪われることだろう。 正に楽園。 これだけの景観を魅せられると、誰しもカール地形の虜となろう。 この素晴らしき眺めを楽しみながら、《北カール》の縁を幌尻岳に向って登っていく。
 

イワヒゲ
 
カールの端から、馬蹄形に半周まわり込むように登れば、日高山脈の盟主・幌尻岳 2052メートル に着く。 頂上からの眺めは雄大だ。 ピラミットのように端正な三角錐を形どる戸蔦別岳と、東西南北に展開する日高の山なみ。 登ってきた《北カール》や、《東カール》の縁の広がりも素晴らしい。 
ただ、《七ッ沼カール》は、戸蔦別岳からの稜線に隠れて見る事はできない。
 

幌尻岳頂上にて
 
『日本百名山』に指定された幌尻岳の頂上のみ踏んで往路を引き返す人が多いが、せっかく苦労してここまで来たのに一番“美味しい”所を見ないで帰るとは、何ともったいない事だろう。 山頂の雄大な眺めを心ゆくまで楽しんだなら、まだ見ぬ“楽園”《七ッ沼カール》へ行こう。
 

花の楽園・七ッ沼カールに
咲くチングルマ
 
幌尻岳からは、ゴツゴツした岩場をトラバース気味に下っていく。 岩にハイマツが絡みついて歩き辛いものの、辺り一帯は砂礫地のお花畑となっていて、エゾノハクサンイチゲ・チングルマ・アオノツガザクラ・キンポウゲ・ヨツバシオガマ・ミヤマオトギリ・チシマギキョウ・チシマリンドウなどが美しく彩っている。 ついつい花に見とれてしまって、思わぬ時間を費やして幌尻岳の肩に着く。 ここからの《七ッ沼カール》の眺めは、言葉では言い表せない。 “楽園”そのものである。
 

山上の楽園・七ッ沼カールの
湖沼群と戸蔦別岳

・・この場所に立った者だけが、この地に立つ“快感”と“喜び”を享受できるのである。 しかし、楽園に見とれてばかりはいられない。 これから、“楽園”に向わねばならないのだ。 幌尻岳の肩からカールの底まで、岩ガレの急坂をイッキに400m下降するのだ。 
幌尻岳の肩からカール壁までは、膝がガクガクする程のキツい下りではあるのだが、何とか前を向いて下りる事ができる。 

問題は、カール壁より先だ。 これまでより、更に急傾斜となるのだ。 足を踏み下ろす度に崩れ落ちる石ガレの急坂が続き、最後に“スプーンでえぐった”ような雪渓の下降が待ち受けているのだ。
しかも、周りを彩るお花畑、そして青く輝く《七ッ沼》や端正な三角錐の裾を広げる戸蔦別岳の景観と、カメラマン泣かせの好展望が足元に対する注意を散漫にさせる。 カメラを構えつつ下っていくと、“最後の雪渓”に取り付く。
 

カール底の沼畔は
庭園状を成している
 
雪渓の縁と岩肌はポケット状のクレバスとなっていて、取り付くのに苦労する。 やっとの思いで取り付いても、まだ油断は禁物。 この雪渓は、かなり急なのだ。 おっかなびっくり下っていって、ついには“尻セード”(決して、マネはせぬように)で、“憧れの地”に降り立つ。
 

真に自然の庭園
七ッ沼の畔にて
 
幌尻岳の雪解け水を飲んで、心を落ち着かせてからカール探勝をしよう。 沼の縁を飾るお花畑、ハイマツのトンネル、切り立ったカール壁、両脇にそびえ立つ幌尻岳と戸蔦別岳、白砂の“庭園”と可憐に咲くミヤマアズマギク、その一つ一つが素晴らしき“楽園”なのだ。 今日はここに幕営して、この“楽園”の主となろう。 今日一日、我一人だけの“楽園”となる。
 

七ッ沼畔は絶好!?のキャンプ場だ
 

沼の周りは花の楽園だ
 

カール壁が夕日に染まり始めて
 

“楽園”の一日が
暮れようとしている
 
    《3日目》で踏破する名峰次選 『113 戸蔦別岳』は、次回に続く。
 
    ※ 詳細は、メインサイトの『日高山脈<2>』を御覧下さい。
 



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