2012-04-21 (Sat)✎
名峰百選の山々 第56回 『88 山上ヶ岳』 奈良県
大峰山系(吉野熊野国立公園) 1719m コース難度 ★ 体力度 ★★
夜明け前・・雲海の果てに
富士山が見えた
:
大峰・弥山山頂にて
山上ヶ岳方向を望む
今回は、大峰山の『奥駈道』を完全縦走をしてみよう。 行程にして山中3泊で、(予算の関係もあるが・・)全てテント泊となる。 つまり、3泊4日で行程長が56km・歩行時間29時間を、テント装備一式の20kg以上を担いで歩いて行かねばならない。 即ち、それ相応の体力が必要となる。
だが途中で挫けても、いくらでもエスケープやリタイヤのルートがあるので、安心!?して事に挑める強みがある。 それでは、この3泊4日のロングラン山行を数回に分けて語っていこう。
大峰・奥駈道 縦走路 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 大阪・阿部野橋駅より鉄道(1:15)→下市口駅よりバス(1:30)→洞川バス停
《1日目》 大阪・阿部野橋駅より鉄道(1:15)→下市口駅よりバス(1:30)→洞川バス停
(0:15)→稲村ヶ岳登山口(2:20)→山上辻(0:50)→稲村ヶ岳
(1:30)→山上ヶ岳(0:55)→小笹ノ宿跡
《2日目》 小笹ノ宿跡(2:00)→大普賢岳(2:45)→行者還岳(2:00)→石休場ノ宿跡
《2日目》 小笹ノ宿跡(2:00)→大普賢岳(2:45)→行者還岳(2:00)→石休場ノ宿跡
(1:00)→聖宝ノ宿跡(1:00)→弥山小屋
《3日目》 弥山小屋(0:35)→大峰・八剣山(2:00)→舟ノ垰(3:50)→釈迦ヶ岳
(1:00)→太古ノ辻(1:50)→前鬼
《4日目》 前鬼(0:40)→林道ゲート(0:30)→不動七重ノ滝展望台
《3日目》 弥山小屋(0:35)→大峰・八剣山(2:00)→舟ノ垰(3:50)→釈迦ヶ岳
(1:00)→太古ノ辻(1:50)→前鬼
《4日目》 前鬼(0:40)→林道ゲート(0:30)→不動七重ノ滝展望台
(1:20)→前鬼口バス停よりバス(2:25)→大和上市駅より鉄道
(1:20)→大阪・阿部野橋駅
《1日目》 洞川温泉より稲村ヶ岳・山上ヶ岳へ
この項目では、修験者が“行”をまっとうする為にに駈ける道として名高い『大峰・奥駈道』を歩いてみよう。 このコースを歩くにあたってまず考えねばならぬ事は、登山口の《洞川温泉》へのアプローチであろう。
山行の成功の秘訣は、前日アプローチの早朝出発と目的地への早着である。 だが、交通機関利用となると、近鉄下市口駅発の最終バスは17時台とちょっと“早じまい”だし、タクシー利用だと8500円強と思わぬ散財になる。
《1日目》 洞川温泉より稲村ヶ岳・山上ヶ岳へ
この項目では、修験者が“行”をまっとうする為にに駈ける道として名高い『大峰・奥駈道』を歩いてみよう。 このコースを歩くにあたってまず考えねばならぬ事は、登山口の《洞川温泉》へのアプローチであろう。
山行の成功の秘訣は、前日アプローチの早朝出発と目的地への早着である。 だが、交通機関利用となると、近鉄下市口駅発の最終バスは17時台とちょっと“早じまい”だし、タクシー利用だと8500円強と思わぬ散財になる。
そして、何とか《洞川温泉》に着いたとしても、ここは旅館の建ち並ぶ温泉街で気安くテントを張れる雰囲気ではない。 また、山登りをする前日に高い旅館に宿泊する・・というのも“モチベーション”的に問題だと思うのである。
“ならば、マイカーで”という手段もあるが、これも《両刃の剣》なのである。 マイカー利用でアプローチすると、初日の問題点は全てクリアー(もちろん、駐車場にて車中泊である)できるが、帰りに大回りをして車を回収しにこなければならなくなるのだ。 ワテは後者の“マイカー”を選択したが、こればっかりは各自の判断に委ねたいと思う。
奥駈道は大峰の深い山なみを
見ながらゆく一級の登山道だ
見ながらゆく一級の登山道だ
・・さて、前置きが少々長くなったが出発しよう。 バス停と無料の駐車場のある温泉街入口より約7~800m歩くと、大峰山の湧き水で名水としても名高い『神泉洞』がある。 この辺りに稲村ヶ岳への登り口がある。 ここから、樹林帯の中に向かって緩やかに登っていく。
緩やかな傾斜を登りきると土手の上を歩くようになり、程なく《五代松母公堂》の奥宮が現れる。
これを突き抜けると、この神社の“御神体”ともいえる《五代松鍾乳洞》がある。 早朝だと、残念ながら鍵が掛かっているので見学は叶わない(ちなみに、300円と有料である)。 鍾乳洞を過ぎると、程なくもう一つの登山口からの道と合流する。
ここからは、樹林帯の中の道が続く。 足場はしっかりして歩きよいのだが、景色は樹木に遮られて退屈な道だ。 途中で沢を二度跨ぐと、馬の背のような伝い尾根の上に出て視界が一瞬開ける。
ここは《法力峠》と呼ばれている所で、ここから尾根のたわみを伝って隣にそびえる稲村ヶ岳へと登っていくのである。 大きく迂回するように峠をたわんでから、徐々に稲村ヶ岳に向かって高度を上げていく。
ここからは、樹林帯の中の道が続く。 足場はしっかりして歩きよいのだが、景色は樹木に遮られて退屈な道だ。 途中で沢を二度跨ぐと、馬の背のような伝い尾根の上に出て視界が一瞬開ける。
ここは《法力峠》と呼ばれている所で、ここから尾根のたわみを伝って隣にそびえる稲村ヶ岳へと登っていくのである。 大きく迂回するように峠をたわんでから、徐々に稲村ヶ岳に向かって高度を上げていく。
先程峠をたわんでいるので、歩いてきた道程をはっきり望む事ができる。
やがて、“待ってました”とばかりに程よく現れる水場で喉を潤し、《高崎横手》と呼ばれる緩やかな登りをつめていくと、山小屋の建つ《山上辻》に登り着く。 この小屋はシーズン中でも予約を入れない限り閉鎖しているので、雨宿りにも使えない。 ここに荷物を置いて、稲村ヶ岳を往復しよう。
小屋の前を通り、樹木の中を登っていく。 しばらく登ると、ほとんど傾斜のない道が続く。
道が正しいのか不安になるが、一本道なので突き進んでいこう。 やがて、大きな岩の基部を巻くようになり、これを越えると《大日キレット》である。 ここから大日山への登路が分かれるが、この道は鎖場の続く“エキスパート”向けの道なので、自重した方が賢明だ。
足場はしっかりしているものの、鋭く切れ落ちた《大日キレット》を右下に望みながらだとやはり緊張する。 これを越えると、稲村ヶ岳の最後の登りに差しかかる。 ここはちょっとした鎖付きの急傾斜で、雨でも降って足場が濡れているようだと、下りで鎖を頼らねばならないかもしれない。 しかし登りでは、鎖を必要としなくても登れるだろう。
やがて、“待ってました”とばかりに程よく現れる水場で喉を潤し、《高崎横手》と呼ばれる緩やかな登りをつめていくと、山小屋の建つ《山上辻》に登り着く。 この小屋はシーズン中でも予約を入れない限り閉鎖しているので、雨宿りにも使えない。 ここに荷物を置いて、稲村ヶ岳を往復しよう。
小屋の前を通り、樹木の中を登っていく。 しばらく登ると、ほとんど傾斜のない道が続く。
道が正しいのか不安になるが、一本道なので突き進んでいこう。 やがて、大きな岩の基部を巻くようになり、これを越えると《大日キレット》である。 ここから大日山への登路が分かれるが、この道は鎖場の続く“エキスパート”向けの道なので、自重した方が賢明だ。
足場はしっかりしているものの、鋭く切れ落ちた《大日キレット》を右下に望みながらだとやはり緊張する。 これを越えると、稲村ヶ岳の最後の登りに差しかかる。 ここはちょっとした鎖付きの急傾斜で、雨でも降って足場が濡れているようだと、下りで鎖を頼らねばならないかもしれない。 しかし登りでは、鎖を必要としなくても登れるだろう。
この鎖場を登りきれば直角に右に折れて樹木の中を20mばかり登りつめると、狭い頂上に大きな展望櫓が乗っかる稲村ヶ岳 1726メートル 頂上だ。 この大きな人工構造物のせいかもしれないが、あまり感慨が湧いてこない。 まぁ、ワテの登った時は、雨天だったから仕方のないのかもしれないが。
帰りは往路を忠実に戻ろう。
《山上辻》に戻ってデポった荷物を回収したなら、大峰山系の主峰・山上ヶ岳へ向かう。 枯葉に埋もれる道を大きく上下すると、“ついに”《レンゲ峠》にやってくる。 何が“ついに”であるのかというと、これより先は《大峰山寺》の支配する山域で、修験の法により『女人禁制』となっているのである。
性差別か、古来よりの掟か
論争渦巻く『女人結界門』
論争渦巻く『女人結界門』
峠には『女人結界門』なる木の鳥居と、《大峰山寺》の設置した日本語と英語の警告看板が立てかけてあった。 ワテは宗教には全く興味がないし、これが性差別なのかもよくは解からないが、“郷に入れば郷に従う”べきなのであろうと思う。
『女人結界』の門をくぐると、修験の山らしく迫り立つ岩の直登となっていく。 ルンゼ状に掘られた岩の間を立てハシゴを交えて登っていく。 どうやら、ここが今日のハイライトのようである。
『女人結界』の門をくぐると、修験の山らしく迫り立つ岩の直登となっていく。 ルンゼ状に掘られた岩の間を立てハシゴを交えて登っていく。 どうやら、ここが今日のハイライトのようである。
これを喘ぎながらも登りつめると、山上ヶ岳の肩で大峰本山直進ルートと合流する。 右へ行けば山上ヶ岳の頂上と大峰山寺へ、左へ行けば宿坊と《西ノ覗》などの行場である。 余裕があれば、《日本岩》や《西ノ覗》などを見てくるといい。
肩の分岐から左へ一投足で、“お花畑”の石標が立つ山上ヶ岳 1719メートル の頂上だ。 開花期であれば、笹に覆われた草原にシャクナゲやオオヤマレンゲが鮮やかな彩りを添えるのである。
山上ヶ岳山頂に広がるお花畑
まだ花期には早くササ原であった
まだ花期には早くササ原であった
山頂からのスロープを下ると、《大峰山寺》の総本山が建立されている山門に入る。 毎年、5月の第1日曜日に総本山の御本尊開きがあるので、この時期になると白装束に釈丈片手の熱心な門徒衆を見かける事だろう。 なお、御本尊の扉開きの日とその前日は、《大峰山寺》の宿坊には門徒関係の予約者以外は宿泊不可との事である。
一心不乱に念仏を唱える男達
大峰山寺にて
このような訳もあり、今日の宿泊地は山上ヶ岳より45分ほど先の《小笹ノ宿跡》にしようと思う。
ここは、清流の沢が流れるキャンプの別天地だ。 また、建付け状態のすごぶる良い避難小屋もあるので、入植者!?が少なければこれの利用もいいだろう。 今日は早めに休んで、明日からの長丁場に備えよう。
ここは、清流の沢が流れるキャンプの別天地だ。 また、建付け状態のすごぶる良い避難小屋もあるので、入植者!?が少なければこれの利用もいいだろう。 今日は早めに休んで、明日からの長丁場に備えよう。
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