2012-06-20 (Wed)✎
『日本百景』 夏 第7回 日高国境稜線と七ツ沼カール その1 〔北海道〕
国境稜線を望む
北日高国境稜線 きたひだかこっきょうりょうせん (日高山脈襟裳国定公園)
未開の山『日高』。 そこに一歩踏み入れると、誰もが虜になる不思議な力を持つ山域『日高』。
だが、この『日高』はアプローチ手段もなく、未開ゆえに満足な登山道もなく、そう易々とは受け入れてはくれない所でもあるのだ。 しかし、その困難なルートを突き破って『国境稜線』に立つと、“憧れ”を思い存分味わう事ができるのである。
氷河遺跡であるカール群、豊富な高山植物、未開の山域でのみ生きる事ができる小動物たち、自然を育む最高の水。 これらに囲まれて、夢の一夜を明かし、空がスペクトルに輝く“生まれたての朝”を望むことは、山を志す者にとって“憧れ”を実感できる至福の瞬間なのである。 さあ、この“憧れ”を体感すべく、しっかりと山の準備をして『日高』の『国境稜線』へチャレンジしてみよう。
未開の山『日高』。 そこに一歩踏み入れると、誰もが虜になる不思議な力を持つ山域『日高』。
だが、この『日高』はアプローチ手段もなく、未開ゆえに満足な登山道もなく、そう易々とは受け入れてはくれない所でもあるのだ。 しかし、その困難なルートを突き破って『国境稜線』に立つと、“憧れ”を思い存分味わう事ができるのである。
氷河遺跡であるカール群、豊富な高山植物、未開の山域でのみ生きる事ができる小動物たち、自然を育む最高の水。 これらに囲まれて、夢の一夜を明かし、空がスペクトルに輝く“生まれたての朝”を望むことは、山を志す者にとって“憧れ”を実感できる至福の瞬間なのである。 さあ、この“憧れ”を体感すべく、しっかりと山の準備をして『日高』の『国境稜線』へチャレンジしてみよう。
北日高国境稜線・二岐沢ルート行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 日高町市街より車(0:50)→千呂露川・北電ゲート
《1日目》 日高町市街より車(0:50)→千呂露川・北電ゲート
(0:50)→北電・二岐沢取水ダム(4:30)→北戸蔦別岳(1:20)→戸蔦別岳
(0:50)→七ッ沼カール底
《2日目》 七ッ沼カール底(2:20)→北戸蔦別岳(2:20)→1967峰(2:20)→北戸蔦別岳
《3日目》 北戸蔦別岳(3:50)→北電・二岐沢取水ダム(0:50)→千呂露川・北電ゲートより車
(0:50)→日高町市街
《2日目》 七ッ沼カール底(2:20)→北戸蔦別岳(2:20)→1967峰(2:20)→北戸蔦別岳
《3日目》 北戸蔦別岳(3:50)→北電・二岐沢取水ダム(0:50)→千呂露川・北電ゲートより車
(0:50)→日高町市街
《1日目》 二岐沢より北戸蔦別岳・七ッ沼カールへ
さて、この項目では、サブルートの《二岐沢》より登って『北日高国境稜線』を踏破しようと思う。
行程表では《日高町》よりスタートとなっているが、これは便宜的事例に過ぎないので、『日高』の山に登る時の“お約束”はきっちりと果たさねばならない。 それは、いうまでもなく、前日アプローチの早朝出発だ。
《千呂露川・北電ゲート》前は車5~6台の駐車が可能で、その場で幕営すると車中よりよく眠れるだろう。 このルートは元より『北日高国境稜線』上は山小屋など全くないので、幕営山行は絶対条件となる。 “慣らし”の意味でも、明日のキツい行程の為にもこれがベターであろう。 それでは出発しよう。
行程表では《日高町》よりスタートとなっているが、これは便宜的事例に過ぎないので、『日高』の山に登る時の“お約束”はきっちりと果たさねばならない。 それは、いうまでもなく、前日アプローチの早朝出発だ。
《千呂露川・北電ゲート》前は車5~6台の駐車が可能で、その場で幕営すると車中よりよく眠れるだろう。 このルートは元より『北日高国境稜線』上は山小屋など全くないので、幕営山行は絶対条件となる。 “慣らし”の意味でも、明日のキツい行程の為にもこれがベターであろう。 それでは出発しよう。
雲海に浮かぶ
日高の名峰群を見に行こう
“遙かなる”という言葉を
イメージさせる眺めが広がる
さて、ルートであるが、《北電・取水ダム》までは車も通れる砂利道を行く。 距離にして3km程である。 やがて、《取水ダム》が現れ、これより沢沿いの密林帯に入っていく。 大きなハスの葉が鬱蒼と生い茂る細い踏跡を伝っていく。 ハスの葉には夜露が溜まっていて、触れるとベチョベチョに濡れてしまうので注意しよう。 1時間近く歩くと鬱蒼とした森から抜け出して、明るい沢の出合に出る。
《二岐沢・二俣》である。
ルートは、これより右の沢に入っていく。 もちろん、これより徒渉の領域となる。 沢歩きとしては極々簡単なもので、空身であれば石を飛び伝う事で靴を濡らさずに行けるレベルなのだが、幕営装備を担いで・・となるとそうもいかない。 踏み外して足でも挫くととんでもない事になるので、徒渉靴に履き替えた方がベターだ。
ルートは概ね沢の伏流につけられていて徒渉靴ではもったいない位であるが、数ヶ所沢を跨ぐ所もあるので、膝への負担を考えながらいこう。 やがて、30m位のナメ滝が現れると、いよいよヌカビラ岳から『北日高国境稜線』への取付となる。 30mの滝の最上部を横目に見ながら沢を渡って対岸の土手に取り付くのだが、この土手の傾斜が半端ではないので要注意だ。 幕営装備持ちだと、最初の一歩が踏み出せないのである。 言い方は多少オーバーだが、見た感じは多分このように感じるだろう。
そして、登りきった土手の上で見下ろすと、“よく這い上がれたもんだ”と感心する事だろう。
だが、これは最初だけではないのだ。 取付よりはマシになるが、猛烈な急登でふくら脛が破裂する思いを味わう事になる。 重い荷物を担いでいると、尚更である。 1時間半程の急登で肉体的な疲労を感じ始める頃、ちょっとした幸福が眼前に現れる。 《トッタの泉》と呼ばれる岩清水である。
水量はチョロチョロで2㍑汲むにも5分位かかるが、冷たく美味しい岩清水で生気を取り戻す事ができるだろう。 また、水を担ぎ上げるのが定めの『日高』山域において、途中までではあるが水の重さより解放されるのも有り難い。 だが、過信は禁物。 努々、この《トッタの泉》の存在をアテにし過ぎて、水を一切持たぬ・・という愚行はせぬように。 さて、本日の行程は水のある《七ッ沼カール底》までなので、行動水を満タンにしたなら先に進もう。
ルートは、これより右の沢に入っていく。 もちろん、これより徒渉の領域となる。 沢歩きとしては極々簡単なもので、空身であれば石を飛び伝う事で靴を濡らさずに行けるレベルなのだが、幕営装備を担いで・・となるとそうもいかない。 踏み外して足でも挫くととんでもない事になるので、徒渉靴に履き替えた方がベターだ。
ルートは概ね沢の伏流につけられていて徒渉靴ではもったいない位であるが、数ヶ所沢を跨ぐ所もあるので、膝への負担を考えながらいこう。 やがて、30m位のナメ滝が現れると、いよいよヌカビラ岳から『北日高国境稜線』への取付となる。 30mの滝の最上部を横目に見ながら沢を渡って対岸の土手に取り付くのだが、この土手の傾斜が半端ではないので要注意だ。 幕営装備持ちだと、最初の一歩が踏み出せないのである。 言い方は多少オーバーだが、見た感じは多分このように感じるだろう。
そして、登りきった土手の上で見下ろすと、“よく這い上がれたもんだ”と感心する事だろう。
だが、これは最初だけではないのだ。 取付よりはマシになるが、猛烈な急登でふくら脛が破裂する思いを味わう事になる。 重い荷物を担いでいると、尚更である。 1時間半程の急登で肉体的な疲労を感じ始める頃、ちょっとした幸福が眼前に現れる。 《トッタの泉》と呼ばれる岩清水である。
水量はチョロチョロで2㍑汲むにも5分位かかるが、冷たく美味しい岩清水で生気を取り戻す事ができるだろう。 また、水を担ぎ上げるのが定めの『日高』山域において、途中までではあるが水の重さより解放されるのも有り難い。 だが、過信は禁物。 努々、この《トッタの泉》の存在をアテにし過ぎて、水を一切持たぬ・・という愚行はせぬように。 さて、本日の行程は水のある《七ッ沼カール底》までなので、行動水を満タンにしたなら先に進もう。
ヌカビラ岳の肩より望む
幌尻岳北カール
《トッタの泉》よりも、相変わらずの急登が続く。 1時間弱この急登を辛抱すると樹林帯を抜け出して、巨大なヌカピラ岳の黒々とした山体が視界に入ってくる。 この巨大な山体の右縁を伝うように斜めに迫り上がっていくと、眼前にそびえる巨大な岩塔が近づいてきて、やかて行く手を塞ぐようになる。
この岩塔を巻きながらよじ登り、岩塔の割れ目のルンゼを這い上がると、『日高』の素晴らしき風景が視界に入ってくるだろう。 ヌカビラ岳の肩に出たのだ。 ヌカビラ岳の肩は広い草付きとなっていて、休憩と行動食を取るには持って来いの所だ。 幌尻岳と《北カール》、そして最初の目的地の北戸蔦別岳の眺めを望みながら、“山の民”だけが味わえる贅沢なひとときを過ごそう。
さて、この肩からは、目の前の高みに一投足でヌカビラ岳 1808メートル の頂上だ。
しかし、この山頂は展望・環境とも先程の肩より劣る(周りは、潅木やハイマツが茂り始めている)ので、休憩は断然に肩の方がいいだろう。
ヌカビラ岳の頂上よりは、ハイマツのブッシュを縫うように一旦下って、北戸蔦別岳のスラッとした砂利敷の傾斜をつめていくだけだ。 肩から30分もあれば登りきれるだろう。 たどり着いた北戸蔦別岳 1912メートル の頂上は、正に“パラダイス”である。 キジムシロやエゾノハクサンイチゲ・イワウメなどの花々が斜面いっぱいに所狭し・・と咲き乱れ、そして展望は、ヌカビラ岳の肩のそれを遙かに凌ぐ素晴らしい情景が広がるのだ。
ヌカビラ岳の頂上よりは、ハイマツのブッシュを縫うように一旦下って、北戸蔦別岳のスラッとした砂利敷の傾斜をつめていくだけだ。 肩から30分もあれば登りきれるだろう。 たどり着いた北戸蔦別岳 1912メートル の頂上は、正に“パラダイス”である。 キジムシロやエゾノハクサンイチゲ・イワウメなどの花々が斜面いっぱいに所狭し・・と咲き乱れ、そして展望は、ヌカビラ岳の肩のそれを遙かに凌ぐ素晴らしい情景が広がるのだ。
戸蔦別岳と幌尻岳
幌尻岳、そして《北カール》、戸蔦別岳とエサオマントッタベツ岳、戸蔦別のA・B2つのカールを挟んで対面にそびえる伏美岳・ピパイロ岳からの『北日高国境稜線』。 眼の位置を右に振ると、憧れのカムエクや1839峰などの『中部日高』の雄峰が遙か向こうの空に浮かんでいる。 そして、今回の目的である1967峰へのルートもハッキリと見渡せる。
幌尻岳、そして《北カール》、戸蔦別岳とエサオマントッタベツ岳、戸蔦別のA・B2つのカールを挟んで対面にそびえる伏美岳・ピパイロ岳からの『北日高国境稜線』。 眼の位置を右に振ると、憧れのカムエクや1839峰などの『中部日高』の雄峰が遙か向こうの空に浮かんでいる。 そして、今回の目的である1967峰へのルートもハッキリと見渡せる。
思った以上に岩でゴツゴツした骨っぽい山容に、伏美側から仰ぎ見た斜面いっぱいのお花畑を抱く1967峰の優しいイメージとのギャップが生じる。 まぁ、その両面性のある名峰・1967峰は、明日のお楽しみ・・としよう。
ここから先は明日のお楽しみ
北戸蔦別にて
さすがに、これ程の情景を情景を魅せられると、大きく休憩を取ってしまう。 私も1時間以上、ここで楽しんでしまったクチである。 だが、いつまでもグズグスはしていられない。 持ち水(たぶん、行動水のみであろう)の事を考えると、どうしても水のある《七ッ沼カール底》へ行かねばならないのである。
北戸蔦別岳より望む戸蔦別岳は指呼の間のように間近にそびえるが、実際たどるとなると結構な距離である。 北戸蔦別岳からは250m下って1881m峰との鞍部に立ち、本州の山なら鎖が処置される程の結構な岩場(岩場を想定していなかっただけに、いきなりの感があって戸惑う)をヘツリながら登って1881峰に立つ。
北戸蔦別岳より望む戸蔦別岳は指呼の間のように間近にそびえるが、実際たどるとなると結構な距離である。 北戸蔦別岳からは250m下って1881m峰との鞍部に立ち、本州の山なら鎖が処置される程の結構な岩場(岩場を想定していなかっただけに、いきなりの感があって戸惑う)をヘツリながら登って1881峰に立つ。
北戸蔦別岳の頂で北日高の盟主を望む
戸蔦別岳と幌尻岳・北カール
1881峰の頂上には木が1本立ち、それに頂上である事が記してある。 これは、北戸蔦別岳の山頂表示よりも“格上”だ(北戸蔦別岳は、カマボコ板にも満たない小さな木切れにマジックで“北戸蔦別岳”と記されてあっただけで、しかもその木切れは岩の間に隠されていた)。
これを越えると10mほど岩場を下って、《幌尻山荘》への《降り口分岐》を経てから戸蔦別岳に取り付いていく。 約100m程の登りだ。 1日で最も暑い時に登るこの100mに、かなりの疲労を感じる事だろう。
七ッ沼カールと
日高の山なみ
登り着いた戸蔦別岳 1959メートル からは、《七ッ沼カール》が見下ろせる。 今まで振り返り見る事でしかなかった《七ッ沼カール》を見下ろしながら下っていくのも、また違った趣がある。
美しい三角錐を示す
戸蔦別岳に魅せられて
ハクサンイチゲの群落の先に広がる
カールに下りていこう
やがて、カールの踏跡へ。 辺りは、エゾノハクサンイチゲが咲き乱れている。 花々に彩られた文字通りの“花道”を伝ってカール底へ。 但し、結構な急傾斜なので、花に見とれて足元が疎かにならぬように。
カール底に下り着くまでに、豊富な冷たい湧水が疲れ果てた体を癒してくれるだろう。 そして、カール底に広がる湖畔とお花畑の風景が、日頃の喧噪に疲れた心を癒してくれるだろう。 今日は心と体をゆっくりと癒すべく、カールでの一夜を結ぼう。
大自然がおりなすパラダイス
七ッ沼カールにて
真に自然の庭園
この地にたどり着いた感動
七ッ沼の畔にただ呆然と佇む
カール壁に群落をなす
エゾノハクサンイチゲ
エゾノツガザクラとチングルマ ヒダカビランジか?
沼の周りは花の楽園だ
今日は私だけのパラダイスにて
花の宴に酔いしれよう
感動の1日が暮れようとしている
だが明日もまた感動の眺めが待っている
続き『《2日目・3日目》行程』は、第8回の『北日高国境稜線と七ツ沼カール その2』にて
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