2012-06-05 (Tue)✎
名峰百選の山々 第60回 『100 宮之浦岳』 鹿児島県
屋久山系(霧島屋久国立公園) 1935m コース難度 ★★★ 体力度 ★★★
屋久島山岳周遊ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 屋久・宮之浦港よりタクシー(0:45)→白谷雲水峡(1:10)→白谷小屋
《2日目》 白谷小屋(1:10)→軌道出合(1:15)→大株歩道(0:30)→ウィルソン株
《2日目》 白谷小屋(1:10)→軌道出合(1:15)→大株歩道(0:30)→ウィルソン株
(1:30)→縄文杉(0:10)→高塚小屋(1:00)→新高塚小屋
《3日目》 新高塚小屋(2:10)→平石ノ岩屋(0:30)
《3日目》 新高塚小屋(2:10)→平石ノ岩屋(0:30)
焼野三叉路より永田岳往復 所要1時間30分
焼野三叉路(0:30)→宮之浦岳(1:30)→黒味岳分岐・黒味岳往復 所要約40分
黒味岳分岐(0:10)→花之江河(1:20)→淀川小屋
焼野三叉路(0:30)→宮之浦岳(1:30)→黒味岳分岐・黒味岳往復 所要約40分
黒味岳分岐(0:10)→花之江河(1:20)→淀川小屋
(0:50)→淀川登山口よりタクシー利用(1:00)→安房バス停よりバス
(0:45)→屋久・宮之浦港
《1日目》 白谷雲水峡より白谷小屋へ
宮之浦港より、タクシーで45分で《白谷雲水峡》の入口に着く。 プレハブの料金所に300円を払って、《雲水峡》の中に入る。 峡谷の左岸にあるコンクリートの階段を登っていくと、最初の屋久杉の大木・“弥生杉”が見えてくる。 やがて、渓谷沿いのコースと屋久杉の森林コースに道が分かれるが、いずれの道を取っても《楠川分れ》の吊橋の前で合流する。
樹齢三千年の
弥生杉がお出迎え
《楠川》に架かる吊橋を渡り、峡谷の右岸を伝っていく。 足下は苔むした岩がゴロゴロと転がって、山間部の降水量の多さを物語っている。 この道を45分程伝うと沢は勢いを失って小沢となり、この小沢を跨ぐと《白谷小屋》である。
この《白谷小屋》はかつて食事付の有人小屋だったらしく、こわれた額縁に料金表が掲げてあった。
しかし、今は寂れ果てて、コンクリート造の建物が冷たく感じて雰囲気が悪い。 このような訳で、天気が良ければテント幕営をお薦めしたい。 明日は早く出発しよう。
この《白谷小屋》はかつて食事付の有人小屋だったらしく、こわれた額縁に料金表が掲げてあった。
しかし、今は寂れ果てて、コンクリート造の建物が冷たく感じて雰囲気が悪い。 このような訳で、天気が良ければテント幕営をお薦めしたい。 明日は早く出発しよう。
独特な尖峰岩を突き上げる黒味岳
《2日目》 大株歩道を伝って縄文杉へ
朝、テントを出て、まずすべき事がある。 それは、全天における雲の占め具合の確認である。
この『屋久島』において、雲が全くない・・という事はまずあり得ない。 そして、『屋久島』における“快晴”とは、雲が全天の70%を占める位までを指すのである。 この調子で述べると、全くの曇天は“晴れ”、小雨交じりが“曇り”という事なのである。 ワテが登った時は、『屋久島』における超“快晴”であった。 しかし、これが2日と続かないのが『屋久島』の空なのである。
小屋を出発して縦走路に戻ると、《辻峠》への150mの登りだ。 まだ、気合十分で難なくこの登りをこなす。 《辻峠》からは、獣道のような枯草交じりの道をジグザグを切って急下降していく。
この坂を下りきった所が《軌道出合》だ。 ここからは、『屋久島森林軌道』の軌道跡(通称・トロ道)を1時間以上伝っていく。 途中に“三代杉”という、三重の株の郭の中から延びる大木もあった。
朝、テントを出て、まずすべき事がある。 それは、全天における雲の占め具合の確認である。
この『屋久島』において、雲が全くない・・という事はまずあり得ない。 そして、『屋久島』における“快晴”とは、雲が全天の70%を占める位までを指すのである。 この調子で述べると、全くの曇天は“晴れ”、小雨交じりが“曇り”という事なのである。 ワテが登った時は、『屋久島』における超“快晴”であった。 しかし、これが2日と続かないのが『屋久島』の空なのである。
小屋を出発して縦走路に戻ると、《辻峠》への150mの登りだ。 まだ、気合十分で難なくこの登りをこなす。 《辻峠》からは、獣道のような枯草交じりの道をジグザグを切って急下降していく。
この坂を下りきった所が《軌道出合》だ。 ここからは、『屋久島森林軌道』の軌道跡(通称・トロ道)を1時間以上伝っていく。 途中に“三代杉”という、三重の株の郭の中から延びる大木もあった。
杉並木に囲まれた森林軌道跡 トロ道の途中
“トロ道”を歩いていく 黒味岳の尖峰岩が姿を現す
このトロ道は、途中の橋梁部分がかなり朽ちていて迂回を余儀なくされる所もあるので、全くの気楽で・・という訳にはいかない。 それに長くてやや退屈だ。 所々に見える黒味岳の頂点に鎮座する奇岩を眺めて気分転換を図ろう。 軌道敷を距離にして3.5km、時間にして1時間強歩くと先の鉄橋が落ちていて、その行き止まりを告げるかのように『大株歩道・入口』と記された大きな立札が立てかけてある出合に着く。
この立札には《ウィルソン株》・《新高塚小屋》・宮之浦岳への距離と所要時間が記してあり、大変参考になる。 《大株歩道入口》からは、左の土手をハシゴを使って斜めに切るように登っていく。
少し登って密林の中に分け入り軌道跡が全く見えなくなると、“翁杉”と呼ばれる一本杉の巨木が見えてくる。
この杉は形が端正で“作品に”と狙ってみたのだが、どうやら光量不足で厳しいみたいである。
少し登って密林の中に分け入り軌道跡が全く見えなくなると、“翁杉”と呼ばれる一本杉の巨木が見えてくる。
この杉は形が端正で“作品に”と狙ってみたのだが、どうやら光量不足で厳しいみたいである。
“翁杉”を過ぎて15分程登ると、人が群れている木立の広場に出る。 その中央には、鳥居を前に祠る大きな株の郭がある。
鬱蒼とした森の中にある ウィルソン株の中は
ウィルソン株 都会のワンルームマンションより広い
ウィルソン株 都会のワンルームマンションより広い
推定樹齢五千年の《ウィルソン株》である。 鳥居と切株の門をくぐり、株の郭の中に入る。
株の中は八畳強はあり、都会のワンルームマンションより広い。 この中に入ると、都会が何かとせせこましいという事を実感できる。 この郭の中に流れ込んでいる“御神水”で力をつけて、再び登り始めよう。
《ウィルソン株》からは、ハシゴや階段が連続的となり、風も吹かぬ密林の中だけにかなり暑い。
《ウィルソン株》と《縄文杉》の中間地点には夫婦のように寄り添う2本の巨木・《夫婦杉》や、立っている巨木では《縄文杉》に次いでの老木・《大王杉》などが姿を現す。 登りのキツさでは、《大王杉》辺りが一番のヤマ場であろう。
《大王杉》の下にある休憩櫓で、大概の人がひと息を入れている。 《大王杉》を越える辺りに長いハシゴが連なり、これを登っていくと《縄文杉》から流れ出る小沢に出る。 見上げると、高々と櫓が立ちはばかっている。 度重なるハシゴの急登にいささかウンザリとしているだろうから、この櫓の出現はかなりコタえるのである。
約100段の階段は、直射日光が照りつけて暑い。 この階段を昇る前に、下の沢水で喉を潤しておいた方が良さそうだ。 汗をかきかき乗りきると、櫓の上の展望台に護られるように《縄文杉》が空に嗄れた大幹を伸ばしている。
株の中は八畳強はあり、都会のワンルームマンションより広い。 この中に入ると、都会が何かとせせこましいという事を実感できる。 この郭の中に流れ込んでいる“御神水”で力をつけて、再び登り始めよう。
《ウィルソン株》からは、ハシゴや階段が連続的となり、風も吹かぬ密林の中だけにかなり暑い。
《ウィルソン株》と《縄文杉》の中間地点には夫婦のように寄り添う2本の巨木・《夫婦杉》や、立っている巨木では《縄文杉》に次いでの老木・《大王杉》などが姿を現す。 登りのキツさでは、《大王杉》辺りが一番のヤマ場であろう。
《大王杉》の下にある休憩櫓で、大概の人がひと息を入れている。 《大王杉》を越える辺りに長いハシゴが連なり、これを登っていくと《縄文杉》から流れ出る小沢に出る。 見上げると、高々と櫓が立ちはばかっている。 度重なるハシゴの急登にいささかウンザリとしているだろうから、この櫓の出現はかなりコタえるのである。
約100段の階段は、直射日光が照りつけて暑い。 この階段を昇る前に、下の沢水で喉を潤しておいた方が良さそうだ。 汗をかきかき乗りきると、櫓の上の展望台に護られるように《縄文杉》が空に嗄れた大幹を伸ばしている。
どのように撮っても
グロテスクな縄文杉
その形相は、“凄い”というより“不気味”でさえある。 この《縄文杉》もどうにか作品にできないものか・・と色々とアングルを変えて迫ってみたが、不気味さ以外は全く表現し辛いのである。
まぁ、そうそう来れる場所でもないので、納得のいくまでアングルを探すといいだろう。
《縄文杉》の撮影を終えたなら、この櫓から10分位先の《高塚小屋》に向かおう。 自然保護の為、トイレはこの《高塚小屋》で願いたい。 この《高塚小屋》だが、宿泊は可能だが人気は今ひとつの様である。 それは、水場がトイレのそばと悪条件であるのと、あと1時間程頑張れば快適な《新高塚小屋》がある為であろう。
だが、上の《新高塚小屋》は大勢の登山者が押しかけて“すし詰め”状態となり、夜はほとんど眠れないという苦しみに遭うのである。 まぁ、一番いいのはテント持参でゆったりと眠る事であるが。
しかし、これも雨が降れば“地獄絵巻”と化する。
・・となると、これはかなりの考慮が必要だ。 しかし、これだけはいえる。 それは、これらに備えてどのようにも対応できるテント持参は強い・・という事だ。 こういう事を考えていると1時間はあっという間に過ぎ去り、《新高塚小屋》の水源を示す立札が目に入る。 ここからルンゼ状に掘れた坂を少し下っていくと、ウッデイハウスのような真新しい《新高塚小屋》に着く。
早朝5時に《白谷小屋》を出ると、昼までにたどり着く事だろう。 この時間ならば、まだ団体の登山客は来ていない。 もし、小屋泊スタイルで登るのなら、この時間帯に小屋に着いて場所を取らないと“玄関の登山靴の上で寝る”ハメとなるだろう。
2時から3時位になると、下から上から次々と登山客がやってくる。 この山の登山に最も適した季節である5月の連休ならば、40人の定員に150~200人の人が押し寄せるのである。 こうなると寝返りも打てなくなり、ロクに睡眠を取る事も適わぬだろう。 このような事態に遭遇した時が、テント一式を担いできた苦労が報われた・・と思う瞬間である
明日も晴天であって欲しいと願うのだが、こればっかりはどうしようもない。 下手すれば雷付の大雨となり、ここで停滞となるかもしれない。 “ひと月に32日雨が降る”といわれるこの『屋久島』では、十分に有得る事なのである。 それに備えて、予備日を1日設けておこう。
・・となると、これはかなりの考慮が必要だ。 しかし、これだけはいえる。 それは、これらに備えてどのようにも対応できるテント持参は強い・・という事だ。 こういう事を考えていると1時間はあっという間に過ぎ去り、《新高塚小屋》の水源を示す立札が目に入る。 ここからルンゼ状に掘れた坂を少し下っていくと、ウッデイハウスのような真新しい《新高塚小屋》に着く。
早朝5時に《白谷小屋》を出ると、昼までにたどり着く事だろう。 この時間ならば、まだ団体の登山客は来ていない。 もし、小屋泊スタイルで登るのなら、この時間帯に小屋に着いて場所を取らないと“玄関の登山靴の上で寝る”ハメとなるだろう。
2時から3時位になると、下から上から次々と登山客がやってくる。 この山の登山に最も適した季節である5月の連休ならば、40人の定員に150~200人の人が押し寄せるのである。 こうなると寝返りも打てなくなり、ロクに睡眠を取る事も適わぬだろう。 このような事態に遭遇した時が、テント一式を担いできた苦労が報われた・・と思う瞬間である
明日も晴天であって欲しいと願うのだが、こればっかりはどうしようもない。 下手すれば雷付の大雨となり、ここで停滞となるかもしれない。 “ひと月に32日雨が降る”といわれるこの『屋久島』では、十分に有得る事なのである。 それに備えて、予備日を1日設けておこう。
永田岳が姿を現した
《3日目》 九州最高峰・宮之浦岳へ
今日は、いよいよ“洋上アルプス”の頂点に立つ。 今日の行程はかなりハードなので、5時には出発できるようにしよう。 もし、1日停滞したならば(筆者は1日停滞した)、多少の雨でも出発せねばなるまい。 但し、雷が鳴っている時は自重しよう。 これは生命の危険に関ることなので、見極めには十分な注意が必要だ。
《第二展望台》で望んだあの崩壊地だ。 《平岩》のガレ場の横に、ササクレ立った岩が直立する奇抜な姿の永田岳がそびえ立つ。 そして、この《平岩》のガレ場の上部に、柔和な仏の顔を現した《仏面岩》がレリーフのようにはめ込まれている。 この傾斜をイッキに登っていくと、巨大な《平石ノ岩屋》が乗っかっている上部の丘に出る。 “岩屋”というだけあって、巨大な岩の下はどうにか雨風を凌げそうだ。
今日は、いよいよ“洋上アルプス”の頂点に立つ。 今日の行程はかなりハードなので、5時には出発できるようにしよう。 もし、1日停滞したならば(筆者は1日停滞した)、多少の雨でも出発せねばなるまい。 但し、雷が鳴っている時は自重しよう。 これは生命の危険に関ることなので、見極めには十分な注意が必要だ。
小屋からイバラが行く手を遮る道を登っていくと、約40分であまり展望の良くない《第一展望台》に登り着く。 かつては眺望が良かったのであろうが、今はイバラが方々に突き出して見通しは至って悪い。
《第一展望台》に立っている大岩を巻いてから、鞍部に向かって急下降していく。
《第一展望台》に立っている大岩を巻いてから、鞍部に向かって急下降していく。
第二展望台で
ようやく展望が開ける
一度下って、相変わらずのイバラ道を再び急登すると《第二展望台》だ。 ここは大きな岩が横たわっていて、この上に上がると宮之浦岳より南にそびえる山なみがよく見渡せる。 また、縦走路の平石付近の崩壊地も、粗々とした光景を魅せている。 だが、残念な事に、宮之浦岳は《平石》の崩壊地に隠れてまだその姿を現さない。
ここからはイバラ漕ぎからは解放されるものの、クマザサとひどいぬかるみ帯が行く手を遮る。
特に、ぬかるみは悩ませる存在だ。 長距離を歩く場合は、靴をできるだけ濡らさないのがセオリーだ。
しかし、このぬかるみでは、“無傷”では行けそうもない。 重い荷物を担いで水溜りを飛び越えるのも辛い。 この道はさほど急登である訳でもなく、取り立てて通過に苦難な所でもないが、こういうジレンマで結構時間がかかる。 やがて、《坊主岩》という大岩の基部を巻いて、《平石》への急登となる。
平石の高み
右にある大岩が“仏面岩”
《第二展望台》で望んだあの崩壊地だ。 《平岩》のガレ場の横に、ササクレ立った岩が直立する奇抜な姿の永田岳がそびえ立つ。 そして、この《平岩》のガレ場の上部に、柔和な仏の顔を現した《仏面岩》がレリーフのようにはめ込まれている。 この傾斜をイッキに登っていくと、巨大な《平石ノ岩屋》が乗っかっている上部の丘に出る。 “岩屋”というだけあって、巨大な岩の下はどうにか雨風を凌げそうだ。
平石の上でようやく
宮之浦岳が姿を現す
それよりも、この岩の上に立ってみよう。 目の前に広がるは、正に絶景だ。 豊かな節々を抱き、雄大な草原を頂点に突き上げる名峰・宮之浦岳が正面にそびえるのだ。 何と若々しく、力強い峰なのだろうか。 思わずうっとりしてしまう“艶かしい”姿を魅せている。 ここから、宮之浦岳と永田岳を分ける《焼野三叉路》まで30分の道程だ。 草原の風を味わいながら、ゆっくりと歩いていこう。
《焼野三叉路》からは、いよいよ【名峰百選】のしんがりを締める名峰・宮之浦岳の頂上を目指す。
岩ガレの中を30分ばかり登ると、花崗岩の庭を形成する宮之浦岳 1935メートル の頂上だ。
九州最高峰・宮之浦岳にて
海上アルプスの頂からの眺めは
以外や“山また山”の展望であった
以外や“山また山”の展望であった
頂上からは、山肌に突き刺さる岩々が奇抜な容姿を象る永田岳や、密かな大瀑・《龍王ノ滝》、広がる草原の裾野、海辺に寄り添う街など、『屋久島』の全てが見渡せる。 しばし、この素晴らしき眺めを味わおう。
宮之浦岳より望む永田岳
続く永田岳と下山路は、『名峰次選 第60回 永田岳』を御覧下さい。
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