2012-05-27 (Sun)✎
名峰百選の山々 第59回 『51 鹿島槍ヶ岳 その2』 長野県・富山県
後立山山系(中部山岳国立公園) 2890m コース難度 ★★★★ 体力度 ★★★★ 〔積雪期〕
前回の“その1”では、は自業自得とはいえ、大スペクタクル!?の末にたどり着いた鹿島槍ヶ岳までを記したのであるが、今回の“その2”では、夏山ではサラッと流される場面が多いものの、春山や冬山では重要な場面と成り得る『下山』について語ろうと思う。
行程記録 本文の行程表と照らし合わせると、同じ人間のなせる業とは到底思えないね
《1日目》 扇沢駅(0:15)→柏原新道・登山口(1:00)→南尾根分岐(3:00)→尾根上
《1日目》 扇沢駅(0:15)→柏原新道・登山口(1:00)→南尾根分岐(3:00)→尾根上
(2:45)→ジャンクションピーク(1:30)→爺ヶ岳(2:30)→冷池山荘
《2日目》 冷池山荘(1:00)→布引山(0:55)→鹿島槍ヶ岳・南峰(0:50)→布引山
《2日目》 冷池山荘(1:00)→布引山(0:55)→鹿島槍ヶ岳・南峰(0:50)→布引山
(1:00)→冷池山荘
《3日目》 冷池山荘(2:00)→爺ヶ岳(1:20)→ジャンクションピーク(2:00)→尾根上
《3日目》 冷池山荘(2:00)→爺ヶ岳(1:20)→ジャンクションピーク(2:00)→尾根上
(3:00)→柏原新道・八ヶ見ベンチ(0:40)→柏原新道・登山口(0:15)→扇沢駅
※ 《2日目》までは、前回の『第58回 鹿島槍ヶ岳 その1』を御覧下さい。
今日は槍・穂高を見ながら
キツい尾根筋を降りていく
《3日目》 雪の急斜面を下山
・・で、頂上に着く。 時間は8時過ぎ。 登った瞬間は真っ白けだった。 が・・、見る見る内にガスが晴れていき、スカイブルーの空と針ノ木から連なる稜線が見えてきたのである。 春山の喜びが漸く眼前に現れたのである。
朝4:45に起床。 今日は、『下山』という明確な予定である。 それ故、5時に朝飯の支度を始めて5時30分までには終えて、乾燥室の乾いた衣類を回収して着込む。 事は順調に進み、6時には出発体制が整った。 山荘の天気予報は、今日も朝の8時から9時が悪天のピークで、「南尾根を下る方は扇沢側に迷い込まず、尾根を忠実に下って下さい」との事だった。
さて、小屋を出ると、チラチラ雪にそれなりに強い風だった。 状況としては、悪天とまでは言えないが何も見えぬ真っ白けの世界で、今日も山の情景はお預けっぽいのである。 2日前に真っ暗闇の中をカンテラをかざして通った冷乗越を越え、爺ヶ岳の肩へのジグザクの急斜面に取り付く。
2日前は完全な砂利ガレの坂道だったが、昨日に吹雪いて雪と氷と砂利ガレの斑模様となっていた。
この後、『×地点』のハプニングがあったが、それはメインサイトに記すのみにとどめよう。
この後、『×地点』のハプニングがあったが、それはメインサイトに記すのみにとどめよう。
ブログ消されるのヤバいし。
坂を上り詰めて爺ヶ岳の山腹をトラバースする地点に出る。 ここには凍ったハイマツが美しい情景を魅せていたが、如何せん例のハプニングのあった直後だけに、雪風が舞う中を『ザック下ろして写真タイム』という訳にもいかなかったので自重する。
爺ヶ岳の山腹トラバースを越えて、本峰と南峰の鞍部に出る。 昨日からの降雪で、雪の踏跡は完全に消されている。 2日前は確か雪の中を鞍部に向けて下っていった記憶があるが、前を行く下山者は岩場の方に入っていく。 「ここは数人いる下山者連中の採る道を信用した方がベター」と、着いていく事にする。
岩屑の登りはアイゼンだと引っかかって怖かったが、このルートが正式なもののようである。
爺ヶ岳の山腹トラバースを越えて、本峰と南峰の鞍部に出る。 昨日からの降雪で、雪の踏跡は完全に消されている。 2日前は確か雪の中を鞍部に向けて下っていった記憶があるが、前を行く下山者は岩場の方に入っていく。 「ここは数人いる下山者連中の採る道を信用した方がベター」と、着いていく事にする。
岩屑の登りはアイゼンだと引っかかって怖かったが、このルートが正式なもののようである。
だが、視界が明瞭な時は、行きに通った稜線通しの雪道の方が歩き良いみたいだ。
『×△フラグ』もなんのその
しぶとく生きてます
爺ヶ岳でのアリバイ写真
爺ヶ岳でのアリバイ写真
・・で、頂上に着く。 時間は8時過ぎ。 登った瞬間は真っ白けだった。 が・・、見る見る内にガスが晴れていき、スカイブルーの空と針ノ木から連なる稜線が見えてきたのである。 春山の喜びが漸く眼前に現れたのである。
待っていると徐々に
ブリ(ブリザード)が去っていき
出発する時は「下山に所要9時間で、15:00発のバスに乗りたいものだ」と考えていたが、この情景を見て「まぁいいか」となってしまった。 スカイブルーながらも風が吹きすさぶ爺ヶ岳の頂上で、約30分も吹きさらされながら写真タイム。 こう見ると、ワテって結構頑丈なのね。
嬉しいですね
快晴となってきましたヨ・・
快晴となってきましたヨ・・
でも、意志は『超』が着く位に薄弱で、厚いのは恥を恥とも思わぬ『面の皮』だけである。
さて、コレより『勝負賭け』の尾根雪斜面の下降である。 ここは確実に下っていこう。
そう、安全の為なら形振りかまわず、大安売りで『伝家の宝刀』を抜いていこう。
爺ヶ岳の南尾根を下りる最中に
魅せられた山情景
さて、登り時にダレにダレた爺ヶ岳の直登は下りもキツい。 正直言うと、ここに雪が乗ってなくて本当にラッキーだったのである。 これが雪斜面なら、かなりそそる事だろう。 急な砂利坂なので、躓き防止の為にアイゼンを外す。 躓いて足でも挫いたら、『勝負賭け』の雪斜面下りでは目も当てられなくなるのである。 なので、こういう手間は惜しまない方がいいのである。
美しい(行きは憎々しい程にデンと居座った)
三角錐を魅せる爺ヶ岳
時間は、山荘で「天候最悪」と報じられた午前9時過ぎとなるが、天候はピーカンの快晴となっていく。
振り返ると、2日前にあれだけ「嫌ぁ~な感じ」に見えた爺ヶ岳の三角錐が、美しく流れるような三角錐を魅せている。 心に余裕を持つと、ここまで見えるモノが違うのだろうか。 そして、日の光を浴びて輝くハイマツの樹氷が見える。 ここは雪もなく、ザックを下ろせる平らな面もあり、真に写真を撮る為の広場である。 ここでも、20分位タムロする。
振り返ると、2日前にあれだけ「嫌ぁ~な感じ」に見えた爺ヶ岳の三角錐が、美しく流れるような三角錐を魅せている。 心に余裕を持つと、ここまで見えるモノが違うのだろうか。 そして、日の光を浴びて輝くハイマツの樹氷が見える。 ここは雪もなく、ザックを下ろせる平らな面もあり、真に写真を撮る為の広場である。 ここでも、20分位タムロする。
山に咲く氷の花
しばし氷の花たちの
宴に酔おう
樹氷を撮ってから再び砂利坂を下っていくと、この砂利坂を下りきって『勝負賭け』の場面がやってくる。
これよりジャンクションピークを経て、雪斜面に差しかかるのである。 アイゼンが落脱せぬようにシッカリと装着して、雪面に出る。 ジャクションピークまでは傾斜のない緩やかな登り基調なので問題はない。
勝負は、ジャンクションピークより90°左折してからである。
山の情景もこれが最後だ
さて、ピークを立て看板の指示通りに90°左折すると、下が隠れる程の急傾斜が現れる。
登りの時はそんなにキツい傾斜だとは感じなかったが、下りるとなると怖い。
大町側に滑ったらジ・エンドだ
なぜなら、滑り落ちると奈落の底だからである。 早速、世界一、いや宇宙一“安い”マイ『伝家の宝刀』を抜く。 必殺『クマ下り』である。 もう、「凍傷にかかっていても構わない」と手袋を脱いで素手を雪斜面に突っ込み、それを軸に一段づつ雪斜面を蹴り込んで簡易の踏み段を造って下っていく。
案外、『クマ下り』を使う傾斜は5~6ヶ所程度で、後はスタンダップスタイルで前を向いて下っていける。 だが、『クマ下り』を使用している者はワテ一人だけだった。 でも、「横が奈落の底で、よう急坂をスタンダップスタイルで下りれるよなぁ」と関心する。 雪が、滑るのが、怖くないのだろうか?
これを2時間ほど耐えると、雪の斜面から樹林帯の中へと入っていって、雪も途切れ途切れとなる。
「ここまでくれば安心だ」と多少気が抜けたが、これからが一番厄介だったのだ。 登り時は雪がなかったものの、昨日の降雪で雪が乗ってしまったのであろうか、所々に扇沢側に落ちていく雪斜面があり、それをトラバースしていかねばならないのだ。
雪斜面を越えて
ホッとひと息も束の間
「コリは、ちっとも安全じゃねぇじゃねぇか!」と、周囲に誰もいないのを見計らって文句垂れるが、ワテの雪下りレベルでは、再びアイゼンをハメねば通過は難しい。 ・・で、再びアイゼンを装着する。
だが、50m位の雪トラバースを越えるだけでアイゼンを着脱するのだから、1回当たりの通過時間は20分以上となるのだ。 でも、「扇沢に滑り落ちるよりマシだあね」と、地道にアイゼンの着脱を繰り返す。
これを4回位繰り返したのだから、当然鬼のように時間を食う。
そして、ザックの上げ下ろし(食料分軽くなったとはいえ20㎏よ)でヘタってしまって、完全な安全エリアに入った『雪が消えた樹林帯の急傾斜』で膝が笑って下降が困難となる。 だからかかったよ・・、時間。 多分、樹林帯に入ってから3時間以上かかったんじゃないだろうか。 最後の方では足に踏ん張る力がなくなって、もはや黒くなりつつある残雪の残りを渡るのにも、尻モチを着きかねない体たらくとなってしまった。
そして、ザックの上げ下ろし(食料分軽くなったとはいえ20㎏よ)でヘタってしまって、完全な安全エリアに入った『雪が消えた樹林帯の急傾斜』で膝が笑って下降が困難となる。 だからかかったよ・・、時間。 多分、樹林帯に入ってから3時間以上かかったんじゃないだろうか。 最後の方では足に踏ん張る力がなくなって、もはや黒くなりつつある残雪の残りを渡るのにも、尻モチを着きかねない体たらくとなってしまった。
・・で、日光が明らかに夕方の様相を照らし出した時に、漸く柏原新道の『八ヶ見ベンチ』の前に降り着く。 「アレ!?、行きに入っていった所と違うな」と思いながらも、完全なる安全圏まで下りきったのでひと安心する。 後は、下に見える車道までダラダラと下っていくだけだ。ここからは派手に転ばない限り大丈夫だ。
緊張から開放されてホッとした心地で
《八ッ見ベンチ》にて針ノ木岳を望む
《八ッ見ベンチ》にて針ノ木岳を望む
その宣言の通り、ダラダラと下って、15:15に柏原新道の登山口にたどり着く。 あらら、9時間かかったのね。 15時のバス便は無理だったが、今回も無事に山の楽しみを享受する事ができた。
後は、観光バスやマイカーがビュンビュン飛ばす『長野県道15号・大町~扇沢道路』を伝って扇沢のバス停に戻るだけである。
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