2012-08-17 (Fri)✎
名峰次選の山々 第70回 『116 日高・1839峰 その2』 北海道
日高山系(日高山脈襟裳国定公園) 1842m コース難度 ★★★★★ 体力度 ★★★★★
“遙かなる山”1839峰
アタックの時がついにやってきた
日高・1839峰 バリエーションルート 行程図
行程表 ※ この行程表は現役バリバリ時のモノです
今はこの様な行程はとても無理です
《1日目》 中札内村・上札内より車(0:35)→札内ヒュッテ
(2:30)→コイカクシュサツナイ沢・上二俣
(3:30)→コイカクシュサツナイ岳・夏尾根ノ頭(3:20)→ヤオロマップ岳
《2日目》 ヤオロマップ岳(3:30)→1839峰(3:30)→ヤオロマップ岳
(3:00)→コイカクシュサツナイ岳・夏尾根ノ頭
《3日目》 コイカクシュサツナイ岳・夏尾根ノ頭(2:20)→コイカクシュサツナイ沢・上二俣
《3日目》 コイカクシュサツナイ岳・夏尾根ノ頭(2:20)→コイカクシュサツナイ沢・上二俣
(2:30)→札内ヒュッテより車(0:35)→中札内村・上札内
※ 《1日目》行程は、前回の『第69回 日高・1839峰 その1』 を御覧下さい。
《2日目》 “遙かなる山”1839峰へ
このガイドは、私の登山調査結果を元にしているので、本日の“出だし”はこのように記さねばならない。
このガイドは、私の登山調査結果を元にしているので、本日の“出だし”はこのように記さねばならない。
それは、“昨日は快晴だったのに、朝起きたら雨だった”と。 これで、コースタイムは元より、全てのデータが激しく超過する事となる。 それを踏まえて進めていこう。
さて、雨という事実がなくても猛烈なブッシュと不明瞭な道、崖同然の草つかみの急登など、“遙かなる山”への道程は困難を極めるものである。 従って、早朝出発を心掛けよう。 もちろん、荷物などはテントサイトにデポって身軽となってである。
さて、雨という事実がなくても猛烈なブッシュと不明瞭な道、崖同然の草つかみの急登など、“遙かなる山”への道程は困難を極めるものである。 従って、早朝出発を心掛けよう。 もちろん、荷物などはテントサイトにデポって身軽となってである。
ヤオロマップ岳より、下り気味にハイマツと岩の尾根を伝っていく。 テントサイト付近はお花畑が広がり、これからの苦闘をカモフラージュしているようである。 このお花畑が終わると、途端に“道”がなくなる。 ハイマツが足元を完全に覆い隠すのだ。
ミヤマリンドウ
ハイマツの中に飛び込むと、何とか踏跡を見つけ出す事ができるが、言葉にできない程の猛烈なブッシュに10m進むのでさえ1分かかる事もある。 いや、よくよく計算してみると、10mそこそこ進むのに1分かかっている・・という結果がでる(2.5kmを210分で割ると)。
もし、行く前にこんな結果を知らされたなら、気持ちが萎えてとても行ける所ではないのである。
しかも、雨露を大量に載せたハイマツは、漕ぐごとにバシャバシャと水を浴びせる。 これは、歩くごとにバケツで水をぶっ掛けられているようなものである。
ハイマツのブッシュを漕ぎながら小さな上下を繰り返すと、ヤオロ寄りの小ピークの上に立つ。
ここから、大きくたわんだ細い吊り尾根が1839峰に向って連なっている。 ナナシノ沢とサッシピチャリ沢の源頭が突き上げる辺り、吊り尾根の最低点の標高は1620m。 ここから約180m下るのである。
だが、その下りといったら猛烈な傾斜で、登り返し時はハイマツやササの葉をつかみながらの急登となる。
しかも、今日は雨。 足元はヌルヌルの泥状となった土手である。 こんなに最悪のロケーションは、普通の山のルートなら滅多にない事であるが、『日高』は別である。 日高山域の夏は、太平洋の湿気を含む風がまともにぶつかるため降水量が多く、3日行程だと1日は雨を覚悟せねばならない。 低気圧や前線付の雨の場合は何日も降り続き、最悪は増水による沢での“缶詰”も有り得るのだ。 ヌルヌルの土手をハイマツをつかみながら下って、吊り尾根の低点部に降りる。
ハイマツのブッシュを漕ぎながら小さな上下を繰り返すと、ヤオロ寄りの小ピークの上に立つ。
ここから、大きくたわんだ細い吊り尾根が1839峰に向って連なっている。 ナナシノ沢とサッシピチャリ沢の源頭が突き上げる辺り、吊り尾根の最低点の標高は1620m。 ここから約180m下るのである。
だが、その下りといったら猛烈な傾斜で、登り返し時はハイマツやササの葉をつかみながらの急登となる。
しかも、今日は雨。 足元はヌルヌルの泥状となった土手である。 こんなに最悪のロケーションは、普通の山のルートなら滅多にない事であるが、『日高』は別である。 日高山域の夏は、太平洋の湿気を含む風がまともにぶつかるため降水量が多く、3日行程だと1日は雨を覚悟せねばならない。 低気圧や前線付の雨の場合は何日も降り続き、最悪は増水による沢での“缶詰”も有り得るのだ。 ヌルヌルの土手をハイマツをつかみながら下って、吊り尾根の低点部に降りる。
エゾウサギギク 近づく事の出来ないお花畑
そこには、支稜線唯一の“見る事のできる”お花畑があり、エゾウサギギクやミヤマリンドウなどが咲き競っていた。 僅か50mの“幸せ”を過ぎると、今度はハイマツに加えて潅木の混合ブッシュが全身を叩くようになる。 もう、手や顔、膝や脛は、“ミミズ腫れ”のオンパレードだ。 雨のブッシュの中では展望も何もなく、今自分がどこにいるのかも把握できなくなる。
ブッシュによる“叩き”と雨露の“ぶっかけ”攻撃によって、徒に時間を弄していく。 “幾つの上下を繰り返したか・・”、“もう2時間位は歩いたか・・(もう、時計を見るのも億劫である)”と思う頃、ようやく1839峰寄りの小ピークの登りに差しかかる。 これを約120mの急登で乗り越えると、展望の利きそうなハイマツの丘の上に出る。
ウメバチソウ キンポウゲ
しかし、今現在の心情としては展望も欲しいが、それよりも1839峰の頂上標が見たいという事である。
裏を返せは、“ここが頂上なら、どんなに幸せだろう”という事である。 もちろん、雨ゆえに展望もなく、1839峰頂上到着の夢も幻と消えて、濃い雲に裾以外を全て隠された1839峰がドンと立ちはばかっている。
小ピークより少したわんでから、1839峰に向けて残り120mの急登だ。 この急登の傾斜具合は半端ではなく、草や枝はおろか、掘り返された土や草の根をつかんでのよじ登りとなる。
しかし、今現在の心情としては展望も欲しいが、それよりも1839峰の頂上標が見たいという事である。
裏を返せは、“ここが頂上なら、どんなに幸せだろう”という事である。 もちろん、雨ゆえに展望もなく、1839峰頂上到着の夢も幻と消えて、濃い雲に裾以外を全て隠された1839峰がドンと立ちはばかっている。
小ピークより少したわんでから、1839峰に向けて残り120mの急登だ。 この急登の傾斜具合は半端ではなく、草や枝はおろか、掘り返された土や草の根をつかんでのよじ登りとなる。
雨中だと、2~3度の滑り転落も有り得るだろう。
この急登を乗り越えると、ハイマツの先に小さなサークルがある。 その中央に、『1839峰・1842m』と記したプラカードが置いてある。 国境稜線から離れていて、懐深い日高の山なみを魅せる・・という1839峰の頂上も雨ゆえに何も見えず、ただ狭いサークルに雨が降りしきるだけであった。
今回はこのショットのみ
『1839峰・1842m』
しかし、何もないという訳ではない。 そうなのだ。 “苦難を乗り越えてやって来たんだ”という興奮がある。 抑えても湧き上がる心の高揚がある。 そしてこれらは、極めた者にとっての『自信』という芽となり幹となるだろう。 雨の中、“アリバイ写真”を撮って、今度は快晴の時に本当の魅力を魅せてもらう“約束”をして頂上を後にする。
次こそ、その頂からの魅力を
存分に味わいたい
存分に味わいたい
当然の事であるが、帰りも猛烈なブッシュに悩まされる。 ただ、往路で一度通ったので、“どこに何がある”というのが判っているのが心強い。 ただ、1839峰直下の下りは、上りより下りが足場を探すのに厄介だ。 また最初に記したように、ヤオロ寄りの小ピークの登りも、1839峰の頂上直下ばりの草つかみ、根つかみの急登となる。
悪戦苦闘の末、ヤオロのテントサイトに戻ったのは昼の12時半。 何と、往復に7時間半かかった事になる。 雨という事を差し引いても、ガイド本の記する『行き2時間半・帰り2時間』は到底無理だろう。
時計と今の疲れ具合を推し量ると、ここで連泊したい衝動にかられるが、行程計画上大きなマイナスとなるので、テントを撤収してヤオロマップ岳を後にしよう。
悪戦苦闘の末、ヤオロのテントサイトに戻ったのは昼の12時半。 何と、往復に7時間半かかった事になる。 雨という事を差し引いても、ガイド本の記する『行き2時間半・帰り2時間』は到底無理だろう。
時計と今の疲れ具合を推し量ると、ここで連泊したい衝動にかられるが、行程計画上大きなマイナスとなるので、テントを撤収してヤオロマップ岳を後にしよう。
今回はこれより南は見送りだ
ヤオロマップより南日高を望む
ヤオロマップより南日高を望む
〔昨日の夕景〕
言い忘れたが、今日の幕営地《コイカク・夏尾根ノ頭》は水を得る事ができないので、前日到着時点で水は本日分も補給しておこう。 今から補給すると、それだけロスとなる。 コイカク岳へは往路を戻るだけだが、1839峰程ではないものの、やはりブッシュに叩かれる。 特に、最低鞍部からコイカク岳への登りは、通路に並ぶハイマツによって全身を叩かれるだろう。
コイカクシュサツナイ岳より望む
奥深き日高の山なみ
奥深き日高の山なみ
整備された登山ルートの標高差160mなど、ものの30分もあればこなせるが、一歩一歩ハイマツに行く手を阻まれるここでは、裕に1時間を要するだろう。 結局、3時間かかってコイカク岳へ。
やはり、このスパンもみっちり3時間かかってしまった。 今日も1839峰往復の2スパンでの7時間を加えて、都合10時間超の超ハード行程となってしまった。
『日高』とは理不尽な所
こんなに雨が降るのに
こんなに雨が降るのに
稜線で水が得れぬとは・・
・・10時間以上もかかってしまっては、もう先には行けないだろう。 当初の計画では、《上二俣》まで下る(上二俣では水を使い放題である)予定であったが到底無理なので、今日はコイカク岳の《夏尾根ノ頭》で幕営する事にしよう。 ここは水はないが、比較的平坦で状態の良いテントサイトが4~5張り分あり、水さえ担いでくれば快適な一夜を過せるだろう。
名もない山も重厚な趣を魅せる
《3日目》 コイカクシュサツナイ沢を下山
下りは往路を忠実に下るので、夏山であればとくに問題はない。 雨後で心配された沢の水量もほとんど通常と変わらず、問題なく表記時間通りに下る事ができた。 この日は、夏尾根を下り終えて沢に入ると天候も回復してきたので、夏の沢歩きを往路と共に楽しむ事ができた。
さて、始めの勢いで、この難関たる中部日高の名峰めぐりを記載したが、どうやらこのコースは相当の猛者や経験者でないと難しいかもしれない。 この『日本百景』の記載コンセプトの一つに、“ワテでも行ける所なら、一般の人でも探訪可能である”とあるが、このコースやカムイエクウチカウシ山のルートは、一般の人には荷が重過ぎるかもしれない。
下りは往路を忠実に下るので、夏山であればとくに問題はない。 雨後で心配された沢の水量もほとんど通常と変わらず、問題なく表記時間通りに下る事ができた。 この日は、夏尾根を下り終えて沢に入ると天候も回復してきたので、夏の沢歩きを往路と共に楽しむ事ができた。
さて、始めの勢いで、この難関たる中部日高の名峰めぐりを記載したが、どうやらこのコースは相当の猛者や経験者でないと難しいかもしれない。 この『日本百景』の記載コンセプトの一つに、“ワテでも行ける所なら、一般の人でも探訪可能である”とあるが、このコースやカムイエクウチカウシ山のルートは、一般の人には荷が重過ぎるかもしれない。
憧れの山に登って
その体験記を語りたいという思い
それがこの記述文の根幹だ
中央はカムエク、右端が1839峰
北日高・1967峰にて
しかし、『日高』を紹介するならできるだけ広範囲に、そして魅力にあふれ、“憧れ”や“遙かなる”名峰たちを余す事なく御披露したい・・との考えが勝ったのが事実である。 いや、“御披露したい”というより、“自分が行ってみたい”、そして、“その峰の魅力を実際に見て語りたい”という自分自身のエゴが勝ったのが事実である。 それゆえ、自分自身の考えを押し通した見苦しい文章となっている事だと思う。
しかし、この文章の重要なコンセプトとして、“ワテが思い、ワテが憧れ、ワテが認めた景色を自分自身の足で訪れ、そしてその眼で見て語る”という思想がある。 その思いを、ワテの思いの記述所であるこの場所で、自らの思いのまま語り続けていきたいと思う。
しかし、この文章の重要なコンセプトとして、“ワテが思い、ワテが憧れ、ワテが認めた景色を自分自身の足で訪れ、そしてその眼で見て語る”という思想がある。 その思いを、ワテの思いの記述所であるこの場所で、自らの思いのまま語り続けていきたいと思う。
『日高』よ・・
ひとまずサラバ
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