2012-06-23 (Sat)✎
『日本百景』 夏 第8回 日高国境稜線と七ツ沼カール その2 〔北海道〕
夕日に染まる1967峰
北日高国境稜線 きたひだかこっきょうりょうせん (日高山脈襟裳国定公園)
前回では《1日目》の行程として、日高山域のパラダイスにて花の器である《七ッ沼カール》までの道中を記載した。 本日は、《七ッ沼カール》を出発して、標高が山名となった『日高』そのモノの峰・1967峰をめぐる『北日高国境稜線』の山々を山遊してみよう。
前回では《1日目》の行程として、日高山域のパラダイスにて花の器である《七ッ沼カール》までの道中を記載した。 本日は、《七ッ沼カール》を出発して、標高が山名となった『日高』そのモノの峰・1967峰をめぐる『北日高国境稜線』の山々を山遊してみよう。
(4:30)→北戸蔦別岳(1:20)→戸蔦別岳(0:50)→七ッ沼カール底
《2日目》 七ッ沼カール底(2:20)→北戸蔦別岳(2:20)→1967峰(2:20)→北戸蔦別岳
《3日目》 北戸蔦別岳(3:50)→北電・二岐沢取水ダム
《2日目》 七ッ沼カール底(2:20)→北戸蔦別岳(2:20)→1967峰(2:20)→北戸蔦別岳
《3日目》 北戸蔦別岳(3:50)→北電・二岐沢取水ダム
(0:50)→千呂露川・北電ゲートより車(0:50)→日高町市街
※ 《1日目》の七ッ沼カールまでの行程は
前回の『日高国境稜線と七ツ沼カール その1』を御覧ください。
《2日目》 国境稜線を伝って1967峰へ
今日の行程は、キツいといえばキツいかもしれない。 それは、この日の宿泊場所が、『国境稜線』上でのビバークとなるからである。 ビバークをするとなれば当然、一日に必要な水を持ち運ばねばならない。
今日の行程は、キツいといえばキツいかもしれない。 それは、この日の宿泊場所が、『国境稜線』上でのビバークとなるからである。 ビバークをするとなれば当然、一日に必要な水を持ち運ばねばならない。
その事を想定して進んでいこう。
・・北海道の夏山の朝はすごぶる早い。 夏至に近ければ、3時過ぎには日の出となっている。
もう、5時を過ぎると、“夜明け”というイメージは飛んでしまうかもしれない。 グズグスしていると、朝の景色も撮れぬままの出発ともなりかねない。 従って、5時には出発したいものである。
さて、先程の“お約束”通り1日分の水を汲んでから、カール底を出発しよう。 水をプラスしての装備一式で猛烈な急坂であるカール壁の登りを強いられると、確実に足にくるだろう。 朝っぱらから、かなりの体力を使う事になるので覚悟しておこう。
・・北海道の夏山の朝はすごぶる早い。 夏至に近ければ、3時過ぎには日の出となっている。
もう、5時を過ぎると、“夜明け”というイメージは飛んでしまうかもしれない。 グズグスしていると、朝の景色も撮れぬままの出発ともなりかねない。 従って、5時には出発したいものである。
さて、先程の“お約束”通り1日分の水を汲んでから、カール底を出発しよう。 水をプラスしての装備一式で猛烈な急坂であるカール壁の登りを強いられると、確実に足にくるだろう。 朝っぱらから、かなりの体力を使う事になるので覚悟しておこう。
カール壁までの標高差100mを登りつめて上にでると、エゾノハクサンイチゲの群落と《七ッ沼カール》の湖沼群のおりなす朝景色が息を整えてくれる事だろう。 ひと息着いたなら、戸蔦別岳への250mのイッキ登りを始めよう。
振り返れば、登るごとに足下に広がる《七ッ沼カール》の情景。 ここは、“カメラ片手に”と行きたい所だが、そういう余裕もないだろう。 とにかく、水を含めて20数㎏となったザックを担いで一歩づつ登りつめる苦しい1時間だ。 登りつめた戸蔦別岳からは、幌尻岳と《七ッ沼カール》が見渡せるが、朝方は逆光で少しくすんでいる。
この先も長いので、休憩も程々に先に進もう。 ここから北戸蔦別岳の頂上までは昨日に通ったルートの逆を行くだけなので、前回を参照頂きたい。 逆ルートを歩いた感想としては、北戸蔦別岳の登りは結構キツかった・・という事だろうか。
さて、北戸蔦別岳の頂上であるが、私はこの場所を本日のビバーク地としたのである。
それは、1967峰の稜線までにテントが張れるサイトは、確認しているものでは1967峰の頂上直下のみで、この先20数kgを担いでの『国境稜線』の未踏区間歩きを敬遠した為である。 ワテはこのようにしたが、テント設営場所は各自で決定頂きたい。
それは、1967峰の稜線までにテントが張れるサイトは、確認しているものでは1967峰の頂上直下のみで、この先20数kgを担いでの『国境稜線』の未踏区間歩きを敬遠した為である。 ワテはこのようにしたが、テント設営場所は各自で決定頂きたい。
さて、テントを設営した後、中に荷物をデポって行動水とカメラなどの“ピストン行程”装備を準備したなら出発だ。 目指すは、<1>項目で抱いたイメージとは全く逆の“骨っぽい”岩峰・1967峰だ。
北戸蔦別岳より、ハイマツと岩が混成した細い稜線上をいく。 昨日ヌカビラ岳より見上げた時はスラッとした細身に見えた北戸蔦別岳であるが、歩いてみると大きな台形を成しているのが判るであろう。
北戸蔦別岳より、ハイマツと岩が混成した細い稜線上をいく。 昨日ヌカビラ岳より見上げた時はスラッとした細身に見えた北戸蔦別岳であるが、歩いてみると大きな台形を成しているのが判るであろう。
この台形の山を端までつめると、ハイマツの中を急下降するようになる。 本当に台形の山なのだ。
ハイマツの根をつかみながら下っていくと《十勝》側に移り、《戸蔦別川》の源流谷へ向かって山肌を巻きながら下っていく。 この山肌を巻くようにつけられた道だが、これがまた細く、しかも潅木のブッシュ帯で歩き辛い事おびただしい。 もちろん、ここで踏み外すと、《戸蔦別川》の源流谷へ向かっての“ダイビング”となるのは必定である。
山肌の“ヘツリ”を潅木の枝伝いにトラバースしていくと、1967峰と北戸蔦別岳の間の最低鞍部に下り着く。 ここでひとまず難所は乗りきる事になるが、本日はピストン行程なので、帰りにもこの難所を通らねばならないのは言うまでもない。
ハイマツの根をつかみながら下っていくと《十勝》側に移り、《戸蔦別川》の源流谷へ向かって山肌を巻きながら下っていく。 この山肌を巻くようにつけられた道だが、これがまた細く、しかも潅木のブッシュ帯で歩き辛い事おびただしい。 もちろん、ここで踏み外すと、《戸蔦別川》の源流谷へ向かっての“ダイビング”となるのは必定である。
山肌の“ヘツリ”を潅木の枝伝いにトラバースしていくと、1967峰と北戸蔦別岳の間の最低鞍部に下り着く。 ここでひとまず難所は乗りきる事になるが、本日はピストン行程なので、帰りにもこの難所を通らねばならないのは言うまでもない。
最低鞍部よりは、ハイマツの中を急登していく。 だが、これは距離が短く、途中からはお花畑の緩やかな道となる。 お花畑の中を伝っていくと、展望の利く広い丘の上に出る。 ひと息着くとしたなら、この辺りがいいだろう。 ここはビバークサイトとしてはいいみたいであるが、ここも日高山系の宿命通り“水”はない。
この丘よりは、1967峰の前衛峰となる1856m標高点(容姿は山のピークそのものなのだが、山としては認められていないみたいである)までの急登となる。 岩と砂利交じりの斜面を200m近く登りつめると、ようやく1967峰が眼前にそびえるようになる。
この1856m標高点よりは、1967峰へ続くか細い岩稜を伝うようになる。 1967峰への取付手前は特にか細くなっているので、踏み外さぬよう注意が必要だ。 1967峰へ取り付くと、本州の山では確実に鎖が設置されるであろう岩峰の登攀となる。
登りは大した事はないのだが、帰りはこれを下る事となるので少々厄介だ。 岩をホールドしながらこれを登りつめると、テント1張のみ可能なビバークサイトが見えてくる。 これが見えれば、頂上まであと30mだ。
登りは大した事はないのだが、帰りはこれを下る事となるので少々厄介だ。 岩をホールドしながらこれを登りつめると、テント1張のみ可能なビバークサイトが見えてくる。 これが見えれば、頂上まであと30mだ。
1967m無名峰の頂上にて
戸蔦別の双子のカールと幌尻岳
カムエク・1839峰・・
憧れの峰が手に取るように
憧れの峰が手に取るように
1967峰の頂上には頂を示す板キレがあるだけだが、展望は折り紙付だ。 いつまでも望んでいたい思いであるが、空身ピストン行程ゆえに頃合を見て引き返そう。 帰りも往路を行くのだが、対峙する北戸蔦別岳まで2時間半かかるので、タイムスケジュールは常に考えておこう。
絶景の展望地を今夜の窩とす
また帰りも、『日高』では“一級国道”とはいえ、3ヶ所の難所越えがあるので気は抜けない。
北戸蔦別岳に戻る頃には、もう午後2~3時になっている事だろう。 今日はキツい行程であったので、またとない山頂での夕暮れシーンを見届けたなら、早めに休む事にしよう。
夕日に染まるイワウメ
黄色の花が夕日で輝く“宝石”となる
憧れの峰々も雲海と共に染まって
強い斜光線の悪戯
《3日目》 二岐沢出合へ下山
北の国の朝は早い。 日の出までに目覚めるのはちょっと困難だ。 この時は3:15に目覚めたのだが、もう既に日の出は終わっていた。 昨日、心ゆくまで夕日を望んだので、“良し”としよう。
北の国の朝は早い。 日の出までに目覚めるのはちょっと困難だ。 この時は3:15に目覚めたのだが、もう既に日の出は終わっていた。 昨日、心ゆくまで夕日を望んだので、“良し”としよう。
朝の眺めも捨て難い
さて、4時に床を出て、5時には出発しよう。 下山といえども、“早出早着”は山のセオリーである。
なお、朝の準備では、“持ち水”を飲み干さぬようにしたい。 飲み干してしまうと、《トッタの泉》まで水の補給がきかぬまま歩くハメとなるのである。
余談ではあるが、私は《七ッ沼カール》より3.5㍑の水を持ち運び、“行動水”として前日に1.5㍑消費して、残りの内の1.3㍑を夕・朝の2食に充てた。 そして、残りの0.7㍑を“下山の行動水”とするのである。
なお、朝の準備では、“持ち水”を飲み干さぬようにしたい。 飲み干してしまうと、《トッタの泉》まで水の補給がきかぬまま歩くハメとなるのである。
余談ではあるが、私は《七ッ沼カール》より3.5㍑の水を持ち運び、“行動水”として前日に1.5㍑消費して、残りの内の1.3㍑を夕・朝の2食に充てた。 そして、残りの0.7㍑を“下山の行動水”とするのである。
この割り振りは各自で決める事であるが、この決定には何といっても“経験”がものをいう。
自分の体力、1日の幕営生活に必要な水の量、自身の1日の行程に対する必要な“行動水”の量、次に確実に補給できる水場までの距離、水の補給が適うまでの時間、これら全てを把握して緻密に計算せねばならないからだ。 それと共に、水を1㍑担ぐという事は1kg荷重が重むという事も。
この事も絡めて、目的地まで担いで歩ける自分の体力の限界も把握せねばならないのだ。
これらの事から、「日高は、ただキツイだけの山ではない」という事を汲み取っていただければ幸いである。 しかし、困難を敬遠しているだけでは何も始まらない。 困難を乗り越えた先には、山は必ず答えを出してくれるのだから。
自分の体力、1日の幕営生活に必要な水の量、自身の1日の行程に対する必要な“行動水”の量、次に確実に補給できる水場までの距離、水の補給が適うまでの時間、これら全てを把握して緻密に計算せねばならないからだ。 それと共に、水を1㍑担ぐという事は1kg荷重が重むという事も。
この事も絡めて、目的地まで担いで歩ける自分の体力の限界も把握せねばならないのだ。
これらの事から、「日高は、ただキツイだけの山ではない」という事を汲み取っていただければ幸いである。 しかし、困難を敬遠しているだけでは何も始まらない。 困難を乗り越えた先には、山は必ず答えを出してくれるのだから。
下山ルートは《1日目》のルートを下っていくので特に記述する事はないが、道中はかなり急なので足を挫かぬように注意しよう。 5時に北戸蔦別岳を出発したなら、ヌカビラ岳の肩で山の朝景がギリギリ狙えよう(6時を過ぎると、もう日は高くなっている)。 また、最後は沢の徒渉もあるので、最後まで気は抜けない。 下山を終えて、ゲートを越えて、林道をマイカーで戻り、《日高》の街でひと風呂浴びる時に初めてホッとひと息着く事にしよう。
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